150年以上前の横浜港。
最初の行き先はハワイ、それから北米、そしてブラジルなど中南米へ。
新天地を求めて、ここから大きな移民船が旅立っていった時代がありました。
その横浜港を望む「みなとみらい」地区に
〈JICA横浜(独立行政法人国際協力機構 横浜センター)〉があります。
館内にある〈海外移住資料館〉では、ハワイを含む北米と、
戦後、JICAの前身組織のひとつである海外移住事業団が移住事業を担った
中南米の国々を主な対象として、日本人の海外移住の歴史を紹介しています。
このJICA横浜 海外移住資料館が、設立20周年を記念して2022年4月末にリニューアル。
昨年には、国際協力をテーマとしたアートワークが常設され、
子どもから大人まで楽しみながら歴史に触れられるスポットとなっています。
それではアートワークから紹介していきましょう。
まず、ふたつのエントランスと館内の柱に、
3つの作品からなる『トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド』を展開しているのは、
1965年サンパウロ生まれ、日系ブラジル二世のアーティスト、大岩オスカールさんです。
大岩さんはブラジルで建築を学んだのち、
1991年に東京に移住して現代美術の制作活動を地道に始め、
2002年からニューヨークを拠点に国際的に活躍しています。
自身の生い立ちから日本人移民の歴史にはなじみがあり、
新たにリサーチしたことも交えて描いたといいます。

大岩オスカール『トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド(ニューカントリー)』(撮影:加藤健)
1階エントランスのガラス扉に描かれた作品
『トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド(ニューカントリー)』は、
20世紀初頭の横浜大さん橋から出航する移民船、
中南米へ向かう大海の様子が描かれています。
今回はコロナ禍での制作となり、2階の作品はデジタルドローイングを描いて
シートに印刷する形式に初挑戦していますが、
この1階の作品は、来日して直接マーカーペンで描いたもの。
うねる波にも圧倒されます。

大岩オスカール『トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド(ニューカントリー)』
2階エントランスの作品
『トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド(大さん橋)』には、
実在した移民船〈天洋丸〉が描かれています。
着物にシルクハットなど、20世紀初頭の人々の描写も楽しめます。

大岩オスカール『トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド(大さん橋)』
そしてもうひとつ、2階の吹き抜けに面する5つの柱を取り巻く作品にも注目。
ブラジル移民船の第1号である〈笠戸丸〉をはじめ、
日本から中南米、ハワイ、アメリカなどへ渡った7隻の移民船が描かれています。
ちなみに6月18日は「海外移住の日」。
1908年に笠戸丸がブラジルに入港したことにちなんで制定されました。

大岩オスカール『トラベリング・アラウンド・ザ・ワールド』(撮影:加藤健)。左の柱に描かれている船が笠戸丸。
さて、2階エントランスを入ってすぐのインスタレーションは、
アーティスト藤浩志さんの作品『メッセンジャー』です。
1986年、青年海外協力隊員として
パプアニューギニア国立芸術学校で活動していたことがある藤さん。
このときの経験がのちの制作にも影響を与えています。

藤浩志『メッセンジャー』。カピバラの背中に座ることもできる。
今回は、中南米地域の日系人や日系社会ボランティアの人々から集めた
開拓時の苦労話や、日本人が移住地で遭遇した動植物についてのエピソードを展示。
「原生林を開墾中、一番恐ろしかった動物」として語られるオオアリクイ、
「庭に現れる」カピバラなどを「メッセンジャー」と見立てる参加型作品です。
ぜひメッセージを書き残してみてください。


その奥の壁には、横浜在住のイラストレーター、
イクタケマコトさんが描いた大型のドローイングボード『日系移民の歩み』があります。

イクタケマコト『日系移民の歩み』
アメリカや中南米などの日系人が生活するまちの風景、
暮らしの様子、現地の文化などが画面いっぱいに描かれ、
好きなところを自由に塗れるぬり絵になっています。
海外移住資料館の展示とリンクしている絵も多いので説明図も要チェック!

自由に塗ることができる参加型作品。色がたくさん塗られたら、また白からスタート。