連載
posted:2016.9.5 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
今回で3回目の開催となる瀬戸内国際芸術祭(以下、瀬戸芸)。
9月4日で夏会期は終わり、10月8日から秋会期が始まります。
今回の瀬戸芸では「食」が大きなテーマになっています。
島の生活文化を最も表すものは「食」として、
2015年6月より「瀬戸内『食』のフラム塾」を開講。
県産料理や郷土料理、食と地域との関わり方などを学んだ参加者たちが、
瀬戸芸期間中に食プロジェクトとしてさまざまなプログラムを展開しています。
そんな食プロジェクトのひとつが〈本からうまれる一皿 壺井栄と庚申の夜〉です。
名前からしてどんな料理が出てくるんだろうと興味津々でした。
「小豆島といえば『二十四の瞳』」と言われるほど有名な小説があります。
島には映画のロケ地となった〈二十四の瞳映画村〉もあり、人気の観光地です。
その小説の作者が小豆島出身の壺井栄です。
〈本からうまれる一皿〉の料理は、壺井栄の小説の中から探し出されています。
小豆島町立図書館〈むとす館〉所属の「読書会」の皆さん12名が
『壺井栄全集』全12巻をひとり1巻ずつすべて読まれて、
「食」にまつわる記述を書き出されたそうです。
その記述をもとに、主催者である岸本等さんが島のお母さんたちや仲間と一緒に
地元の味つけにこだわってつくったお料理。
ただ当時の料理を再現するだけでなく、「今」の小豆島でつくられている
塩、そうめん、醤油、佃煮、オリーブなどを生かしてアレンジ。
そんな風にひとつひとつ本当にこだわってつくられています。
このプログラムはこれがコンセプトなんだな〜と思っていたら、
もうひとつ隠れていました。タイトルにもある「庚申の夜」。
はて? 庚申? こうしん?
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小豆島には大正時代まで「庚申信仰」という風習があったそうです。
庚申の夜にはお腹の中にいる3匹の虫が出てきて、
天の神様にその人の悪事を報告するので、出てこないよう寝ずの番をするというもの。
そのため、人々は集まって語り合ったそうです。
「長い話は庚申さんの晩にしよう」
そんな言葉があったそうです。
〈本からうまれる一皿〉は毎月1回、最終土曜日の夜に開催されます。
まさに現代版庚申の夜。こだわりのお料理を食べながら、
みんなで集まってわいわい語り合う夜会。なんともすてき。
私たちがうかがった8月の会はちょっと特別で、
会場は〈庚申堂〉、お料理はお弁当形式でした。
まさに当時、みんなが集まって語り合っていた場所です。
ちなみにいつもは坂手港〈eiカフェ〉で開催されています。
〈本からうまれる一皿〉は3月から始まり、
残りは9月24日(土)と10月29日(土)の2回です。
壺井栄のこと、庚申の夜のこと、小豆島の食のこと、
一気にいろんな小豆島を感じられると思います。
人気なので、事前の予約をおすすめします。
さてさて、ようやくおだやかでおいしい秋がやってきました。
ゆっくりと島を味わいに来てください。
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