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おいしい!をぎゅっと詰め込んだ
大歩危・祖谷の秘境飯
「ひらら焼き」とは?

NIPPON 47 Beer Spots&Scene!
全国、心地いいビールスポット
vol.036

posted:2016.7.30   from:徳島県三好市  genre:食・グルメ

sponsored by KIRIN

〈 この連載・企画は… 〉  その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?

writer profile

Ikuno Fujii

藤井郁乃

ふじい・いくの●外資系OLを退職し、本州で一番人口の少ない市・室戸へ移住。普段はなかなか見えにくい生産者の想いや生産現場など、モノの背景にある物語を届けるべく活動中。地場産カフェの立ち上げや、地元食材を使った商品の開発の合間、畑仕事や自宅である古民家リノベにのんびり勤しみ中。 http://magazine-watashi.com/

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撮影:氏川彩加

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Supported by KIRIN

47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
徳島でコロカルが向かったのは、秘境と呼ばれる大歩危(おおぼけ)・祖谷(いや)地方。

祖谷峡で石集めからスタート!?

日本三大秘境のひとつに数えられる祖谷地域。
ここに、徳島のおもてなし文化を凝縮した料理があるのだとか。
その名も「ひらら焼き」。食べたらほっぺが落ちてしまう! 
そんなことを聞いたら、いてもたってもいられません。

徳島市から約2時間。
くねくねと続く細い国道を、奥に奥にずんずん車を走らせます。
下を見るとごうごうと流れる吉野川、上を見ると日本百名山・剣山系から
もくもくと雲が生まれているのが見えます。
窓を開けると、高地ならではの冷たい空気が肺を心地よく満たしてくれます。

大歩危駅に到着した私たちを迎えてくれたのは、
大歩危駅活性化協議会と三好市地域おこし協力隊のみなさん。

手づくり感があたたかい〈歩危マート〉。

石臼で挽きたてのお茶でおもてなししてくれました。

到着して早々、「よし、石切りに行くで!」
石を切る? どういうことでしょう。
頭に???を浮かべたまま、みなさんの車に続いて、さらに山奥へずんずん。
車から降りて、藪をかき分け山に入って、到着したのは豊かな水量の清らかな沢。
あれ? ひらら焼きは河原でやると聞いていたのですが……。

ひんやりとした空気が肌に心地よい、美しい沢。大きな石がごろごろしています。

「そうよー、まずは材料集め! ひらら焼きにはこれが必要なんよ」
そういって大歩危駅活性化協議会代表の山口頼明さんが拾い起こしたのは、
重さ40キロにもなろうかという大きな大きな石。
「ひらら焼きは、平たい石を鉄板に見立ててつくる料理。
河原にはぴったりの石があんまりないからね、ここで集めるよ」
そう、ひらら焼きの「ひらら」とは、平たい大きな石のことだったのです。

重い石を、道具を使ってひょいっと拾い上げます。

ひらら石を平らにするために、でこぼこな部分をトンカチとツルハシで割り落とします。

切り出した石は「おい台」で運びます。昔は車もなく、道も舗装されていなかったため、運搬手段といえばこのおい台でした。

ひらら石を景色抜群の河原に運んだら、いよいよひらら焼きの調理にとりかかります。
台をつくったら、その上にどーんとひらら石をセット。
薪をたいて、下からひらら石を熱します。
目安は、水滴を落としたらすぐにじゅっと蒸発するくらい。
今回のひらら石は大きいので、2時間ほど熱します。

「鉄板でもできるけど、ひららで焼くのとでは全然違うよ。
石の間から何か成分が出てくるんじゃあないかって思うくらい、
ひらら石で焼くのはおいしい。ほっぺたが落ちてしまうよう」とのこと。
待っている間のわくわくが、空腹を加速させます。

砂地の上に、台となるブロックと、薪をセット。薪も山から切り出してきたものです。この上にひらら石を置いて火をつけます。

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ひらら石がすっかり熱されたところで……

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ひらら石がすっかり熱された頃、協議会の山口さんが取り出したのはお味噌。
袋からそのまま絞り出して、ひらら石の上にぐるりと味噌の土手をつくります。
土手がひらら石の熱で黒っぽく固まった頃合いで、砂糖と酒で溶いた味噌だしと、
大歩危・祖谷ならではの食材をどんどん加えて焼いていきます。

土手とだしに使ったお味噌の量はなんと7キロ!

吉野川でとれるアマゴ。この辺りではアメゴと呼んで、日常的に食卓に登場するそう。

じゃがいもの一種のごうしも。このあたりは土が貧しく、日照時間も短いため、大きなじゃがいもをつくるのに難儀したそう。そこでできたのが、密度と旨みがぎゅっと詰まった小さなごうしもだとか。このあたりならではの祖谷こんにゃくと祖谷豆腐も加えます。

だんだん味噌だしの表面がふつふつ、ぐつぐつと動き始めました。
風にのってふわりと味噌の香りが辺りに広がります。
その香りにやられて腹の虫もぐーぐー暴れ出します。
アマゴが照り照りに輝いて、芋がやわらかくなったらついに完成!

ぐつぐつという味噌に合わせて動くアマゴがまるで泳いでいるよう。あたり一面に味噌の香りが広がります。

石切りから5時間。ついに完成!

箸を入れるとほろりと崩れるアマゴ。
甘みが強い濃厚な味噌だれと、淡白な白身がこれはこれは相性抜群。
ごうしもと祖谷豆腐、祖谷こんにゃくにも味噌が染みこんで、
もうたまりません。箸が止まらず、ぱくぱくぱく。

それに加えて見てください、大自然が織りなすこの景色。
味覚はこの地域のおいしいを詰め込んだ食材の旨み、
嗅覚をくすぐる味噌の香り、視覚に映るは美しい山と川、
聴覚に飛び込む水の音、触覚を心地よく刺激するひんやりとした空気。
ひらら焼きはまさに、五感においしい秘境飯!

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ひらら焼きは大歩危・祖谷のおもてなし精神があってこそ。

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ひらら焼きは大歩危・祖谷のおもてなし精神があってこそ。

この地域はもともと、その山の資源を生かして林業で栄えた地域でした。
道が舗装されておらず、車もなかった当時は、吉野川が木材の運搬手段でした。
山で切り出した木を、河原に運んで下流のまちまで運ぶのです。
そのため木を切り出してくれる木こりや、木材を買いに来る商人、運搬業者など、
河原が仕事の交わりの場でした。
そんな彼らをもてなすために始まったのが、ひらら焼きなのだそう。

当時は高級品だった味噌や、地元の食材をふんだんに使うのも、
これがおもてなしだからこそ。
合言葉は「まああがれ、まあ茶飲め、まあ食うてけ」。
おもてなし精神が、ひらら焼きにも体現されています。

食べろ食べろと、どんどん取り分けてくれます。中央が大歩危駅活性化協議会の中村竜司さん。

ひらら焼きのマイスター、梅本貞久さん。

そんな大歩危・祖谷のおもてなし文化を凝縮するかのようなひらら焼きですが、
近年その文化は途絶えかけていました。
大歩危駅活性化協議会の中村竜司さんは、この地域で生まれ
祖谷で育ちましたが、ひらら焼きを知ったのは大学卒業後。

「名前だけは聞いたことがありましたが、
実際にひらら石を使って食べたのは10年くらい前が初めてでした。
初めて食べたとき、ああここの文化だなあと思いました。
石を焼くところから始めるから、時間はとてもかかります。
でも、ただつくって食べるだけよりも、お客さんがずっと喜んでくれるし、
楽しんでくれる。おもてなしの心がより伝わる郷土料理だなあと」

そこで大歩危駅活性化協議会では、地元の若者を巻き込みながら
観光資源としてひらら焼きを広める運動を始めました。
石切りからやるには時間のかかるひらら焼きですが、
声がけをして民宿でのメニューに組み込んでもらうなどした結果、
観光客に気軽に楽しんでもらえるようになりました。

4月からは三好市に地域おこし協力隊が3名、加わりました。
そのうちのひとり、井上琢斗(たくと)さんはこう語ります。
「はたから見たらなんだこれ、と思うようなことでも、
その地域にとっては合理的な文化がたくさんあります。ひらら焼きもそう。
ひらら石を山から切り出すのも、木と一緒に運んで来られたからできたことです。
僕たちは地域の中で文化を守っていくのが役割だけれど、
そのためには外の人たちに体験してもらうことが大事だと思います。
伝統を体験でつないで守っていきたいです」

地域おこし協力隊の井上琢斗さん。学生時代ツーリングで祖谷に訪れたのがきっかけで、三好市に移住しました。

一度は消えかけた祖谷のおもてなし文化が、
若い世代に脈々と受け継がれようとしています。

今回飲んだのは、
地元の人と一緒につくった
〈キリン一番搾り 徳島づくり〉

「堅実で、働き者で、仲間意識が強い」と言われる徳島の人。そんな地元の人と地元のことを語り合ってつくられたのが、この〈キリン一番搾り 徳島づくり〉です。パッケージのイメージカラーは、藍色。さて、その味わいは……。

キリン一番搾り 徳島づくりってどんなビール? →

※一番搾り 徳島づくりは、徳島の誇りを込めてつくった、徳島だけの味わいです。

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く) 
ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。

information

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大歩危駅活性化協議会(歩危マート)

住所:徳島県三好市西祖谷山村徳善西7

TEL:0883-84-1111

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