画像提供:ニュー浴場プロジェクト
わたしの住む岩見沢の美流渡(みると)地区は、もともと炭鉱があった場所だ。
炭鉱で働いた人たちが住んでいた炭鉱住宅がいまでも残っているし、
活況を呈した当時の様子を知る住民もいる。
東京で暮らしていた頃は、炭鉱は過去にあった
どこか遠い出来事のように感じていたのだが、ここに住んでいると、
まちの個性をつくった重要なものであると、強く実感するようになった。
そんななかで、産炭地として全国に知られる夕張で、
独自のプロジェクトを行っているふたりがゲストとなった
アーティストトークに参加した。
8月末、アーティスト・イン・レジデンス事業を行う
〈さっぽろ天神山アートスタジオ〉で、
「アーティストがみた北海道と炭鉱・夕張とはなにか。」をテーマとし、
アーティストの永岡大輔さんと、
写真家でありキュレーターでもある山口一樹さんが、
これまで行ってきた活動について語ってくれた。

イベントの告知画像。左が永岡大輔さん。右が山口一樹さん。
まず活動を語ったのは山口さんだ。
3年半前から夕張に移住し、現在は市の職員として働きつつ、
本を出版したりイベントを企画したりなど多彩な活動を展開している。
山口さんが夕張を初めて訪ねたのは6年前。
当時、新潟大学の学生だった山口さんは、北海道をめぐるなかで
夕張駅で野宿をしようとしたことがあった。
そのとき地元の人が「うちにとめてあげるよ」と言ってくれて、
初めて炭鉱住宅に泊まり、銭湯につかる体験をした。
「激アツのお風呂に近所のみなさんが順々に入っていって、
なんなんだろうこれはと。とてつもないコミュニティの力を感じました」
その後2年間夕張に通い、地域おこし協力隊としてこの地で暮らすこととなった。
児童館のない夕張で、子どもの居場所づくりなどの活動を行いつつ、
同時並行で歴史を掘り起こす取り組みも続けていった。

山口さんは富山県出身。北海道を初めて訪れたのは高校時代。東川町で行われた〈写真甲子園〉というプロジェクトに参加したことがきっかけ。以来、このイベントでボランティアをするようになり、夕張にも足を運んだそう。
山口さんは2冊の本の制作に携わった。
1冊は『ヤマを伝える』。
元炭鉱マンで画家の宮城七郎さんが描いた、炭鉱の労働と暮らしの絵をはじめ、
当時の記憶をたどる写真と解説文で構成されたものだ。
「その時代、その場所を生きた人にしか出せない空気感や感覚、
想いがあると感じました。いま夕張には、みんなが共通して
大事にできるようなものってそんなにないように感じていたので、
共通の財産をつくりたいと思いました」

夕張市清水沢地区を中心として地域活動を行う一般社団法人〈清水沢プロジェクト〉が幹事となって運営されている〈夕張の記憶ミュージアム実行委員会〉によって刊行された冊子『ヤマを伝える』。

当時の状況を知るからこその味わいを感じる宮城さんの絵に、夕張出身の高塚光栄さんが解説文をつけた。また、同じく夕張出身の渡津澄夫さんの写真も載せた。
もう1冊が、今年の3月に刊行した『暮らしと創造』という本だ。
夕張に長く住み、手芸や短歌、絵といった
ものづくりを楽しんできた6名にスポットをあて、
その作品やポートレートを収録したもの。
「夕張に来たときから、財政破たんをしたまちで暮らす人たちの
豊かさとはいったいなんだろうと考えてきました。
ひとりひとりをフィーチャーしていくと、
自分の目の前で大事にしてつくったものの延長線上にこのまちがある。
そんなことを実感して、そこから本が生まれていきました」
このほか山口さんは、9月に地域で戦争体験をした人に話を聞いて、
その記憶と手記を紹介するような展覧会も企画していた。

A4サイズ、オールカラー、168ページ。写真家でもある山口さんが、夕張に住む人々を独自の視点で切り取った写真集。清水沢プロジェクトのホームページで購入可能。