連載
posted:2017.7.17 from:北海道札幌市 genre:アート・デザイン・建築
PR 札幌国際芸術祭実行委員会
〈 この連載・企画は… 〉
2017年8月6日から10月1日まで開催される「札幌国際芸術祭(SIAF)2017」。
その公式ガイドブック『札幌へアートの旅』をコロカル編集部が編集しました。
この連載では、公式ガイドブックの特別バージョンをお届けします。
コロカルオリジナルの内容からガイドブックでしか見られないものまで。
スマートフォン&ガイドブックを手に、SIAF2017の旅をぜひ楽しんで!
editor profile
Ichico Enomoto
榎本市子
えのもと・いちこ●エディター/ライター。コロカル編集部員。東京都国分寺市出身。テレビ誌編集を経て、映画、美術、カルチャーを中心に編集・執筆。出張や旅行ではその土地のおいしいものを食べるのが何よりも楽しみ。
8月6日から札幌で開催される札幌国際芸術祭(SIAF)2017。
今回は、具体的にどんなアーティストが参加し、
どんな作品が見られるのか、その一部を紹介していこう。
SIAF2017のテーマは「芸術祭ってなんだ?」。
これはSIAF2017ゲストディレクター大友良英さんが発した問いで、
その答えは、サブテーマ「ガラクタの星座たち」にもヒントが隠されている。
このテキストは、公式ガイドブック『札幌へアートの旅』の
特別付録にも収録しているので、ぜひ手にとってほしい。
そしてもうひとつのSIAF2017を巡るサブストーリー
「たった1枚のノイズだらけのレコードから広がる世界だってあるのだ」からは、
大友さんの個人史から生まれたアイデアが、多くの人と化学反応を起こすことにより、
この芸術祭がまたとない独自のお祭りになりそうなことがわかる。
ガイドブックでは、サブストーリーにそって巡るコースのほか、
いくつかのモデルコースを提案しているが、ここでは、
このサブストーリーに登場するアーティストやプロジェクトを具体的に紹介しながら、
SIAF2017をひもといていこう。
大友さんが「わたしにとって本当に大きなものでした」と語る沼山良明さんとの出会い。
SIAF2017のエグゼクティブアドバイザーでもある沼山さんは、
1983年より札幌を拠点にNMA(NOW MUSIC ARTS)を主宰し、
即興や実験的な音楽を中心としたコンサートを企画してきた。
SIAF2017では、『NMAライブ・ビデオアーカイブ』が、札幌市資料館で公開される。
沼山さんが企画した200グループを超えるアーティストのライブを撮りためた、
貴重な記録映像だ。こういった前衛的な音楽シーンが、
個人によってアーカイブされているということにぜひ着目してほしい。
ガイドブックでは、沼山さんがNMAにまつわる
北海道の思い出深い旅についても執筆している。
大友さんのサブストーリーのタイトルにもある
「たった1枚のノイズだらけのレコード」の作者であるクリスチャン・マークレー。
いまや現代美術の世界でよく知られているマークレーは、
大友さんに衝撃を与えた80年代半ば頃から、
ターンテーブル奏者として知られるようになり、
大友さんともつながりの深いアーティストだ。
今回は、札幌芸術の森での展覧会「NEW LIFE: リプレイのない展覧会」に参加し、
『Six New Animations』などの作品が展示される。
これは、道ばたに落ちているさまざまな物が“旅する”映像アニメーション。
一見ゴミのように見えるものから、何やら新しい世界が広がっていくかのようだ。
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大友さんに大きな影響を与えたのは、彼の先輩たちばかりではない。
若手のアーティストたちの作品に「人生がかわるような衝撃を受けた」という。
それが、今回のSIAF2017にも参加するアーティスト、
毛利悠子さん、梅田哲也さん、堀尾寛太さん。
毛利悠子さんは、前回のSIAF2014に続く2度目のSIAF参加。
近年海外での展覧会にも多数参加し、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するなど、
目覚ましい活躍をするアーティストだ。
今回は、札幌市立大学のキャンパスとキャンパスをつなぐ
140メートルの空中廊下「スカイウェイ」を舞台に、
音と光を使ったインスタレーションを展開。
スカイウェイの距離感を利用し、まさに体感するような作品だ。
ガイドブックでは、この作品のヒントになった北海道の旅について綴っている。
梅田哲也さんは、まちなかエリアの金市舘ビルと、
中心部から少し外れた、かつてりんごの倉庫として利用されていた蔵で作品を展示。
金市舘ビルは、デパートやスーパーとして市民に親しまれてきた建物で、
その1フロア、約300坪の空間を使い、インスタレーションを発表する。
廃材や身近にあるものを用いて作品をつくる梅田さんの金市舘ビルの作品タイトルは
『わからないものたち』。よくわからないけれどおもしろい世界が見られるはず。
また、梅田さんらによる光の実験「フィールドアクション」の
記録映像をもとにしたインスタレーションが、さわひらきさんの作品として、
北海道教育大学アーツ&スポーツ文化複合施設 HUGで展示される。
このときの体験を綴った文章も、ガイドブックに掲載している。
堀尾さんは、1974年築の空きビルと、まちなかから見える山、
藻岩山の山頂付近で作品を展開。
藻岩山に小さな発光体を設置し、夜はまちからも見えるような作品を試みる。
昼間に、もいわ山ロープウェイと、ミニケーブルカー「もーりすカー」で
藻岩山山頂まで登り、市内を見渡してみては。
夜になって藻岩山に光を見ることができたら、より鑑賞体験が深まりそうだ。
実は堀尾さんは、廃線マニア。何度か札幌に通ううちに気になった風景を探り、
いまはもうない風景に思いを馳せる文章をガイドブックに寄稿してくれた。
SIAF2017では、市民とつくり上げるプロジェクトも。
2011年、東日本大震災後にたくさんの風呂敷を縫い合わせた大風呂敷を、
「フェスティバルFUKUSHIMA!」の会場に敷き詰めたことから始まった、
大風呂敷プロジェクトもそのひとつ。
SIAF2014の特別プログラムをきっかけに、札幌でも札幌大風呂敷チームが誕生し、
「おおどおり大風呂敷工場」を中心に、市民が布を集めては縫い続けてきた。
SIAF2017オープニングやクロージングなどで、その大風呂敷が広げられるほか、
JRタワーコンコースに、大風呂敷フラッグが掲げられ、札幌のまちをにぎわせる。
そして、大友さんが芸術祭を開くにあたって
「真っ先に思い浮かんだアーティスト」というのが、テニスコーツのふたり。
さやさんと植野隆司さんからなるユニットで、これまで大友さんはもちろん、
さまざまなアーティストとコラボレーションを重ねてきた。
今回、彼らはSIAF2017の会期中ずっと札幌に滞在し、
市内のライブハウスやまちなかでライブを繰り広げる。
いろいろな場所で、ふたりの姿が目撃されそうだ。
また札幌市資料館の一室をまちの公民館のように開放し、
彼らが制作したり、ワークショップを開いたりしながら場をつくっていく
「テラコヤーツセンター『土砂』」も展開していく。
多くの人を巻き込んでいくような、交流の場になりそうだ。
まだまだ紹介しきれないほど、数々のアーティストによる作品、
ライブ、プロジェクトが盛りだくさん。
これまでにない芸術祭になることは間違いない。
ぜひ、ガイドブックを片手に、札幌のまちをめぐりながら、
そこで起きることを目撃してほしい。
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札幌国際芸術祭2017
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