室戸で丹精込めてつくられる黒糖は、夫婦の愛の結晶
備長炭や、歴史的なまち並みで知られる室戸市吉良川町。
吉良川にはふたつの川が流れている。
西の川と東の川と呼ばれ、名前の通りそれぞれが吉良川の西と東を走り海へ行く。
かつて台風の時には氾濫をし、道路を寸断して孤立集落をつくったこともあるという
やんちゃな川だが、その美しい水質は、室戸の豊かな生態系と農業を始めとした
基幹産業を支えている。
その東の川の再奥にあるのが日南(ひなた)集落。携帯の電波も入らない秘境である。
荒々しい波が打ち寄せる沿岸部とはまったく違って、山の裾野でのどかな田園風景が広がる。
このあたりはシキビ(シキミ・墓前に供える木)の組合があるそうで、
言われてみるとそこここにシキビの木が植わっているのが見える。
東の川のほとりにポツポツと立つ民家と、果てしない田園風景。
“ひなた”という名前にふさわしい、穏やかであたたかな雰囲気が集落全体から伝わって来る。
その日南で、伝統的な製法で黒糖をつくっているのが山川ご夫妻だ。
ベニヤでつくられた手づくり感のある製糖小屋に入ると、
朝の日の光と、小屋の中に6つある巨大な桶から立ち上る湯気が、
それはそれは幻想的な雰囲気をつくり出していた。

山川ご夫妻の製糖小屋。旦那さんであるテツオさんが材料を集めてご自身でつくった。
2メートルはあろうかというひしゃくを動かす手を止めて出迎えてくれたのがテツオさん。
奥さんのユリエさんと共に、毎年サトウキビを植え、収穫し、そしてこの製糖の日を迎える。
笑顔に人柄が滲み出るおふたりに、黒糖のつくり方を教わった。

妻のユリコさん。後ろにあるサトウキビはすべてふたりが種まきから収穫までを担ったもの。
ユリエさんの後ろに並ぶサトウキビは、すべて自分の手で植え、収穫したものだ。
よく見ると、長いサトウキビと短いサトウキビがある。
「長いのは海岸沿いの、高岡っちゅう集落に植えたやつ。あそこは日が昇ってから、
夕日が沈むまでずっと日が照っちゅうでしょう。
おかげに潮風も強いき、サトウキビが強くなろうとして太るのんかしら。
日南は奥やきね、日が短い分、あんまり長くならんのよ」

サトウキビを絞る。時には地域おこし協力隊など地元の人が手伝ってくれる。
バボボボボボ、と煙を上げだしたのが、数十年前の動力エンジン。
このエンジンの力で、サトウキビの圧搾機を動かす。
左側から機械にサトウキビを押し込む。
そうすると、強い力でプレスされてぺっちゃんこにされたサトウキビが右側から出てくる。
押し潰して絞り汁を下からジャージャー出すという仕組みだ。

動力エンジン。「もう古いき、気分屋さんでねえ。なかなか動いてくれんときもあるがよ」とユリエさんは言う。
この作業、簡単そうに見えて、意外と骨が折れる。
サトウキビ1本は、重いものだと2キロほどある。
加えて、圧搾機への入り口はなかなか狭く、力を入れて押し込まなければいけない。
サトウキビを押し込むテツオさんとユリエさんの口からは、
力んだ時に出る「ムッ」という息が漏れる。










































































