〈東京フォトグラフィックリサーチ〉 東京を語る、可視化する、 受け継ぐアートプロジェクト

アーティストと探る、東京のいまと未来

2020年にオリンピックを迎える東京のまちは、
いま急速に変化しています。
そんな東京を舞台とするアートプロジェクト
〈東京フォトグラフィックリサーチ〉が始まりました。

発起人は国際的に活躍する写真家の小山泰介さんと、キュレーターの山峰潤也さん。
ふたりをはじめアーティスト、デザイナー、研究者などが参加し、
アートを通じて未来へとつながる「たくさんのヴィジョン」を
生み出していくことを目的としています。

プロジェクトの核となるのは、
13組の若手アーティストによるアートワーク。

公式サイトで公開されている写真家、小山泰介さんのプロジェクトページ。小山さんは文化庁新進芸術家海外研修制度によって2014年から2年間ロンドンで活動し、その後アムステルダムを経て、2017年末に帰国。生物学や自然環境について学んだ経験を背景に、実験的なアプローチによって現代の写真表現を探究している。

公式サイトで公開されている写真家、小山泰介さんのプロジェクトページ。小山さんは文化庁新進芸術家海外研修制度によって2014年から2年間ロンドンで活動し、その後アムステルダムを経て、2017年末に帰国。生物学や自然環境について学んだ経験を背景に、実験的なアプローチによって現代の写真表現を探究している。

アーティストたちがさまざまな観点から
変わりゆく東京を見つめて可視化し、アーカイヴしていきます。

参加アーティストは、エマニュエル・ギヨー、
顧 剣亨、小林健太、小山泰介、砂山太一、谷口暁彦、
田村友一郎、築山礁太、永田康祐、細倉真弓、
三野 新 + 網守将平、吉田志穂、渡邉庸平。

作品は2019年〜20年にかけて、
公式サイト上で段階的に発表されます。

2019年7月にプロジェクトの第1弾となる顧剣亨、小山泰介、永田康祐の作品を公式サイト上で発表。写真は永田康祐による作品。

2019年7月にプロジェクトの第1弾となる顧剣亨、小山泰介、永田康祐の作品を公式サイト上で発表。写真は永田康祐による作品。

2020年2月には第2弾として細倉真弓、三野新+網守将平、渡邉庸平の作品を発表。

2020年2月には第2弾として細倉真弓、三野新+網守将平、渡邉庸平の作品を発表。

三野新+網守将平による作品。

三野新+網守将平による作品。

また、このプロジェクトではアーティストとさまざまなジャンルのゲスト、
オーディエンスが交流するためのパブリック・プログラム〈ヴィジョンズ〉も開催。

東京に点在するオルタナティブスペースにて、
サロン、ダイアログ、カンファレンスを行い、
人々が語り合い、ともに考えるクロスボーダーな場を創出します。

『影裏』大友啓史×『もち』及川卓也
岩手を舞台にしたふたつの映画で語る、
ローカルとクラフトムービー

大河ドラマ『龍馬伝』や映画『るろうに剣心』『3月のライオン』などで知られる
大友啓史監督の最新作『影裏(えいり)』が、2月14日に公開となる。
本作は、大友監督の故郷・岩手県盛岡市を舞台にした芥川賞受賞の同名小説が原作で、
オール岩手ロケで撮影された。
一方、コロカル統括プロデューサーの及川卓也も、
故郷・岩手県一関市の食文化をテーマにした
映画『もち』をエグゼクティブプロデューサーとして製作。
これは4月から渋谷ユーロスペースや一関市内で上映される。

ともに高校卒業後に故郷を離れ、
あえて東京から岩手を見続けてきた、いわゆる「関係人口」ともいえるふたり。
岩手への思いや、地方ならではの「地に足をつけた生き方」、
岩手を舞台にした映画に託したメッセージなどを語り合った。

バンカラ(ハイカラに対抗し、あえて粗野で男らしい学生服などを好むスタイル)の伝統が残る高校出身、『POPEYE』『Hot-Dog PRESS』が流行った時代に高校生活をおくるなど、共通点が多いふたりの話は弾む。

バンカラ(ハイカラに対抗し、あえて粗野で男らしい学生服などを好むスタイル)の伝統が残る高校出身、『POPEYE』『Hot-Dog PRESS』が流行った時代に高校生活をおくるなど、共通点が多いふたりの話は弾む。

初任地の秋田で芽生えた、「リアリティ」の表現への思い。

及川卓也(以下、及川) 『影裏』は、主人公の青年、今野(綾野剛)が、
見知らぬ土地で唯一心を許した友、日浅(松田龍平)との出会いと別れを経験し、
その後、姿を消した友の本当の姿を探しながら喪失と向き合い、再生していく物語です。
盛岡が舞台なので、全編を監督の地元である岩手で撮影していますが、
撮影中の故郷はいかがでしたか。

大友啓史(以下、大友) 高校を卒業してからずっと県外で暮らしていたので、
今まで知らなかった盛岡・岩手の魅力をたくさん発見しました。
映画のフレームを通して故郷を再発見していく今回の映画づくりは、
とてもおもしろくて刺激的で、「灯台下暗し」だなあと。

及川 おっしゃるとおりです。外から見て初めて、発見することも多いですよね。

大友 同時に、かつて「イケてない」と思っていたことが、
「イケてる」ということにも気づきました。
僕が東京で学生時代を送っていた頃はちょうどバブル期で、
「文化の中心は東京」というムードがあり、そこで暮らすことが楽しかった。
ですから帰ろうとは思わなかったし、
たまに帰ると、若いから、嫌なところばかりが目についていて……。

今野秋一(綾野剛)は、会社の転勤で移り住んだ岩手・盛岡で、日浅典博(松田龍平)と出会う。慣れない地でただひとり、日浅に心を許していく今野。しかし、次第に今野の知らなかった日浅の顔が見えてくる。(『影裏』)

今野秋一(綾野剛)は、会社の転勤で移り住んだ岩手・盛岡で、日浅典博(松田龍平)と出会う。慣れない地でただひとり、日浅に心を許していく今野。しかし、次第に今野の知らなかった日浅の顔が見えてくる。(『影裏』)

及川 僕も同じです。
バブル期に定着した「お金を稼いで消費するライフスタイル」を謳歌していました。
フリーランスのライター・編集者としてサブカル系の記事や話題を扱い、
その後、雑誌『an・an』の編集部で働いて、とにかく東京での生活が楽しかったですね。

大友 あの頃は、東京自体がひとつのメディアという感覚があり、
地方に住んでいる人は「東京を経由しないと何も発表できない」と感じていました。
それなのに、最初に入社したNHKで赴任したのが秋田県。
東京のような刺激や華やかさがない「地方」赴任、
どうしよう、大丈夫かなあという意識でしたね。

及川 え、そうだったんですか。

大友 当時は秋田新幹線が開通しておらず、
盛岡からローカル線に乗り換えて行ったのですが、窓から見える景色が、
家屋が減ってどんどん寂しくなるにつれ自分の気持ちも寂しくなり、
「ああ、ここで3、4年暮らすのか……」と思いました。
ところが「住めば都」で、地元の特産品や祭り、言葉などにふれ、
そこで暮らす人々の「地に足をつけた生き方」を知りました。
そして、バブルの頃に触れたピカピカなものよりも、
手垢の残っているもの、汗をかいた痕跡、エイジングといった、
人の体温が感じられ、生きている証が見える「リアリティ」に、
何よりも惹かれていったんです。
今の僕が作品のなかで表現する「リアリティ」というものへの執着は、
この頃に芽生えた気がします。

ひとりで映画館に通った高校時代、暗闇の中で観た映画の香りや手触りが忘れられない。こういう映画をつくりたいという思いが、『影裏』の根底にあるような気がする」と大友監督。

ひとりで映画館に通った高校時代、暗闇の中で観た映画の香りや手触りが忘れられない。こういう映画をつくりたいという思いが、『影裏』の根底にあるような気がする」と大友監督。

つくる人が集うまち。
ビルのリノベーションから始まった
美殿町商店街の変化

ミユキデザイン vol.1

こんにちは。〈ミユキデザイン〉の末永三樹です。
私たちは岐阜を拠点に、リノベーションをはじめとした建築の企画・設計デザイン、
商店街でのマーケットなど、まちづくりに関する企画、
シェアアトリエの運営などを行っています。

現在ミユキデザインは4人のメンバーで、岐阜市美殿町(みとのまち)商店街の
老舗家具店のワンフロアを間借りして事務所にしています。
事務所の一角には私がクリエイティブディレクターを務める
〈柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社〉のオフィスも共存しています。
もともとゆかりのないこのエリアを拠点に活動を始めて、まもなく8年になります。

〈ミユキデザイン〉大前貴裕と末永三樹。

〈ミユキデザイン〉大前貴裕と末永三樹。

この商店街には40年以上続いている「講」という月一の寄り合いがあり、
昔からの店の主人らが決まった店の席につき、おいしい酒と世間話を楽しみます。
私たちも、講の席に混ぜてもらうようになり、外を歩くと顔見知りとすれ違い、
いまではこのまちが特別な場所になりました。

私たちは「あるものはいかそう、ないものはつくろう」を理念にしています。
そして建築的な視点を持って
「まちをアップデートし、次世代へ手渡す」
ことを目指して仕事をするようになりました。
独立当初はこんなことになるとは想像もしていませんでしたが……。

この連載では、岐阜のまちなかで動き始めたリノベーションの活動や、
マーケットを通じて商店街に生まれた変化、そして岐阜市周辺自治体との取り組みなど、
設立からの8年間を振り返り、リノベとまちと仕事について考えてみたいと思います。

今回は、私たちの出発点であり、現在も事務所を構える
岐阜市美殿町をテーマにお送りします。

美殿町でのイベント「美殿オープンカフェ」。商店主がギャルソンに扮しイベントを盛り上げる。

美殿町でのイベント「美殿オープンカフェ」。商店主がギャルソンに扮しイベントを盛り上げる。

商店街入門。遊休不動産を活用したい!

きっかけは、夫でありビジネスパートナーの大前貴裕が
2011年から岐阜市の外郭団体〈岐阜市にぎわいまち公社〉から受託した
「岐阜市商店街活性化プロデューサー」でした。
その最大のミッションは、「柳ケ瀬商店街」を活性化すること。

柳ヶ瀬商店街とは、岐阜市の中心市街地にある中部地方有数の繁華街です。
前任は中小企業診断士が担い、テナント誘致などを試みたそうですが、
結果が出ないため、視点を変えて若い建築士にかけてみようとの起用でした。

私たちは「おもしろい建築企画でまちを変えよう!」と、業務をスタートしたものの、
実際は、商店街そのものを知ることや、商店主との信頼関係を築くことから始まり、
そこに建築のニーズはなく、何に手をつけていいのかもわからない状態が
1年くらい続きました。

当時はふたりともサラリーマンで、
公共施設の設計やプロポーザルなどの仕事をしながら
まちのことに手を出している状況でした。

会社の中での時間のマネジメントや意思決定など、不自由を感じるようになり、
いまがそのタイミングだと2012年に独立。
リスクをとって仕事をしたことがなければ、
商売そのものを理解できないという思いも独立を後押ししました。

そんななか、リサーチやイベント実験を進めて可能性を感じたのは、
遊休不動産のリノベーションでした。いま思えば当然ですが、
改装など利活用の提案を持って一方的にオーナーを口説きにまわりましたが、
反応はなく、八方塞がりの気分でした。

打開策を求めて、雑居ビルリノベの先駆者である
〈やながせ倉庫〉オーナーの上田哲司さんに相談したところ、
紹介してもらったのが、美殿町商店街の理事長・鷲見浩一さんでした。
この出会いによって、私たちの活動は
大きなターニングポイントを迎えることになったのです。

岐阜市美殿町商店街。

岐阜市美殿町商店街。

〈冬眠映像祭Vol.1 かいふくのいずみ インディペンデント・アニメーション、 最前線!〉 十和田市現代美術館にて開催

デザイン 最後の手段/イラスト ひらのりょう、ぬQ、最後の手段

ようこそ、かいふくのいずみへ

青森県・十和田のまちが雪に包まれる2020年1月25日(土)〜4月5日(日)に、
十和田市現代美術館にて
〈冬眠映像祭vol.1 かいふくのいずみ インディペンデント・アニメーション、最前線!〉
が開催されます。

いま注目のインディペンデントアニメーション作家、3組の
コラボレーションにより、展示空間が「かいふくのいずみ」に変わる本展。
十和田で行われたリサーチからインスピレーションを得て
共同制作された作品が発表されます。

参加作家は、マンガ『FANTASTIC WORLD』で知られるひらのりょうさん、
チャットモンチー、水曜日のカンパネラらの
ミュージックビデオを手掛けたぬQさん、
太古と今をつなげる深遠な世界を展開する最後の手段。
ゲスト・キュレーターは、アニメーション研究・評論、
各種プロデュースを手がける土居伸彰さんです。

左から、ひらのりょう photo: Takuya Shima/ぬQ

左から、ひらのりょう photo: Takuya Shima/ぬQ

最後の手段

最後の手段

2015年に東京・渋谷で開催されたグループ展
〈パワースポット〉展でもコラボレーションを行った彼ら。
共通するのは、生活に根ざした土着のモチーフや、
レトロさを感じさせる様々な意匠を用いながら、
そのなかに現代的なスケール観を超えたなにものかを宿らせ、
日常的な知覚のなかに、未来や妖怪(もしくはUFO)、
幽霊や太古といった異世界を錯綜させ、
最終的には観客の顔をほころばせ、身体を喜ばせるということ。
それでは、今回の参加作家をご紹介していきましょう。

ひらのりょう『FANTASTIC WORLD』(C)ひらのりょう/リイド社/FOGHORN ※参考画像

ひらのりょう『FANTASTIC WORLD』(C)ひらのりょう/リイド社/FOGHORN ※参考画像

ひらのりょうさんは、文化人類学やフォークロアからサブカルチャーまで、
自らの貪欲な触覚の導くままにモチーフを定め
作品化を続ける短編アニメーション作家/漫画家。
グランギニョル未来、ロロ、山本卓々作品など、
演劇関連のビジュアルも多数手がけています。
文化庁メディア芸術祭エンタテインメント部門新人賞を獲得した
ミュージックビデオ『Hietsuki-Bushi』(with Omodaka)や
学生CGコンテスト・グランプリに選ばれた
短編アニメーション『ホリデイ』は必見です。

ひらのりょう『パラダイス』(C)ひらのりょう/FOGHORN ※参考画像

ひらのりょう『パラダイス』(C)ひらのりょう/FOGHORN ※参考画像

ひらのさんは本展の開催にあたり次のように語っています。

「最も尊敬し信頼する作家、ぬQ、最後の手段、と共に
『かいふくのいずみ』なるものをつくることとなりました。
世にも美しい混沌がこんこんと湧きあがることでしょう!!
ようこそ かいふくのいずみへ」(ひらのさん)

ヤノベケンジ作品を見に行こう 世界を旅する、シップス・キャットとは

『黒漆舟守祝猫』(2019) (C) Kenji Yanobe / Photo: Nobutada Omote

ヤノベケンジの「船乗り猫」が紡ぐストーリー

大航海時代、船乗りたちは猫とともに
旅していたという話をご存じでしょうか?
ネズミを捕らえるハンターとして船に乗せられた猫たちは、
船員たちを疫病から守り、心を癒す友となりました。
また、かつて古代エジプトで繁栄した猫たちは
寄港する先々で降り立ち、世界中に伝播したといわれています。

今日ご紹介するのは、そんな「船乗り猫」をモチーフにした
彫刻作品『シップス・キャット(SHIP'S CAT)』。
アーティストのヤノベケンジさんが2017年から制作を続けている作品シリーズです。
こちらは、最新作の『黒漆舟守祝猫』(くろうるしふなもりいわいねこ)。

『黒漆舟守祝猫』(2019) (C) Kenji Yanobe Photo: Nobutada Omote

『黒漆舟守祝猫』(2019) (C) Kenji Yanobe Photo: Nobutada Omote

これは、ヤノベさんと漆職人の出会いから生まれたコラボレーション作品。
ヤノベさんが制作した猫彫刻の上につややかな黒漆が塗られ、
宝船や鯛など海にまつわるさまざまな縁起モチーフが
金とプラチナによる蒔絵とアワビの螺鈿で施されています。

『黒漆舟守祝猫』(2019) (C) Kenji Yanobe / Photo: Nobutada Omote

『黒漆舟守祝猫』(2019) (C) Kenji Yanobe / Photo: Nobutada Omote

ヤノベさんも漆のワークショップに参加して技法を学び、
職人さんと相談しながら、半年間かけてつくられました。

『黒漆舟守祝猫』(2019) (C) Kenji Yanobe / Photo: Nobutada Omote

『黒漆舟守祝猫』(2019) (C) Kenji Yanobe / Photo: Nobutada Omote

この作品はすでにコレクターの方の手にわたってしまったそうです。
ヤノベさんは次のように語ってくれました。

「太陽、宝船、千鳥、鯛など、幸運を呼ぶモチーフを施し、
この猫を手にした方が幸せになるようにという願いを込めて制作した作品です。
人の手を渡っていくことで、持ち主とのさまざまなストーリーを宿らせながら
猫が未来へと旅をしていくのも面白いかなと思っているんです」

もともと『シップス・キャット』は、全長3〜4メートルにもわたる作品シリーズ。
このシリーズが生まれたきっかけから、これまでの作品もご紹介していきましょう。

ヤノベケンジ『シップス・キャット』は全国に

このシリーズが生まれたのは、いまや鎌倉から博多まで、
日本各地にあるコミュニティホステル〈WeBase〉からの依頼がきっかけでした。
ヤノベさんは博多で最初にオープンした〈WeBase〉の建築設計の段階から関わり、
「その土地土地のパブリックアートになるような作品をつくってほしい」
という依頼を受けたのだそうです。
そこでヤノベさんが注目したのが、博多が日本最古の港といわれ、
船旅の拠点であったということ。
そこから世界中を旅する人たちを見守るパートナーとして想起させられたのが、
大航海時代に船乗りたちと旅をしていた猫という存在。

『SHIP'S CAT (Harbor)』(2017)大阪南港エリアにて (C) Kenji Yanobe / Photo: KENJI YANOBE Archive Project

『SHIP'S CAT (Harbor)』(2017)大阪南港エリアにて (C) Kenji Yanobe / Photo: KENJI YANOBE Archive Project

さらに、日本では幸福を呼ぶ「招き猫」が普及していたり、
古代エジプトには猫の頭を持つ「バステト」という女神がいたりと、
守り神のようにも扱われてきたことから、
「旅の守り神」というコンセプトを考案。
そうして誕生したのが、真っ白な『SHIP'S CAT』でした。
白い猫を見たら幸運が訪れるという言い伝えもありますね。

『SHIP'S CAT』(2017)WeBase 博多(福岡)(C) Kenji Yanobe / Photo:WeBase 博多

『SHIP'S CAT』(2017)WeBase 博多(福岡)(C) Kenji Yanobe / Photo:WeBase 博多

猫は建物に収まることなく、今にもまちへ飛び出さんばかり。
そこには「まちへ出よ」というメッセージと、
旅の安全や人生の出会いを導く守り神となり、
若者たちの旅をサポートしたいという思いが込められています。

その後もヤノベさんは、京都や鎌倉や高松など、
その土地土地に合わせた『シップス・キャット』をつくり出してきました。

『SHIP'S CAT (Totem)』(2018)WeBase 京都(京都)和紙作家とのコラボレーションによる作品。 (C) Kenji Yanobe and Eriko Horiki

『SHIP'S CAT (Totem)』(2018)WeBase 京都(京都)和紙作家とのコラボレーションによる作品。 (C) Kenji Yanobe and Eriko Horiki

こちらは、〈WeBase 広島〉にある『SHIP'S CAT (Fortune)』。
天井から現れた猫は、海中に見立てたホステルのラウンジをのぞき込み、
なかの様子をうかがっているようです。

『SHIP'S CAT (Fortune)』(2019)WeBase 広島(広島)(C) Kenji Yanobe / Photo: KENJI YANOBE Archive Project

『SHIP'S CAT (Fortune)』(2019)WeBase 広島(広島)(C) Kenji Yanobe / Photo: KENJI YANOBE Archive Project

大阪出身のヤノベさんが初めて広島を訪れたのは、修学旅行のとき。
そのときに見た厳島神社の夢のような記憶から、
海の中にある竜宮城のような空間を想起させました。
部屋の中央に設えられたテーブルは、船の甲板をイメージしたもの。
そこには、ここに集う世界中の人々に、お腹一杯食べて飲んで、
楽しい時を過ごしながら、さまざまな出会いや経験といった旅の宝を
たくさん持ち帰ってほしいという願いが込められています。

『SHIP'S CAT (Fortune)』(2019)WeBase 広島(広島)(C) Kenji Yanobe / Photo: KENJI YANOBE Archive Project

『SHIP'S CAT (Fortune)』(2019)WeBase 広島(広島)(C) Kenji Yanobe / Photo: KENJI YANOBE Archive Project

壁には、牡蠣、もみじ饅頭、お好み焼き、厳島神社、千鳥などの広島名物や名所が
絵巻物のように描かれています。
それは、広島の旅を豊かに広げてくれる、船乗り猫の冒険物語。
「それぞれのまちに合った物語を作品に落とし込んでいるんです」と、ヤノベさん。

『小さなデザイン 駒形克己展』から
小さな出版活動の可能性を考える

アメリカ時代から絵本づくりまで。40年の足跡をたどる

造本作家でありグラフィックデザイナーである駒形克己さんは、
わたしの本づくりの指針となる存在だ。
駒形さんはニューヨークでデザイナーとして活躍し、
帰国した後に〈ワンストローク〉という会社を立ち上げ、
以来、独自の本づくりを行ってきた。

15年ほど前に取材をさせていただいたのがご縁で、
その後、何度かお目にかかる機会があり、
駒形さんの本づくりの姿勢に刺激を受けたことが、
自分なりの出版活動を行う始まりとなった。

そんな駒形さんのこれまでの足跡を紹介する『小さなデザイン 駒形克己展』が、
11月23日から東京の板橋区立美術館で開催されている。
開催予定を知ってから、わたしは展覧会を心待ちにした。
これまで駒形さんの活動に断片的に触れる機会があったものの、
表現がどのように展開していったのかを全体を通じて見たことはなかったからだ。

2019年6月、大規模改修を終えてリニューアルオープンした板橋区立美術館が会場となった。

2019年6月、大規模改修を終えてリニューアルオープンした板橋区立美術館が会場となった。

展覧会でまず注目したのはニューヨーク時代のデザインの数々だ。
駒形さんは、日本デザインセンターに所属していたグラフィックデザイナーの
永井一正さんのもとで3年間アシスタントを務めたあとに渡米。
ロスで作品制作を行い、ニューヨークへと渡り、
アメリカ3大ネットワークのひとつCBSで
デザイナーとしてのキャリアをスタートさせた。

CBSの採用は狭き門だったが、駒形さんはこのときある作戦を立てたという。
これまで、ニューヨークでさまざまな企業に出向き、
自分の作品を収めたポートフォリオを秘書に預けてきたが、
なかなか面接にこぎ着けることができなかった。
そこで、これまでつくってきた大判ファイルのポートフォリオではなく、
あえて小さなスライド集を用意するというアイデアを思いついたそうだ。

「CBSに電話をすると、いつものように
ポートフォリオを置きに来てくださいと言われたのですが、
自分のポートフォリオは小さ過ぎてなくされると困るからと伝えると、
なんと直接ディレクターに見てもらえることになったのです」(展覧会図録より)

そこで駒形さんは、自分の作品を撮影したスライド集を
小さなパッケージに詰めてプレゼンテーションに臨んだそうだ。
面接したディレクターは駒形さんの作品をとても気に入り、採用となったという。

ロス時代に制作したコラージュ作品。原画は失われてしまったそうだが、残っていたスライドから作品を再現した。

ロス時代に制作したコラージュ作品。原画は失われてしまったそうだが、残っていたスライドから作品を再現した。

CBSでの面接に持参したスライド集。小さなスライドに黒い厚紙でフレームをつけてある。

CBSでの面接に持参したスライド集。小さなスライドに黒い厚紙でフレームをつけてある。

このエピソードは、駒形さんがキャリアをスタートさせたときから、
既存の常識にとらわれない自分なりの視点を持っていたことをうかがわせる。

その視点は絵本づくりを始めてからも変わることなく、
通常の絵本の形に留まらないカードタイプのものや、
さまざまな方向に折ってたたまれたものなどがあったり、
科学や自然の事象をシンプルな言葉と形で伝えるものがあったりなど、
数え上げれば切りがないほどだ。

ファッションブランド〈ズッカ〉のロゴは、駒形さんが帰国してからの仕事。案内状やタグなどのデザインも手がけている。

ファッションブランド〈ズッカ〉のロゴは、駒形さんが帰国してからの仕事。案内状やタグなどのデザインも手がけている。

〈OTOYADO IKUHA〉と
〈しづやKYOTO〉。京都の古い建物を
リノベーションしたゲストハウス

多田正治アトリエ vol.8

日本にやってくる外国人観光客は年々増加しています。
日本政府観光局の調べでは、2018年の1年間で3000万人以上の観光客が訪れ、
その数は5年前の調査の実に3倍、急激な増加だと言えます。
訪日する外国人の目的地も多様化し、定番の観光地の人気はもちろん、
日本人が当たり前に思っていた風景が、外国人の目によって
新たな観光資源として発見されるケースも少なくありません。

撮影:松村康平

撮影:松村康平

そんなインバウンドを背景として、京都をはじめ、
日本各地で新しい宿泊施設が建設されています。
巨大な資本によって新築されるリッチなホテルもあれば、
個人が限られた資本でリノベーションして、ゲストハウスとして活用する例もあります。

大資本のホテルと個人経営のゲストハウス、旅の目的に応じて
随時選ぶことができれば、選択の幅が増え、楽しみも多いはずです。

前回は京都の町家をゲストハウスへとリノベーションする事例をご紹介しました。
最終話となる今回は、町家ではない建物をゲストハウスへとリノベーションした、
〈OTOYADO IKUHA〉と〈しづやKYOTO〉のふたつの事例をご紹介します。

どちらも個人経営のゲストハウス。個人ならではの愛情や情熱、こだわりが、
ある意味トンがったコンセプトやサービス、空間として結晶化した、
ふたつの宿の物語です。

すべてのミュージックラバーのためのゲストハウス
〈OTOYADO IKUHA〉

京都市の西部、国宝第1号の弥勒菩薩を所蔵するお寺「広隆寺」から
南に歩いて20分ほど。ゲストハウス〈OTOYADO IKUHA〉を
リノベーションでつくりました。

音楽業界に身を置く宮一敬さんと濱崎一樹さんが運営するゲストハウス。
京都で音楽スタジオを経営し、さらに音楽イベントの企画・運営をしたり、
FMラジオの番組も担当したりと、精力的に京都の音楽カルチャーを
牽引するおふたりです。

ミュージシャンがツアーで各地を回るときに、京都には、
まとまった人数が泊まれる宿が少なく、宿を確保するのが難しいそうで、
ミュージシャンたちは京都を敬遠して、大阪や神戸、滋賀でライブをするそうです。
そんな現状に一石を投じるべく、ツアーを回る音楽関係者はもちろん、
すべてのミュージックラバーのための、音楽の図書館のような
ゲストハウスをつくろうと立ち上がりました。

OTOYADO IKUHAのビフォー。

OTOYADO IKUHAのビフォー。

リノベーションする建物は、濱崎さんの元実家。
極端に細長い敷地に建つ3階建ての木造建築で、
もともとは、1階が濱崎さんのお父さんが腕を振るっていた割烹〈育波〉、
2~3階に濱崎さん一家が住んでいました。
その後、お父さんは店を閉め、濱崎一家は引っ越し、
借家となっていた建物をゲストハウスにすることになりました。

日本初の〈アースシップ〉!
廃タイヤ、空き缶、空き瓶でできた
“地球をゆりかごにしている家”

日本初の〈アースシップ〉住宅が完成!

徳島県と香川県の県境に近い、美馬ICから山側へと車を走らせる。
山肌がぐんぐん迫るなか、山道を走り続けること20分。
やがて目前に広がるのは、稜線と空だけ……。標高600メートル。
四国山脈の美しい山あいに2019年8月、日本初であり、アジアでも初となる
“循環型”オフグリッド住宅〈アースシップ〉が完成した。

この家は、2020年の春、ゲストハウスとしてオープンする予定で、
それまでの間、施主の倉科智子さんがこの家で暮らしている。
倉科さんは2015年に、神奈川県からここ徳島県美馬市に移住し、
“妄想”でしかなかったアースシップの建設を実現した。

「快適でオシャレ」と「地球に負荷をかけない」は両立する

「どうなっているの?」「見たい!」という声も多く、
ここ、日本で唯一のアースシップでは、見学ツアーも受け付けている。

〈アースシップ〉とは、アメリカのニューメキシコ州タオスに拠点を置く建築家、
マイケル・レイノルズ氏が1970年代からアメリカを中心に建て始めた住宅スタイル。
トライアル&エラーを繰り返しながら独自の工法を確立し、
〈アースシップ・バイオテクチャー社〉を設立、
今では世界中でおよそ3000棟が建設されている。

〈アースシップ〉の特徴をまとめると、
【特長その1】太陽光や風力などの自然エネルギーで電気を自給自足する(オフグリッド)。
【特長その2】生活用水は雨水でまかなう。
【特長その3】おもな建築資材がいわゆるゴミ。廃タイヤや空き缶、空き瓶を使う。
【特長その4】デザイン性に富み、美しい。

これらを兼ね備えた、ほかに類を見ない家なのだ。

木の板を並べたアプローチを進み、その姿が現れると、まるでおとぎ話の世界に迷いこんだような錯覚に陥る。一方で、裏山と調和し、ずっとそこにあったかのような佇まい。

木の板を並べたアプローチを進み、その姿が現れると、まるでおとぎ話の世界に迷いこんだような錯覚に陥る。一方で、裏山と調和し、ずっとそこにあったかのような佇まい。

自然エネルギーが循環している仕組みから紹介する。
まずは水。飲料水・生活用水は雨水。屋根で集水した雨水を貯水槽にため、
何度もろ過して塩素を加えたのち、台所やお風呂、洗面所などで使用する。
台所以外の生活排水は室内に設けられた菜園の根元を通るように設計され、
排水に含まれる養分を吸収して野菜や果物などの植物を育てている。
そして最後は、水洗トイレの水として使われる。

家の裏側に回ると、円墳のような屋根がふたつ。雨水を受ける堤を設け、底に敷き詰められた砂利によってろ過された雨水が地中に埋められた貯水槽に流れ込むようになっている。

家の裏側に回ると、円墳のような屋根がふたつ。雨水を受ける堤を設け、底に敷き詰められた砂利によってろ過された雨水が地中に埋められた貯水槽に流れ込むようになっている。

冷蔵庫も洗濯機も完備。都会での暮らしと変わらない快適性を維持している。

冷蔵庫も洗濯機も完備。都会での暮らしと変わらない快適性を維持している。

〈清津峡渓谷トンネル〉 日本三大峡谷の名勝地が インスタ映えの聖地になるまで

[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

水面に反転した峡谷。その美しい風景を見るために、
そしてその風景の一部になってポーズをとり、写真を撮影するために。
いま、新潟県十日町市の山奥にある〈清津峡渓谷トンネル〉には
連日続々と人が訪れています。

SNSなどでこの光景を目にしたことがある人も多いと思いますが、
Instagramでハッシュタグ検索してみると「清津峡」で投稿された写真は2万件を超え、
インスタ映えするフォトスポットとして非常に人気が高いスポットです。

リニューアル前年の2017年に年間5万人だった来場者数は、
2018年に18万人へと大きく飛躍。2019年のお盆には、
1日の来場者数が過去最高となる5000人を突破しました。
なぜこれほどの人気スポットになったのでしょう?

水鏡のアイデアで大人気の撮影スポットに

そのきっかけは、越後妻有で2000年から3年に1度開催されている
世界最大級の国際芸術祭〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ〉
(以下、大地の芸術祭)。清津峡渓谷トンネルは、
この芸術祭の作品のひとつとしてリニューアルされ、来場者数が激増しました。

もともとは、日本三大峡谷にも数えられる絶景「清津峡」を目にしようと、
全国から訪れる観光客のためにつくられた清津峡渓谷トンネル。
全長750メートルのトンネル内には、当時から3か所の見晴台と
終点のパノラマステーションが設けられています。

そう、トンネル自体は20年以上前から同じ場所にあり、
基本的な構造はほぼ変わっていません。

大きく変わったのは、現在フォトスポットとなっている終点のパノラマステーション。
リニューアル前は、清津峡の歴史を学べる資料館として開放されていましたが、
2018年の大地の芸術祭に合わせて、中国出身の建築家であるマ・ヤンソンと、
彼によって設立された建築事務所〈MADアーキテクツ〉が
『Tunnel of Light』というタイトルのアートへと昇華させたのです。

床一面に沢水を張り、壁面にステンレス板を貼ることで、
外の景色が水に反転して映る現在の姿へ。
落石から身を守るためにつくられたトンネルを、
人々にとって“ツール”から“目的”へと生まれ変わらせた、
発明と言えるほどの画期的なアイデアだったのです。

終点の「ライトケーブ(光の洞窟)」。この日は風の影響で水面が波立っているが、普段はもっとくっきりと景色と人が反転して映る。水位が低い右端から壁を伝うように進んでいく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

終点の「ライトケーブ(光の洞窟)」。この日は風の影響で水面が波立っているが、普段はもっとくっきりと景色と人が反転して映る。水位が低い右端から壁を伝うように進んでいく。[tunnel of Light]Ma Yansong / MAD Architects(大地の芸術祭)

「風景印」とは? どうやったらもらえるの? 日本全国のご当地スタンプが面白い!

ご近所にもあるかも? 個性あふれる風景印

郵便局に風景印(ふうけいいん)という消印があるのをご存知ですか?

消印といえば、あの切手の隅に押される、局名と年月日が記された判子。
風景印には、さらにその地域の名所やゆかりのある存在、特産物などが描かれているんです。

そんなのあったっけ、と思った方もいらっしゃるかもしれません。
じつは風景印は、ポストに投函するだけでは押されず、
郵便局の窓口で依頼する必要がある消印なのです。

現在は全国の半数近くの郵便局に配備されているとのこと。
これを利用しないなんて、もったいないと思いませんか?

風景印には全国さまざまなデザインが

青森県・三戸郵便局 意匠図案:「写生するねこ」馬場のぼる作『11ぴきのねことぶた』から。

青森県・三戸郵便局 意匠図案:「写生するねこ」馬場のぼる作『11ぴきのねことぶた』から。

こちらは、青森県三戸郡三戸町にある「三戸郵便局」の風景印。
ご存知、馬場のぼるさんの絵本「11ぴきのねこ」シリーズに
登場する猫が描かれています。なんともかわいらしい!

三戸町は、馬場のぼるさんのふるさと。
地元の商店街や三戸町では、“11ぴきのねこのまち”として、
まちづくりに取り組んでいるのだとか。
町内には記念館〈ほのぼの館 馬場のぼるの部屋〉があり、
商店街や郵便局でも、猫の絵や像と出会うことができます。

こちらは、今年話題になったラグビーの選手が描かれた風景印。

大阪府・東大阪花園郵便局 意匠図案:東大阪市花園ラグビー場、ラグビー選手、桜の花。

大阪府・東大阪花園郵便局 意匠図案:東大阪市花園ラグビー場、ラグビー選手、桜の花。

生駒山の麓にある東大阪市花園ラグビー場を背景に、
地名「花園」のいわれである桜の花と
聖地花園で激闘を繰り広げる選手たちが描れています。
大阪府東大阪市にある東大阪花園郵便局で押してもらえます。

民芸品を風景印にしている郵便局もあります。
長野県下水内郡栄村にある平滝郵便局の風景印には、「猫つぐら」が。

長野県・平滝郵便局 意匠図案:苗場山、野々海池、ブナ林、日本最高積雪量の標柱、猫つぐら 図案作成者名:小林 豊(平滝郵便局 局長)。

長野県・平滝郵便局 意匠図案:苗場山、野々海池、ブナ林、日本最高積雪量の標柱、猫つぐら 図案作成者名:小林 豊(平滝郵便局 局長)。

縁起のいい絵を添えるなら、愛知県名古屋市北区にある
名古屋福徳郵便局の風景印はいかがでしょう?

愛知県・名古屋福徳郵便局 意匠図案:丸型ポスト、七福神。

愛知県・名古屋福徳郵便局 意匠図案:丸型ポスト、七福神。

七福神をのせた、縁起の良いポストが描かれています。
なんとこの郵便局の前にあるポストには、
本当に常滑焼でつくられた七福神があしらわれているそう。
「福徳郵便局」という名前も縁起がいいですね。

特撮映像作品のヒーローを描いたものもあります。
こちらは何ともインパクトある「ウルトラマン」の風景印。

福島県・須賀川郵便局 意匠図案:ウルトラマン、牡丹 図案作成者名:株式会社円谷プロダクション(C)円谷プロ

福島県・須賀川郵便局 意匠図案:ウルトラマン、牡丹 図案作成者名:株式会社円谷プロダクション(C)円谷プロ

円谷プロダクションの創設者、円谷英二監督の出身地である須賀川市が、
ウルトラマンの故郷である「M78星雲 光の国」と姉妹都市になったことを記念して、
「ウルトラマン」と須賀川市の花「牡丹」を描いています。

音楽家・蓮沼執太の旅コラム
「現代まで使用されている
江戸時代のキネティックアート」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。

第4回は、音楽家の蓮沼執太さんが
香川県の〈金毘羅山〉を訪れた話。
四国駆け足旅の一貫として登った金毘羅山ですが
現地で知った歌舞伎舞台の仕組みには、とても驚いたようです。

「海」と「山」を意識させる金毘羅山

去年の冬、香川県西部に位置する琴平山、通称〈金毘羅山〉へ行ってきました。

この旅ではまず、新幹線で東京駅から岡山駅へ向かい、
そこからはレンタカーで、四国を駆け足で回ろうという2泊3日の計画です。
旅の目的は、
有名無名を問わず四国のモダニズム建築を観に行くこと、
予約した〈イサム・ノグチ庭園美術館〉への訪問、
気になっていた陶器を買いに窯元を訪れる、
さまざまな種類の温泉に入る
など、リサーチと楽しみを詰め込んだ、わりと“旅”の定番のようなものでした。

今振り返ると、四国周辺をレンタカーで3日間、
倉敷、尾道、道後、琴平、丸亀、鳴門、高松と回って、
再び岡山に戻ってくるルートは
かなりかっ飛ばすような、勢いある道中のようにも思えます。

この日は、晴れ間にプカプカと白い雲が浮かぶ天気の良い日。
車を走らせていると、
丸みを帯びたみどり色とつち色の台形が、地面とくっついた山が見えてきました。
これが琴平山。この辺りの山はひとつひとつが独立していて、
山脈のような連なりを感じさせない、まさに「山」が存在している印象でした。

町家を現代的にリノベーション。
京都の3つのゲストハウス

多田正治アトリエvol.7

ぼくが事務所を構え、活動している京都には、町家がたくさんあります。
前回ご紹介したぼくたちの事務所〈西大路のアトリエ〉に続き、
今回は町家のリノベーション事例として、3つのゲストハウスについてご紹介します。

失われつつある京町家

「町家」の定義は、実はとても曖昧です。
例えば、京都市による町家の定義を簡単に説明すると
「1950年以前に建てられた建築で、うなぎの寝床と言われる奥深い敷地に、
伝統的な軸組工法(*)で建てられた木造建築」とされています。

1950年(昭和25年)は日本に建築基準法ができた年。
しかし1950年以降に建てられているものでも、町家と呼べそうなものがあり、
行政上の年代の定義はさておき、実際の文化的な意味での町家は
もう少し幅広いものだと思います。

*軸組工法:日本で古くから発達してきた伝統工法を簡略化・発展させた構法。
主に柱や梁といった軸組で支える、設計自由度が比較的高めの工法。

京町家の古い様式。2階部分の開口部が虫籠窓(漆喰や土壁で塗り回された縦の格子)のスタイルになっている。

京町家の古い様式。2階部分の開口部が虫籠窓(漆喰や土壁で塗り回された縦の格子)のスタイルになっている。

伝建地区(伝統的建造物群保存地区)の町家だが、実は比較的新しい様式で、2階建てになっている。

伝建地区(伝統的建造物群保存地区)の町家だが、実は比較的新しい様式で、2階建てになっている。

町家の間取りの例。

町家の間取りの例。

京都市が2016年に町家の数を調査したところ、
約4万軒の町家が確認されたそうですが、実は1日2軒、
年間800軒近くというペースで町家が解体されていると言われています。
そんな状況に行政は危機感を抱いているようですし、
失われつつある町家に注目が集まっているように思います。

京町家をゲストハウスへ。
「古い」と「新しい」が分かれて見えるリノベーション

「町家を改修してゲストハウスにしたい」
そんな相談がここ数年で増えました。

町家といってもさまざまで、
文化財級の町家(仕事として関わることは皆無ですが……)から、
丁寧に手をかけてつくられている町家から、
これって町家と呼べるのかな? といったものまで、いろいろです。
そしてそのほとんどが、建てられたままではなく、増築をしたり、設備を更新したり、
時々に応じて使いやすいように、上書きされたものがほとんどです。

町家を改修するときは、できるだけオリジナルに戻すやり方や、
宿泊施設(商業施設)として「日本らしさ」
「京都らしさ」を演出する改修方法もあります。

一方で、ぼくたちが改修に携わるときは、オリジナルや
「らしさ」の改修ではない方法をとることがほとんどです。
町家の伝統的な部分はもちろん、そこで営まれた生活に敬意を払ったうえで、
ぼくたちの時代としての改修をしようと心がけています。
そのため、ぼくたちの行う改修は、古い部分と新しい部分が
しっかりと分かれて見えるようになっています。

今回ご紹介する3つのゲストハウスは、伝統的な町家をそれぞれ異なる手法を用いて、
現代の使い方や考え方に合わせてリノベーションしたものです。

『しんじゅのこ』 〈KIGI〉渡邉良重が新作絵本を発表! 本物のびわ湖真珠を封入した限定版も

びわ湖真珠と出会って生まれた、時間の尊さを伝えるストーリー

〈KIGI〉のアートディレクターであり、
名作絵本『ブローチ』の作者でもある渡邉良重さんが
小説家の福永信さんとともに新作絵本『しんじゅのこ』を手がけました。

「真珠は、生きている」

そんなメッセージをたずさえたこの一冊は、
渡邉さんと「びわ湖真珠」の出会いから生まれました。

『しんじゅのこ』絵・ブックデザイン:渡邉良重 言葉:福永信 定価:本体1800円(税抜)ISBN:978-4-89815-512-7

『しんじゅのこ』絵・ブックデザイン:渡邉良重 言葉:福永信 定価:本体1800円(税抜)ISBN:978-4-89815-512-7

『しんじゅのこ』

シンプルで優しい絵、くりかえされる「問い」と
「答え」の心地よいリズムにのせて、時間の尊さを伝えます。
また絵本には解説冊子「びわ湖真珠ができるまで」もセットに。
さらに今回は、絵本と、本物の真珠ひとつぶを
パッケージした限定版も発売されます。
箔押しのオリジナルケースは、断面まで白さにこだわった上品な輝き。

『しんじゅのこ(限定版)』絵・デザイン:渡邉良重 言葉:福永信 定価:本体3800円(税抜)ISBN:978-4-89815-513-4

『しんじゅのこ(限定版)』絵・デザイン:渡邉良重 言葉:福永信 定価:本体3800円(税抜)ISBN:978-4-89815-513-4

『しんじゅのこ(限定版)』

2019年11月28日(木)より、この絵本の発売を記念し、
東京・白金のOFS galleryにて、刊行記念展を開催。
「しんじゅのこ」の紹介に加え、
これまでに渡邉さんが手がけた絵本の原画が展示されます。

「肩書きが“デザイナー”ではない人 にこそ読んでほしい」 〈澁谷デザイン事務所〉の 10年をふり返る 『秋田デ、~秋田で、 デザインするということ~』

澁谷さんが教えてくれた「秋田で、デザインするということ」

こちらまで顔がくしゃくしゃになってしまうほどの笑顔で迎えてくれたのは、
書籍『秋田デ、~秋田で、デザインをするということ~』を出版した、
澁谷和之さん。

お父様を亡くした2009年から、「東京で、デザインすること」を辞め、
生まれ故郷の秋田県美郷町で〈澁谷デザイン事務所〉を営んでいます。

書籍が先行販売された連動企画展の会場で、手がけたデザインへの思いを、ひとつひとつ丁寧に教えてくれた澁谷さん。

書籍が先行販売された連動企画展の会場で、手がけたデザインへの思いを、ひとつひとつ丁寧に教えてくれた澁谷さん。

独立してから10年、パッケージやロゴマークをデザインする
「いわゆるデザイン」だけではないデザインに、
秋田という地で向き合い、走り続けてきました。

「デザイナーってなんだろうって考えるんです。
絵がうまいとか、パソコンが得意とかそういうことではなくて。
デザインは特定の人ではなく、みんなが持つべき思考だと思っているので」

「この本は、肩書きが“デザイナー”ではない人にこそ読んでほしい1冊」
と話す澁谷さんに、その思いをうかがいました。

かっこつけない、本当のデザイン

ページをめくって目に飛び込んでくるのは、
いわゆるデザインされた商品ばかりではなく、人、人、人。
それも皆、「いい顔」をしています。

秋田市のコーヒー店〈08COFFEE〉との物語

秋田市のコーヒー店〈08COFFEE〉との物語

書籍には、依頼されたロゴマークを「つくらない」ところから始まる、
コーヒー屋さんと、毎月“ラブレター”をやりとりするかのように
気にかけ合う関係のなかで築き上げてきたブランドデザインや、
屋号やロゴマークのデザインをお手伝いしていた農家さんの、
仲人までしてしまった「結婚というデザイン」など、
「いわゆるデザイン」の枠を超えて、秋田で暮らす人が抱える本当の問題を掘り起こし、
一緒に考え、寄り添ってきた物語がちりばめられています。

〈結婚というデザイン〉の物語

〈結婚というデザイン〉の物語

読み終えて感じたことは、澁谷さんの前ではみんなかっこつけずに、
素直になっているということ。

そこで思い浮かぶのは、ものづくりのみならず、
家族や農業など、澁谷さんの日常が綴られるブログ『泣いた“なまはげ”の天気読み』。

「デザイン会社は実績をかっこよく並べたホームページを持っているのが
一般的だと思うんですけど、あまり人が見えないなと思っていて。
僕はこういう人間なので(笑)、その部分だけは素直でいたい。
ブログを読んで僕のことを感じてもらって、デザインを相談してくれるのが健全で、
このかたちが密に人とつながれると思うんです」

たくさんの「いい顔」は、さらけ出して一緒に悩んで、
モヤモヤとした問題を解決した晴れやかな笑顔なのかもしれません。

〈赤磐サンクスギビングARTデイ〉 西日本初の本格的な イングリッシュガーデンで、 「ありがとう」の気持ちを伝えよう

春先の〈熊山英国庭園〉。

「ありがとう」と共にある〈赤磐サンクスギビングARTデイ〉

11月23日(土)、24日(日)に岡山県の赤磐市で
〈赤磐サンクスギビングARTデイ〉が開催されます!

舞台となるのは、西日本初の本格的な
イングリッシュガーデンとして知られる〈熊山英国庭園〉。
かつては子どもたちの声でにぎやかだった小学校が廃校になった際、
地域の人たちの力で美しい花々の溢れる庭園として再生した施設です。

1年を通してさまざまな花が庭園を彩りますが、毎年11月ごろは冬支度で寂しい雰囲気になっていました。

1年を通してさまざまな花が庭園を彩りますが、毎年11月ごろは冬支度で寂しい雰囲気になっていました。

今回のアートイベントは、冬支度で花の咲かないこの季節に、
人の心で感謝の花を咲かせようと企画されたもの。
「ありがとう」の気持ちと一緒につくる2日間をテーマに、
さまざまな企画が催されます。

ライブペイントパフォーマンス。11月23日(土)10:00~15:00。観覧無料。

ライブペイントパフォーマンス。11月23日(土)10:00~15:00。観覧無料。

おすすめは、愛知県名古屋市在住のアーティスト・ニシムラマホさんによる
「ライブペイントパフォーマンス」。
長さ約5メートルの巨大なキャンバスに、新進気鋭のアーティストが鮮やかな花々を描きます。
イメージの連鎖反応を描き留めることで彼女が生み出す、
有機的な世界をぜひ直に感じてみて。

コミュニティガーデンプランナーの橋詰さんは、トークショーと寄せ植えのワークショップを開催。

コミュニティガーデンプランナーの橋詰さんは、トークショーと寄せ植えのワークショップを開催。

また、24日にはコミュニティガーデンプランナーの橋詰敦夫さんによる
トークショー「植物の遊び方」も開催。
日本古来の植物の活用法を現代的にアレンジし、
暮らしを豊かにするための「知恵と遊び」をレクチャーしてくれます。

アロマワックスバーづくり。11月23日(土)随時開催。参加費500円(税込)。

アロマワックスバーづくり。11月23日(土)随時開催。参加費500円(税込)。

レジンアクセサリーづくり。11月24日(日)随時開催。参加費500円(税込)。

レジンアクセサリーづくり。11月24日(日)随時開催。参加費500円(税込)。

その他、〈熊山英国庭園〉で採取しドライにした草花を使う、
アロマワックスバーづくりやレジンアクセサリーづくりなどのワークショップも充実。
パン屋〈まきストーブ〉などのフードや物販もお見逃しなく。

写真家・石塚元太良の旅コラム
「芸術的な思考に適していた
〈秋芳洞〉の暗闇空間」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第3回は、写真家の石塚元太良さんが
山口県美祢市の〈秋芳洞〉に行った話。
フィルムカメラで撮影をすることにこだわる石塚さんは、
フィルムを現像する暗室作業と洞窟の暗闇に共通する思いを抱いたようです。

暗室作業と洞窟の闇は似ているのかもしれない

洞窟には惹かれるものがある。このデジタルカメラ全盛の時代でも、
フィルムカメラでの撮影をこだわり続けているのは、
暗室作業というある種の「洞窟」での作業プロセスを
愛しているからかもしれないと思う。

真っ暗な状況というものは、不思議と居心地が良いものである。
「見る/見られる」という視覚のチャンネルが無化されると、
初めの不安がだんだんと安堵に変わっていくような感覚があるのだ。

考えてみたら、人はあまり都市生活の日常のなかで
「真っ暗な」状況というものを経験しないのではないだろうか?
まちは隅々まで明るいし、都市はどこかで犯罪抑止的に「真っ暗な」状況を抹殺する。
けれど、人はもしかしたらどこかで「闇」を必要としているかもしれない。
洞窟での奇妙な居心地の良さを思い出すと、そんな風にも思うのだ。

横須賀で〈Sense Island 感覚の島 暗闇の美術島〉開幕! 夜の猿島で、感覚を研ぎ澄ませ。

アートを通して猿島とその自然を体感

12月1日(日)まで、東京湾に浮かぶ無人島、猿島にて
アートプログラム〈Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島〉を開催中です。

これは、都市生活のなかで忘れかけている感覚を
暗闇のなかで取り戻す試み。
周囲1.7キロの島を舞台にさまざまなアートプログラムが展開します。

こちらが、昼間の猿島の様子。

昼の猿島

それが夜になると、こんなに幻想的な風景に変わります。

ワイルドドッグス『島の声 光、音、塩、砂、海』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

ワイルドドッグス『島の声 光、音、塩、砂、海』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

子どもの頃憧れていた、無人島探検を思い出すロケーション!
猿島へのトリップは、横須賀の三笠桟橋から始まります。
そこからフェリーに乗って、約10分。

photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

猿島に着くと、周囲は真っ暗。
そこからはグループに分けられ、懐中電灯をたよりに島を巡ります。
スマートフォンは禁止。それまで馴染んでいた
感覚やテクノロジーと隔てられ、猿島の自然と対峙することになります。

最初に出会う作品は〈博展〉による『prism』。photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

最初に出会う作品は〈博展〉による『prism』。photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

こちらは『ファスナーの船』『空気の人』などの作品で知られるアーティスト、
鈴木康広さんによる作品『遊具の透視法』。

鈴木康広『遊具の透視法』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

鈴木康広『遊具の透視法』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

スクリーンに見立てた回転する遊具に映像が投影され、
昼間遊んでいた子どもたちの姿が浮かびあがります。
自然のなかで鑑賞すると、迫力もひとしお。

ヴィト・アコンチ、オノ・ヨーコなどのアーティストと
コラボレーションを行ってきたクリエイティブユニット、ワイルドドッグスは
トンネルのなかをはじめ、フェリーや島内各所に作品を展示。

ワイルドドッグス『島の声 光、音、塩、砂、海』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

ワイルドドッグス『島の声 光、音、塩、砂、海』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

そのほかにも、多数の作品と出会えます。

佐野文彦『磐座』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

佐野文彦『磐座』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

鮫島慧『度を超えたユーモア』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

鮫島慧『度を超えたユーモア』photo:Naomi Circus (C)Sense Island 2019

『POPEYE』でも人気の イラストレーター・長場雄が、 高知で個展開催中。 現地の“おきゃく”文化感じる作品とは?

高知の新鋭カルチャースペース〈OKYAKU〉と長場雄がコラボ

現在、カルチャー界隈で注目を集める人気アーティスト、
長場雄さんの個展が、高知のコンセプトショップ〈OKYAKU(おきゃく)〉
で開催されています。

長場さんはイラストレーターとして、雑誌、広告、
様々なブランドとのコラボレーションなど幅広く活動されている
注目のアーティストさん。
今回は、そんな彼の四国での初個展となります。

会場となる〈OKYAKU〉は、今年の夏に高知市中心街の近くにある
閑静な鏡川沿いにオープンした新鋭カルチャースペース。

オーナーが老若男女が美味しい食を囲み酒を酌み交わす“おきゃく”という
高知特有の宴会文化に感銘を受け、そのような人と人の新たなつながりとなる
文化的交流の場を設けることをコンセプトに、スペースを展開しています。

店内には、目の前に鏡川が流れる立地にちなんで“川”にまつわるアイテムや、
“おきゃく”に欠かせない酒器、高知の物産、
国内外から集められた衣服、雑貨などが並び、
定期的にイベントや今回のような展示が行われるとのこと。
まさに高知の新たなカルチャーの発信地です。

写真家・大森克己の旅コラム
「桜を追い求めて
日本全国を歩く、長い春」

さまざまなクリエイターによる旅のコラム連載。
第2回は、写真家の大森克己さんが
かつて桜を追いかけて全国への旅を始めたきっかけや、
当時、感じた気持ちを綴っています。
全国を歩いたこの旅は、どのようにして終わったのでしょうか?

家の前の桜から、東北、北海道の桜まで

ちょっと前の話である。どのくらい前かというとゼロ年代の前半、
トルシエ・ジャパンとかジーコ・ジャパンの頃である。
1963年生まれの自分はまだ40歳前だった。
春になって毎年桜が咲いて人々が浮き足立つ。
当時事務所のあった西麻布の笄(こうがい)公園、
青山墓地、皇居のお堀、新宿御苑、代々木公園。
身近にあるさまざまな桜たち。花見の宴のような特別な機会でなくとも、
東京のまちを歩いていると、春になると否が応でも桜の花が目に入ってくる。

松田聖子も福山雅治もケツメイシも桜を歌う。
西行も藤原定家も本居宣長も桜を詠む。
松尾芭蕉はおそらく、一番ハードコアである。
「さまざまのこと思い出す桜かな」
こんなことを言ってしまって良いのか、という驚くばかりの平凡さである。
桜以外の植物でこの句は果たして成り立つかしら? すごいこといいますね、芭蕉さん。

AKI INOMATAの個展が 十和田市現代美術館で開催。 生き物との共作で 生み出されるアートを観てみませんか?

『やどかりに「やど」をわたしてみる -White Chapel-』2014-2015 ※参考作品 ©AKI INOMATA / Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

国内外で活躍するAKI INOMATA、待望の大規模個展

各国の都市をかたどった3Dプリンターの殻が印象的な
生きたやどかりの作品『やどかりに「やど」をわたしてみる』、
飼い犬の毛とAKI INOMATAの髪、それぞれの毛で作られたケープを
お互いが着用する『犬の毛を私がまとい、私の髪を犬がまとう』など、
ユニークな視点で生き物と共に作品を作り上げるアーティストのAKI INOMATA。

AKI INOMATA1983年生まれ。2008年東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。近年の展覧会に、第22回ミラノ・トリエンナーレ(トリエンナーレデザイン美術館、2019) 、タイビエンナーレ 2018(クラビ市内、タイ、2018)、など。2017年ACCの招聘でニューヨークに滞在。

AKI INOMATA 1983年生まれ。2008年東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。近年の展覧会に、第22回ミラノ・トリエンナーレ(トリエンナーレデザイン美術館、2019) 、タイビエンナーレ 2018(クラビ市内、タイ、2018)、など。2017年ACCの招聘でニューヨークに滞在。(撮影:新津保建秀)

彼女の国内初の大規模個展が、現在青森県にある
十和田市現代美術館で開催されています。

《やどかりに「やど」をわたしてみる -White Chapel-》2014-2015   ※参考作品 ©AKI INOMATA / Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

『やどかりに「やど」をわたしてみる -White Chapel-』2014-2015 ※参考作品 ©AKI INOMATA / Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

《進化への考察 #1:菊石(アンモナイト)》2016-17   ©AKI INOMATA / Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

『進化への考察 #1:菊石(アンモナイト)』2016-17 ©AKI INOMATA / Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

「Asian Art Award 2018 supported by Warehouse TERRADA」展示風景 2018 寺田倉庫、東京   Photo: Ken Kato ※参考画像   ©AKI INOMATA / Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

「Asian Art Award 2018 supported by Warehouse TERRADA」展示風景 2018 寺田倉庫、東京 Photo: Ken Kato ※参考画像 ©AKI INOMATA / Courtesy of MAHO KUBOTA GALLERY

人間社会はもちろん、地球上の発展は人間だけではなく、
他種の生きものがいたからこそ、豊かな広がりを見せてきました。
しかし現在は、人間と人間以外の生きものとの関係が気薄になりつつあります。
AKI INOMATAは生きものたちとの共作を通して
これまでにそのような関係性を問う作品を発表しています。

京都〈世界文庫アカデミー〉 が第3期生を募集! 新講師に皆川明さんも

これからの働き方をまなぶ・かんがえる・つくる学校

京都の〈世界文庫アカデミー〉が第3期生を募集しています。
これは、セレクト古書店〈世界文庫〉が2017年に開講した、週末の大人のための学校。

ものづくりに関わりたい、カフェを開きたい、
なにおもしろいことを始めたい……そんな望みや目標を持った人たちが、
どうやったら夢を叶えられるのかということに取り組み、
みんなで新しい働き方をつくっていく学校です。

〈ソトコト〉編集長、指出一正さんの授業では「ローカル・地域の編集」をテーマに、日本各地で活躍するプレイヤーたちを紹介。生徒のなかには、移住を考えている人、自分の住んでいる地域を盛り上げたい人も多いのだとか。

『ソトコト』編集長、指出一正さんの授業では「ローカル・地域の編集」をテーマに、日本各地で活躍するプレイヤーたちを紹介。生徒のなかには、移住を考えている人、自分の住んでいる地域を盛り上げたい人も多いのだとか。

講師は〈ミナ ペルホネン〉の皆川明さん、〈御菓子丸〉の杉山早陽子さん、
ミュージシャンの曽我部恵一さん、絵本作家の荒井良二さん、
『つるとはな』編集長の岡戸絹枝さん、料理家のワタナベマキさんなどと、何とも豪華。
夢への第一歩を踏み出せそうな気がしてきます。

絵本作家、荒井良二さんの授業。「自分たちが今いる風景も絵本の一部である」という考えのもと、演劇的な絵本空間をつくりました。チームにおける自分の役割を深め、即興で物語を考えたり、パフォーマンスを行ったりする力を養う体験学習です。

絵本作家、荒井良二さんの授業。「自分たちが今いる風景も絵本の一部である」という考えのもと、演劇的な絵本空間をつくりました。チームにおける自分の役割を深め、即興で物語を考えたり、パフォーマンスを行ったりする力を養う体験学習です。

第3期の講師一覧は、次の23名です。

皆川明(ミナ ペルホネン デザイナー)
曽我部恵一(サニーデイ・サービス)
杉山早陽子(御菓子丸 和菓子作家)
中川正子 (写真家)
木村まさし(オールユアーズ代表)
荒井良二(絵本作家)
指出一正(ソトコト編集長)
平田はる香(株式会社わざわざ代表取締役)
ワタナベマキ(料理家)
岡戸絹枝(クウネル創刊編集長、つるとはな編集長)
永原真夏(音楽家)
惣田紗希(デザイナー、イラストレーター)
chi-ko.(フローリスト、Forager代表)
服部滋樹(grafクリエイティブディレクター)
小桧山聡子(山フーズ主宰)
ナカムラクニオ(6次元店主)
ルーカス・B.B. (PAPERSKY編集長)
岸本千佳(不動産プランナー)
古賀鈴鳴(世界文庫アートディレクター)
黒田義隆 (ON READING、ELVIS PRESS代表)
いか文庫(エア本屋)
安達薫 (SITRUUNA編集長、ONKUL元編集長)
SHOWKO(SIONE代表、陶板画作家))

第1期、第2期は全国から生徒が集まり、ほとんどの方が夢への第一歩を踏み出し、
自分の店や場所を持った人も、たくさんいたのだとか。

津田直写真展『湖の目と山の皿』 長野・八ヶ岳で、 レンズを通して 縄文時代の遺物や風景に出会う

縄文が繁栄した地で、津田さんが見た縄文を見てみませんか?

八ヶ岳山麓の森に抱かれた、八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館)。
同館にて、2019年11月24日(日)まで
津田直写真展『湖の目と山の皿』を開催しています。

これまでにモロッコの砂漠やモンゴルの山峡、
アイルランドの島嶼(とうしょ)、北極圏、バルトの国々など世界中を旅し、
独自の風景論を唱えてきた写真家の津田直さん。

八ヶ岳美術館(長野県諏訪郡原村)

八ヶ岳美術館(長野県諏訪郡原村)

本展では、縄文時代の遺物や風景を写した
「Grassland Tears(草むらの涙)」シリーズより、
特に八ヶ岳山麓、および諏訪湖周辺を中心に撮影された写真約30点を展示するほか、
雑誌『PAPERSKY』に連載された「Jomon Fieldwork」よりパネル展示、
編集長ルーカス B.B.さんとの対談映像が展示されています。

縄文を歩き、自然を読む

じつは八ヶ岳山麓一帯は、古代に縄文文化が繁栄した場所でもあるそう。
その地でどんな展示が行われるのか、津田さんにお話を聞きました。

津田さんが全国の縄文遺跡を巡り、写真を撮り始めたのは2010年頃からとのこと。
「僕らはどこからやってきたのだろう」という素朴な疑問と共に、
この国の基層文化が知りたいといつしか思うようになり、
「まだ見ぬ日本を見にいこう」と地方を歩き始めたのだと言います。

すると私たちの足元には、1万年という長き年月を自然と共生していた
縄文という時代があることに改めて気が付きました。
そして東北を事始めに北海道から沖縄まで、
縄文歩きを続けていくなかで、文化は途切れることなく
現代まで緩やかに受け継がれていることが少しずつ見えてきたのだそうです。

「Grassland Tears “Akyu #2”」 © Nao Tsuda, Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

「Grassland Tears “Akyu #2”」 © Nao Tsuda, Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

「最初は土器や土偶などの紋様や造形に目をひかれて、
遺物を“モノ”として見ていたんですよ。
それがフールドワークを始めて7〜8年目ぐらいだったかな。
ある場所からまとまって出てきた遺物を見たときに
そこに生きてきた人の気配や存在をリアルに感じて、
彼らも我々と同じようにひとりの人間なんだという当たり前のことに気がつきました。
そのときから遺物を単なる“モノ”とは捉えられなくなりました。
モノは形ある霊魂であり、循環する命そのものである、と。
その気付きは、9年間の雑誌連載と共に実感となってきたわけですが、
今回の展示構成にも自然とつながっていきました」(津田さん)

展示会場では、モノの先に人々の営みや暮らしの気配も
感じ取ってもらいたいという意図から、
写真は大伸ばしするよりも、鑑賞者のひとりひとりが手に取るように見ていただけるよう、
作品によっては原寸大に近いサイズでプリントしています。

また、展示空間となっているギャラリーの壁面は半円形になっており、
あえて壁面には写真をほとんど掛けず、地元の大工さんと制作した丸いテーブルを、
建築に呼応するように点在させ、写真はまるで考古学の資料のように並べられています。

津田直写真展〈湖の目と山の皿〉展示風景

津田直写真展『湖の目と山の皿』展示風景。

さらに、各テーブルは出土した地域ごとにまとめられているので、
文化圏の重なりを目で追うことができるようになっています。
そこには、写真を見下ろすように眺めることで、
土中に埋まっていた長き年月を思い、土から拾い上げるように見てもらいたいという
津田さんの意志も込められているようです。

そこに写されているのは、胸元にキラキラした
雲母がついた縄文のビーナス(国宝の土偶)や、
大地の隆起や窪みを思わせるような石皿、
人の手の跡が感じられる石匙など。
ときを超えた美しさに、はっとさせられます。

みんなで運んだピースで 新しい居場所をつくったら、 どうなった? 札幌市民交流プラザ 〈Collective P -まちとプラザを つなぐ搬入プロジェクト-〉

札幌市民交流プラザに、巨大なスタイロの山現わる

札幌の多様な文化芸術活動の中心的な拠点として、
そして市民の仕事やくらしに関する課題の解決を支援し、
多くの人が交流する場として機能することを目的に誕生した、
劇場、文化芸術交流センター、図書・情報館の
3つの施設からなる〈札幌市民交流プラザ〉。

今年、同施設が開館1周年を迎えるまでの、
10月4日(金)~6日(日)の3日間、
〈PLAZA FESTIVAL 2019〉というイベントが開催されました。

このイベントではRhizomatiks Researchと
演出振付家MIKIKO率いるダンスカンパニー・ELEVENPLAY、
アーティストのKyle McDonaldによるテクノロジーとアートを融合した
先進的パフォーマンス作品〈discrete figures Special Edition〉の上演や、
音楽ライブ用の音響セッティングをフルに使い、
かつてない大音量の中で、『バーフバリ 王の凱旋 <完全版>』、
『グレイテスト・ショーマン』、『パプリカ』、
『デス・プルーフ in グラインドハウス』を観る〈札幌爆音映画祭〉など、
五感を刺激する現代的なアートコンテンツがギュギュっと集結。
札幌にアートな風を吹かせた3日間となりました。

作品の設計は、国内外で活動する札幌の建築家・五十嵐淳氏が、市民参加のコーディネートは、まちづくりプランナーとしてまちの再生や賑わいづくりに取り組む酒井秀治氏が担当。

作品の設計は、国内外で活動する札幌の建築家・五十嵐淳氏が、市民参加のコーディネートは、まちづくりプランナーとしてまちの再生や賑わいづくりに取り組む酒井秀治氏が担当。

そのなかでも、ひときわ目を引いたのが、
〈札幌文化芸術交流センター SCARTS〉で開催された、
札幌のまち・ひと・公共施設をつなぐ参加・体験型のアートプロジェクト
〈Collective P -まちとプラザをつなぐ搬入プロジェクト-〉です。

うなぎの寝床型の京町家を
リノベーション。
〈西大路のアトリエ〉誕生

多田正治アトリエ vol.6

ぼくは普段、京都の〈西大路のアトリエ〉で設計事務所の仕事をしています。
西大路のアトリエは、戦後直後に建てられたといわれる、平屋の町家です。

2013年にその町家を〈ENDO SHOJIRO DESIGN〉の建築家・遠藤正二郎くんと
リノベーションして、いまでも彼とシェアして入居しています。

正面からみたところ。

正面からみたところ。

vol.1~5までは熊野についてお伝えしてきましたが、ここから京都へと舞台を移し、
今回はぼくたちのオフィスである、西大路のアトリエについてお話しします。

もともとぼくと遠藤くんは、京都の五条大宮でいまと同じように
オフィスをシェアして、各自の事務所を構えていました。
そこを退居することになったとき、次は古家を借りて
自分たちでリノベーションしてオフィスにすることにしました。

ぼくの場合、オフィスにいる時間は家で活動する時間よりも長い。
だからこそ、自分たちで考えつくりあげた空間で働きたい、そう考えました。

まずは不動産探しからスタート

ふたつの条件で部件探しを始めました。

・自由に改装してもいいこと

・ペット可(ぼくたちはネコを飼っていました)

いくつか内覧して、見つけ出したのがいまのアトリエです。

beforeー正面から見たところ。

beforeー正面から見たところ。

beforeー畳敷きの三間が連続するつくり。

beforeー畳敷きの三間が連続するつくり。

beforeー通り土間には床を張って、台所になっています。

beforeー通り土間には床を張って、台所になっています。

ぼくは大阪に住んでいて、京都まで阪急電車で通勤しています。

このアトリエは阪急の駅からは少し遠いのですが、
ブロンプトンという折畳み自転車を鉄道に持ち込み、輪行する通勤スタイルなので、
駅から遠いことは問題ではありませんでした。

新物件の家賃は、以前の事務所の家賃よりも少し安く、
少なくとも5年はここに居を構えようという決意も込めて、
家賃の差額×5年分を工事費にあてることに。
物件を決め、工事予算を決め、ふたりで設計に取りかかりました。

〈西大路のアトリエ〉の設計

リノベーション前の町家は、京都で典型的な「うなぎの寝床」型の敷地に、
道路から奥に向かって3間が並び、通り土間が貫く間取り。
通り土間は改装されて、床が張られキッチン設備がついていました。
ここから壁や天井を取り払い、大きく吹き抜けた細長い一室空間として、
その中にひとつのキューブを据える構成を考えました。

キューブによって、細長い空間は、通りに面した土間空間や
庭に面した白い空間と緩やかに仕切られます。
キューブを置くというひとつの操作で、
ワンルーム空間の中に、性格の異なる空間を生み出す。
そんなことを考えて設計を行いました。

改装後(上)と改装前(下)の図面。

改装後(上)と改装前(下)の図面。