連載
posted:2016.8.15 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
小豆島の北東のほうに「福田」という地区があります。
本州の姫路と小豆島を結ぶ福田港があり、その港を中心に集落が広がっています。
まわりは海! 山!
穏やかな時間が流れる、私の大好きな集落です。
福田地区へは、ホテルやスーパーなどが建ち並ぶ
島の繁華街(土庄港周辺)から車で約40分。
数えるほどしか信号がない道をひたすら走って40分くらいかかるので
なかなかの距離があります。
それゆえ頻繁には行けず……(ま、それほどまでに遠いわけではないのですが)。
先日ふと思いたち、久しぶりにその福田地区に行ってきました。
福田地区には、旧福田小学校を改修した〈福武ハウス〉があります。
この福武ハウスと、福田体育館を利用した〈福田アジア食堂〉、
旧福田郵便局を改修した〈家プロジェクト〉の3つの場所を中心に、
アート作品の展示、食を通した文化交流などのプログラムが展開されています。
また建築家の西沢立衛さんが設計した〈葺田パビリオン〉もあります。
この夏、秋は瀬戸内国際芸術祭の会場にもなっていて、
アジア6か国のアートセンターと共同で
『福武ハウスパートナー共同展 2016 “In Search of Balance”』が展開されています。
前回の瀬戸芸のときには、まだ小学校としての雰囲気がだいぶ残っていましたが、
今年は各教室を仕切っていた壁が抜かれたりしていて、前回とは違う印象でした。
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ゆっくりと作品を観たあとに、アジア食堂でお昼ごはん。
食堂に着くとアジアの香り!
ナンプラー(魚醤)の香りなのかな。この香りをかぐだけで、
途端にアジアのどこかの国にいるかのような気分になるから不思議。
ごはんは、食堂のすぐ横にあるデッキ(外席)で食べることができます。
ここがまたいい。大きな木々がやさしい影をつくってくれて、風が通り抜けていく。
このデッキの目の前にある葺田パビリオンを眺めながら、なんともいいお昼ごはん。
心地いい、ずっといたくなる、そんな場所です。
ここに来るたびに、ここはいい小学校だったんだなぁと思う。
とても気持ちのいい場所だから。
当時は地域の子どもたちが通い、地域の人たちが集まった場所。
いまは福武ハウスとなり、アジアの国々のアーティストたちが来て作品をつくり、
その作品を見に外から人がやってくる場所に。
廃校となってしまった小学校がその後どうなっていくのがいいのかは
地域によって違うと思うけれど、この旧福田小学校は
こうやって訪れることができる場所になってよかったなと私は思います。
そういう場所に育て上げていくことは、手間もお金もかかります。
常に誰かが関わり、動かしていないといけません。
それはとても大変なことだと思うけど、そういう場であり続けてほしいなと。
アートを観て、ごはんを食べて、ゆっくりと2時間くらい。
もう少し時間があれば、福武ハウスから離れて、
集落の中を歩いたり、海へ行くのもいいかも。
きっといい時間を過ごせると思います。
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