連載
posted:2016.8.1 from:山梨県富士吉田市 genre:食・グルメ
sponsored by KIRIN
〈 この連載・企画は… 〉
その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?
writer profile
Yu Miyakoshi
宮越裕生
みやこし・ゆう●神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへて2011年よりライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。
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撮影:濱田晋
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Supported by KIRIN
47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
山梨でコロカルが向かったのは、富士山の麓に広がる高原都市、富士吉田。
富士吉田は、江戸の頃から富士山の登山者を迎え入れてきたまち。
今回訪ねたゲストハウス〈hostel&salon SARUYA(ホステルアンドサロンサルヤ)〉は
富士山駅から富士の裾野のなだらかな坂道を下っていったところにある、
下吉田・月江寺地区にあります。
カラフルなシェードに彩られた、レトロなお店が建ち並ぶアーケード。
昭和の華やかなりし頃を思わせますが、シャッターが降りている店も少なくありません。
SARUYAは、そのアーケードのまん中にありました。
オープンは2015年7月。
周辺にはホテルも観光スポットも数えるほどしかありませんが、
SARUYAにはオープン当初からお客さんが出入りし、にぎわい続けているといいます。
今回お話をうかがったのは、
千葉県出身の赤松智志さん(元共同代表)と、静岡県出身の八木毅さん。
ふたりは、まったく別の理由でこのまちにやって来ました。
赤松さんは、慶應義塾大学総合政策学部在学時に
まちおこしをテーマにしたプロジェクトの一環で富士吉田を訪れ、
「ここにはたくさんの魅力が眠っている」と思い、
3年前に「地域おこし協力隊」として移り住んできました。
一方、フランスの美術大学を卒業後、東京でデザイナーとして働いていた八木さんは
地域活性化事業などに関わる〈富士吉田みんなの貯金箱財団〉の
プロジェクト〈cinolab(シーノラボ)〉の立ち上げ時に声をかけられ、
2年前に移住してきました。
赤松さんは移り住んで間もなく、空き家再生プロジェクトに取り組み始めました。
「まちの人たちに話を聞いたときに、
空き家というものがネガティブな存在でしかなかったんですね。
それで、まずは空き家を直して使っていくことが
まちを変えるきっかけになるということを皆さんに知ってもらうためのモデルとして
1軒の長屋を直していくことから始めたんです」(赤松さん)
そのときに手がけた物件が、SARUYAの裏にある〈ハモニカ横丁〉。
SARUYAの裏口を出て雑草の茂る砂利道を歩いていくと、
すぐそこにかつては飲み屋がひしめき合っていた小さな横丁があります。
ハモニカ横丁は、その道に建つ長屋の一角にありました。
建物のリノベーションは、赤松さんが協力者を集め、
大工さんの手も借りながら、すべて自分たちの手で手がけました。
「地域おこし協力隊の仕事は、
いかに地域をミックスして凝り固まったところを揉みほぐすか、
いかにいろんなところに顔を出して、地元の人や外の人と一緒に何かできるか、
というところにかかっているんですよね。
ハモニカ横丁をつくるときに、市役所から織物の会社に勤める人まで、
とにかくいろんな人たちに手伝ってもらって、
吉田じゅうの人たちとつながることができました。
ハモニカ横丁ができた当初は若い人たちが集まる場としても使っていたので、
あちこちから『あそこができてから人の流れが変わったよね』とか
『うちの空き家も使ってくれない?』
という声が寄せられるようになりました」(赤松さん)
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たびたび空き家の相談を持ちかけられるようになった赤松さんは、
移住して約3年の間に10軒ほどの空き家を改修し、
店舗や個人宅として再生させてきました。
でも、地域おこし協力隊の任期は3年。
任期終了を前にして「もっとこのまちに住みたい。ここに住み続けるには?
まちに遊びに来た人たちと地元の人たちとおもしろいことをしていくには?
もっと開かれたまちにするには……」と考えるようになり、
ゲストハウスを始めようと思い立ちました。
ちょうどその頃、八木さんもcinolabの仕事の任期を終えようとしていました。
「もともと僕はデザイナーとして地域の活性化に関わることに興味があり、
〈みんなの貯金箱財団〉の仕事に誘われてこのまちに移住してきました。
デザイナーがその土地の自然や文化をデザインすることが、
活性化につながっていくのではないかと考えたんです。
それで仕事の任期を終える頃に赤松からゲストハウスの話を聞いて、
空き家の活用にも興味があったので、やってみたいと思いました」(八木さん)
2015年3月、SARUYAをつくるプロジェクトがスタート。
おおよそ築90年という、もと美容院をリノベーションするところから手がけ、
開業資金の一部はクラウドファンディングで集めました。
建物を提供してくれたのはハモニカ横丁の大家であり、
近所のユースホステルのオーナーでもある方でした。
内壁のベニヤをはがし、天井裏をはがしていくと、雨水が漏れて柱が腐っていたり、
土台部分がない(!)などのさまざまな問題が。
それでも地元の人たちの協力を得て、なんとか同年7月、SARUYA完成。
無事にオープンを果たしました。
ホステル&サロンという名の通り、1階は広々としたサロンスペースとキッチン、
2階は男女兼用のドミトリー。
建物全体を通して、なんとも心地よい空気が流れています。
内外装と家具のデザインを手がけたのは、八木さん。
「僕は学生の頃からアートをやっていたので
何でも自分でやりたいという気持ちが強くて、
家のことなんかは、できるだけ自分でやってみたいと思うんです。
でも、建物を丸ごと手がけたのは今回が始めてだったので、
やっぱり難しいと思いましたね」(八木さん)
特徴的なのは、ゲストが滞在するスペースを広めにとっていること。
所狭しと2段ベットが置かれている通常のゲストハウスとは大違いです。
「うちは普通のゲストハウスよりも無駄なスペースが多いんですけど、
ベッドの数を増やすよりも雰囲気やゆとりを大事にしたかったんです」(八木さん)
ふたりは山梨出身のミュージシャン〈WATER WATER CAMEL〉のライブや、
甲府のゲストハウス〈BACCHUS(バッカス)〉との交流イベントなど、
さまざまなイベントも企画してきました。
「ここの話を聞いたりウェブで見たりして気になっている人は
少なからずいるんじゃないかなと思うんですけれど、
なかなか実際に一歩を踏み出すのは難しいかもしれません。
イベントは、そのきっかけになったらいいなと思ってやっています。
僕がいつも思っているのは、とにかく来てくれた方に
楽しい雰囲気が伝わって、来てよかったと思ってもらえること。
そのためには『僕らはこういうことをやりたいんです』と
メッセージを押しつけるよりも、僕らがここで楽しんで、
共感してもらえるのが一番いい。
普段からそういうことを意識して企画を考えたり、お客さんと話したりしています。
いかにその瞬間を楽しむか」(赤松さん)
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ふたりは目下、新しい施設を準備しています。
2016年8月、SARUYAの隣にアンティークショップ
〈明見入口商店(あすみいりぐちしょうてん)〉を、
ハモニカ横丁のある長屋の一角に新しい宿泊棟をオープン予定だというのです。
「下吉田・月江寺地区には、宿泊施設が圧倒的に少ない。
観光客のほとんどは河口湖周辺に泊まっています。
でも、この辺りに宿泊施設やお店がもっと増えれば、
観光客が集まってくることもありうると思っています」(八木さん)
正反対のようでつかず離れず、とってもうまく連携している赤松さんと八木さん。
最後に、これからやっていきたいことについて聞いてみました。
「いまこうして隣に八木さんがいて、
SARUYAの2軒隣にあるカフェでは僕の大学の後輩が働いているんですけど、
そうやって仲間が増え、プレーヤーが増えていくことが
まちにはプラスになると思っているんです。
このまちにプレーヤーが増えること。
僕が当面思い描いていることは、そういうことですね。
それから、僕と八木さんに共通するキーワードに“風景”ということがあります。
八木さんはデザインや空間づくりからそういうことに取り組んでいて、
僕はそこに“人の流れ”がないと風景というものができないと思っている。
そういう意味でお互いにうまく補完しあって、
まちの風景をつくっていけたらいいなと思っています」(赤松さん)
「うん。僕はまちの風景をどんどん良くしていきたいと思っている。
でも、そこに誰もいなかったらちょっと寂しいというのがあって。
赤松はそこへ人を呼び込むことができるから、彼の力は大事だと思う。
そういう意味では、僕たちの目的は合致しているのかなと思いますね」(八木さん)
8月25日(木)には、知人からの持ち込み企画で、
ミュージシャンの笹倉慎介さんとトシバウロンさん(John John Festival)による
ライブを予定しています。
新しい施設のオープニングイベントも兼ねるとのこと。
まちの風景がまた少し変わりそうです。
SARUYAの1階には、優に12人は座れるロングテーブルが置いてあります。
仕事のあとにここでみんなとビールを飲むのは、楽しいひととき。
「僕はブルゴーニュのワイン農家で働いていたことがあるんですけど、
そのときに従業員みんなで大きなコの字型の机を囲んで
ごはんを食べたのが、すごく楽しかったんですよ。
それでここにもそういうテーブルがあったらいいなと思ってつくりました。
使い方は、個々にかたまる方もいれば、みんなでわいわいやる人もいて、
みなさんそれぞれですけど、お客さんの反応はすごくいいですね」(八木さん)
※一番搾り 山梨づくりは、山梨の誇りを込めてつくった、山梨だけの味わいです。
問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く)
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