アート・音楽・食の宴 〈Reborn-Art Festival 2017〉 石巻で開幕!

Kohei Nawa, White Deer(Oshika)

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市の牡鹿地区。
この牡鹿地区を中心に、「アート」「音楽」「食」を楽しむことのできる
復興や活性化のための新しいお祭り〈Reborn-Art Festival〉が、
2017年7月22日(土)から51日間にわたって開催されます。

地域復興や振興につながる様々な循環を生み出す
たくさんの「出会い」を生み出すために、
フェスの期間は数多くの催しが行われます。

牡鹿半島を中心に行われる芸術祭には、草間彌生やバリー・マッギー、
ブルース・ナウマン、カールステン・ニコライ、名和晃平、皆川明(minä perhonen)
ら世界的アーティストらが参加。
国内外の現代美術家が地域と触れ合ってつくったアート作品が展示されます。

食は、石巻の魚介や鹿などの豊かな食材を活かしたコースを楽しめる
レストラン〈Reborn-Art DINING〉がオープンし、
シェフたちが牡鹿の食材を使い、思い思いのメニューをつくる
ポップアップレストラン「みちのくDINING」を開催。

ほか、さまざまなスタイルの音楽イベントが企画され、
参加者同士が交流するきっかけをつくるなど、
県外からも足を運びたくなる濃密な内容のイベントの開催が続々と決定しています。

音楽とともに巨大なラビオリとパエリアを振る舞うパーティ

フェスの初日となる7月22日(土)には、
食を中心にしたオープニングパーティー〈Ravioli and Paella〉が開催。

サンフランシスコにあるオーガニックレストラン
〈シェ・パニーズ〉の総料理長を務めたジェローム・ワーグと原川慎一郎が、
フードディレクターである目黒浩敬シェフや小林武史と共に、
食を通したアートパフォーマンスを行います。

「ラビオリとパエリア」をテーマに、石巻市や牡鹿半島から食材を選び、
ラビオリの具材を作り、全員で大きなラビオリの皮に包んで調理して振る舞います。
その際中に、Salyu+小林武史のライブをはじめ、
桜坂高等学校合唱部の合唱や、東浜小学校の獅子振りの披露もあり、
音楽でも会場を盛り上げる華々しいオープニングイベントとなり、
味覚も聴覚も満たされるはず。

こちらは、宮城県出身で石巻にゆかりの深い
『仮面ライダー』や『サイボーグ 009』などで知られる
漫画家の石ノ森章太さんとのコラボレーショングッズの販売も決定。

〈TAKT PROJECT
タクトプロジェクト〉が考える、
「戻るデザイン」とは?

これまで5シーズンにわたって、
持続可能なものづくりや企業姿勢について取材をした〈貝印×コロカル〉シリーズ。
今回からは、刃物やキッチン用品などの
商品企画・デザインを手がける貝印株式会社のスタッフが、
コロカル編集部と共に日本全国の未来志向のクリエイターを訪ねて、
ものづくりの技術から、デザインフィロソフィー、
ビジネススキームの話まで引き出していきます。
今回は、東京のデザイン会社〈TAKT PROJECT(タクトプロジェクト)〉を訪ねました。
連載第1回:“おせっかいな”デザイナー〈minna(ミンナ)〉が語る、デザインの意味って?

「いちデザイナーとして社会とどう関われるか?」

かつて〈COMPOSITION(コンポジション)〉というプロダクトを見て、
デザイン会社〈TAKT PROJECT(タクトプロジェクト)〉に興味を持ったという
〈貝印〉商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚 淳さん。
そこで大塚さんとともに、〈TAKT PROJECT〉の吉泉 聡さんを訪ねた。

吉泉さんはデザイン事務所の〈nendo〉に3年間勤めた後、
メーカーである〈ヤマハ〉のデザイン研究所に5年ほど勤めた。
その後、独立して2013年にTAKT PROJECTを立ち上げる。
一方で貝印の大塚さんも、デザイン事務所から現在の貝印へと職場を移した経歴を持つ。
ともに外部デザイナーからインハウスデザイナーへという共通の流れがあった。

「どの企業も同じですが、インハウスデザイナーはまずその会社の社員であることが前提。
でもそれ以前に“いちデザイナー”として社会にどう関われるか?
というところから考えてみたいと思っていました」
と独立の経緯を話してくれた吉泉さん。

〈貝印〉商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚 淳さん(左)と〈TAKT PROJECT〉の吉泉 聡さん。

TAKT PROJECTでは、クライアントから受けた仕事以外に、
自ら発信していくことを大切にしている。
そのひとつが前述した〈COMPOSITION〉である。

〈COMPOSITION〉は電子部品と透明なアクリルを混ぜ合わせて固めたもの。
電子部品同士は極細の特殊な電気導線で接続されており、家電としてきちんと機能する。
「どこまでが素材で、どこからがプロダクトか?」という
境界線への問いに対するプロトタイプである。

不思議な形だがちゃんと電気は通っているCOMPOSITION。

大塚さんはこのプロダクトの「異素材ミックス」に特に興味持った。

「貝印も来年110周年を迎える歴史のある企業です。
これまでずっと刃物をつくってきたコア技術を使って、
これから何を提案していくかを考える時期にきていると思います。
たとえば、『COMPOSITION』を拝見したときに、
当社の金属とほかの素材をミックスすることも可能ではないかと思いました。
そのような広がりが今後必要になってくると思います」(貝印・大塚さん)

異素材が混合(=COMPOSITION)されたユニークなプロダクト。

「新しいものをつくるときには『どこまで戻れるか』が重要だと思っています。
デザイナーが入れるのは、よくても企画からですよね。
製造方法に入りこむことは難しい。
しかし製造技術が決まっていると、当然つくるものがある範囲で決まり、
企画も決まってくる。
だから製造技術まで戻ってみると、すべてが変わる可能性があり、
ビジネスモデルも変わる可能性があります」(吉泉さん)

逆にいえば、製造技術からデザイン的な視点を持って変えていかないと、
本質的な意味では変わらない。それが「戻る」ということ。

「決められた枠の中では、おもしろいことは生まれにくいと思います。
みんなが同じ目的なので」(吉泉さん)

ものづくりには「すでに価値観が決まっていることに対してより洗練していくこと」、
「まったく違う価値観を生み出すこと」のふたつの方向性があるという。

前者は、少しずつアップデートしてよりよくなっていくこと。

「インハウスデザイナーは、本当に職人のようなスキルを持っている人が多いですよね。
そのデザインを洗練させていくスキルには驚くべきところが多々あります。
しかし洗練という価値観だけだと、
その延長線上ではバリエーションしか生まれにくいというジレンマがあります」(吉泉さん)

「特にインハウスデザイナーだと、
なんとなくわかっている領域内で解決法や方向性を探してしまいがち。
実は答えもある程度わかっている」(貝印・大塚さん)

もちろんそれ自体は大切なことだが、新しいものは生まれにくい。
しかし外部デザイナーだと少し役割が変わってくる。
別のやり方もあったほうが広い目で見たらおもしろい。
どちらがいいということではない。

一方、後者は提案型だ。
これまでは課題に対するソリューションがデザインの大きな役割とされていたが、
これからは課題そのものを提案していくこと、良質の課題を見つけていくことが大切だ。

「みんなが一生懸命に集中している場所から少しズレたところにも、いいものがあるはず。
それを見つけてたくさんの選択肢をつくることができれば、
より豊かな社会になると思います。それが課題発見です」(吉泉さん)

「たとえばあまり売れていない包丁があったとして、
それは単純に使いにくいからという理由ではなくて、
まったく違う場所に課題が潜んでいるかもしれない。
そういう視点ですね」(貝印・大塚さん)

視点をずらすこと、フレームをずらすこと。
そして延長線上ではなく、別の土俵をつくることも大切だということ。
それが得意なのがデザイナーという職業であり、
吉泉さんはそこにフォーカスした活動を行っている。

SIAF(サイアフ)ってなんだ? 
大友良英によるサブストーリーから
見る札幌国際芸術祭2017

8月6日から札幌で開催される札幌国際芸術祭(SIAF)2017。
今回は、具体的にどんなアーティストが参加し、
どんな作品が見られるのか、その一部を紹介していこう。

SIAF2017のテーマは「芸術祭ってなんだ?」。
これはSIAF2017ゲストディレクター大友良英さんが発した問いで、
その答えは、サブテーマ「ガラクタの星座たち」にもヒントが隠されている。
このテキストは、公式ガイドブック『札幌へアートの旅』の
特別付録にも収録しているので、ぜひ手にとってほしい。

そしてもうひとつのSIAF2017を巡るサブストーリー
「たった1枚のノイズだらけのレコードから広がる世界だってあるのだ」からは、
大友さんの個人史から生まれたアイデアが、多くの人と化学反応を起こすことにより、
この芸術祭がまたとない独自のお祭りになりそうなことがわかる。

ガイドブックでは、サブストーリーにそって巡るコースのほか、
いくつかのモデルコースを提案しているが、ここでは、
このサブストーリーに登場するアーティストやプロジェクトを具体的に紹介しながら、
SIAF2017をひもといていこう。

貴重な音楽シーンをアーカイブし続ける、沼山良明

大友さんが「わたしにとって本当に大きなものでした」と語る沼山良明さんとの出会い。
SIAF2017のエグゼクティブアドバイザーでもある沼山さんは、
1983年より札幌を拠点にNMA(NOW MUSIC ARTS)を主宰し、
即興や実験的な音楽を中心としたコンサートを企画してきた。

SIAF2017では、『NMAライブ・ビデオアーカイブ』が、札幌市資料館で公開される。
沼山さんが企画した200グループを超えるアーティストのライブを撮りためた、
貴重な記録映像だ。こういった前衛的な音楽シーンが、
個人によってアーカイブされているということにぜひ着目してほしい。

ガイドブックでは、沼山さんがNMAにまつわる
北海道の思い出深い旅についても執筆している。

これがアート? ものの新しい見方を提示する、クリスチャン・マークレー

大友さんのサブストーリーのタイトルにもある
「たった1枚のノイズだらけのレコード」の作者であるクリスチャン・マークレー。
いまや現代美術の世界でよく知られているマークレーは、
大友さんに衝撃を与えた80年代半ば頃から、
ターンテーブル奏者として知られるようになり、
大友さんともつながりの深いアーティストだ。

The Daily Eye

今回は、札幌芸術の森での展覧会「NEW LIFE: リプレイのない展覧会」に参加し、
『Six New Animations』などの作品が展示される。
これは、道ばたに落ちているさまざまな物が“旅する”映像アニメーション。
一見ゴミのように見えるものから、何やら新しい世界が広がっていくかのようだ。

Six New Animations 2016 (c)Christian Marclay. Courtesy White Cube and Paula Cooper Gallery

スマイルズの〈檸檬ホテル〉は 泊まって鑑賞して楽しむ 体験型アート作品

香川県の豊島に、古民家を改装した体験型アート作品があります。
その名も〈檸檬ホテル〉。
なんでも、鑑賞することも泊まることもでき、
宿泊はキャンセル待ちが出るほどの人気なのだとか。

作品なのにホテル?なぜ人気なの?と
疑問がわいてきますが、いったいどんなホテルなのでしょうか。

シンボルマークデザイン:takram design engineeringの渡邉康太郎さん、山口幸太郎さん、太田真紀さん、前澤知美さん。

ホテルの“作者”は〈Soup Stock Tokyo〉
〈PASS THE BATON〉などを運営するスマイルズ。
〈瀬戸内国際芸術祭2016〉にアーティストとして
参加して〈檸檬ホテル〉を発表し、
会期終了後もホテルを作品および宿泊施設として運営しています。

檸檬ホテルは高台のレモン畑のなかにあります。
おもてなしも、豊島レモンを使った自家製レモンサワーに、レモンを効かせた料理、
レモンの木の下のお風呂、レモンで草木染めされた布などとレモンずくし。

古民家の改装を手がけたのは岡野道子建築設計事務所の岡野道子さん。

シンプルでいて、なんとも温かみのある空間です。
たしかにこんなに素敵なお部屋なら、一度は泊まってみたい!

土地の魅力をリサーチする 〈京都:Re-Search in 福知山/京田辺〉 参加アーティスト募集中

京都府が取り組むアーティスト・イン・レジデンス事業〈京都:Re-Search〉が、
ただいま今年の参加アーティストを募集中!
昨年は舞鶴で実施された本プログラム、今年は2年目としてますますパワーアップしました。

アーティスト・イン・レジデンスとは、芸術制作を行う人を招聘し、
その土地に滞在しながら作品制作を行う事業のこと。
空き家・商店街の空店舗を活用した地域振興や、
人の交流による地域活性化の役割もあると近年注目されています。

〈京都:Re-Search〉、今年の募集は、福知山と京田辺の二箇所。
期間は今年の8月21日から9月3日までの14日間。

対象は京都府内のみならず、ほかの地域で活動する若手のアーティストや工芸家、
デザイナー、建築家、学生など、クリエイティブな分野で活動している人たち。
福知山市又は京田辺市に滞在しながら、各自が設定したテーマに沿って、
地域の風土や歴史等の調査を行い、そこでの発見を活かしたアートプロジェクトや
作品プランの構想を立て、次年度にそのプランの実現を目指します。

同時に、活動全てを記録、データ化していき、アートの視点による
地域の新しいドキュメントを作成していくのだそう。

のんちゃんが巡る、札幌のまち。
SIAF2017の舞台の一部を紹介!

8月6日から10月1日まで札幌を舞台に開催される札幌国際芸術祭(SIAF)2017。
2014年にスタートし、3年に1度開催されるこの芸術祭がもうすぐ幕を開ける。
2回目の開催となる今回は、ゲストディレクターに音楽家の大友良英を迎え
狭義のアートにとどまらない、さまざまな作品やアーティストがまちを彩る。
例えば美術館だけでなく、まちなかや公園、市電でも作品が展開されるのだ。
今回は、開幕を控えた札幌のまちを、“創作あーちすと”のんが巡り、
SIAFの舞台の一部をご紹介!

歴史ある建造物! 札幌市資料館

大通公園の西に位置する札幌市資料館は、札幌控訴院として
1926年(大正15年)に建てられた、歴史ある建造物。
入り口や階段のステンドグラスなど、趣ある建物に思わず見入るのんちゃん。

会期中、札幌に滞在しながらあちこちに出没する予定のミュージシャン、テニスコーツが
この資料館の部屋を拠点としたり、市民とアーティストによるアートプロジェクトも。
1階にはSIAFラウンジがあり、インフォメーションセンターにもなっている。

とにかく長~い! 狸小路商店街

北海道で最古の商店街のひとつ、狸小路商店街も、SIAF2017の舞台に。
狸小路商店街は、西1丁目から西7丁目まで、
約1キロにわたり約200軒が軒を連ねるアーケード。
まちの人たちの暮らしを支える店から観光客でにぎわう店まで、
活気にあふれる商店街だ。

この狸小路商店街に、「狸小路TV」が出現。
特設スタジオから番組を配信し、商店街の店舗に設置されたテレビに流れたり
上映やトークイベントを通じて、テレビ表現を見つめ直していくという企画だ。

狸小路の映画館、シアターキノ

その狸小路6丁目に位置する映画館〈シアターキノ〉に立ち寄ったのんちゃん。
シネコンなどでは上映されにくい、良質な映画をラインナップしている。
実は、SIAF開幕前日の8月5日から、のんちゃんが主演した
映画『この世界の片隅に』がこの劇場で上映されるのだ。
シアターキノの壁には、ここを訪れた監督や俳優たちのサインがびっしり。
のんちゃんのサインもどこかにあるので、探してみて。

シアターキノに併設されたカフェ〈キノカフェ〉には、映画のパンフレットがたくさん!
まちなかのビルの中とは思えないような、ほっと落ち着ける空間。
会場巡りに疲れたら、ここでひと休みするのもいいかも。

チームラボ 『かみさまがすまう森のアート展』 佐賀県・御船山楽園の大庭園が デジタルアート空間に!

『かみさまの御前なる岩に憑依する滝 / Universe of Water Particles on a Sacred Rock』teamLab, 2017, Digitized Nature

2017年7月14日(金)〜10月9日(月)、佐賀県・武雄にある御船山楽園にて
ウルトラテクノロジスト集団、チームラボによる
〈チームラボ かみさまがすまう森のアート展〉が開催されます。

見どころは、庭園内で体験できる「自然が自然のままアートになる」アートプロジェクト。

たとえば『かみさまの御前なる岩に憑依する滝』は、
高さ3030mm、幅4550mmの巨岩に滝の姿が現れるプロジェクションマッピング作品。
水の動きを物理計算し、滝の動きがリアルに表現されます。

舞台となる御船山楽園は、1845年(江戸後期)に創設された国登録記念物の名勝地。
敷地の境界線上には、日本の巨木ランキング第7位に入る樹齢3000年以上の大楠が、
庭園の中心には樹齢300年の大楠があります。

また、森には巨石に囲まれた正一位稲荷大明神が祀られ、
洞窟には、日本で最初の大僧正・名僧行基が彫ったと伝えられている
三仏体の磨崖仏や五百羅漢も。ここは、遙か昔から自然と人との営みが
美しい文化的遺産を育んできた場所なのです。

『Untitled』teamLab, 2017, Digitized Nature

本展では、50万平米にも及ぶ敷地に13個の作品が展示され、
庭園がデジタルアート空間に変わります。
これは迫力ありそう!

『夏桜と夏もみじの呼応する森 / Resonating Forest - Cherry Blossoms and Maple』teamLab, 2017, Interactive Digitized Nature, Sound: Hideaki Takahashi

加計呂麻島で映画舞台の民家が
宿〈リリーの家〉として
今夏オープン!
伝泊 vol.2

伝泊 vol.2

こんにちは。一級建築士事務所アトリエ・天工人の山下保博です。
第1回目では、奄美の伝統的な建築の特徴と、
〈伝泊〉のはじめの2棟を立ち上げたお話を読んでいただきました。

〈伝泊〉は、“でんぱく”と読みます。伝統的、伝説的な古民家を探し出して、
改修することで宿泊施設として蘇らせ、
さらに地域のコミュニティとして開放する仕組みのことで、僕のつくった造語です。
その第1弾の宿が、奄美大島に2016年7月にオープンしました。
(詳しくは、第1回目にて

僕の原点は、生まれ育った奄美大島にあります。
豊かな自然を湛える奄美は、砂、土、石、海、そして動植物……とまさに素材の宝庫。
ここで育ったことは、間違いなく僕の礎になっています。

モノとしての素材も、知や時間という素材も、すべては地域の宝。
地域の素材を生かすという考え方をすると、空き家も地域の大切な資源です。
残っているものの7〜8割は残し、直せるところは補修して使う。
建物の保存だけではなく、それを利活用して経済がまわることが大切だと思っています。

今回は、現在改修中で、奄美群島内のひとつ、加計呂麻島にこの夏オープンする2棟と、
奄美市でオープンしたばかりの1棟についてお話します。

寅さんとマドンナの思い出の「リリーの家」

次の世代に残していくべき伝統的な古民家を探してリサーチを行っていた僕たちは、
奄美大島を離れて加計呂麻島へ渡りました。
実は、加計呂麻島の諸鈍(しょどん)という集落に
映画『男はつらいよ』の撮影に使われた家が残っているのです。

「リリーの家」と呼ばれるこの家は、渥美清主演、
シリーズ第48作『男はつらいよ 紅の花』(山田洋次監督)で、
寅さんとマドンナのリリーが暮らしているシーンを撮影した家です。
この家は、長い間地域の人たちや観光客からも「リリーの家」と呼ばれ親しまれています。

現在改装中のリリーの家。2017年夏にオープン予定。

でも何年も空き家になっていて、僕が家を見たときの第一印象は、
すたれてしまった、かわいそうな家という感じ。
さっそく持ち主を探しましたが、現在は行政に譲渡されているということがわかり、
役場でお話をうかがいました。

すると、地元の方や映画ファンから愛された家ではあるけれど、
修繕して保存するには費用がかかりすぎる。
しかし文化遺産というほどのものでもない、解体される危機に瀕していたのでした。
僕の伝泊の活動の話をすると、ぜひ一度見てほしいとのこと。

外部に2か所アルミのひさしが付いており、昔の外観を損ねている。

内部は、白アリの跡があったり、床が腐っていたり、ひどい状況でした。
しかし、今ならぎりぎり間に合いそう。
というよりも、今直さなければ壊すしかない、すぐにでも取り掛かる必要がありました。
それで僕が行政から借りて改修し、宿泊施設として運営すると同時に、
住民にも開放する場所にすることに決めました。

窓からは集落の様子が見える。

住民説明会を開き、集落の皆さんの意見を聞くと、できるたけ長く使ってほしい。
島出身者の人が面倒をみるのは良かった。住民にも開放してくれてうれしいというコメント。
地域おこし協力隊のサポートもあり、宿泊施設としてのほか、
ダンス教室や学童保育として使う案も出ているんですよ。

道を挟んで海が見える。広縁を増設中。

最後に、宿の名称をどうしようとなったとき、
集落からも親しまれている「リリーの家」という名前をぜひ使いたいと考えました。
それで、山田洋次監督へ「リリーの家」という名称を
使用させていただきたいとお願いに行ったところ、
監督もご快諾くださり、晴れて伝泊「リリーの家」としてオープンすることになりました。

諸鈍地区にある「寅さんは、今」の石碑。

〈真昼の記憶〉 木と紙を通して、日々を刻む。 辻有希さんと阿部寛文さん による展覧会を開催!

札幌・東京・ドイツにて、
辻有希さんと阿部寛文さんによる
木と紙の作品展〈真昼の記憶〉が開催されます。

ふたりによる展示は2013年の〈朝に起きる。〉、
2014年の〈そして、夜がくる。〉以来、3年ぶり。
今回は私たちが1日のなかで残す行為の奇跡を
“記憶”ととらえた新作を発表します。

Photo:Natsumi Chiba

真昼の記憶

「朝に起き, そして夜がくる.
その一日の中に私たちは行為を残す.
その行為は, 手の工程をただ残したものではなく,
あなた自身のものとして辿れる記憶である.
木と紙を通して, その日々を刻む.」

Photo:Natsumi Chiba

Photo:Yohey Goto

Photo:Natsumi Chiba

辻さんは、木のうつわやアクセサリー、モビールなどを手がける木工作家。
北海道の札幌に生まれ、現在も札幌を拠点に活動されています。

作品には、道産材を使うことが多いという辻さん。
北海道で育った木はほど良い硬さで、うつわに適しているのだとか。
特に北海道にしかないエゾヤマザクラなど、サクラの木が好きなのだそうです。
木のうつわは使い込むほどに味わいが出てくるので、経年変化も楽しめそう。

Photo:Natsumi Chiba

“おせっかいな”デザイナー
〈minna(ミンナ)〉が語る、
デザインの意味って?

これまで5シーズンにわたって、
持続可能なものづくりや企業姿勢について取材をした〈貝印×コロカル〉シリーズ。
今回からは、刃物やキッチン用品などの
商品企画・デザインを手がける貝印株式会社のスタッフが、
コロカル編集部と共に日本全国の未来志向のクリエイターを訪ねて、
ものづくりの技術から、デザインフィロソフィー、
ビジネススキームの話まで引き出していきます。

デザイナーという職能の現在位置

〈minna(みんな)〉というポップでユニークな名前を冠したデザイン会社がある。
この社名には、会社として、そしてデザイナーとして目指す方向性が示されている。
「みんなのためにみんなのことをみんなでやっていきたい。」
というコンセプトに込められた3つの「みんな」が柱だ。

今回、minnaに取材にうかがったのが、
貝印商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚 淳さん。
大塚さんは、3つのデザイン賞(ジャーマン・デザイン・アワード、
レッド・ドット・デザイン賞、グッドデザイン賞)を受賞した
〈Pure Komachi〉というグレーターなども担当しているデザイナーだ。

貝印商品本部デザイン室チーフマネージャーの大塚 淳さん。

大塚さんがデザインを手がけたもののひとつ〈Pure Komachi〉。

同じデザイナーという職種でありながら、インハウスと外部という違いがある両者。
まずは上記の3つのコンセプトについて話が始まった。

美術大学在学中の3年生の当時から、先輩と共同でデザイン会社を立ち上げ、
卒業後もそのまま働いていたminnaの長谷川哲士さん。
卒業して1年ほどで独立したが、多くの人が「一旗揚げたい」と思って独立するのに反して、
独立自体が目的ではなかったという。
「デザイナーとして達成したい目標、
そして社会に対して提供したいバリューについて自問自答を繰り返すなかで、
これは独立しないと目標に近づけないかも……と思ったんです。
角田と話し合い、考えを深めていき、
最後に残った言葉が『みんな』というシンプルな3文字でした。
これを僕らの社名にしたいと心底思ったんです」(長谷川さん)

仲むつまじいminnaのふたり。

公私ともにパートナーの角田真祐子さんもこう話す。

「学生時代から、見た目ばかり重視していては、
社会に機能するデザインにならないのではないかと、もどかしく思っていました。
社会に出たときにどう機能していくのかイメージできないと
意味がないと感じていました」

こうした想いを練り上げていった結果、前述したminnaのコンセプトにつながった。
たとえば「みんなのために/for everyone」。
まだまだ世の中にデザインが届いていないという思い。

「デザイン業界にいると、みんなデザインに興味があるし、
世の中のものが何かしらデザインされなくてはいけないということを理解できますが、
役所や病院など、普段の生活を振り返ると、
デザインされていない側面がたくさんあることに気がつきます」(長谷川さん)

まだまだデザインされていない場所やものが、たくさんあるということ。
そしてもうひとつは、そもそもデザインという仕事がどんなものか認知されていないこと。

「地元の友だちに“デザイナー”をやっていると言うと、
『ファッションをやっているの?』と聞き返されます。
デザイナーはもっと広いジャンルに関わっているのに、それくらいにしか認識されていない。
それはデザインの意味や必要性が伝わってないということ。
逆に、僕たちがきちんと伝えられていないということでもあります。
どちら側の問題でもあるけど、
デザイナー側から歩み寄って解決できることも相当にあると思っています」(長谷川さん)

髪型が変わったら一大ニュースの似顔絵アイコン。

ふたりの母校である武蔵野美術大学の広報物。

〈幸せなお家〉 建物の再生もタイルで! タイルのまち、多治見にて新たな 建物再生プロジェクトが始動

藤森照信さんの設計による〈多治見市モザイクタイルミュージアム〉がオープンし、
「日本最大のモザイクタイルの生産地」として盛り上がっている多治見市笠原町。
このユニークな施設のオープンについては、
以前コロカルにてご紹介しました。

多治見市モザイクタイル ミュージアム(2016年6月オープン) (c) Akitsugu Kojima

いま、そんな笠原町でタイルを使った
ユニークな建物再生プロジェクトが始まっています。

その名も〈幸せなお家〉プロジェクト。
ミュージアムのほど近く、笠原神明宮の脇に
ひっそりと建つ「カネ鹿大岩鹿兵商店」の
旧貼場(はりば)が解体されそうになっていたところを
買い取った方が建物を残していくために始めました。

修繕前のようす。カネ鹿大岩鹿兵商店の大岩さんによると昭和20年代後半頃に建てられた建物なのだそう。

現在、近所の方々やミュージアムのスタッフ、
名城大学の学生さんたちなどが参加し、建物の修繕が少しづつ始まっています。

ユニークなのは、建物の修繕にタイルを活用していること。
いまはつくっていないビンテージのタイルも使っているそうです。

どこかなつかしい味わいのあるタイルたち、かわいいですね!

幸せなお家のためにテーブルをつくり届けてくれた名城大学の皆さん。

「貼場」とは、モザイクタイルを出荷するための加工をほどこす作業場のこと。
モザイクタイルは通常、30×30センチメートルほどのシートに貼って出荷されます。
その作業が行われていたのが、貼場。
地元の方は旧貼場にいると「今でも手を休めることなく仕事をしていた
頃のエネルギーを感じます」といいます。

施工現場でタイルを1枚1枚貼るのは大変なため、モザイクタイルはシートに貼られ出荷されます。写真はシート貼りが済み、出荷される時の状態。

現在幸せなお家は無料開放され、どなたでも見学できるようになっています。
今後は展示やお店などを展開していくとのこと。
修繕を手伝ってくれるボランティアも募集中です。
タイルの張り方も教われるので、気になる方は参加してみてはいかがでしょうか?
モザイクタイルミュージアムと合わせてぜひ行ってみたいですね!

〈清流の国ぎふ芸術祭
Art Award IN THE CUBE 2017〉
新しい公募展の芸術祭がめざすもの

「身体のゆくえ」をめぐるキューブ空間

岐阜市にある岐阜県美術館では〈清流の国ぎふ芸術祭 
Art Award IN THE CUBE 2017〉(AAIC)が開催されている。
公募によって選ばれた作品が展示された現代美術展だが、
特徴的なのは、大型の立方体の空間の中でそれぞれの作品が展示され、
そのキューブが美術館の館内、一部館外に設置されているということ。
それぞれ作品の形態も技法も素材も異なり、
いろいろな作品世界が見られるショーケースのような展覧会になっている。

このフレームが規定で決められたキューブの大きさ(W4.8m×D4.8m×H3.6m)。この空間の中にそれぞれの作品が展示される。〈清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2017〉は、6月11日まで岐阜県美術館で開催中。

県展をリニューアルすることが発端となり、新しく誕生したAAIC。
第1回目となる今回は「身体のゆくえ」というテーマで、
新しい才能の発掘と育成を目的に開催された。
選ばれた15組の作家たちは年齢層も幅広く、
活動の拠点も地元岐阜から東京、関西までさまざま。

バラエティに富んだ作品が並ぶが、作品のユニークさもさることながら、
審査員の顔ぶれがすごい。
美術家のO JUN氏や中原浩大氏、小説家の高橋源一郎氏、
哲学者の鷲田清一氏、ダンサーの田中泯氏など、
県の公募展の審査員にしては異例ともいえるような顔ぶれだ。
さぞかし有名なキュレーターやディレクターが後ろで糸を引いているのかと思いきや、
地元の美術関係者たちが中心となった企画委員会により議論され、
岐阜県が中心となった実行委員会が運営しているのだそう。

「アートでまちおこしをという出発点ではなく、
本気で現代美術の新しい潮流をつくりたいというのが企画委員会の考えなんです。
みなさんとても真剣で、一生懸命、議論しながら進めてきました。
伝統を大切にしながら、新しいものを生み出していこうという、
岐阜ならではの公募展になったと思います」
と、岐阜県文化創造課の鳥羽都子さん。熱い思いがつくりあげた展覧会のようだ。

中原浩大賞を受賞した『Mimesis Insects Cube』。メガネや文具などいろいろなものを解体した部品を再構成してつくった昆虫の造形物がキューブを埋め尽くす。作家の森貞人さんは1950年生まれで愛知県を拠点に活動。

三輪眞弘賞を受賞した『移動する主体(カタツムリ)』は、まずキューブの外から見た瞬間、度肝を抜く。中にはまた別の「身体」が。長野と東京を拠点とするチーム〈耳のないマウス〉による作品。(写真提供:清流の国ぎふ芸術祭Art Award IN THE CUBE 実行委員会)

展覧会がスタートして2日目、岐阜県美術館の館長である
日比野克彦さんによる作品講評会があった。
講評といっても、単に日比野さんが新人作家に対して
評価やアドバイスを下すのではなく、会場をめぐりながら、
その場にいる作家と対話しながら作品のねらいなどを紹介していく会となった。

『縫いの造形』は、糸で紙を縫い、キューブの壁に縫いつけた作品。キューブの中に入ってみると不思議な感覚に包まれる。中村潤さんは京都出身のアーティスト。

中村潤さんの作品『縫いの造形』は、キューブと同じ大きさの紙のキューブをつくり、
いろいろな糸を縫い込んで、それを少しずらしてキューブの壁に縫いつけるという作品。
一見、静かな作品に見えるが、制作はキューブを出たり入ったりしながら
縫うという動作の連続で「私の体はキューブのそこらじゅうに満ちてます」と中村さん。
日比野さんは、「針がぶすっと刺さったり、針に糸が滑る振動が伝わったり、
縫うという行為の快感ってありますよね」と共感したようす。

日比野さんは過去に、半透明のプラスティックの段ボールを挟んで
ふたりひと組で向き合い、針を刺し合って縫いながら
絵を描いていくというワークショップをしたことがあるそう。
針と糸が行ったり来たりすることで、知らない人とのあいだに、
ある種の関係性が生まれるという。
中村さんは、紙はひとりで縫い、壁はふたりで縫ったそうだ。

「意外なところから針が出てきたり、私が何かを描こうと思っても、
向こうは思っていなかったり、裏にまわると思ってもいない形が表れたり。
いろいろなせめぎ合いがありましたね。
自分以外の体との関わりがとても感じられました」と中村さん。

「縫っているときの、あの感覚が好きでたまらないという人じゃないと、ここまでできないですよね。糸が持っている力、縫うという行為に何かある気がします」(日比野)「潜って出て、潜って出て、ひたすらニヤニヤしながら制作してました(笑)」(中村)

カラフルな糸は、中村さんの亡くなった祖母が
編んだセーターをほどいてとってあったという毛糸や、
自分が小さいときに気に入って持っていたひも、人からもらったものある。

「縫い目を見ると、自分のセーターだったり、もらったプレゼントだったり、
それぞれ連想するものがあって、こうして見ると不思議な気持ちがします。
ほかの人の物にはほかの物語があって、それが重なり合わず、
併走するくらいでちょうどいいと思っています」

中村さんは今回の制作で、次の作品につながる大きな手応えを感じたようだ。

森とクラフトの町・飛騨で デザインキャンプ 〈Smart Craft Studio 2017〉 がスタート!

豊かな森、豊富な木材、
そしてそれらを生かす伝統的なものづくりで知られる岐阜県・飛騨市。
その飛騨を舞台に、5月28日(日)から、
昨年に続き2度目となるデザインキャンプ
〈Smart Craft Studio Hida 2017〉がスタートしました。

23日間に渡るデザインキャンプには、
ニューヨークのパーソンズ美術大学や、カナダのトロント大学、
香港大学や台湾の実践大学など、世界の大都市で学ぶ学生約30名が参加。

メディアテクノロジー、ファッション、プロダクトデザイン、建築などを専攻し、
さまざまなバックグラウンドを持つ彼らと、各大学の教授が、
実際に飛騨に滞在しながら、飛騨の林業や木工、伝統の組木技術を学ぶと共に、
最先端のIoT技術などを用いて、サービスやプロダクトを制作していきます。

飛騨の林業や木工、組木技術を学ぶ23日間

昨年の〈Smart Craft Studio 2016〉の様子

学びの拠点、制作の会場となるのは、
全6種のデジタル工作機器が設置されている、デジタルものづくりカフェ〈FabCafe Hida〉。
プログラム期間中は会場を解放し、誰でも、いつでも、自由に見学が可能です。
世界各国の学生たちとの交流はもちろん、
期間中に実施される特別ゲストからのトークや講義、
中間発表や最終発表の場にも無料で参加できます。

昨年の〈Smart Craft Studio 2016〉にて。広葉樹を扱う製作所を訪問

昨年の〈Smart Craft Studio 2016〉にて。組木技術を学び、実習する学生たち

山梨の〈五味醤油〉に生まれた
食のワークショップスペース。
新築から、まちのリノベーションへ。
PRIME KOFU vol.2

PRIME KOFU vol.2

前回は、オランダで建築を学び、震災復興のために訪れた
福島県いわき市での空き家から複合施設へのリノベーション。
これを機に山梨へ戻ることを決めたのですが、
第2回目は、地元である山梨に戻ってきてから、最初のプロジェクトができるまでのお話。

山梨に戻ってきたはいいが、仕事がない

海外東京と渡り歩いて戻ってきたはいいけれど、

「おかえり、さっそく仕事をお願いします」 

なんてことはありえないわけで。仕事のあてがあったわけでもないので、
しばらくは失業保険やアルバイトで食いつなぐ生活が続きました。

地方は、親世代から家業として建築業を営まれている方や大手ハウスメーカー、
工務店などがほとんどの仕事を請け負っており、地縁、既存コミュニティのつながりが強く、
新規参入で独立開業することはなかなか難しい社会状況です。

そこで僕が山梨に戻り、最初にやるべきことは、福島での震災復興でもそうだったように、
地元の方々との交流をもつこと。特に、
僕と同様に地方都市に対して問題意識をもつ地元の諸先輩方のお話に耳を傾けることでした。

つながりを育てること

最初の1年間は、ありとあらゆるイベントや集まりに顔を出しました。
鯉淵さんはどこにでもいるけど、
何をやっているのかよくわからない人と言われたほどです(笑)。
そのフットワークの軽さが功を奏したのか、
1年の間でとても多くの方とお話をさせていただき、
よい関係性を築かせていただくことができました。

山梨は県人口80万人と少なく、非常に狭いコミュニティなので、
なにかしらどこかで誰かがつながっています。
そうすると、友だちの友だちは実は友だちだったみたいなことがどんどんと連鎖していき、
ちょっとした出会いがさらに新たな出会いを生んでいく。

地方が東京のような大都市圏と大きく違うことは、
この人のつながりの連鎖がものすごく速いことです。
建築に限らず、地方で独立して、仕事のフィールドを開拓するならば、そうした連鎖のなかで、
自分がなにを思い、どんな役割でなにができる人なのかを明確にしてアピールしていくことが
とても重要なのだということがわかりました。
これは福島の復興支援で学んだこととも重なります。

そのなかでも、ちょうど僕が山梨に戻るタイミングで開かれていのが、
毎年、春先に行われる富士吉田市の〈げんき祭〉。
富士吉田市の地域おこし協力隊や行政職員が中心となり、
山梨のアートディレクターやデザイナーさん、一般の方など、
山梨をもりあげている若者たちが多く集まるお祭りでした。
今思えば、このイベントでできたつながりが、
僕にとってはかけがえのないとても重要なものとなっています。

2013年からスタートした〈ハモニカ横丁げんき祭り〉は、空き家になってしまった6軒長屋〈ハモニカ横丁〉を舞台に、さまざまなイベントや出店が行われます。

五味醤油との出会い

そんななかで出会ったのが〈五味醤油〉の6代目である五味 仁さん。
五味さんは、家業のお味噌屋さんを継ぐために
僕よりも5年以上前に山梨へUターンされた方で、
現在、妹の洋子さんと一緒に発酵兄妹というユニットを組み、お味噌だけではなく、
発酵文化や食文化などを広めるため、県内外で、とてもおもしろい活動を続けている方々です。

僕と同じく甲府にお店を構えていることもあり、いろいろな場所で顔を合わせる機会に恵まれ、
トークショーなどにも、スピーカーとして一緒に参加させていただいたこともありました。

2015年の〈ハモニカ横丁げんき祭り〉にて、山梨の今を伝えるフリーマガジン『BEEK』が主催するトークイベントにゲストとして参加。司会はアートディレクターで『BEEK』編集長の土屋 誠さんと五味醤油6代目の五味 仁さん。©BEEK DESIGN/土屋誠

そんなご縁もあり、ある日、五味さんから
味噌づくりのためのワークショップスペースをつくりたいとお願いをされました。
山梨に戻って1年弱、初めて依頼されたお仕事です。

古い工場リノベーションが正解ではない?

五味醤油には築70年以上も経つ味噌工場が敷地の奥に建っています。
その工場の一角を改修して、味噌づくりや
食に関するワークショップやイベントを行う拠点をつくりたいというご相談でした。

工場自体は、何度か改修を重ねていましたが、やはり老朽化している箇所も多くあるため、
かなり修繕しないとならない状況。
加えて、敷地の奥にあるため、道路からの視認性が非常に悪く、
集客という面では大きなデメリットになる立地です。

そうこうやり取りを続けているうちに、
五味醤油さんから敷地に持て余している部分があるので、
そこに新築するのはどうですか? という提案がありました。

開業150年を目前に控える老舗のお味噌屋さんとなれば、
工場をリノベーションするほうが、ストーリーとしては美しいし、話題性もあります。
「新築」という選択肢など僕の頭にはまったくなかった提案でした。

しかし、この提案をきっかけに、
僕のリノベーションに対する視野が大きく広がるきっかけになります。

左にあるのが、五味醤油の店舗スペース。

空き家は、島の文化財?
伝統的な民家を宿に再生。
奄美大島で始まった〈伝泊〉とは

伝泊 vol.1

みなさん、はじめまして。建築家の山下保博です。
〈アトリエ・天工人〉という建築設計事務所の代表として、
住宅や公共施設などの設計をしています。
特に都市の狭小住宅は、東京を中心にこれまでに250棟以上つくってきました。

しかし今回は、僕の設計とは少し違う活動である〈伝泊〉についてお話しようと思います。
〈伝泊〉は、“でんぱく”と読みます。伝統的、伝説的な古民家を探し出して、
改修することで宿泊施設としてよみがえらせ、
さらに地域のコミュニティとして開放する仕組みのことで、僕のつくった造語です。
その第1弾の宿〈伝泊 FUNA-GURA〉と〈伝泊 MAE-HIDA〉が、
奄美大島に2016年7月にオープンしました。

なぜ、奄美大島?

僕は鹿児島県の奄美大島出身です。
鹿児島市からは約350キロも離れた島々で、奄美大島本島は沖縄本島を除いては、
日本の中で2番目に大きな離島です。ちなみに一番大きな離島は佐渡島です。

人口は本島で6万人ほど、奄美群島全体で約11万人。
海に囲まれ、豊かな山もあり、独特の動植物などの手つかずの自然が今なお見られます。
そして、集落や古い民家が昔ながらの姿で残っている場所がいくつかあります。

手つかずの自然が多くのこる奄美大島。観光地化されることで本来の良さが失われることは絶対に避けたい。

その奄美が、この度ユネスコの世界自然遺産の登録候補になりました。
僕は2年半ほど前からリゾート施設をつくる仕事で奄美に帰るようになっていたのですが、
奄美らしいものを提供したいと思い、奄美の昔ながらの集落を新しいかたちで復活させようと、
奄美のいろいろな人にアイデアをもらってやっています。

そんななか、奄美でも空き家問題があって、
空いている古民家を何とかしてほしいと地元の方から相談を受けるようになりました。

お話を聞いたり、実際に空き家を見に行ったりするうちに、
「奄美大島の特徴のある建築を残して、
たくさんの人々に実際に利用してもらうことで、単なる建築の保存活動ではない、
“生きた保存・継承” ができないだろうか」と考え始めました。

たくさんの伝統的な民家や空き家になっていることがわかった。

そこで、まずはおおよそ50年〜100年前に建てられた民家を選んで、
奄美の伝統的な建築の条件を調べ上げました。
その条件に合った空き家を、一棟貸しの宿として改修することにしたのです。

奄美の伝統建築とはどのようなものか

奄美の特徴的な自然環境として、台風が多いことと、
ハブが生息しているという2点が挙げられます。
こうした環境で、いかに安全、快適に暮らしていくかという知恵が生かされているのが、
奄美の伝統建築です。僕の調べた奄美の伝統建築について具体的に説明します。

①珊瑚石や生垣・防風林やブロックの塀がある

台風対策のため、敷地の周りは、最大瞬間風速40~60メートルの風に耐えうるための塀が設けられている。昔の素材は珊瑚石や生垣・防風林だったが、最近はコンクリートブロック塀も見られる。

②母屋、水屋など複数棟に分散されている

敷地内には、母屋と水屋と家畜小屋、納屋、便所などがバラバラに3〜5棟配置されている。理由は、大きな建物は台風に対して弱いこと、建築に使える大きな材木が乏しかったこと、また昔から豊かではなく、外部からの影響も少なかったことから、建築技巧が低かったことなどが考えられる。穀物を貯蔵する倉で、湿気から穀物を守り、ハブ、ねずみなどの動物の侵入を防ぐための〈高倉〉が現存する家もあり、井戸も必ず設けられている。この写真は、実際に奄美にある、貯蔵のための倉。湿気や動物の外を防ぐために高くなっている。柱がツルツルしていて、ねずみやハブが登りにくくなっている。

庭には、井戸が必ず設置されている。

③ほとんどは平屋づくり

同じく風が強いこと、建築的な技術があまり発達しなかったことから、平屋がほとんど。屋根の形は、高倉から派生した〈入母屋造り〉や変形的な〈寄せ棟造り〉が多く見られる。

④熱帯エリア特有の仕様“高床”

東南アジア地域特有の高床式が多く見られ、床の高さは60〜90センチメートル。高床の理由はふたつあり、湿気対策と台風の風を通過させることで建物が倒れないようにするためである。

⑤先人の智恵が詰まった〈ヒキモン構造〉

奄美は、東南アジア地域からの影響で、束石(つかいし:床をを支えるための基礎)の上に乗せただけの柱が土台を貫通して梁まで伸びている〈ヒキモン構造〉が多く見られる。これも台風対策の一環で、足元周りや建物全体の強化をするための先人たちの知恵。

⑥独特の平面計画

母屋の間取りはメインの部屋(オモテ)を外廊下で囲い込み、その廊下が玄関の役割も果たしている。最近では、廊下の先にトイレが多く設置され、台所は土間が多く、半屋外の作業場でもあったが、現在は床が張られ、台所や食事どころなっている場合がほとんどだ。

⑦木や海砂、珊瑚石など奄美の材料を使っている

奄美は貴重な動植物に恵まれているが、いい木材はとれなかった。それでも、シロアリに強い曲がった柱や梁材をうまく利用して組み立てていつ。屋根は茅葺きだったが、現在では多くがトタン屋根に葺き直されている。清めのために庭に珊瑚石や海砂を敷き詰めた家もある。

〈北アルプス国際芸術祭2017〉 長野県、信濃大町にて 食とアートにフォーカスする 芸術祭がスタート!

もうすぐ長野県大町市にて
〈北アルプス国際芸術祭2017 〜信濃大町 食とアートの廻廊(かいろう)〜〉が始まります。

6月4日(日)から7月30日(日)までのあいだ、
市内のあちこちで展示やイベントが行われ、
信濃大町の生活文化を表現する「食」と、その魅力を再発見する「アート」に出会えます。

総合ディレクターは北川フラムさん。
北川さんといえば〈大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ〉
〈瀬戸内国際芸術祭〉など、数々の芸術祭や
プロジェクトを手がけてきたアートディレクター。

「北アルプスの山々から流れ迸(ほとばし)る伏流水が潤す、
扇状地に囲まれた長野県大町市。
かつては水路が家の中につくられ、清らな水がまちの中まで流れ込んでいました。
また、水は豊かな森と生活文化を生み出し、
独自の美味しい食文化を創ってきたのです。

北アルプス国際芸術祭は、扇状地をつなぐ廻廊から山々を見遥かし、
青い天空を水場から仰ぐ試みです。
国内外から選ばれたアーティストは、南北の植物が混生し、
日本列島を縦に貫く特徴ある地形、歴史に向き合い、
鮮烈で爽やかなアート作品をつくりだすでしょう。
そして地域全体で取り組む食のおもてなしが
来訪者を楽しませてくれることでしょう」(北川さん)

かつて塩の道千国街道の宿場町として栄えた大町市街。町家造りの家々の床下には、今も当時から続く水路が流れています。

大地の芸術祭では〈こへび隊〉、瀬戸内国際芸術祭では〈こえび隊〉という
ボランティアのサポーターチームとともに芸術祭をつくってきた北川さん。
北アルプス国際芸術祭でも、地元をはじめ、全国から集まったボランティアの方たちが
お手伝いに参加し準備が進んでいるようです。

大阪の新世界で新しい祭〈セルフ祭〉を興したり、インドにまちがった相撲を広めに行ったりしているアーティスト、コタケマンさん。もう現地で制作に入っています! Photo:Tsuyoshi Hongo

〈UENO PLANET〉が面白すぎ! 未知の惑星、上野動物園を探求する Webサイトを見ながら 動物園を歩こう!

上野動物園を「未知の惑星」と見たてた、話題のWebコンテンツ

東京・上野にある恩賜上野動物園には、
約350種類の動物だけではなく、都心に残された豊かな自然、
130年以上におよぶ歴史など、まだまだ知られざる魅力があります。

そんな上野動物園の裏側を探求できる
スマートフォン・タブレット向けサイト〈UENO PLANET〉をごぞんじですか?

UENO PLANET from UENO PLANET on Vimeo.

テーマは「未知の惑星、上野動物園」。
2017年2月にオープンすると、SNSなどで
「動物園の空間のおもしろさを、めっちゃハイクオリティな
デザインでたっぷり見せる」と話題になりました。

ユニークなのは、動物園をひとつの惑星に見立て、
普段は見過ごしがちな動物たちの姿や家、植物などにスポットをあてていること。

コンテンツは、動物たちの模様を紹介する「PATTERN(模様)」

家を紹介する「HOUSE(家)」

夜行性動物を紹介する「NIGHT(夜)」

動物園で働く人を紹介する「PEOPLE(人)」などなど!

人気シリーズ 「真鶴半島イトナミ美術館」の プロジェクトムービーが公開中!

記事で紹介した人たちが映像にも登場!

神奈川県の西、真鶴半島に息づくさまざまなものづくりを「作品」と捉え、
半島そのものを美術館に見立ててそのストーリーを発信してきた
真鶴半島イトナミ美術館」。
相模湾に突き出すようなかたちで浮かぶ真鶴半島の先端には、
「お林」と呼ばれる豊かな森があり、
『美の基準』と呼ばれる真鶴らしさをまとめた規範が、
まちの暮らしの風景を守ってきました。

そんな真鶴の魅力を映像で表現したムービーが公開されています。

真鶴半島イトナミ美術館(Short ver.)

映像では、真鶴半島イトナミ美術館の記事にも登場したまちの人たちが、
それぞれのストーリーを語っています。

真鶴においしい魚が集まる理由。
真鶴のアトリエでものづくりをする風景。
まちづくりに携わる人。
アートが好きな干物屋さん。
真鶴に暮らす人たちの営みの風景が映し出されます。

〈天理駅前広場
CoFuFun(コフフン)〉
佐藤オオキデザインによる
古墳モチーフの広場が
フフン〜♪とオープン!

Photo : Takumi Ota

現代の古墳が誕生!〈天理駅前広場 CoFuFun(コフフン)〉

2017年4月、奈良県北中部にある天理駅前に
〈天理駅前広場 CoFuFun(コフフン)〉がオープンしました。

駅を降りると、目の前に芝生が広がり、不思議なかたちをした建物群が……
ここが、このたび完成したコフフン!

コフフンのメインエリア

Photo : Takumi Ota

円形の不思議なかたちが点在する広場のデザインを手がけたのは、
佐藤オオキさん率いるデザインオフィス〈nendo〉。

nendoがデザインのモチーフに選んだのは「古墳」でした。

ユニークなのは、古墳の使い方。
こうして建物にのせると大きな屋根に!

インフォ&ラウンジコフン

〈インフォ&ラウンジコフン〉Photo : Takumi Ota

逆さまにすると、まるで宇宙船のようなかたちに。

屋上に巨大トランポリンがある〈ふわふわコフン〉

屋上に巨大トランポリンがある〈ふわふわコフン〉Photo : Takumi Ota

古代大和時代にヤマト王権が形成された地、天理市には、
古くから連綿と続いてきた暮らしがあります。
市内には、なんと約1600基もの古墳が残っているのだそう。

その古墳のかたちを組み合わせ
起伏に富んだランドスケープをつくることで、
山々に囲まれた奈良盆地の地理的特徴を表したのだとか。

「古墳が複数の役割を果たし、まるで全体がカフェであり、
全体が遊具であり、全体が大きな家具に感じられるような、
そんなゆるやかな空間。
この広場はみなさんに自由に使っていただくのが正しい使い方です。
よそいきの時間じゃなくて、どんどん使ってどんどん関わっていただき、
日常のものにしていただけたら」とnendoの佐藤さん。

ふわふわコフン

Photo : Takumi Ota

コフフンという名前は、モチーフである古墳と、
思わず「フフン〜♪」と鼻歌を歌いたくなるような
心地良さを提供したいという気持ち、
そして市民のみなさんが「フフンッ」と自慢できるような
場所となってほしいという思いからつけたのだそうです。

このプロジェクトは、天理市が
天理駅前からにぎわいを広げていくため
3年前から進めてきたプロジェクト。
以前の駅前には人が憩う場がなく、少々寂しい場所だったそうですが、
コフフンオープン後は、駅前に子どもからお年寄りまでが集い、
とてもにぎわっています。

なぜ、地元山梨で
建築の仕事をするのか。
震災復興から学んだこと。
PRIME KOFU vol.1

PRIME KOFU vol.1

2014年に地元である山梨に設計活動の拠点を構え、
現在、建築デザイン事務所〈PRIME KOFU〉を主宰しています。

地元山梨に帰るつもりもなく、建築家として大都会で仕事をしたい。
そんな誰しもが思うあこがれにつき動かされながら、日本の大学、海外の大学院で建築を学び、
都内の設計事務所で建築と向き合ってきた日々。そんな僕が、なぜ3年前に空き家率No.1、
県庁所在地のある市町村で人口が最も少ない山梨にUターンしたのか。

「まちのリノベーション」をテーマに、山梨で建築を生業とすることのリアルな日常を
少しでもこの場でお伝えできればと思います。
第1回目は、山梨に戻ったきっかけについての話。

オランダで学んだ建築のこと

いわゆるスター建築家像にあこがれていた僕にとって、
建築に対する向き合い方に新たな視点を与えてくれたのは海外の建築教育でした。
僕が通った大学院は、オランダにある〈Berlage Institute〉(現Berlage)というところで、
世界中の企業や行政からプロジェクトを依頼され、
リサーチから提案までを行う教育機関でした。

扱うテーマもさまざまで、僕自身は、
パリの移民問題や人種差別などに向き合うプロジェクトなどに携わっており、
深刻な社会問題に対して、建築にはなにが可能か?
ということを試行錯誤する2年間でした。当時の日本の建築教育は、
建築のデザイン性について追求していく傾向が強かったなかで、
こういった教育現場に身を置いたことは、ある種ショッキングでもあると同時に、
建築の可能性や視野が広がった貴重な時間でした。

berlage instituteのスタジオ。各自、デスクが割り当てられ連日作業を行っている。

ユニットミーティング後の様子。

帰国してすぐに経験した大震災

社会に鋭くメスを入れ、建築を通して課題解決をしていこうという
海外の姿勢にいたく心を動かされつつも、いろいろなご縁やタイミングもあって帰国後、
東京の設計事務所で働くことになりました。
そして、帰国後わずか3か月、東日本大震災を経験することになります。

津波による建物の倒壊や見通しのつかない原発処理問題など
東北の状況が連日メディアによって伝えられ、
いたたまれない気持ちと先行きのない不安に押しつぶされそうになっていたことを
今でも覚えています。震災以降、建築に携わる身として、
この現状にどう向き合うべきか真剣に考える毎日。
半年が過ぎる頃、事務所のスタッフや他設計事務所の方、
デザイナー、大学生などと一緒に福島へ震災復興のため行くことを決めました。

被災地であり限界集落という二重性

まずはいくつかの仮設住宅に出向き、被災した方々のお話をうかがっていたのですが、
訪問した仮設住宅の多くは僻地に建設されており、
閉ざされた環境の中で生活を送らざるをえない被災者の方々がほとんどでした。
そんな状況の中でも、復興に向けて一致団結して
支えあっている被災者の方々が多く、逆に僕らが励まされている気がしたほどです。

その道中、たまたま知り合った現地のNPOの方から、
福島県いわき市にある空き家を仮設住宅に住む避難民や近隣住民の交流拠点として
改修してほしいというご相談をいただきました。

現地調査時の様子。

その空き家がある地域は、
もともと農作業と自営のお店などをされていた方々が多かったのですが、
被災する以前から限界集落という中山間地特有の問題を抱えており、
著しい過疎化に追い打ちをかけるように、
震災による原発の風評被害によって農作業もお店も続けられない、
そんな二重の課題に直面していました。

2階部分の連間。

そこで、僕らは仮設住宅に住む方々が、定期的に訪れながら地域住民と接し、
少しでもリラックスしていただける場所、さらに、周辺住民の方々を雇用することで、
単なる空き家再生に留まることなく、
限界集落に経済的な活動を少しずつ取り戻すことができるような、
応急的かつ中長期的な「まちのリノベーション」を提案させていただきました。

イメージパース。さまざまな内部、外部が連続した空間をイメージ。

建物自体のデザインは、年代を経て増築されており、
木造2階建て、木造平屋、鉄骨造平屋、中庭など異なった個性がつながった空間だったため、
その個性を最大限に生かすことと、最初から過度な内装デザインを施すのではなく、
徐々に地元住民の方々が自分たちで手を加えていけるような
余白のある空間にしようと努めました。

茨城県・常陸国 出雲大社に ガッチャマンのアート作品が登場。 〈Impacts!II 奮う展〉

『Heroes R-1』 2013 (C) AMANO Yoshitaka courtesy Mizuma Art Gallery

常陸国 出雲大社〈ギャラリー桜林〉にガッチャマンやゴジラのアートが

4月22日(土)~6月25日(日)まで、
茨城県・常陸国 出雲大社の境内にある〈ギャラリー桜林〉にて
「ガッチャマン」や「ゴジラ」などをモチーフとした
現代アートの展覧会〈Impacts!II 奮(ふる)う展〉が開催されています。

ギャラリー桜林は、2016年2月にオープンしたギャラリー。
日本とアジアの作家を国際的なアートシーンに紹介している
〈ミヅマアートギャラリー〉のバックアップを受け、
定期的に企画展を開催しています。

オープン時に開催された〈Impacts! 勢(はず)み展〉では、
会田誠さん、天野喜孝さん、O JUNさん、山口藍さん、
山口晃さんなどの作品を展示し、大きな話題を呼んだのだとか。

山口藍『きえるひと』2014 (C) ai yamaguchi・NINYU WORKS courtesy Mizuma Art Gallery

いとうともひさvol.2
習いながら、施工する。
インストラクターDIYで空き家改修

いとうともひさ vol.2 
プロのサポートによる、DIY

自分の居場所になる空間を、自分でつくれたら生活の幅が広がると思います。
近年空き家の数が多くなって、治安の悪化につながる一因となったり、
また、人が住んでいないことで建物の劣化スピードも速くなります。

建物が空いているのはいい状況ではありませんが、DIYと空き家ってすごく相性がいいのです。
DIYが空き家問題を解決する糸口になるのではないかと考えています。
大きく手を加えることができるので、自分の描いたような空間となる。

しかし、DIYと言っても初心者にはなかなかハードルが高いもの。
そこで僕は、“DIYのインストラクター”といったことができないかと思っています。
プロの職人に任せるだけでなく、
自分たちだけでもない、プロの職人がインストラクターとなりながら、
DIYを進めていくかたちがいいと考えています。今回はそんな事例を2軒紹介します。

習うDIYで長屋をカレー屋店舗に

2017年2月の工事後の写真。コツコツと工事は進んでいます。(撮影:古市邦人)

大阪市東住吉区の連棟長屋にカレー屋店舗をつくりたいという相談です。
店名は、〈nimoalcamo〉(ニモアルカモ)。
依頼主の古市邦人さんは当初工務店への相談を考えていたのですが、
でき上がりがイメージできないということと、
作業するのが好きで自分も工事に参加できる方法はないかということで相談をいただきました。

古市さんの持っている空間のイメージを客観的に立ち上げるために、
DIYだけでもない職人だけの工事でもない、その真ん中のやり方として
僕がインストラクターとなり作業をレクチャーする立場で
工事に参加させてもらうことを提案して、こころよく了解してもらいました。

2016年7月、工事前にテープを貼って実測している様子。

空間を前に実測し、大きさのイメージを確認します。
アイデアを出し合い、予算を確認しながら
「手をつける場所と手をつけない場所」の選択をして一緒に輪郭をつくっていきます。

何気ない会話が、アイデアソースに

そのためにはまず現状の空間を褒めるところから始めます。

「この階段、華奢だけどかわいいよね」とか

「天井はこのまま見せてもカッコいいじゃない?」とか

「床のワイルドさ、こんな雰囲気を生かして全体をつくりたいね」

などが古市さんとの話のなかで浮き上がってきました。
これを最初の計画に組み込んで、床と天井と階段は手をつけないという選択をしました。
全体に手を加えることができなくても、
厨房に集中してアイデアを投入することで最大の効果が出せるように計画を進めます。

話をしているなかで「舞台装置のような厨房」というキーワードが出ました。
それをもとに天井を下げて床を上げて、
厨房がこの空間の中で浮き上がって見えるような演出を考え始めます。
この会話でふたりともイメージが膨らみ、ワクワクしたのを覚えています。

次に仕上がりの材質を選択します。
木なのか、鉄なのか、ペンキなのか、漆喰、モルタル、化粧パネル、ガラス……
どの部分にどの素材を使うかという選択は、
組み合わせで言うと星の数ほどありますので相談しながら決断していきます。
照明は現場用のライトの傘をひっくり返した造形をそのまま採用。

古市さんが製作した建具。右手に写っているのが現場用照明の傘をひっくり返したワイヤーシェード。(撮影:古市邦人)

やりたいことは無限に出てくるので、組み合わせを考えないと混乱してしまいます。
素材の選定から、前もって計画をしてから次の工程に進みます。

古市さんのイメージをもとにここではコンクリートの床の無垢な表情に合わせ
厨房の内部を仕上げるように素材をチョイスします。
コンクリートブロック、コンクリート補修塗料、
厨房内土間はコンクリートを金鏝(かなごて)で押さえて、
金額的にも予算内でクリアする見通しが立ったので次に進みます。

作業段階に移っても、選択だらけです。
「職人に任せる」or「自分でやる」という選択をひとつひとつしていき、金額に反映させます。
古市さんは、まず自分でやってみる。
わからなかったらインストラクターを呼ぶ、
または職人にお願いするような順番で作業を進めました。

手伝いに来てくれた知人にも作業をレクチャーし、工事してもらいます。(撮影:古市邦人)

結果、水道工事・電気工事・カウンターの製作や扉の吊り込みなどは僕が工事し、
それ以外の部分を古市さんが担当することになりました。
建具やスツールもつくってしまうこんなカレー屋さん、一度行ってみたくなりますよね。

古市さんがDIYで作ったスツール。足はガス管を切って組み合わせています。(撮影:古市邦人)

団地の再評価を肉声で! “団地”を巡る2冊の 出版記念トークイベント

昨今、豊かな環境や地域に根ざしたコミュニティといった
観点から再評価されつつある“団地”。
先日、気になる団地の現状に触れられる2冊の書籍、
団地のはなし 彼女と団地の8つの物語』、『#カリグラシ』が刊行されました。
この出版を記念し、大阪と京都でトークイベントも開催されます。

『団地のはなし 彼女と団地の8つの物語』凝った装丁

まず1冊目の『団地のはなし 彼女と団地の8つの物語』は、
女性作家/クリエイター8人による物語で、
団地の魅力を伝える短編集。

『団地のはなし 彼女と団地の8つの物語』より 漫画「P」/カシワイ

山内マリコ、松田青子による団地を舞台にした小説や、
詩集が映画化されて注目の詩人・最果タヒによる書き下ろしの詩、
ジェーン・スー、佐々木俊尚による団地の可能性を考察する対談など、
さまざまな角度から団地の魅力を紹介しています。

書籍『#カリグラシ』

もう1冊の『#カリグラシ』は、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)が手がける
Webサイト「OURS.KARIGURASHI MAGAZINE」が本になったもの。
こちらは作家の長嶋有、神戸の自宅にスタジオを持つ
ミュージシャン・tofubeats(トーフビーツ)ら、
多彩なジャンルの著名人が「私の借り暮らし考」を語ります。

〈村上隆のスーパーフラット 現代陶芸考〉 村上隆さんの頭の中の 陶芸史を初公開!

Photo by Mikiya Takimoto

2017年5月28日(日)まで、十和田市現代美術館にて
〈村上隆のスーパーフラット現代陶芸考〉が開催されています。

これは、世界的に活躍するアーティスト、村上隆さんが
現代陶芸を紹介する展覧会。

奈良美智《舌出しの子》2010 28×37×28cm ©Yoshitomo Nara

熊谷幸治《土偶・ダルマ》2010 17×20.5×21cm

アーティストとしてだけでなく、コレクター、キュレーター、
ギャラリストとしての顔ももつ村上さん。
2016年には古美術から現代美術までの膨大なコレクションによる
〈村上隆のスーパーフラット・コレクションー蕭白、魯山人からキーファーまでー〉が
横浜美術館で開催され、大きな評判を呼びました。
本展ではどのような視点で現代陶芸を紹介するのでしょうか?

撮影:緒方一貴

今回の展示に並ぶのは、青木亮さん、安藤雅信さん、
村田森さん、小嶋亜創さんらの現代陶芸作家の作品、
また、奈良美智さん、小出ナオキさん、青島千穂さん、
大谷工作室さん、ガブリエル・オロスコさん、
ローズマリー・トロッケルさん、クララ・クリスタローヴァさんらの
現代美術作家による陶芸作品など、28作家、約1800点。

クララ・クリスタローヴァ《犬と、眠る》2010 48×16×24cm ©Klara Kristalova, Courtesy of Galerie Perrotin

村木雄児《飴釉破れ壺》2016 直径36×31×口径16cm