雑誌『秋刀魚』編集長 Eva Chen
2014年台湾に新しい雑誌が生まれた。
コンセプトは「Discover Japan Now」。雑誌の名前は『秋刀魚』。
毎号台湾人目線で、日本人でも知らない日本の姿や魅力を独自の切り口で発掘している。
いまや台湾の日本好きで知らない人はいない雑誌だ。
今回は編集長のEva Chen氏がLIP田中の故郷であり、
台湾でもまだ知名度の高くない「福井」を訪れた。
新幹線も通っていない、空港もないこの場所だが、
幸福度日本一に選ばれた(日本総合研究所発表「幸福度ランキング2016年版」)
その理由は一体どこにあるのだろうか?
(by LIP)
最も幸せなまちで古民家の新しい命を感じる。
散歩する、それはあるまちに近づく最も奥の深い方法である。
雑誌『秋刀魚』創刊以来、確かに日本のたくさんのまちを訪ね、
散策取材の企画も多く行ってきた。
そのなかでも今回訪れた福井は、日本で「最も行きにくいまち」と言われ、
空港も新幹線もまだ未開通の北陸の地。
福井のまち並みはまるで朝ドラに出てくる昭和時代の風景のようだった。
この地の温かくて平穏な日常は、神様がこの地に授けた日本一の水(*1)のように、
華やかな味わいはないが、口の中でほんのりとした甘みが漂う。
この甘みは人々に微笑みながらこう思わせる。
「福井がほかの場所から遠いおかげで、
福井ならではの幸せな味は守られているのかもしれない」
*1 日本一の水:水政策に詳しいジャーナリストの橋本淳司さんによる「水道水がおいしい市町村ベスト5」で、福井県大野市の水道水が1位に選ばれた。


親友の雑誌『LIP』の田中佑典氏のお誘いで彼の故郷を訪れることになった。
日本の友人の地元に行くのは、台湾人の私にはとても新鮮なことである。
まるで卒業アルバムのページをめくるように、
友だちの幼い頃の行きつけのお店に行き、学生時代に乗っていた電車に乗り、
十数年経っても変わらないどこかの道の物語を聞いていていると、
今回の旅は一層感情移入することができた。
あとから気づいたが、福井の方言で、語尾に「の」の音をつけた挨拶は
「ここは私の故郷じゃないか?」と思わせるくらい親近感の湧く響きだった。

故郷とは人々の記憶の中に隠れた古びた家であり、
古くまだらに色づいた外壁は歴史の跡を表している。
福井には古い町家が数多くある。高齢化と過疎化が進んでいるなか、
それらの古民家は一時的にまちから忘れられていた。
しかし、近年福井は「まちおこし」(日本式古民家「町家」のリノベーション)に
力を入れているおかげで、この地で古民家をリノベーションする若者が
どんどん増えている。歴史と新しい創造が融合し、
木造建築の積み重ねてきた月日を吸収し、新たな命を芽生えさせる。


町家のリノベーションの代表作のひとつは坂井市にある民宿〈詰所三國〉である。
明治時代の元〈田中薬局〉を改修し、当時の薬瓶や看板はそのままのかたちで、
庭園や吹き抜け構造を残した民宿へと姿を変えた。
室内デザインは日本を愛する東洋文化研究家のアメリカ人、
アレックス・カー氏(Alex Kerr)が手がけた。
1日限定2組。「行雲」と「流水」の2棟の客室があり、
夜は歴史を感じる空間に囲まれ、庭では星空を楽しめる。
朝は宿から3分くらい歩くと三国港があり、
幕末に北前船が商売をしていた歴史深い場所を歩くことができる。

しかし、私が一番驚いたのは客室に完備しているキッチン。
ご当地の伝統的な漆器や磁器が食器として使える。
一般的なホテルのように食事提供のサービスはないが、
民宿は旅の客にこう誘っているように感じた。
「ここで料理作りを楽しみ、短い滞在のなかでも
この地ならではの日常生活をイメージしよう」と。


















































































































































































