連載
posted:2016.2.1 from:愛媛県西条市 genre:食・グルメ
sponsored by 愛媛県
〈 この連載・企画は… 〉
愛媛のフルーツ、おいしいのは柑橘だけではないんです!
イチゴ、柿、栗、キウイなども実は愛媛の銘産です。
愛媛県産フルーツの生産者さんたちを訪ね、愛情をたっぷり注がれて育つフルーツを見てきました。
さらに、秋から冬にかけてぐっとおいしくなる愛媛県産フルーツを使った、
松山市と東京のスイーツ店もご紹介します。
writer's profile
Miki Hayashi
林 みき
はやし・みき●フリーランスのライター/エディター。東京都生まれ、幼年期をアメリカで過ごす。女性向けファッション・カルチャー誌の編集を創刊から7年間手掛けた後、フリーランスに。生粋の食いしん坊のせいか、飲料メーカーや食に関連した仕事を受けることが多い。『コロカル商店』では主に甘いものを担当。
credit
撮影:小川 聡
supported by 愛媛県
これまでご紹介してきたように、さまざまなおいしい果物が生産されている愛媛県。
その中で日本一の収穫量を誇りながらも、
あまりそのことを知られていないのがキウイフルーツ。
キウイといえばニュージーランドというイメージが強いので
「北半球でも栽培できるの?」と思われる人も多いかもしれませんが、
実はキウイの原産地は中国。また国内では愛媛県のほか、
福岡県や和歌山県などの地域でも生産されています。
そんなキウイですが大きく分類すると、3つの種類があります。
ひとつ目は〈ヘイワード種〉と呼ばれる緑色のもの。
ふたつ目は〈ゴールドキウイ〉などの名前で知られる黄色のもの。
そして3つ目が、まだあまり知られていない赤いもの。
この希少な存在である赤いキウイ〈レインボーキウイ〉を生産している高橋農園を訪れました。
愛媛県の東部に位置する西条市で
十数年にわたり〈レインボーキウイ〉を育て続けている高橋賢一さん。
以前は会社勤めをされていたそうですが赤いキウイと出会い、
その味わいに感動して専業農家となったという経歴の持ち主。
園地に到着して間もなく
「〈レインボーキウイ〉を見るのは初めて? まぁ、まずは食べてみてください」
と高橋さんに言われ、まずは試食をさせていただくことに。
「これは柔らかくておいしいと思うな」と、
高橋さんが半分にカットしてくれた〈レインボーキウイ〉。
まず驚かされたのは、黄緑色の果実の中央にかけて広がる鮮やかな紅色。
その美しい実にプラスチックのスプーンをあてると、
力も入れていないのにスプーンがスッと実の中に入っていき、
こぼれんばかりの果汁が実からあふれてきました。
そして、さらに驚かされたのが、その何ともいえない特別な味わいと舌触り。
緑色のキウイによくあるピリッとするような酸味や繊維質の固さが全くなく、
中央の白い部分でさえ柔らかい果実。そんな果実からあふれでるのは、
まろやかで濃厚な甘みとトロピカルフルーツを思わせる風味。
緑のキウイとは全く異なる、桃やマンゴーを思わせるような味わいに感動していると
「みなさん、色々な果物の味を連想されますね、
中には杏みたいな味わいと言った人もいました。
それで7つの果物の味があるということで〈レインボーキウイ〉という名前にしたんですよ。
ちょっとこじつけですけどね(笑)」と高橋さん。
7つの果物の味だけでなく、果物7つ分の甘みもあるのではないかと思ってしまう
〈レインボーキウイ〉ですが、今年は特に糖度が高いものが実ったのだそう。
「この間、糖度を計ったら23度ありました。
緑のキウイだと12度くらい、〈ゴールドキウイ〉で14度くらいで、
おいしいメロンだと14〜15度くらいなんですよ。
〈レインボーキウイ〉は小さなお子さんも、どんどん食べますね」と高橋さん。
一度食べたらキウイの概念が変わってしまいそうなおいしさの〈レインボーキウイ〉ですが、
突然変異によって生まれた品種なのだそう。
そんなこともあってか、高橋さんが栽培を始めた当初は栽培のノウハウも確立しておらず、
まさにゼロからのスタート。
そんな高橋さんが全身全霊をかけて育ててきた〈レインボーキウイ〉の園地を
拝見させていただきました。
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案内してもらったのは、高橋さんの3つの園地のうちのひとつ。
四方を囲むネットをくぐって中に入ると、
頭上いっぱいにキウイの枝葉が広がっていました。
何本もの樹が植えられているかと思いきや、この畑にあるのはたったの2本の樹。
「この樹は10年くらいのもの。枝を広がすほど収穫量が増えるので、
どれだけ広がせられるかが腕の見せ所なんですよ」と高橋さん。
除草剤は使用せず、魚を主原料とした有機肥料で育てられた樹は、
まさに高橋さんの〈レインボーキウイ〉への想いの結晶とも言うべき存在。
驚くほど甘い〈レインボーキウイ〉、鳥獣対策がさぞ大変かと思いきや
「木に生っている実はえぐみがあって、おいしくないんですよ。
ヘイワード種を山で育てると猿にやられてしまうんですが、
〈レインボーキウイ〉は猿も食べないですね」と、
これまた驚くことを教えてくれる高橋さん。
「ただ葉っぱが甘いので、春先の葉の芽がふくらむ時期に鳥がきますね。
以前、試しに若葉を天ぷらにして食べてみたら、
ウドやタラよりもよっぽどおいしかったですよ」
では、一体どうやってあの甘みが生まれるのかと訊ねると
「収穫して、0度近くまで一度冷やすんです。
冷やすことによってデンプン質が凍らないように糖を出す仕組みなんでしょうね。
そして注文をいただいてから出荷時期にあわせて貯蔵していたものに追熟をかけるんです。
そうすると、さっき食べていただいたような状態になるんですよ。
追熟のかけ具合も、実のできによって変えています」と高橋さん。
自然の恵みのみならず、人間の探究心と試行錯誤があってこそ生まれる
〈レインボーキウイ〉のおいしさ。でも高橋さんの探究はまだまだ続く様子。
「品種としては赤みの出方が不安定で、
切ってみるまで赤くなっているかわからなかったのですが、
一昨年あたりから赤みがしっかりしてきたんです。
そこで夏の暑い時季に、赤の色がでやすく、
さらに実も甘くなるように工夫をしたんですよ。
ただ糖度の高い実は生ったものの、日照不足の影響のせいか小振りになってしまって……」
小振りと言っても、品種としては標準的なサイズなのだそうですが
「やっぱり大玉を作るのが目標なんです」と高橋さん。
「〈レインボーキウイ〉を買ってくださるホテルのシェフや大手のバイヤーさんは、
日本を代表するような方々ばかりなので、
もうその人たちと勝負するつもりで育てていますから」
と〈レインボーキウイ〉にかける想いを話してくれました。
「もう一年中、なんだかんだ樹のことを考えていますね。
前は野菜や他の果物もつくっていたんだけど、今は〈レインボーキウイ〉だけ。
栽培を始めたら、もう他のことを考えたくなくなってしまって(笑)。
アドバイザーの方なんかはリスクが高いから、他のものもつくった方が良いと言うんだけど、
僕はこれでしょうがないものだと思ってます」
最高の〈レインボーキウイ〉を育てたい。
そんな高橋さんの飽くなきチャレンジ精神と情熱によって、
愛媛育ちの〈レインボーキウイ〉が世界中のフルーツ好きに注目される日も、
そう遠くないかもしれません。
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