八女市に木造賃貸住宅
〈里山ながや・星野川〉を建設。
林業の活性化と移住促進に向けて

中島宏典 vol.4

福岡県八女市は、お茶、農業、手工業と並び、林業も盛んな地域です。
今回は、八女市の林業にスポットを当て、長年の課題と背景、
そして林業関連の方々と一緒に取り組むプロジェクトについて、ご紹介していきます。

なぜ、林業の取り組みに関わることになったのか?

自分自身、学生時代から疑問に思っていることがありました。
八女福島のまち並みの修理・修景現場では、
柱や梁の交換、屋根材、床・壁材など多くの木材を利用します。
しかし、その木たちが、どこで育ち、いつ伐採され、
どういうルートで製材・加工・乾燥されて現場に搬入されているのか、
現場の人たちもわからないというのです。

とにかく、八女は一帯に山々が広がり、奥八女に向かう道中には杉の森ばかり。
川沿いにはまだ多くの製材所が稼働しているのに、
なぜ地元産材として認識されたうえで、建築の現場で使われていないのか。
ひと昔前までは、当たり前のように使われていたはずの地域材が、
いつから使われなくなってしまったのか……。

茶畑の奥に杉が植林されている奥八女の典型的な里山風景。

茶畑の奥に杉が植林されている奥八女の典型的な里山風景。

奥八女の森林を起点に流れる矢部川・星野川流域の環境を維持・保全するには、
伐採と植林が欠かせません。
そのためには八女杉を利用する必要があることは何となく理解していました。

とはいえ、木材流通の現状についてはまったく理解できておらず、
まち並みの視察や見学に訪れる方から、
「この柱は八女の木ですか?」という質問が飛ぶたびに、
きちんと答えられない状況でした。

有明海からの俯瞰図をみても、奥八女には緑の山々ばかり!(矢部川流域景観計画より/作成:九州大学出口研究室(当時))

有明海からの俯瞰図をみても、奥八女には緑の山々ばかり!(矢部川流域景観計画より/作成:九州大学出口研究室(当時))

中国出身のアーティスト、
シャオクゥとツゥハンが
池袋と雑司が谷で出会った中華系の人々

〈Oeshiki Project〉から見る東京のローカルの未来 vol.2

雑司が谷に江戸時代から伝わる伝統行事
「御会式(おえしき)」を軸に展開するアートプロジェクト〈Oeshiki Project〉。
その背景やプロセスを、劇作家であり、このプロジェクトのディレクターである
石神夏希さんが紹介していきます。

「内輪だけど、閉じてはいない」コミュニティ

雑司が谷の御会式コミュニティは、すごく濃厚だ。
30万人が集まる一大イベントだけれど、一番楽しんでいるのは
やっぱり太鼓を叩いている人たちだと思う。

なんたって地域の人たちが、1年かけて準備をしている。
いい意味で「内輪」なのだ。
内輪で盛り上がっていてこそ、ローカルな文化はおもしろいと思う。

雑司が谷生まれ育ちの人たちの、太鼓を叩く身のこなしは独特。(写真:鈴木竜一朗)

雑司が谷生まれ育ちの人たちの、太鼓を叩く身のこなしは独特。(写真:鈴木竜一朗)

でも実は、雑司が谷に住んでいない人も講社(チームのようなもの)に入れるし、
異なる信仰を持っていても(本人がよければ)太鼓を叩くことができる。
そんな「内輪だけど、閉じてはいない」ローカルのあり方が、絶妙だと思う。
だが思ったより知られていない。これは結構、もったいない。

昨年の御会式で半纏を着せてもらった筆者。(写真:鈴木竜一朗)

昨年の御会式で半纏を着せてもらった筆者。(写真:鈴木竜一朗)

さまざまな人が暮らす都市で、「御会式」という場がいまより少しだけ開かれる。
異なる文化を持った人たちが、違いを確かめ合いながら、
ひとつの音楽をつくることはできないか。一緒に歩くことはできないか。

そんな着想からOeshiki Projectでは、まちを舞台に、
御会式の太鼓をモチーフにした『BEAT』という
参加型パフォーマンスをつくることになった。

宮沢賢治にゲルハルト・リヒター。 小説家・原田マハ監修のアート展が 清水寺で開催

清水寺が世界と日本をつなぐアートで溢れる8日間

ミュージアムの進歩発展を目的とした
世界で唯一かつ最大の国際的非政府組織・ICOM
(International Council of Museums:国際博物館会議)。
今年の9月、このICOMによる国際会議が日本で初めて
開催される運びとなりました。

会場となるのは京都。
「文化をつなぐミュージアム-伝統を未来へ-」を
テーマに各国から集った専門家が委員会とさまざまな取り組み
について議論や情報交換を行います。

このICOM京都大会2019の開催を記念して、
9月1日(日)から9月8日(日)までの8日間、清水寺で、
小説家の原田マハさんを総合ディレクターに迎えた展覧会
『CONTACT つなぐ・むすぶ日本と世界のアート』が開かれます。

互いに刺激し合い、影響を与えあってきた日本と世界のアート。
本展では、以下の日本と接点のあった海外アーティストや、
国際的に活動した日本人アーティストの作品をあわせて展示することで
日本と世界の芸術・文化がどのように交わってきたかを展観します。

加藤泉 無題 2019年(C)2019 Izumi Kato

加藤泉 無題 2019年(C)2019 Izumi Kato

宮沢賢治『雨ニモマケズ』直筆手帳 1931年(C)株式会社林風舎

宮沢賢治『雨ニモマケズ』直筆手帳 1931年(C)株式会社林風舎

猪熊弦一郎 無題 1948-49年頃 油彩、板[3枚組の一部]個人蔵(C)公益財団法人ミモカ美術振興財団

猪熊弦一郎 無題 1948-49年頃 油彩、板[3枚組の一部]個人蔵(C)公益財団法人ミモカ美術振興財団

ミヒャエル・ボレマンス『くちなし(2)』2014年 墨、和紙/掛軸 個人増(C)Michaël Borre

ミヒャエル・ボレマンス『くちなし(2)』2014年 墨、和紙/掛軸 個人増(C)Michaël Borre

展示作家
司馬江漢/アンリ・マティス/オーブリー・ビアズリー/アルベルト・ジャコメッティ/
猪熊弦一郎/棟方志功/東山魁夷/ヨーゼフ・ボイス/ゲルハルト・リヒター/
三島喜美代/森村泰昌/三嶋りつ惠/ミヒャエル・ボレマンス/加藤泉/
荒木悠/宮沢賢治/川端康成/小津安二郎/手塚治虫/竹宮恵子/
バーナード・リーチ/河井寛次郎/濱田庄司/ルーシー・リー/シャルロット・ぺリアン

アートだけでなく、文学、漫画、映画などの作品も多数登場。
ジャンルを横断した構成も、見どころのひとつです。

清水寺 成就院 庭園

清水寺 成就院 庭園

ゲルハルト・リヒター『ライヒ リヒター ペルト』展示風景 The Shed(2019年、ニューヨーク)

ゲルハルト・リヒター『ライヒ リヒター ペルト』展示風景 The Shed(2019年、ニューヨーク)

特に通常非公開となっている成就院の庭園を背景とした作品展示、
経堂でのゲルハルト・リヒターによる映像作品からは、
いつもと違った清水寺が垣間見れるはず。

入り口正面の重要文化財である西門、
馬駐のフリーゾーン(チケット無しで鑑賞可能)では、
現代アーティストである加藤泉さんのインスタレーションが開催され、
ICOM京都大会らしいフォトジェニックな写真も撮れます。

二条城世界遺産登録25周年記念。 日本の現代美術作品を集めた 『時を超える:美の基準』が開催

参考画像 名和晃平『PixCell-Deer#52』2018 mixed media 2173×1896×1500mm Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE photo:Nobutada OMOTE|SANDWICH

歴史ある二条城と日本現代美術の邂逅

普段は人目に触れることのない二条城 二の丸御殿台所御清所(重要文化財)を舞台に、
日本の現代美術作家たちの作品を集めた展覧会『時を超える:美の基準』が
8月31日(土)から9月3日(火)までの期間に開催されます。

この展覧会は、141の国と地域から博物館の専門家が集う、
日本で初めてのICOM(国際博物館会議)京都大会の開催と
元離宮二条城の世界遺産登録25周年を記念して企画されたもの。

キュレーターの南條史生氏とアーティストの名和晃平氏を
アドバイザーに迎え、「歴史との対話」をテーマに
日本の現代美術シーンを牽引する以下の作家たちの作品が展示されます。

参考画像 青木美歌『Her songs are floating』2007

参考画像 青木美歌『Her songs are floating』2007

小林且典『山の標本』2019 26×16×9cm ブロンズ

小林且典『山の標本』2019 26×16×9cm ブロンズ

ミヤケマイ『誰が袖』2017 mixed media 167×181cm

ミヤケマイ『誰が袖』2017 mixed media 167×181cm

参考画像 宮永愛子『みちかけの透き間 -時計-』2017 ナフタリン、ミクストメディア 写真:木奥恵三©MIYANAGA Aiko Courtesy Mizuma ArtGallery

参考画像 宮永愛子『みちかけの透き間 -時計-』2017 ナフタリン、ミクストメディア 写真:木奥恵三©MIYANAGA Aiko Courtesy Mizuma ArtGallery

チームラボ『生命は生命の力で生きている』2011 Digital Work 6 min23 sec. (loop), 書:紫舟Courtesy of Pace Gallery

チームラボ『生命は生命の力で生きている』2011 Digital Work 6 min23 sec. (loop), 書:紫舟Courtesy of Pace Gallery

参考画像『Weeds』2008 painted on wood

参考画像『Weeds』2008 painted on wood

『Courant ascendant I』1995 Bronze painted 1880×100×100mm ©NishikawaKatsuhito

『Courant ascendant I』1995 Bronze painted 1880×100×100mm ©NishikawaKatsuhito

淡路島の〈ヒラマツグミ〉 一〇周年記念企画展 『建築への手がかり』が開催

〈ヒラマツグミ〉が考える“建築”

洲本市の中心街から車で十数分。
山路を走っていると脇に突然建物を発見します。
それは建築設計事務所〈ヒラマツグミ〉のスタジオ。
カフェとギャラリーも併設されています。

かつて牛舎だったところを改装したスペースは、
一見倉庫のようですが、中へ入ると洗練された趣を醸す、
広々とした空間が広がっています。

売られているものも淡路島を拠点に活動するアーティスト、
作家たちが手がけたセンスのよい皿やインテリア雑貨、アクセサリーなど。
奥のカフェも地元の食材を使ったこだわりあるメニューが評判。

こちらは生まれも育ちも淡路島の建築家・平松克啓さんが手がけており、
県外から足を運ぶ人も多くいるという、知る人ぞ知る注目のスペース。

この8月、そんな〈ヒラマツグミ〉は10周年を迎えました。
現在、これを記念した展覧会
『「建築への手がかり」ヒラマツグミ一〇周年記念企画展』
が8月17日(土)から9月16日(月・祝)までの1か月間開催されています。

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/architects 建築の手がかり展では一般的な展示会のように初日に完成したものをみてもらうのではなく、最初の数日は展示スペースの施工風景を見てもらおうと思っています。 ・ 「建築への手がかり」 ヒラマツグミ一〇周年記念企画展 2019年8月17日(土)〜9月16日(月祝) ・ 身近なものから考える建築展_________________________________ ・ ◾︎施工見学会 (和紙職人ハタノワタル氏 @wataru_hatano_kyoto ) 8月17日(土) 終日開催 _和紙が貼られることにより空間が出来上がっていくその刻々を是非体感してください ▪️施工見学会(左官 風の絵 前田達也) 8月21日(水) 終日開催 ※22日(木)見学会とご案内しましたが休店日です。カフェ、ギャラリーはお休みですが見学のみ可能です。 左官職人さんの仕事はリズミカルで流れるように澱みがありません。是非その仕事ぶりをみていただきたいです。 ◾︎ 中国茶会 (TE-tea and eating 川西まりさん @te_tea_eating ) 9月1日(日) 11:00- 12:30- 14:00- 15:30- 料金 1000円 お茶一種、干菓子付き _今展のために作られた空間を味わうための茶席を設けます。 #ヒラマツグミ #hiramatsugumi #建築展 題字 #ハタノワタル #TE-teaandeating

HIRAMATSUGUMIさん(@hiramatsugumi)がシェアした投稿 -

「身近なものから考える建築展」をコンセプトに、
建築との関係性を考えながら展示方法を検討、
展覧会が始まって間もない頃は施工途中のところもあったりと
会場ができ上がる過程もひとつの演出とするこの展覧会。

北軽井沢 『篠原一男建築:Tanikawa House』 が一般公開。 8月25日には谷川俊太郎氏も 参加するお披露目会も

篠原一男氏の代表作が開館。
今後さまざまな芸術表現の場として活用されることに

建築家・篠原一男。
『白の家』(1966年)や『ハウスインヨコハマ』(1984年) で
知られる日本戦後モダニズムの雄であり、
彼が作り出す抽象的な空間や建築思想は、その後に続く
伊東豊雄氏や安藤忠雄氏にも多大なる影響を与えました。

そんな篠原氏が手がけた詩人・谷川俊太郎氏の別荘が、
北軽井沢にあるのをご存知ですか?

家外観

『篠原一男建築:Tanikawa House』。
1974年に谷川俊太郎氏の一編の詩に基づいて建てられたもので、
上記ふたつの作品に加え、篠原氏の代表作のひとつと言われています。
日本やスイスの建築業界では、名建築として名が通っているんだとか。

ここの最大の特徴は、南北に9メートルの幅、1.2メートルの落差を持つ
傾斜した土間の空間。
穏やかに起伏した敷地の斜面をそのまま住宅に取り入れるという
篠原氏の考えのもと設計されました。

家内部

まだまだ注目イベント目白押し! 宮城県で開催中の 〈Reborn-Art Festival 2019〉 の見どころをチェック

宮城県の牡鹿(おしか)半島と石巻市街地を主な舞台とした、
アート・音楽・食を楽しむお祭り〈Reborn-Art Festival 2019〉が
8月3日(土)から9月29日(日)の期間に開催されます。

第2回目となる今回は『いのちのてざわり』をテーマに、
網地島を含む7つのエリアで7組のキュレーターが
作家たちとさまざまに想いを馳せながら作品を発表。
前回よりさらにパワーアップし、盛りだくさんの内容となっています。

以下、各エリアの特徴を簡単にご紹介。

旅の拠点・石巻駅前エリア

電車、車、人々が行き交う〈Reborn-Art Festival 2019〉の
旅の拠点・石巻駅前エリアには、「海へのアート=リチュアル」をエリアテーマに
思想家・中沢新一さんがキュレーションしたアーティストによる作品が登場。

『茶碗の底の千の眼』

ザイ・クーニン『茶碗の底の千の眼』

かつて南の海域にあった巨大な大陸・スンダランドを題材にした
インスタレーション『海に開く』は、中沢新一さん、
アーティストのザイ・クーニン、写真家の大崎映晋さん、
山内光枝さんらが手がけたもの。石巻市有形文化財に指定された
旧観慶丸商店には、大量のお茶碗を用いた
ザイ・クーニンのインスタレーション『茶碗の底の千の眼』が。

石巻の中心となる市街地エリア

「街のマンガロードとアートロード」をエリアテーマに、
アーティストの有馬かおるさんが選抜したアーティストの
作品が並ぶのは市街地エリア。

アーティストの是恒さくらさんによる、石巻と和歌山の
捕鯨の記憶を結んだ刺繍作品『再編「ありふれたくじら:牡鹿半島~太地浦」』や、
有馬かおるさんの作品『世界はやさしい、だからずっと片思いをしている』など、
そのほか多数の作品が展示されます。

牡鹿半島の北西部・桃浦エリア

カキの養殖が盛んな漁村・桃浦エリアは、
音楽家の小林武史さんがキュレーションを担当し
「リビングスペース」をエリアコンセプトに、
アーティストの草間彌生さんによる水玉模様の彫刻『新たなる空間への道標』や、
アートディレクターの増田セバスチャンさんの
穴の劇場『ぽっかりあいた穴の秘密』などの作品が。
旧荻浜小学校では、オーバーナイトイベント『夜側のできごと』の開催も予定されています。

“迷い鹿”が堂々と佇む荻浜エリア

『White Deer (Oshika)』

名和晃平『White Deer (Oshika)』

アーティストの名和晃平さんがキュレーターを務める荻浜エリアでは、
「プライマル エナジー - 原始の力」をエリアテーマに、
名和晃平さんが手がけた時刻によって表情を変える
“迷い鹿”『White Deer (Oshika)』、アーティストの村瀬恭子さんの
洞内に海を現すインスタレーション『かなたのうみ』などの作品がラインナップ。
ここにあるレストラン〈Reborn-Art DINING〉では、
ゲストシェフを迎えたスペシャルメニューも期間限定で展開されるそう。

愛嬌たっぷりの「木彫り熊」が 一挙集結! 〈東京903会〉主催の ポップアップイベントが開催

一部で話題!? 「木彫り熊」ブーム再来か

北海道のお土産として有名な「木彫り熊」。

発祥は尾張徳川家・義親公がスイスの
ペザントアート(農村美術)を北海道に持ち込んだことから。
昭和30年から40年の北海道観光ブームで一度大きな話題となり、
「世界で一番売れた彫刻品」なんて評判になったこともあったようです。

そんな〈木彫り熊〉が、現在、東京のクリエイターの間で
「かわいい!」「インテリアとして集めたい!」と密かな話題となっています。

編集者の安藤夏樹さんが代表を務める〈東京903会(くまさんかい)〉。
安藤さんをはじめとするクリエイターが木彫り熊に惚れ込み、
木彫り熊の魅力をより多くの人に知ってほしいと、ブログやSNSで情報を発信をしています。

そしてこの度、〈東京903会〉がリアルショップに出現。
8月10日(土)から〈CLASKA Gallery & Shop "DO"〉本店で、
〈− 北海道の木彫り熊の世界 − 東京で、熊さんかい? by 東京903会〉
が開催されまています。

写真家・南阿沙美さんによる 写真展『島根のOL』が馬喰町で開催

チャーミングな“島根のOL”の魅力が満載

2019年8月21日(水)から8月31日(土)まで、
馬喰町にあるギャラリー〈Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery(KKAG)〉で
写真家・南阿沙美さんによる写真展『島根のOL』が開催されます。

ピチピチのTシャツと短パン姿の体格のよい女性が、
戦うヒーローのように動き回る姿を捉えた『MATSUOKA!』で
2014年度の写真新世紀優秀賞を受賞した南阿沙美さん。

エネルギーに満ち溢れ、こちらが思わず
吹き出してしまうような作品は、多くの注目を集めました。

この『MATSUOKA!』に続くかたちで
発表されたのが、今回展示される『島根のOL』。

かわいいものがいっぱい! 久留米市美術館で開催中 〈tupera tupera〉の絵本の世界展と、 福岡県の14店舗が限定コラボ!

久留米市の〈acaria〉で、期間限定で発売される〈かおクッキー〉

〈tupera tupera〉の大規模展覧会が開催中!

〈ぼくと わたしと みんなの tupera tupeara 絵本の世界展〉が、
2019年8月6日より、福岡県の久留米市美術館ではじまりました。

絵本にパンツをはかせるユニークな造本の『しろくまパンツ』などを手がける、
亀山達矢さんと中川敦子さんによるふたり組ユニット
〈tupera tupera(ツペラ ツペラ)〉の軌跡をたどる大規模展覧会です。

こちらの展示、全国巡回中ですが、tupera tuperaの絵本とコラボした、
久留米だけの楽しいイベントが開催されているんです!

久留米市拠点のデザイナーが発案

イベントを告知するフライヤー

フライヤーデザイン。

イベント名は〈ツペラくるくる〉。
企画・プロデュースするのは、
久留米市を拠点に活動するデザインスタジオ〈DICTOM DESIGN〉です。

tupera tuperaの絵本『こわめっこしましょ』や
『キューブスゴロク』のデザインを手がけるなど、以前から親交があったことで、
久留米の街をぐるりと楽しめる、特別な企画が実現しました。

福岡県の14の店舗が絵本とコラボ

イベントに参加するのは、DICTOM DESIGNがおすすめする福岡県内の14店舗。

tupera tuperaがこれまでつくってきた絵本から着想した、
期間限定のかわいいフードやグッズが販売されます。

なかでもおすすめなのは、〈こわめっこマカロン〉。
DICTOM DESIGNがブックデザインを手がけた絵本『こわめっこしましょ』に登場する
ひとつめこぞうがマカロンになりました。

ひとつひとつ表情が違ってどれを選ぶか迷いますね!

さらに見逃せないのが、〈しろくまのパンツパン〉。
絵本『しろくまパンツ』のしろくまさんをモチーフにしたパンが登場です! 
絵本と同じく、パンツを脱がして食べる演出が心くすぐられます。

鈴木康広さんが北海道で初個展を開催。 札幌の雪から着想を得た最新作も

鈴木康広『空気の人』モエレ沼公園 2019

代表作から最新作まで約20点が登場

くすっと笑えるユーモアの中に
ものの見方や世界のとらえ方まで転換させてくれるような
細やかでかけがえのない気づきをもたらしてくれる作風で、
国内外問わず活躍の幅を広げるアーティストの鈴木康広さん。

8月17日(土)より、北海道・札幌で
個展『鈴木康広 雪の消息 / 残像の庭』が開催されます。

鈴木康広『氷の人』2019

鈴木康広『氷の人』2019

熊野市〈コウノイエ〉が完成!
ローカル新聞の編集室に

撮影:松村康平

多田正治アトリエ vol.4

紀伊半島南東部に位置する熊野エリアには、
古代から集落があり、多くの信仰の場が築かれました。
熊野三山はその代表格ですが、ぼくたちが空き家を改修した拠点
〈コウノイエ〉をつくっていた神川町の近くにも、
ガイドブックやWikipediaにも載らない、
原始信仰の名残のある神社がたくさんあります。

「丹倉(あかくら)神社」。階段を降りた境内でご神体を見る。

「丹倉(あかくら)神社」。階段を降りた境内でご神体を見る。

例えば、「丹倉(あかくら)神社」。
鳥居があり、そこから参道である石積みの階段を降りていきます。
階段を上がっていく神社や寺院はたくさんありますが、
降りていくものはあまり見かけません。
石段を降りた先の平場が境内で、そこには本殿や拝殿といった神社の建築はなく、
巨大な石が、ご神体(磐座)として祀られているだけなのです。

とても神聖な雰囲気の場所で、コウノイエ建設の頃から、
気分転換を兼ねて通っていました。

「雨滝」。写真ではスケールがわかりにくいですが、高さ約20メートル。

「雨滝」。写真ではスケールがわかりにくいですが、高さ約20メートル。

「雨滝」は、丹倉神社の近くにある滝です。
雨乞いの祈りの場だったといわれる滝で、滝の背後の岸壁から滝壺まで、
ひとつの岩盤でできているすごさはもちろん、
見てのとおりの“THE 滝”という佇まいが美しい。
途絶えることなく轟々と履き出される水を眺めているだけで、気分が晴れてきます。

そんな古代から続く神社や自然を愛でながら、コウノイエのリノベーション後編として、
仕上げから完成とその後についてお話します。

リノベ後の平面図。

リノベ後の平面図。

〈伝泊 The Beachfront MIJORA〉 古民家再生を手がけてきた伝泊に ビーチフロントヴィラが誕生!

2019年夏、鹿児島県奄美市笠利町に
〈伝泊 The Beachfront MIJORA
(デンパク ザ ビーチフロント ミジョラ)〉が誕生しました。

〈伝泊〉は、奄美大島出身の建築家、山下保博さんが手がける宿泊施設。
これまでは古民家を再生した施設を手がけてきましたが
この度オープンした施設は、奄美大島北部の
海辺にある、新築のビーチフロントヴィラです。

1枚ガラスで仕切られた室内とデッキ

大きな1枚ガラスで仕切られた室内とデッキ。

宿は、すべて1棟貸し切りタイプ。
どの部屋も海に面しており、海岸へ向かって
開放的なデッキが広がっています。

建物は、伝統を取り入れたモダンなつくり。
奄美の伝統建築「高倉」と、奄美の浜辺で良く見られる「ウノアシ貝」の
形から着想を得た木の屋根、打ち放しのコンクリートを組み合わせています。

客室から見た屋根構造

奄美の伝統建築である高倉の内部にいるかのような、屋根構造。

客室の外観

折り紙のようにシンプルな建築躯体。

夜の海を前にしたデッキのスツール

「MIJORA(みじょら)」とは、この施設がある
小さな集落「三鳥屋(みどりや)」の古い呼び名だそう。

石田真澄さんの写真展 「KUSAMAKURA -the three-cornered world-」が 香川県小豆島の〈うすけはれ〉で開催中

写真展「KUSAMAKURA -the three-cornered world-」は8月31日(土)まで。写真:石田真澄

石田真澄さんが小豆島に暮らしながら撮った写真たち

現役大学生の写真家・石田真澄さんの写真展
「KUSAMAKURA -the three-cornered world-」が、
香川県小豆郡小豆島町のギャラリーショップ〈うすけはれ〉で開催中です。
(〈うすけはれ〉については連載中の小豆島日記でも紹介されています)

カロリーメイトの広告「部活メイト」や数々のファッション誌で撮影を手がけ、
活躍の幅を広げる石田さん。
このたびは、瀬戸内国際芸術祭2019の後援プログラムとして、
小豆島での展示会が行われることになりました。

写真:石田真澄

写真:石田真澄

〈うすけはれ〉付近の様子。写真提供:うすけはれ

〈うすけはれ〉付近の様子。写真提供:うすけはれ

写真展のため、石田さんは〈うすけはれ〉に滞在。
この〈うすけはれ〉があるのは、小豆島では珍しく海が見えない中山という地域。
代々、農業や素麺づくりを生業としている人や、
昔からここに住んでいるという人が多いまちです。
今回は、中山に移住して3年目になる
〈うすけはれ〉のオーナー上杉夫婦の暮らしを手がかりに、
今そこにある小豆島を収めました。

北海道 〈MEMU EARTH HOTEL〉発。 日常生活から離れるための隠れ家 〈HORIZON HOUSE〉で心を取り戻す

積雪で窓からの視界が遮られないよう、居住空間は木製基盤によって地上1メートルに据えられています。「通常プラン」税込54,000円〜(2名様1棟利用時の1名様料金、朝夕食付き)。

先進的な建築と十勝の無垢なる自然を堪能できる〈HORIZON HOUSE〉。

「地球に泊まり、風土から学ぶ」をコンセプトとする
プロジェクト型のホテル〈MEMU EARTH HOTEL〉から、
新たに宿泊施設としての一般提供が開始されました。

〈HORIZON HOUSE〉の設計を手がけたのはハーバード大学のみなさん。
隈研吾氏監修の「国際大学建築コンペ」の最優秀作品群のひとつに選定された建物です。
テーマは「RETREAT IN NATURE」。これは「大自然のリトリート」、
つまり「日常生活から離れるための隠れ家」をコンセプトにしています。

圧巻のパノラマビュー

基礎部と屋根部によって定義されたひと繋がりの屋内の起伏が、圧巻のパノラマビューをもたらします。30時間ステイができる季節限定の「Specialプラン」税込75,600円〜(2名様1棟利用時の1名様料金、1泊3食付き)もあり。要問い合わせ。

春から夏にかけては牧草が青々と茂り、冬には辺り一面がきらきらと輝く銀世界に。
四季ごとに様変わりする大自然の豊かさを、
周囲360度の窓からパノラマで楽しむことができます。

野生動物が雪の上を駆け抜ける

野生動物が駆け抜ける瞬間に恵まれるレアさ。

日常の中では見過ごしてしまいがちな、吹き抜ける風や空気、
生き物の香り、あたたかな光の存在に改めて気づくはず。
広々としたひと繋ぎの部屋で、誰の目も気にせず、
自分のための時間を過ごしてほしいです。

薪割りストーブ

薪割りストーブが熱源の要。

また、〈HORIZON HOUSE〉ではローカルで育った木材や地域の廃材を使用し、
その土地とそこに住まう人々の記憶を取り込めるようにしています。
こうした地元産の素材を使うことで、生成・運搬・建設に伴う炭素排出量を抑え、
地域経済への貢献も可能に。

薪割りストーブの熱を変換した床暖房は、
宿泊者の居る位置や身体状態によって設定が変更でき、
屋外の温度変化に合わせて柔軟に切り替わるなど、
環境に配慮しながら快適性を保持します。

土や牧草なども活用した料理

食材に限らず、土や牧草なども活用した、地域資源の組み合わせから生み出されるお料理も楽しみのひとつ。シェフの沼田元貴さんは、8月1日から提供されるJAL国内線ファーストクラスのディナーも手がけています。

ディナーで供されるサラダ

通常プランのディナーメニュー一例。共有のレストランでいただけます。

〈旧八女郡役所〉が再オープン!
20年眠っていた建物を
直しながら使っていく

中島宏典 vol.3

福岡県八女市の伝統的な大型木造建築〈旧八女郡役所〉のリノベーション。
今回は内装と外壁づくり、外構のリノベ、完成後の運営について紹介していきます。

木材は地元産の八女杉。床張り&壁張りワークショップ

屋根瓦の葺き替えや土壁塗り、躯体工事が完了し、続いては内装工事です。
建物南側の物販店舗〈朝日屋酒店〉と、
西側のスペース〈kitorasu〉をつくっていきます。

旧八女郡役所、リノベ後の平面レイアウト(2019年6月現在)。

旧八女郡役所、リノベ後の平面レイアウト(2019年6月現在)。

まず、南側店舗部分(朝日屋酒店)に着手しました。
もともとあった内装は解体して躯体だけの状態にします。
100年以上積み重ねられた埃と屋根から降りてきた瓦の残骸が1階に溜まっていて
苦しめられましたが、なんとか片づけが終わりました。

南側店舗部分の基礎コンクリート打設の準備。奥側は土掘りの途中です。

南側店舗部分の基礎コンクリート打設の準備。奥側は土掘りの途中です。

その後、自分たちでスコップと一輪車を使って、
基礎づくりのための穴掘りも行い、生コンを流入し、下地をつくりました。

床は地元産の木材として、天然乾燥の八女杉の床材(厚み3センチの荒材)を、
自分たちで張っていくことにしました。

〈朝日屋酒店〉の杉床張りの作業前の下地。この上に板を張っていきます。

〈朝日屋酒店〉の杉床張りの作業前の下地。この上に板を張っていきます。

朝日屋酒店の杉床張りの作業。ワークショップ形式で行いましたが、スムーズに張れるようになるまで時間がかかりました。

朝日屋酒店の杉床張りの作業。ワークショップ形式で行いましたが、スムーズに張れるようになるまで時間がかかりました。

続いて、西側のスペース、kitorasuの内装改修に入りました。
ここには絵本カフェの〈絵本や・ありが10匹。〉が入居することになりました。
もともと古いまち並みの一角で〈絵本や・ありが10匹。〉を開いていた
伊藤寛美さんに、かつて幼稚園給食をつくっていた経験を生かして
絵本カフェとして移転オープンしていただきました。

元住宅部分を解体して店舗へ。

元住宅部分を解体して店舗へ。

杉板の床張りが終わった〈kitorasu〉。

杉板の床張りが終わった〈kitorasu〉。

梁組を見せつつ、床や壁には杉板を張り、
部分的にボードなどの下地にペンキ塗りすることで予算を抑えました。

床を張るのに四苦八苦しましたが、張り終えたときの杉の香りと、
凛とした空間の雰囲気には感動しました。

朝日屋酒店がオープン! 店内の棚や什器は、地元の家具作家・関内潔さん作。

朝日屋酒店がオープン! 店内の棚や什器は、地元の家具作家・関内潔さん作。

kitorasuには、居心地のよい関内潔さん作の杉の椅子やテーブルが。

kitorasuには、居心地のよい関内潔さん作の杉の椅子やテーブルが。

こうして、朝日屋酒店と、〈絵本や・ありが10匹。〉の移転オープンを
無事に迎えることができました!

kitorasuの客室から厨房方向を見る。右手の棚には〈絵本や・ありが10匹。〉の店主によって厳選された絵本がずらり。

kitorasuの客室から厨房方向を見る。右手の棚には〈絵本や・ありが10匹。〉の店主によって厳選された絵本がずらり。

地域内外の親子連れが訪れる〈絵本や・ありが10匹。〉の看板メニュー「まかないカレー」。

地域内外の親子連れが訪れる〈絵本や・ありが10匹。〉の看板メニュー「まかないカレー」。

〈TROPE HACKS 4.0〉 grafの手がける新たな プロダクトシリーズが、 瀬戸内国際芸術祭2019に登場!

大阪のクリエイティブユニット〈graf(グラフ)〉が
新たなオリジナルプロダクトを手がけています。
名前は〈TROPE〉。
それは“あらかじめ決められた用途や役割を与えられていない”プロダクトなのだとか。

一体、どんなプロダクトなのでしょうか。
広報を担当する斎藤智子さんに聞いてみたところ、次のように答えてくれました。

「生活の知恵に学ぶ、工夫をする楽しさ。その使い方はすべて、
使い手の感覚に委ねられています。
TROPEは、使いこなしながら新しい感覚を育んでゆく道具であり、
“アイデアを引き出す知恵、サバイブする道具をつくる”というのがTROPEの考え方です。
今回は新たに、哲学者、木工家、建築家など異なる
領域で活躍している方々とTROPEの概念を再考する
〈TROPE HACKS 4.0〉として開発中です」

家具、空間、プロダクト、食、アートなど
さまざまなものを手がけてきたgrafですが、
今回のシリーズは、まるでオブジェのよう。
でも、これらもまた彼らの考える“道具”なのです。

dot architects × graf〈石と木〉。第1弾として開催された展示の会場風景。(2019年4月)

dot architects × graf〈石と木〉。第1弾として開催された展示の会場風景。(2019年4月)

展示物

第1弾では、建築ユニット〈dot architects〉と
道具の原点について考えた展示「石と木」を発表。
下の写真は、第2弾として7月に開催された展示「土に還る」の様子。
木工家の川合優さんを迎え、大阪の〈graf studio〉にてスタディの様子や
モックアップを発表しました。
このシリーズの製品化は来春を予定しています。

川合優 × graf〈土に還る〉(2019年7月)

川合優 × graf〈土に還る〉(2019年7月)

展示物2

岐阜県の農家生まれ、山を駆け回り、
親類の経営する工務店で遊んで育ったという川合さん。
2016年にはライフスタイルブランド〈SOMA(そま)〉を設立し、
日本産の木材を使用した商品をデザイン・生産するほか、
椅子づくりワークショップや森を歩くフィールドワークなどを通して、
森や木の魅力を発見できる活動を展開しています。
ブランドの名前は、杣人(山で働く人)や杣仕事 (山での仕事)
などに使われていた「杣 (そま)」という言葉に由来するそう。

SOMA(そま)の作品

同展では、祈るという行為や対象の形状について考察し、
人の思いが込められることで完成するものを模索したのだとか。

また、8月21日(水)〜9月1日(日)は
アーティストのカワイハルナさんを迎え「浮遊」と題し、
物体の重みがありながら浮遊感漂うプロダクトのスタディを展示予定。
期間中はアーティストによるトークイベントも開催されるとのこと。
詳細はgrafの公式サイトをチェックしてみてください。

〈RetRe〉
虫喰いナラのプロダクトで
富山の森を守る尾山製材の挑戦

最果てのまちにある製材所の挑戦

「消滅するかもしれない最果てのまちにある製材屋に、何を取材しに来たの?」と、
地元出身の人に驚かれた。富山県の東端に位置する朝日町の〈尾山製材〉で行われた
〈倉庫参観日〉で、偶然隣り合わせた参加者に言われた言葉だ。
地元に関係がある人だけに自虐的な笑顔で語っていたが、
富山県民にとってさえ「辺境の地」で、
地元の県立高校も近く廃校になる朝日町の状況を考えると、一理ある指摘とも言える。

左が尾山製材の尾山嘉彦さん、右がプロダクトデザイナーの山﨑義樹さん。

左が尾山製材の尾山嘉彦さん、右がプロダクトデザイナーの山﨑義樹さん。

尾山製材の3代目社長、尾山嘉彦さんは、
その朝日町で富山の森が抱える問題に一石を投じようと奮闘している。
尾山さんが、富山在住のプロダクトデザイナーである山﨑義樹さんと立ち上げたブランド
〈RetRe(リツリ)〉と原木解体ショーが行われた倉庫参観日の取り組みを、
今回は紹介したい。

富山の森が直面したカシノナガキクイムシの大打撃

尾山製材の工場。一般の人に向けて倉庫参観日が定期的に開催される。

尾山製材の工場。一般の人に向けて倉庫参観日が定期的に開催される。

「カシノナガキクイムシ」を知っているだろうか。5ミリほどの虫で、羽を持ち、
大勢で飛来してはフェロモンの導きによって健康なナラの木に集中攻撃をしかける。
成虫は喰い荒らした穴に卵を産み付け、卵からふ化した幼虫とともに幹の内部で越冬する。
その不吉な害虫の大群は初夏になると木の外に出て、
風に乗れば1キロ以上という飛行能力を生かし、「行軍」していく。

森林組合に貯木された虫喰いナラの山。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

森林組合に貯木された虫喰いナラの山。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

地元紙によれば、2009年をピークに富山のナラもカシノナガキクイムシに襲われた。
被害が最もひどかった時期に、尾山さんは富山県の砺波にある森林組合の工場で、
虫喰いのナラが大量に貯木され、おがくずとして処理されている光景を目の当たりにした。
虫に喰われたナラは、商品にならないためつぶされるしかない。
その状況を何とかしたいと、尾山さんは山﨑さんとともに、
虫喰い材を利用したプロダクトのブランドRetReを立ち上げた。

虫喰い材は材木屋の目で見ると売り物にならないため、
本来であれば誰も手を出さないという。
どうして尾山さんはそのような木に手を出したのだろうか。

「ナラは堅くてポテンシャルも高いですし、もともと県産材を使って、
先例のない何かに取り組んでみたいという気持ちがありました。
今まで県産材はスギしかないと思っていましたが、
スギでは先行してやっていらっしゃる人がたくさんいます。
会社には製材機も、乾燥機もあって、環境が整っていましたし」

そこで、誰も踏み出していないナラの虫喰い材を使った商品づくりがスタートしたという。
当初の周りからの反応は冷ややかだった。
デザイナーの山﨑さんも、
「尾山さんはドМですし、尾山製材はドМメーカーなんです」と笑う。

尾山さんと出会う前に、山﨑さん自身も虫喰いナラを使った製品を
手がけた経験があるという。その山﨑さんから見ても、
わざわざ虫喰い材を使ったビジネスなど、
普通に考えたらメーカーとしてリスクが高いと語る。

墨流しの模様が出た虫喰いのナラ。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

墨流しの模様が出た虫喰いのナラ。(撮影:山﨑義樹[Designノyamazakiyoshiki])

それでも材料提供(OEM)というカタチで虫喰いナラを使ったiPhoneケースを販売したり、
フローリング材を自社商品として売り出したりと、県産の虫喰いナラの製品化に向けて、
道なき道を尾山さんは歩み始めた。

『いのくまさん』が島根に。 益田・グラントワで 猪熊弦一郎展が開催

猪熊弦一郎 題名不明 1987年丸亀市猪熊弦一郎現代美術館蔵©The MIMOCA Foundation

絵本『いのくまさん』から広がる猪熊弦一郎の軌跡

「世の中に美がわかる人を増やしたい。
そうすることで世の中が平和になると思う。
美がわかる人は人の気持ちがわかる。
人の気持ちがわかる人が増えれば、戦争がなくなる」

『小説新潮』の表紙絵を40年間描いたほか、
三越の包装紙のデザインや上野駅の壁画なども手がけ、
生涯現役の画家として活躍した猪熊弦一郎氏。

これは自身が手がけた丸亀市猪熊弦一郎現代美術館オープン時の
開館スピーチで、猪熊氏が語った言葉です。

美しいものを人一倍愛した彼は、
そこから享受した才能を如何なく発揮し、
生涯にわたりさまざまなスタイルの絵を描きました。

絵本『いのくまさん』(小学館発行)は、
そんな猪熊氏の作品の魅力を、こどもたちにもわかりやすく紹介した本。
詩人の谷川俊太郎氏のシンプルかつ軽妙なタッチの言葉とともに、
猪熊作品の多彩で生命力にあふれた世界が広がります。

現在、この絵本をもとにした展覧会が、
島根県立石見美術館で開催されています。

ビルに思いを馳せて40年。 水戸芸術館 『大竹伸朗 ビル景 1978-2019』

《放棄地帯》2019年(c) Shinro Ohtake, Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo, Photo by Kei Okano

記憶から立ち上がる刹那的な“ビル景”

ふとした何気ない風景に今の自分を重ね合わせる。
その心情をひと括りに“これ”というのは難しいですが、
丁寧に辿っていくと、浮き上がってくる“何か”を
誰もが持っているのではないでしょうか。

現代美術家の大竹伸朗氏は、記憶の断片にあるさまざまなビルを思い起こし、
約40年にも渡り、ビルを描いています。

7月13日(土)より水戸芸術館現代美術ギャラリーで始まった
『大竹伸朗 ビル景 1978-2019』は、1970年代から現在までに制作された大竹氏の
そのような“ビル景”をまとめた展覧会です。

先にも言ったように、“ビル景”は
大竹氏が風景をそのまま描いたものではありません。
香港、ロンドン、東京といった
世界中の都市の湿度や熱、騒音、匂いを無作為につなぎ合わせ、
“ビル”という形を持って描く仮想の風景なのです。

〈ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019〉 グランプリは漆塗りの技法を用いた 石塚源太氏

次世代のアーティストによる、先鋭的なクラフトが集結

現代まで受け継がれてきた工芸文化に敬意を払いつつ、
次世代の才能あるアーティストを見つけ出すことを目的に、
ラグジュアリーレザーブランド・ロエベが立ち上げた
〈ロエベ ファンデーション クラフト プライズ〉。

審査員には、プロダクトデザイナーの深澤直人氏や
プリツカー賞を受賞した建築家で工業デザイナーのパトリシア・ウルキオラ氏
といった世界の第一線で活躍するアーティストらが名を連ね、
年々回を重ねるごとに規模が大きくなっています。

そんな同賞の第3回目の授賞式が、先日6月25日に
赤坂にある草月会館で開催されました。

今回グランプリに輝いたのは、京都市立芸術大学および
ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブアートで学び、
伝統的な漆塗りの技法を用いたアート作品を発表している
日本人アーティストの石塚源太氏。

石塚源太 Surface Tacitility #11 2018

石塚源太 Surface Tacitility #11 2018

作品は、スーパーマーケットで売られているメッシュ袋に入った
みかんのかたちをインスピレーションソースに製作した漆塗りのオブジェ。
デコボコとした形状はそのままに、艶やかで奥行きのあるものとなっています。
漆も、このような現代アートの領域にまで広げられるなんてびっくり。

特別賞にはエディンバラ拠点のアーティスト・ハリー・モーガン氏と
イギリスを拠点にする日本人の高樋一人氏が選ばれました。

授賞式には、〈ロエベ〉のクリエイティブ ディレクターである
ジョナサン・アンダーソン氏をはじめ、
審査員、ファイナリスト、女優の鈴木京香氏らが出席。

現在草月会館では、日本人10名の作品を含む
ファイナリスト29名の作品が展示されており、7月22日まで一般公開中。
ちなみに今回、日本人ファイナリストは過去最多だったのだそう。

日本人作品はもちろん、世界各地に存在する工芸技術を現代の感覚で解釈した
コンテンポラリーなクラフトは、どれもウィットに富んでいて本当にかっこいい。
草月会館に浮かんだフレッシュで力強い才能を、この機会にお見逃しなく。

information

map

Loewe Craft Prize 2019 
ロエベ ファンデーション クラフト プライズ 2019

会期:~2019年7月22日

会場:草月会館 東京都港区赤坂7-2-21

時間:10:00~19:00 、~20:00(金曜)

料金:入場無料

定休日:無休

Web:http://craftprize.loewe.com/ja/home

トークセッション

日時:7月6日 14:00~15:30

登壇:皆川明(minä perhonen代表、デザイナー)、吉泉聡(TAKT PROJECT Inc.代表 、デザイナー)

日時:7月13日 14:00~15:30

登壇:西尾洋一(『Casa Brutus』編集長)、上條昌宏(『AXIS』編集長)

日時:7月20日 14:00~15:30

登壇:石塚源太(本年大賞受賞者)

モデレーター:川上典李子(ジャーナリスト/21_21 DESIGN SIGHT アソシエイトディレクター)

会場:草月会館(談話室)

参加方法:当日先着順

空き家を地域の拠点へリノベーション。
熊野市〈コウノイエ〉プロジェクト

撮影:松村康平

多田正治アトリエ vol.3

前回まで三重県尾鷲市梶賀町の〈梶賀のあぶり場〉を紹介してきましたが、
今回はそれより3年ほど前のお話。
熊野市で学生たちと古民家の改修に挑んだプロジェクトについて紹介します。

桜の名所と黒石の産地、熊野市神川町

尾鷲市の隣の熊野市の山中に、神川町という人口300人ほどの集落があります。
神川町は、谷間を走る神上川(こうのうえがわ)に沿った集落で、
豊かな自然に囲まれています。
旧神上中学校の木造校舎がそのまま残されており、
いまでも当時の面影を知ることができます。

神川町の風景。

神川町の風景。

旧神上中学校。

旧神上中学校。

旧神上中学校のノスタルジックな木造校舎の廊下。

旧神上中学校のノスタルジックな木造校舎の廊下。

校庭や川沿いに桜が植えられており、春になると一帯が桜色に染まる
桜の名所としても知られています。

また神川町は「那智黒石」の日本唯一の産地でもあります。
那智黒石はキメの細かい漆黒の美しい石で、
碁石や硯(すずり)として用いられている石材です。
その歴史は古く、平安時代に硯として用られていた記録もあるほどです。

那智黒石採掘場。(撮影:高見守)

那智黒石採掘場。(撮影:高見守)

熊野の山中にはいくつもの集落がありますが、そこでよく見られるのが、
「石垣」と雨よけの「ガンギ」のある民家です。

石垣の上にガンギ(赤茶色の三角形の部分)のついた民家と小屋が並ぶ。

石垣の上にガンギ(赤茶色の三角形の部分)のついた民家と小屋が並ぶ。

平地が少なく、地質学的に石がたくさん採れる熊野では、
家や耕作地のために多くの石垣が築かれたようです。

いろいろなところで、丸い石を野面積み(自然石を加工せずに積むやり方)にした
石垣をよく見かけます。
また熊野の多雨に対応するため、家の妻側(建物の長い方向に対して直角な側面、
つまり家のシルエットをしている面)に雨を除ける板が取りつけられています。
熊野の大工さんはそれを「ガンギ」と呼んでいます。
東北地方の民家で見かける雪除けの「雁木」とは別物です。

石垣とガンギの風景は、民俗学の今和次郎も著書『日本の民家』に書いています。
昔からあった風景なのでしょう。神川町にも同様の民家がいくつも見られます。

箱根の森にある美術館に1泊2日。 アートなキャンプイベント 〈FOREST MUSEUM 2019〉

アートと自然が共存するポーラ美術館でキャンプ!

今年もまだまだ残暑が続きそうな予感のする9月の第1週目。
森の中にある美術館でキャンプをするという
子ども心がよみがえる、夢のようなイベントが行われます。

木々が鬱蒼と茂る富士箱根伊豆国立公園内に、忽然と存在する〈ポーラ美術館〉。
緑とガラスの調和が美しい館内には、クロード・モネやルノワールなどの印象派をはじめ、
ピカソやカンディンスキーといった
国内外のさまざまな著名アーティストの作品が収蔵されています。

そんな〈ポーラ美術館〉で、自然とともにアートを楽しむ1泊2日の
アウトドアイベント〈FOREST MUSEUM 2019〉が9月7日(土)、8日(日)に開催。

谷中圓朝まつり「幽霊画展」 落語家・三遊亭圓朝の コレクションを特別公開!

伊藤晴雨、池田綾岡、伝・円山応挙などの名作が勢揃い

恐いけれど、ちょっと見てみたい。
人には昔から、そんな心理があるのでしょうか。

江戸末期から明治にかけて活躍し、
「牡丹燈籠」「真景累ケ淵」「死神」などの名作落語を生み出した
落語中興の祖、三遊亭圓朝はあまたの幽霊画を収集していたそうです。

2019年8月1日(木)〜31日(土)、東京・谷中の全生庵にて、
その圓朝のコレクションを特別公開する
谷中圓朝まつり「幽霊画展」が開催されます。

左から、伊藤晴雨『怪談乳房榎図』、池田綾岡『皿屋敷』、鰭崎英朋『蚊帳の前の幽霊』 すべて全生庵所蔵

左から、伊藤晴雨『怪談乳房榎図』、池田綾岡『皿屋敷』、鰭崎英朋『蚊帳の前の幽霊』 すべて全生庵所蔵

幽霊画展 展示室

幽霊画展 展示室

展示されるのは、伝・円山応挙、柴田是真、伊藤晴雨、河鍋暁斎など、
著名な画家が描いた幽霊たち。

圓朝は、怪談噺創作の参考とするために幽霊画を収集していたのだとか。
本物の幽霊画から創作された怪談噺なんて、なかなか恐そうですね!

トップイメージ:伝・円山応挙『幽霊図』〈全生庵〉所蔵