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posted:2019.8.28 from:京都府京都市 genre:アート・デザイン・建築
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
普段は人目に触れることのない二条城 二の丸御殿台所御清所(重要文化財)を舞台に、
日本の現代美術作家たちの作品を集めた展覧会『時を超える:美の基準』が
8月31日(土)から9月3日(火)までの期間に開催されます。
この展覧会は、141の国と地域から博物館の専門家が集う、
日本で初めてのICOM(国際博物館会議)京都大会の開催と
元離宮二条城の世界遺産登録25周年を記念して企画されたもの。
キュレーターの南條史生氏とアーティストの名和晃平氏を
アドバイザーに迎え、「歴史との対話」をテーマに
日本の現代美術シーンを牽引する以下の作家たちの作品が展示されます。
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ガラスで粘菌やバクテリアを表現する青木美歌、
版画や彫刻、水彩、写真と縦横無尽に表現方法を変えながら制作を行う小林且典、
ヨーロッパを舞台に活躍し、
自然の有機的なフォルムを感じさせる彫刻をつくる西川勝人、
本物と見紛う草花を木彫で表現する須田悦弘、
デジタルテクノロジーの力でアートを拡張し続けるチームラボ、
テクノロジーと伝統工芸を融合し新しい表現を生み出すミヤケマイ、
常温で昇華する化合物ナフタリンで象った彫刻を手掛ける宮永愛子、
さまざまな色を幾層にも重ねて完成させる、ミニマルな絵画を発表する向山喜章。
これらの作品のほか、京都の地に縁の深い画家の伊藤若冲〈鶏図押絵貼屏風〉
(高精細複製[レプリカ])と、ボーカル・アンドロイドの初音ミクが融合した
肉筆絵画も出品されるそう。
以下、南條氏と名和氏がこの展覧会に寄せたコメントです。
「情報化時代になり、ニュースが飛び交うようになると、
文化全般にテクノロジーの導入に忙しく、また新規性を追い求める傾向が強まり、
極めて錯綜した状況になっている。芭蕉が「不易流行」*と言ったように、
そうした変化にはそれなりの価値があるが、
一方で、変わらないものにも目を向けるべきではないか。
特に独自の歴史と文化を育んできた日本が今打ち出すべきは、
その普遍的な美学だろう。その視点に立つと、日本の現代美術の中に、
古いと同時に新しく、静かではあるが饒舌で、伝統と対話しつつ
普遍的な美を体現する作品を多々見出すことができる。
今回京都市の配慮で、ICOMのソーシャルイベントの会場である
二条城御台所・御清所を現代の日本美術の展覧会場として使用できる機会を
与えられたことから、この伝統的空間と繊細で豊かな対話を
生み出すことが出来る作品を選定し、日本の美学とは何か、何が新しく、
何が普遍的なのか、古いことと新しいことの価値は何か、といった問いを
テーマとしたいと考えた。このような視点は実は日本だけの問題ではなく、
どの国、何処の文化にとっても喫緊の課題である。
さらに言えば、今後テクノロジーが進化するほどに、
人間とは何かという問に行き着くだろう。
その時に、美と芸術こそが人間が人間にとどまることの条件として
浮上するのではないだろうか。この展覧会の密やかな対話に、
そのような思いを読み取っていただければ幸甚である」(南條氏)
*流行にも普遍的な意味があるといった意味
「本当の『日本らしさ』はわざわざアピールしたり、つくるものではなく、
表現のなかに潜んでいるものだと思います。それは作家が恣意的に表そうとする
のではなく、素材との付き合い方や端部の仕上げ方、空間のつくり方など、
感覚的に選択している部分に現れるのではないでしょうか」(名和氏)
歴史ある空間と対峙した日本現代美術の第一線を走る作家の作品たち。
そこに存在するのは、時代を超えて共鳴する日本の美学です。
過去から現在まで私たち日本人の根底を流れるその普遍的な感性を、
今回展示されるさまざまな作品からぜひ感じ取ってみてください。
information
時を超える:美の基準
会期:2019年8月31日(土)~9月3日(火)
2019年8月31日(土)9:00~17:45
2019年9月1日(日)~3日(火)9:00~16:45
二条城入城時間
2019年8月31日(土)8:00~17:00(閉城 18:00)
2019年9月1日(日)~3日(火)8:00~16:00(閉城 17:00)
会場:世界遺産 元離宮二条城 二の丸御殿台所、御清所
観覧料:無料(ただし二条城への入城料が必要)
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