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津田直写真展『湖の目と山の皿』
長野・八ヶ岳で、
レンズを通して
縄文時代の遺物や風景に出会う

コロカルニュース

posted:2019.10.23  from:長野県諏訪郡原村  genre:アート・デザイン・建築

〈 コロカルニュース&この企画は… 〉  全国各地の時事ネタから面白情報まで。
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writer profile

Yu Miyakoshi

宮越裕生

みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。

縄文が繁栄した地で、津田さんが見た縄文を見てみませんか?

八ヶ岳山麓の森に抱かれた、八ヶ岳美術館(原村歴史民俗資料館)。
同館にて、2019年11月24日(日)まで
津田直写真展『湖の目と山の皿』を開催しています。

これまでにモロッコの砂漠やモンゴルの山峡、
アイルランドの島嶼(とうしょ)、北極圏、バルトの国々など世界中を旅し、
独自の風景論を唱えてきた写真家の津田直さん。

八ヶ岳美術館(長野県諏訪郡原村)

八ヶ岳美術館(長野県諏訪郡原村)

本展では、縄文時代の遺物や風景を写した
「Grassland Tears(草むらの涙)」シリーズより、
特に八ヶ岳山麓、および諏訪湖周辺を中心に撮影された写真約30点を展示するほか、
雑誌『PAPERSKY』に連載された「Jomon Fieldwork」よりパネル展示、
編集長ルーカス B.B.さんとの対談映像が展示されています。

縄文を歩き、自然を読む

じつは八ヶ岳山麓一帯は、古代に縄文文化が繁栄した場所でもあるそう。
その地でどんな展示が行われるのか、津田さんにお話を聞きました。

津田さんが全国の縄文遺跡を巡り、写真を撮り始めたのは2010年頃からとのこと。
「僕らはどこからやってきたのだろう」という素朴な疑問と共に、
この国の基層文化が知りたいといつしか思うようになり、
「まだ見ぬ日本を見にいこう」と地方を歩き始めたのだと言います。

すると私たちの足元には、1万年という長き年月を自然と共生していた
縄文という時代があることに改めて気が付きました。
そして東北を事始めに北海道から沖縄まで、
縄文歩きを続けていくなかで、文化は途切れることなく
現代まで緩やかに受け継がれていることが少しずつ見えてきたのだそうです。

「Grassland Tears “Akyu #2”」 © Nao Tsuda, Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

「Grassland Tears “Akyu #2”」 © Nao Tsuda, Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

「最初は土器や土偶などの紋様や造形に目をひかれて、
遺物を“モノ”として見ていたんですよ。
それがフールドワークを始めて7〜8年目ぐらいだったかな。
ある場所からまとまって出てきた遺物を見たときに
そこに生きてきた人の気配や存在をリアルに感じて、
彼らも我々と同じようにひとりの人間なんだという当たり前のことに気がつきました。
そのときから遺物を単なる“モノ”とは捉えられなくなりました。
モノは形ある霊魂であり、循環する命そのものである、と。
その気付きは、9年間の雑誌連載と共に実感となってきたわけですが、
今回の展示構成にも自然とつながっていきました」(津田さん)

展示会場では、モノの先に人々の営みや暮らしの気配も
感じ取ってもらいたいという意図から、
写真は大伸ばしするよりも、鑑賞者のひとりひとりが手に取るように見ていただけるよう、
作品によっては原寸大に近いサイズでプリントしています。

また、展示空間となっているギャラリーの壁面は半円形になっており、
あえて壁面には写真をほとんど掛けず、地元の大工さんと制作した丸いテーブルを、
建築に呼応するように点在させ、写真はまるで考古学の資料のように並べられています。

津田直写真展〈湖の目と山の皿〉展示風景

津田直写真展『湖の目と山の皿』展示風景。

さらに、各テーブルは出土した地域ごとにまとめられているので、
文化圏の重なりを目で追うことができるようになっています。
そこには、写真を見下ろすように眺めることで、
土中に埋まっていた長き年月を思い、土から拾い上げるように見てもらいたいという
津田さんの意志も込められているようです。

そこに写されているのは、胸元にキラキラした
雲母がついた縄文のビーナス(国宝の土偶)や、
大地の隆起や窪みを思わせるような石皿、
人の手の跡が感じられる石匙など。
ときを超えた美しさに、はっとさせられます。

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「津田さんと遺跡を巡るツアーやゲストを迎えたトークを開催」

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「Grassland Tears “Oishi #3”」© Nao Tsuda, Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

「Grassland Tears “Oishi #3”」© Nao Tsuda, Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film

本展では、もう一つの展示室にて雑誌『PAPERSKY』に連載されている
「Jomon Fieldwork」のパネル展示と対談映像の上映もあります。
連載のバックナンバーもすべて閲覧することができます。
「Grassland Tears」シリーズとのつながりも、興味深いです。

雑誌『PAPERSKY』のバックナンバー閲覧コーナー。

雑誌『PAPERSKY』のバックナンバー閲覧コーナー。

会期中には、ツアーやトークイベントも予定されています。
10月26日(土)に開催される〈写真家・津田直と共に巡る八ヶ岳山麓縄文ツアー〉では、
津田さんと八ヶ岳美術館、原村埋蔵文化財収蔵庫、阿久遺跡などをまわります。
原村埋蔵文化財収蔵庫では、普段は公開していない土器なども特別に見せてもらえるそうです。

11月16日(土)は、〈Jomon Fieldwork in 八ヶ岳〉を開催。
フリーペーパー『縄文ZINE』編集長の望月昭秀さんを招き、
スライドショーとトークを行います。
イベントの詳細、ご予約は下記インフォメーション欄に記載の
電話またはメールアドレスからお問い合わせを。

「未来のヒントを見つめる」

写真家の津田直さん。世界を旅し、ファインダーを通して古代より綿々と続く、人と自然との関わりを翻訳し続けている。作品集に『SMOKE LINE』、『Storm Last Night』(共に赤々舎)、『SAMELAND』(limArt)、『Elnias Forest』(handpicked)など。

写真家の津田直さん。世界を旅し、ファインダーを通して古代より綿々と続く、人と自然との関わりを翻訳し続けている。作品集に『SMOKE LINE』、『Storm Last Night』(共に赤々舎)、『SAMELAND』(limArt)、『Elnias Forest』(handpicked)など。

最後に、約10年間縄文歩きを続けてきた津田さんが
いま考えていることについて聞かせていただきました。

「縄文の人々が暮らしてきた土地や文化に触れて、
度重なる自然災害に見舞われている現代に立ち返ったときに、
私たちは自然をどのように捉え、見つめ続けてきたのだろうかと、思い直しているのです。
そして、人と自然の関係性を歴史と共に紐解いていこうとするとき、
私たちが必要としている“未来の知恵”は、すでに私たちの足元に仕舞われていて、
もう一度呼び出さなくてはならないのではないかと思っています。

世界にはさまざまな生活と文化の発展がありますが、
近年“縄文”が再考されることが増えてきました。果たしてそれは偶然なのでしょうか。
狩猟・採集・漁労という営みを中心としてきた社会を
原始的という見方に留めてしまって良いものでしょうか。
少なくとも八ヶ岳山麓や諏訪湖周辺に数千年にわたり、
展開してきた縄文の人々の知恵には、私たちを凌ぐような、
自然の理に沿って生きる力が見て取れます。
あなた自身の目で、見つめてみてはいかがでしょうか。
ひとつかふたつ、未来へのヒントが見えてくるかもしれません」

もしかしたら本展を見た後は、明日の見え方が
変わってくるかもしれません。
訪れる際は、地図を片手に近隣の遺跡を巡ってみては?
また、建築家の村野藤吾さんが設計した建物も見どころのひとつ。
ドーム型の建物が連なる、とてもユニークな美術館です。
縄文土器や石器などの所蔵品も見られ、
美術館の周りにある散策路では、彫刻の屋外展示も楽しめます。
ぜひお出かけになってみてください。

リーフレット

information

map

津田直写真展『湖の目と山の皿』

会期:2019年9月21日(土)〜11月24日(日)

会場:八ヶ岳美術館

住所:長野県諏訪郡原村17217-1611

TEL:0266-74-2701

E-mail:yatsubi1@po19.lcv.ne.jp

主催:八ヶ岳美術館、原村、原村教育委員会

https://yatsubi.com/exhibition/article.php?post_id=2804

https://tsudanao.com/

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