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posted:2022.6.8 from:大分県由布市 genre:旅行
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writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
大分県は湯布院に建つ、隈研吾建築の現代美術館〈COMICO ART MUSEUM YUFUIN〉。
昨年4周年を迎えた同館に、2021年10月、一棟貸しの宿
〈COMICO ART HOUSE YUFUIN〉が誕生しました。
美術館と同様、隈さんが建築を担当した同館。
村の建築の素朴さと隈さんが追求する先端的表現が融合した、静謐でモダンな宿です。
現代アートと共鳴するようなミニマルな空間ながら、
来訪者の意識が自然に素材の本質へと向かうように設計されました。
全2棟で、4名まで泊まれる2階建ての建物「土棟」と、
2名まで泊まれる平家「竹土棟」。
名前に用いられているそれぞれの素材を活かした、
異なる魅力を放つ空間となっています。
墨色のシックな外壁は、伝統的な焼杉を使用。
この素材のおかげで周りの里山とのコントラストが美しく、
近づくと木の模様や質感、温もりが感じられます。
屋根は、軒を深くすることで建物の高さが低く感じられるように設計。
里山の風景を崩すことなく周辺の集落に溶け込むことを目指しました。
ちょうなによる名栗(なぐり)仕上げの味わい深い玄関、
湯布院の温泉熱を利用した床暖房と
こまやかなこだわりが随所に光る造りとなっています。
各棟にひかれた温泉は、隣接する「COMICO ART MUSEUM YUFUIN」
の頭文字“CAMY”から「カミ(神・上)」の湯と命名。
自律神経不安定症、不眠症などに効果がある、
弱アルカリ性で低刺激のやさしいお湯です。
露天風呂からの景色は由布岳をフレーミングするようにデザインされました。
「土棟」は、藁(わら)スサを塗り込んだ粗さと繊細さが混同する土壁に
靭皮(じんぴ)繊維が透ける阿波紙でおおわれた天井と建具のある、侘びた庵のような空間。
2階の寝室には、由布岳から連なる山々をパノラマのようにフレーミングした大きな窓が。
温泉は、御影石張りの床に無垢のヒノキ天井が特徴です。
待月(たいげつ)の庭では、東側の空に月が昇り、
庭石やススキなどの植栽が月明かりに照らされ、繊細な輝きを放ちます。
宿の入り口ということで、玄関にもこだわりが。
土壁下地の竹小舞(たけこまい)とシュロ縄を連想させるように、
玄関の取っ手には藁縄を巻き付けた鉄筋棒を採用。
最初に藁縄の質感に触れることで、
土と大地の触感を来訪者に染み込ませたいといいます。
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一方、「竹棟」はまた異なる空間です。
外壁の焼杉の色に合わせ、表面を炙った煤竹(すすだけ)を詰打ち張りにした壁面、
玄関の晒竹(さらしだけ)の取っ手と、竹をいたるところに使用。
音が主役の聴竹(ちょうちく)の庭は、竹の葉鳴りや大分川のせせらぎ、
水琴窟の繊細な水音など、ここでしか味わえない旋律を奏でます。
天井は杉の枌板(へぎいた)を使った、
中央から四方に広がる方形(ほうぎょう)の網代天井。
平屋の小さなスケールと低い天井サイズに合わせて、
あえて竹ではなく杉を選んだのだそう。
日本庭園の作法を反映し、
変化を続ける木や水と不変の岩を対比させた露天風呂もあります。
滞在中は最大2回まで、美術館の無料鑑賞が可能です。
湯布院の文化を引き継いだ隈研吾建築に泊まれるとは、なんという贅沢。
それも多彩な現代アートも一緒に楽しめます。
新たな湯布院の美しさを味わいに、ぜひ同館へ足を運んでみてはいかがでしょう?
information
COMICO ART HOUSE YUFUIN
住所:大分県由布市湯布院町川上2995-1
アクセス:由布院駅から徒歩約10分
料金:土 132000円、竹 88000円
※モーニングサービスあり。
※敷地内は全面禁煙。
※12歳以下の方は宿泊不可。
*価格はすべて税込です。
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