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多様なアートの旅へようこそ!
あいちトリエンナーレ通信 vol.1

ローカルアートレポート
vol.065

posted:2016.8.23   from:愛知県名古屋市ほか  genre:アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  各地で開催される展覧会やアートイベントから、
地域と結びついた作品や作家にスポットを当て、その活動をレポート。

writer profile

あいちトリエンナーレ実行委員会事務局・広報チーム

いろんな色を持ち合わせたメンバーで構成される広報チーム。それはまるで虹色! ありとあらゆる情報と人をつなぎ、あいちトリエンナーレ2016について日々広報に尽力しています。
text: Chiako Kudo

あいちトリエンナーレ2016展示風景 大巻伸嗣『Echoes Infinityー永遠と一瞬』2016(撮影:怡土鉄夫)

3年に1度開催される国際芸術祭〈あいちトリエンナーレ2016〉。
3度目となる今年は、名古屋市、岡崎市、豊橋市で開催されています。
参加アーティストや広報チームが、その作品や地域の魅力を紹介していくリレー連載です。

旅人のように訪れて。多彩なアーティストの表現が集結!

8月11日(木・祝)に開幕したあいちトリエンナーレ2016。
3年に1度の開催となる国際芸術祭が、ここ愛知で3度目の開催を迎えました。
美術、映像、音楽、パフォーマンス、オペラなど、
現代で行われている芸術活動をできる限り「複合的」に見せるあいちトリエンナーレは、
今回、芸術監督である港千尋(写真家・著述家)のもと、
テーマに「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」を掲げています。

会期中、コロカルであいちトリエンナーレ2016のレポートを
お届けすることになりました。第1回目は広報チームから。

まずは開幕前の話を少し。今回のあいちトリエンナーレですが、
日本で初紹介のアーティストも多く、一点集中型ではなく、
多様性を打ち出す広報が求められました。
ですので、おすすめはどの作家? 目立つのはどんな作品? 
とキュレーターに聞いても、その質問自体がナンセンスな気がして苦戦続き。
知名度のあるアーティストを打ち出していくことができたら
とてもわかりやすかったと思いますが、そこに頼らないためには
どうしたらいいのか考える日々。

それに加え、グリナラ・カスマリエワ&ムラトベック・ジュマリエフに、
リビジウンガ・カルドーゾ、イグナス・クルングレヴィチュスといったような、
とても一度聞いただけではなかなか覚えられないアーティスト名がたくさん! 
アクセント付きの名前も多く、表記に苦心するといった
国際展ならではのエピソードもあります。
ともかく、まだ見ぬアーティストたちを想像しながら、
入手したプロフィール、広報用画像、アーティストの名前を手がかりに、
手探りで進める広報活動はまさに「未知への旅」でした。

アルゼンチン出身のアドリアナ・ミノリーティ(左)と、リトアニア出身のイグナス・クルングレヴィチュス(右)。(撮影:加藤慶)

オープニングレセプションでの集合写真。(撮影:菊山義浩)

今回、あいちトリエンナーレ2016国際展のキュレーターは5名、
そのうちの2名はブラジル拠点のダニエラ・カストロ、
トルコ拠点のゼイネップ・オズを招聘しています。
これまで日本ではあまり紹介される機会がなかった
中南米や中近東のアーティストたちの参加も増えました。

芸術監督とキュレーターたち。

おそらく一生のうちに、日本の反対側に位置するブラジル、アルゼンチン、
あるいはトルコ、キルギス共和国、モロッコ、エジプト……
といった国々を実際に訪ねることができる人はわずか。
いまやインターネットの影響で世界を近くに感じられるようになったとはいえ、
愛知にはいま、38の国と地域から集まった119組のアーティストの作品が一堂に会し、
それぞれの文化や土地の中から生まれた表現を感じられる場が誕生しています。
この奇跡的な場をぜひ訪れてほしいです。

名古屋、豊橋、岡崎と3都市のさまざまな場所に、多彩な表現が集まり、
来場者が旅人のようにその場所を訪れていくそのこと自体がまさに、
今回のテーマである「虹のキャラヴァンサライ」を体現しています。

開幕前後の数日間は、怒濤の日々でしたが、これまではメールやSkypeだけで
やり取りをしていたアーティストが来日し、祝祭感にあふれていました。

その中でも特に胸が熱くなる1枚の写真をご紹介。
今回のポスターやリーフレットのメインビジュアルに起用された
参加アーティストのジェリー・グレッツィンガーと港千尋芸術監督が握手をするシーン。
実は港監督も、今回初めてジェリーとご対面。

米国出身のアーティスト、ジェリー・グレッツィンガーと港千尋芸術監督。(撮影:菊山義浩)

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ジェリーの作品に感動した港監督

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まだ、あいちトリエンナーレが本格始動する前、
パリの美術館で展示されていたジェリーの作品『Jerry’s Map』を目にした港監督は、
その壮大な地図がジェリーの生み出した架空の地図だと知り、とても感動して、
さっそくジェリーのサイトのコンタクトからメールを送ったのだそう。
ドキドキしながらその返事を待っていたら、一番最初に返ってきたメールが
「Hi, Chihiro!」だったとか! ジェリーとの出会いは、
今回のあいちトリエンナーレ2016のテーマを考えるうえで
とても大きかったと港監督は話していました。

創造することの喜びそのものを感じられるジェリーの作品『Jerry’s Map』は、
愛知芸術文化センターでご覧いただくことができます。
1963年から制作を始めた想像上の地図は、現在3400枚を超えるパネルになっており、
今回展示しているのはその一部の約1300枚。
それでも天井から床まで敷き詰められた目の前に広がる大きな地図に圧倒されます。

ジェリー・グレッツインガー『Jerry’s map』2016(撮影:菊山義浩)

ほかにも観ていただきたい作品は山ほどありますが、
国際展参加アーティスト85組のうち8割の作家が新作。
初めて出会うものが本当にたくさんあると思います。
また、今回新たに会場となった豊橋も初めて訪れる人が多いでしょうし、
豊橋に住んでいる方たちにも、まちがトリエンナーレ会場になり、
日常にちょっとした変化が生まれているのではと思います。

豊橋会場で展示しているブラジル出身のアーティスト、ラウラ・リマ『フーガ』展示風景。(撮影:加藤慶)

まち歩きもあいちトリエンナーレ2016の醍醐味です。
もうひとつの会場、岡崎ではなんと和船やレンタサイクルの利用もできます。

岡崎会場・岡崎表屋で展示しているムンバイ(インド)出身のアーティスト、シュレヤス・カルレ。(撮影:菊山義浩)

現代美術はよくわからないと言われることも多いですが、
今回、美術という枠組を超えて「創造する人間の旅」をテーマに、
移動、横断、越境といったダイナミックな創造のあり方に
クローズアップした内容になっています。
同時代に生きる人間の創造行為を通して自由にアイデアを交換し、
その方法を知り、感動を共有すること。
そこでは「よくわからない」という感覚すらも大切な体験になるように思います。
よくわからないものと接する場、それこそが世界を理解する一歩となるからです。

さて、あいちトリエンナーレ2016はまだ始まったばかり。
開幕してから数日、とってもよかったと感想をいただくこともあれば、
お叱りの言葉もあり、まだまだ改善していくことが山積みです。
会期74日間(もうすでに日数は減っていく一方ですが)を
全力で駆け抜けたいと思います。

キャラヴァンガイド(鑑賞手引き)、ポケットマップ、コンセプトブックや公式ガイドブックなど、あいちトリエンナーレ2016を巡る旅の手引きは今回とっても充実していますので、ぜひ各会場のインフォメーションで入手してくださいね。

次のレポートは、あいちトリエンナーレ2016国際展参加アーティストのL PACK.です。
お楽しみに!

information

map

あいちトリエンナーレ2016

会期:2016年8月11日(木・祝)〜10月23日(日)

主な会場:愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか(長者町会場、栄会場、名古屋駅会場)

豊橋市内のまちなか(PLAT会場、水上ビル会場、豊橋駅前大通会場)

岡崎市内のまちなか(東岡崎駅会場、康生会場、六供会場)

http://aichitriennale.jp/

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