コロナ禍によって、大阪の伝統文化である文楽も、
公演を自粛するなど、多大な影響を受けた。
そこで文楽公演の復帰はもちろん、その先にある活動を見据えて、
「Think LOCALー買って、食べて、参加して!キャンペーン」にて
(※このキャンペーンは終了しています)
文楽協会を支援する活動が始まった。
まずは初心者でも楽しめる文楽の魅力を知ってほしい。
文楽は約300年前から続く、大阪が世界に誇る伝統芸能。
伝統芸能、といわれるとちょっと身構えるかもしれないが
実は昔も今も庶民のためのエンターテインメント。
少しの準備さえすれば、この古くて新しい魅力に気づくはず。
文楽の世界をちょっとのぞいてみませんか?
江戸初期の「大坂」で生まれた文楽。その正式名称は「人形浄瑠璃文楽」で、
『曽根崎心中』などの名作を次々に生み出した竹本義太夫と近松門左衛門による
作品を上演した「竹本座」を皮切りに、大阪のまちで発展した総合芸術である。

〈国立文楽劇場〉は、〈中銀カプセルタワービル〉などで知られる黒川紀章による建築。
三業(語りの太夫、三味線奏者、人形遣い)が一体となり繰り広げられる人形芝居で、
その演目は大きく時代物、世話物、景事の3つに分けられる。
時代物は鎌倉から戦国時代の歴史物語、
世話物は江戸当時の恋愛や事件などを主題としたドラマ、景事は華やかな舞踊劇。
世界にも類を見ない伝統芸能として、
2008年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されている。
ずばり文楽とは? 大阪と文楽の関係とは?
これからの文楽の魅力をどのように捉え、発信しているのか?
舞台上のパフォーマーである太夫と三味線弾き、そして人形遣い、
3人の若手技芸員(ぎげいいん)に話を聞いた。

2018年(平成30年)1月に、8代目竹本綱太夫五十回忌追善の公演にて『摂州合邦辻』を語る。6代目竹本織太夫の襲名披露でもあった。(写真提供:竹本織太夫)
「大阪は、負け続けていても阪神タイガースをとことん応援するまち。
これだけ身びいきの強い大阪で、なぜ文楽最高! と言ってもらえないのか?
そこはまだまだ僕らの発信や提案が足りないからだと思っています」
そう語るのは太夫の竹本織太夫さん。
織太夫さんはいわば文楽という大阪カルチャーのスポークスマン。
舞台以外でもテレビやラジオへの出演、
そして自著『文楽のすゝめ』『ビジネスパーソンのための 文楽のすゝめ』などを通し
文楽の魅力を精力的に伝えている。

平成30年に6代目を襲名した竹本織太夫さん。
舞台で義太夫節を語る太夫の役割は、ただのナレーターにあらず。
舞台上手から、同じ演目内に登場するさまざまな人物を、
ひとりで語り分ける声の役者でもある。
織太夫さんから見た文楽の魅力は、日本文化が詰まっていることだという。
「まず文楽は日本語でやっている、ということです。
外国の音楽の歌詞よりは、わかろうと思えばすぐに理解できるはず。
それに文楽には文学、音楽、宗教、風習、歴史、そして本質的な精神性に至るまで、
日本のすべてが詰まっている、といっても過言ではありません。
囲碁を学ぶことや、俳句だって知ることができる。そこが大きな魅力なのです」
特に「関西人は文楽を2割増しで楽しめる」素養があるという。
なぜなら、舞台の多くが関西だから。
「文楽を見ると大阪のまちはアミューズメントパークのように見えてくると思います。
曽根崎だったり、北浜だったり、
大阪の人が知っている地名がいろいろと出てくるわけです。
観光視点としては、大阪にはお好み焼きや〈USJ〉もあるけれど、
文楽もありますよ、という提案をしています。
“いくたまさん”や“お初天神”など、
演目に出てくるスポットを巡礼することもできますしね」

太夫が舞台で読む「床本(ゆかほん)」。自筆である。
今回、文楽協会を支援している〈大丸〉の
「Think LOCALー買って、食べて、参加して!キャンペーン」。
(※このキャンペーンは終了しています)
大阪の心斎橋出身という織太夫さんは、
その〈大丸〉心斎橋店に個人的にも忘れがたい思い出があるそうだ。
「私たちの源流は道頓堀の竹本座ですが、
昔の竹本座の納入記録には
大丸さんから人形の衣裳が納品されていたという帳面も残っています。
だから大丸さんと文楽は、300年のご縁があるのです。
それに私の小学校の通学路には大丸さんがあった。
当時は地下通路にあったクッキー屋さんで、
毎日、試食用のクッキーをいただいて帰ったものです(笑)」