MAD City vol.9: 住居用の間取りを取り払い、 人工芝と白壁がさわやかな デザイン事務所に!

MAD City vol.9
築40年弱のレトロなマンションの一室をDIY!

MAD City利用者のなかでも、特に多いのがクリエイターの方々です。
自分の個性やセンスを生かして、自由にDIYできる物件を求める彼らにとって、
MAD Cityの扱う「DIY・リノベ完全自由」な物件は、絵を描くキャンバスと一緒です。

なかでも人気があるのが「MADマンション」と呼ばれる、築40年弱の賃貸マンション。
DIYはもちろん、改造も自由。さらに原状回復不要というMAD Cityの人気物件です。
加えて、家賃も手頃で駅から徒歩5分という好立地も、住人の方々からは評判がよいのです。

MADマンションの外観。

今回、ご登場いただくグラフィック・デザイナーの佐藤大輔さんも、
このMADマンションの住人のひとりです。

佐藤さんとMAD Cityとの出会いは、数年前のことでした。
もともと「生まれも育ちも松戸」というチャキチャキの松戸っ子の佐藤さんが、
松戸の駅前を歩いているときふと目に入ったのが、MAD Cityのオフィス、MAD City Gallery
江戸時代に宿場町として栄えたまち並みの名残ある松戸で、
異彩を放っていた弊社オフィスに好奇心をかきたてられた佐藤さんが
その扉を叩いてくれたのがはじまりでした。

オフィスにいたMAD Cityのメンバーとさまざまな話をしていくうちに、
「松戸にクリエイターの拠点をつくる」という、
MAD Cityのコンセプトに共感してくださった佐藤さん。
その後もイベントに参加してくれたり、
ウェブサイトをこまめにチェックしてくれたり、
なにかとMAD Cityのことを気にかけてくれていました。

とはいえ、8年ほど前にフリーのデザイナーとして独立されてから、
ずっと松戸にあるご自宅でお仕事をしていた佐藤さんは、
当時は物件を借りる気はなかったそうです。
でも、MAD Cityのウェブサイトなどをチェックしていくうちに、
「仕事場と家を別にしたい」「事務所を構えたい」という想いを抱くようになったのだとか。

物件探しの際に、佐藤さんが考えていた条件は3つ。

1)安い
(やっぱり値段は肝心とのこと!)
2)駅から近い
(せっかく事務所を持つなら、クライアントを呼んで打ち合わせもしたいし、
プレゼンとかもできるスペースだとなおうれしい)
3)リノベができる
(自宅だとあまり自由にリノベするのはこわいけれども、
仕事場は思いっきり自分の好きな空間をつくりたい)

以上の条件を満たす物件を1年間ほど探し求めていた佐藤さんの目に止まったのが、
この「MADマンション」でした。

「安くて、駅から近くて、リノベもOK」
という条件をすべて満たしたこの物件の内見後、佐藤さんは即入居を決意。
入居開始の2012年7月から、一気にリノベを開始したそうです。

さて、気になるのが、佐藤さんが行ったリノベ。
「リノベができる物件」をあえて探していた佐藤さんだけに、相当気合が入っています!

まずは、間取り。
もともと1DKだったお部屋の壁と押入れを打ち抜き、巨大なワンルームにします。

もともとこんな部屋だったのが……、
扉や押し入れを取り払って……。

押入れは、すべて佐藤さんの独力で取り払ったそうです(しかも、道具は釘抜きやトンカチなど!)

まだまだ取ります!

さすがに床張りや壁などはひとりでは手におえないため、このあたりから工務店さんにお願いしてキレイに仕上げてもらったそうです。でも、途中までほぼ作業は終えていたため材料費を入れてもかなり安く済んだとか。

押し入れを取り払ってきたら偶然出てきたコンクリの壁。「これは面白い!」と思った佐藤さんは、ここだけ壁を貼らずにむきだしのコンクリのままでキープ。費用も浮くし、部屋にメリハリが出て一石二鳥!

壁や柱を取り払ったら、こんなにキレイになりました!
その後は、業者の方にお願いして、フローリングを張ってもらいます。

きれいに張られたフローリング。

白い壁とコンクリ壁にはさまれた、事務所が完成!

「こういうちょっと無機質な部屋にいると気分がピシっとして、余計な雑念が入らない。
だから、仕事部屋はこういうシンプルでできるだけモノがない空間を心がけました」
と佐藤さん。

リノベしたのはここだけではありません!
脂がギトギトだったビニールカーペットが敷かれていたキッチンも……。

木目調のシールと人工芝のカーペットでさわやかに!

ダイニングキッチンから、ワンルーム部分の印象はこんな風に変わりました。

壁を取り払ったお陰で、部屋がスッキリ。
なお、壁塗りは過去ご自宅でも経験があったので、自分で全部手がけたとか。
「また飽きたら別の色にしたい」と佐藤さんのリノベはまだまだ進化を続けています。
「土間をイメージした」ということで、なぜか玄関・キッチンエリアには人工芝が。
「仕事スペースと遊びスペースを分けたかった」という佐藤さん。
ONとOFFが見事にくっきり分かれてます!

キッチンと玄関。玄関ドアの内側の数字は「302」が反転しているのは……?

こちらが入り口からみた玄関ドアの302。裏側では反転していたのでした。

MADマンションの特徴は、部屋の内側だけでなく、
共用部にあたる玄関ドアの外側まで改装OKなこと。
各部屋のドアは、そこに住まう住民の方々の個性が爆発しています。
佐藤さんのドアも、もちろんデザイン&作業ともにご自分でDIYしています。

ちなみに、こんな大胆なリノベをおこなっていらっしゃった佐藤さんですが、
なんとリノベは一度もやったことがなく、今回が初挑戦だったのだとか。

「僕がこの部屋をリノベするときに考えていた条件は、
とにかく『手間をかけないこと』と『シンプルにすること』。
僕はプロじゃないので、あまりにテイストに凝り過ぎると
すごく大変なことになってしまうと思ったんです。
だから、部屋はとにかく余分なものは取りはらって、
より広いスペースを確保できるように意識しました。
また、色も使い過ぎず、壁はシンプルに白で、床はフローリング。
これだったら家具やなんかにもあまりこだわらなくて済みますしね」

なるほどー。
なお、これだけのリノベを行って、総工事時期間はほぼ1か月。

「いろいろと大変だったけれども、やっぱり自分の好きなようにDIYできるのは楽しかったですね!」と笑う佐藤さん。

ステキすぎるDIY事務所を手にいれた佐藤さんですが、
しかしそれ以外にもMADマンションに住むメリットを感じているそうです。

「このMADマンションの住人になるまで、
松戸在住のほかのクリエイターの方に会う機会はほとんどなかったんです。
僕は松戸に長らく住んできたけれども、MAD Cityができて、
こんなにたくさんのアーティストやクリエイターの人がいるなんて思いませんでした。
自分の思い通りの事務所が手に入れられたのももちろんですが、
ほかの住民の方々と一緒にイベントをやったり、
ときどき食事会をしたりして情報交換したり、
いろいろと刺激を受けられるのが魅力的ですね」

MADマンションに住む人たちは、たしかにどなたも個性が爆発している方ばかり。
さらに、佐藤さんのようなグラフィック・デザイナーの方もいれば、
イラストレーター、現代アーティスト、またフードコーディネーターの方など、
それぞれの専門分野も結構バラバラです。

このように強いキャラクターやセンスを持つクリエイター同士が出会うことで
化学反応を起こして、新たな何かをつくり出す。
そんな流れが、またどんどんMADマンションを起点に生まれてくれたら、
MAD City的にはこんなにうれしいことはありません!

なお、そんなほかの住民たちに刺激されて(?)なのか、
佐藤さんは6月にはこの事務所を使って、
日頃お世話になった方向けに作品展を開催予定だそうです。
デザイナーを始めて最初につくった名刺から、最新作まで展示されるとのこと。
会場がマンションということで不特定多数は入場できないので、
まずは佐藤さんとコンタクトをとっていただく必要があるようです。
ご興味ある方は、こちらからお問い合わせください。

こちら作品展のフライヤーも玄関ドアのビジュアルになっています。

information


map

MAD City(株式会社まちづクリエイティブ)

住所 千葉県松戸市本町6-8
電話 047-710-5861
http://madcity.jp/

京都のアーティスト支援施設「HAPS」にて夜の映像展示「ミッドナイトサマーシアター」

京都・祇園の南側にある閑静な住宅街、京都市東山区、六原学区。
ここに、アーティストを応援するための
スペース、「東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)」があります。
京都市内には、ギャラリーや、現代美術関係の施設、
大学、アート系ウェブサイトが多くあるのですが、
HAPSはこれらの組織や、アーティストの相談窓口となったり、
アーティストに発注したい人との橋渡し役となったりと、
アートと社会をつなぐネットワークの中心を目指すところです。

「ミッドナイトサマーシアター」上映のようす

そんなHAPSにて、ユニークな展示「ミッドナイトサマーシアター」
が8月31日(日)まで開催中!
HAPSオフィスの1階スペースを会場に、
映像を19:00〜10:00(翌日朝)のあいだ上映し、
道路からウィンドー越しに観賞するという催しです。

ひらのりょうさんの展示オープニング。※ひらのさんの展示は5月30日(金)で終了

会場となるHAPSにて、向井麻理さんキュレーションのもと、
映像発信てれれ、fuzitama、最後の手段、山本麻紀子、
伊藤存+青木陵子ら、美術のみならず多様なジャンルで
活躍するアーティストらによる映像が上映されます。
2014年6月20日(金)、7月5日(土)には
映像発信てれれによる上映&連続トーク企画が
開催されるなど、イベントもアリ。
この機会にHAPSを覗いてみてはいかがでしょうか。
詳細はWebサイトにて。

開催イベント:
1) 8/10(日)時間未定 山本麻紀子さんx京大宇宙物理学・磯辺教授によるトークイベント
2) 8/23(土)19時~ 伊藤存+青木綾子オープニング 伊藤さんのバンドのライブあり。

ALLNIGHT HAPS「ミッドナイトサマーシアター」

ビルススタジオ vol.08: カフェ食堂が、シェアハウスの 2階にオープン

ビルススタジオ vol.08
もうひとつの共用リビング

vol.3とvol.4で紹介したシェアハウス「KAMAGAWA LIVING」に併設する飲食店テナント
カフェのようなバーのようなお店「u-go(ユーゴ)」がオープンしました。

ここはもともとビジネス+カプセルホテルとして使われていた建物。
2階にあったフロントの脇には10坪ほどの小さな喫茶室がありました。
ホテル営業時はここでお客さんたちがそれぞれの朝食をとっていたのでしょう。
しかし、私たちが初めて見たときの室内の印象からは、
お客さん同士や店員さんとの会話など、
察するに「ほぼ無かった」ことがうかがい知れます。

改装前の様子。家具がないこともありますが、殺風景な空気が漂っていました……。

こちらも改装前。ホテルのフロントが目の前。

ここがシェアハウスに変貌するにあたり、
フロントだったところにはオートロックが鎮座することになりました。
その脇にあるこのテナントスペースは
住民が使う、もうひとつの共用リビングのように、
機能していくといいなと思いました。
住民同士の距離感を大切にするこのシェアハウス。
既に、50帖ほどある共用リビングがあります。
ここで、ある程度自由度の高い距離感の取り方はできるものの、
全く別の空間で過ごしたいときもあるかと。
さらには遊びに来た友人を気軽に案内できるダイニングとしても
重宝されるスペースが生まれればいいなと考えていました。

シェアハウスとしての工事も半分ほど進んだある日、
出店希望者として安生大樹さんがやってきました。
安生さんは宇都宮市内の大学を卒業後、さまざまなカルチャーそして人を知りたい、
出会いたいとの想いから都内のカフェ、バーやクラブを6年間渡り歩きました。
その後宇都宮に戻り、独立開業を目指して飲食店の店長を務めていました。

聞けばこのテナントに興味を持った理由は、まず界隈。
この釜川エリアには個性豊かな個人店が立ち並び、
こだわりのあるお客さん層が出歩いているエリア。
さらには近年、この界隈の新旧の店主たちが連携し、
「KAMAGAWA DEPARTMENT」「カマガワヨルサンポ」「かまがわ川床花見」
などのイベントが開催され、新たな客層の集客にも積極的なエリアであります。

そこに新たにシェアハウスができることにより
この釜川界隈を使い倒すであろう住民たちが面白そうだというのです。
安生さんはその時点ではもちろん、誰がここに住むかも知りません。
それでも「きっと面白い」という確信を持ち、出店することを決めてくれました。

工事中の風景。

そして安生さんの改装がスタート。費用を抑えるべく、できるだけ自主施工。
基本のカウンタースタイルは残し、床と天井の仕上げ材をはぎ取り、
コンクリート剥き出しのラフな仕上がりになりました。
荒れてしまっていた壁には自分で木板を張ったり、色を塗ったり。
賃貸契約から開店までには、3か月を要しました。
安生さんは、自分の仕事の合間に施工というだけでも少ない改装時間なのに、
入居が始まったシェアハウスから、
ちょいちょい通い始める住民が現れると、
ついつい話し込んでしまい進みが遅くなる……というということもあったようです。

シェアハウスの入口から脇を見ると、お店。

お店がオープンすると、
住民たちにはいい感じに使ってもらっているとのこと。
夕ご飯だけ食べに来たり、寝る前の一杯だけを飲みに来たり。
「同じ屋根の下」をいいことに、そのまま寝る格好で飲みにくる方も……!

住民全員集合の会もここで開かれたりします。
そういう場合に共用のリビングだと準備や片づけがなにかと煩わしい。
結局住民の中で気が回る誰かがその役を請負うことになります。
それは請負う側もそうでない側も気を使ってしまいます。
そんな時に外に出ずにおいしい料理とお酒のある会を開けるのは
非常にありがたいだろうな、と思います。

また、誰かがカウンターで飲んでいると、他の住民が帰ってくるのが見えます。
軽くアイコンタクトし、一度部屋に戻り、そこに参加したり。
もちろんそんな気分じゃなければそのまま部屋で過ごすもよし。
そんな選べる関係性がこのシェアハウスでは育まれています。
住民割引もあるらしいです(いいなぁ)。

大のパスタ好きな方のために常時用意しています。

住民が友人と飲みにいくときもここは便利。
もはや飲みに行く、という感覚ではないとは思いますが。
ホームの寛ぎが間違いなく得られます。
タクシーや代行を使う必要もなく、スゴく楽。
おいしくて、場所も便利であれば友人も抵抗なくこのお店で納得してくれます。
難点は、先に帰り難い、ということくらいでしょうか。

また、上に住むオーナーさんもしばしばここで食事をしたり飲んだり、
通常では知り合えないような友人知人と遊んでいたりします。
そんな人と気軽に会って話せる機会があるのも魅力だと思います。

ほかに、シェアハウスの住民やその関係者だけではなく、
近隣のお店の人や地域の人たちも利用してくれています。
私が思っていたよりもとてもいいポジションを確立しているようです。

カウンターの風景。安生さんがひとりで切り盛りしています。

私がロンドン留学中に非常に良いな、と感じていたのは、
まちなかのアパートやマンションの1階に必ずあるカフェやパブ、レストラン。
上に住む住民同士や近所の人が日常使いで自然にここに集まり、
界隈のコミュニティを密接にしてゆく機能となっていました。
町内会や商店会などでわざわざ集まらなくても、
同じ建物内や界隈内にどんな人が住んでいるかが勝手にわかる。
近所の軽い問題点や転入者がどんな人かも噂レベルで情報交換できる。
まち並みの美しさ、人通りの多さではなく、
住人たちが自然と集まって来るお店の雰囲気が
「この界隈に住みたいな」と思う一番の理由になりました。

これはロンドンに限ったことではなく、日本でも同じのようで、
リクルート調査のアンケートにて
アパート・マンションに住む人が、その住まいに愛着を持っているかどうかを聞いたところ、
「その愛着度と隣近所に挨拶以上の関係にある知人友人の人数は比例関係にある」
という結果がでています。

住宅街、オフィス街、商業地、というように用途で界隈を形成するのではなく、
特に地方都市ではもっともっと複雑に、ひとつの身体のように
界隈にさまざまな機能を同居させ、絡めていくと
人と人とのぬくもりもすこやかに保てる生活が手に入れられるんだな、と
この釜川界隈とシェアハウスとu-goを見ていると実感できます。

みな、シェアハウスの住民です。なんか仲いいなぁ。

information


map

ビルススタジオ

住所 栃木県宇都宮市西2-2-24
電話 028-636-5136

information


map

u-go
ユーゴ

住所 栃木県宇都宮市中央5-1-8カマガワリビング2F
電話 028-614-3304
営業時間 14:00-26:00 不定休

NO ARCHITECTS vol.8: シェアしたみんなが 思うようにつくる家 後編

NO ARCHITECTS vol.8
つくりながら考える

vol.7に続き、「シェアしたみんなが思うようにつくる家」の後編です。
僕らが住む家「大辻の家」とつながるアパートを友人とシェアしています。
その一室のリノベーションをリアルタイムでリポートします。

大辻の家の右手の路地のSPACE丁の三角コーン看板、手づくりの門扉を抜けると裏のアパートがあります。

部屋の間取りがわかりにくいと思うので、スケッチを描いてみました。
アパート2階の踊り場に面した引き戸の玄関越しに見た部屋の見取り図です。
玄関を入ってすぐ左手は遠藤シェフのキッチンとバーカウンターです。
その奥は共有のリビングで、みんなでごはん食べたり、まったりしたりします。
右の突き当りの窓際あたりは、
黒瀬のブランド「ツクリバナシ(vol.7参照)」のアトリエになっています。

6畳三間のL型のプランです。あくまでイメージ図です。

さて、進捗の報告です。
床は、完成しました。玄関から部屋の奥まで、
下地の角材で高さを揃えてベニヤ板を張り、フラットなワンルームに。

床が完成した次の日の朝。安心できる居場所が生まれる瞬間で、毎回とても感動します。

玄関横の壁は、ほかの壁と仕様を変えて、
柱の上からベニヤ板を貼って大壁(柱を見せない構造)にしています。
他の部屋の雰囲気との差別化を強調しています。
塗装はまだですが、色は、うっすらグレーがかった白にする予定。
少しパブリックな場所になるので、展示などもできるように考えています。

トイレ脇の押入を解体してできた窪みのような小さな部屋は、
遠藤の自転車のカスタムスペースに。
「遠藤サイクル」とプリントしたのれんとポロシャツもつくるらしいです。
気がついたら自転車の空気を入れてくれていたり、
お願いしておいたら、カゴとか付けてくれたりします。
いつもありがとう。これからもよろしく。

さっそく自転車の整備をしているところ。コンパクトに収まっています。作業もしやすそう。

トイレは、既存のドアの壁ごと取っ払って、
ホームセンターにて見本品で安売りになっていたドアを買ってはめ込んで、
それに合わせて隙間に枠を回して断熱材も詰めて
清潔感と安心感のあるトイレに。あとは、塗装したら完成。

バーカウンターは、10cmの角材で既存の柱を補強しながら、
テーブルも同じ角材をボルトで締めあげてつくるという男らしいデザイン。
遠藤のこだわりのカウンターです。吊り棚も取り付けて、
ワイングラスをシャンデリアのように垂らすそうです。
楽しみ。

カウンターが完成した夜、さっそくカクテルを。建築家ル・コルビュジエの「カップ・マルタンの休暇小屋」に隣接するバー・レストラン「ひとで軒」みたい。椅子はOTONARIの開店に合わせてつくったハイスツール。

やっぱり思い通りには進まない

玄関付近のオープンキッチンは、まだ未完成です。
前回の記事の最後に、「完成した姿を報告できると思います」
と大口を叩いたものの、
普段の仕事の合間や休みの日に少しずつ進めている感じなので。
この記事を書くために、ペースを合わせるほうが不自然。
本当にリアルなレポートということで、お許しください。

できたばかりのカウンターで、
このスペースをどう使っていきたいか、ふたりに聞いてみました。
黒瀬は、
「自分の部屋をアトリエにしていたときよりも、
たまたま近くにいた人に世間話しながら意見をもらえたり、
試着してもらえたりするのは、とても刺激的だし、楽しみ。
これからつくるものにも影響しそう」とのこと。

ぼくらも、できたての服や染めたての生地を見せてもらうのを、
いつも楽しみにしているので、より近くでミシンの音が聞けてうれしい。

抜群の集中力を見せる、ミシン作業中の黒瀬先生。

「基本的には、Café the Endのメニュー開発などの、日々の修練の場所。
カクテルのイベントや、料理教室なども企画中。
あと、屋上と合わせてのパーティもやりたい」
と、遠藤の今後の意気込みも聞けました。

久しぶりに遠藤と木工作業をしていて、
大学院時代のスタジオを思い起こしながら、懐かしい気持ちにもなりました。
修士設計で、現在のNO ARCHITECTSの西山と奥平、そして遠藤の3人で、
キャンパス内にツリーハウスをつくるプロジェクトをしたことがあります。
(当時の鈴木明研究室のブログ http://akiralab.exblog.jp/i9/

カウンターをつくっているところ。

そんなこんなで、自分たちのスペースを
自分たちらしく楽しく暮らしていけるようにつくり変えていくこと。

そんなスペースが、まちの中に少しずつ、それぞれマイペースに進んでいる。
それも、ぼくらが知らないところでもと想像すると、ワクワクしてきます。
そういうことが許されているまちは、
自然とクリエイティブな空気で満ち溢れています。
地主さん、不動産屋さん、大家さん、そして住まい手の関係性がとても大事で、
この界隈は、とても幸せな状況にあるということなんです。

みなさんも、次に住む場所を考えるとき、
間取りや日当たり、駅からの距離だけで選ぶのではなく、
実際にいろんなまちや家、そして人に会いに行って、
その場所が持っている空気感や雰囲気を感じてほしいです。
きっと、新しい暮らし方のイメージが湧いてくると思います。

共有のリビングにて、配置したばかりの椅子やソファでくつろぎながら、お披露目イベントのミーティングをしているところ。

information


map

NO ARCHITECTS

住所 大阪市此花区梅香1-15-20
http://nyamaokud.exblog.jp/
https://www.facebook.com/NOARCHITECTS.jp

これが全て蘭?!福岡の蘭専門店が美しくも野性味あふれる「原生蘭」の魅力を伝える

福岡市に店舗を構える蘭専門店
PLACERWORKSHOP(プラセールワークショップ)」。
蘭といえば白く美しい胡蝶蘭をイメージしますが、
こちらの店主・内田洋一朗さんが扱うのは
品種改良を施していない原種が中心です。

これが蘭?壁から生えているのもありますね

手書きのタイポグラフィと蘭のコラボが見所

タイポグラフィは内田さんがストレスを抱えたときに壁に書き出したところハマってしまったそう。「MOGNO6.」名義で活動されています

蘭のイメージが「きれい」から「かっこいい」に変わる

原種で2万6〜8千、
品種改良を入れて10万種以上もあるといわれる蘭。
そのなかのほとんどの蘭は
木に着生する性質を持っていて
うまくやれば鉢植えで買ったものを
色んなものに着生させることができるそうです。
内田さんはコルクほか、靴や歯磨き粉のチューブなど
身近にある蘭の「器」探しにも挑戦しているとか。

このたび、そんな野性味溢れる蘭とグラフィックワークを交えた
インスタレーション「LET IT GO, LET IT GO. 」が
東京にやってきます。
場所は東京都港区にあるCURATOR’S CUBEにて、
期間は6/15(日)まで。
根っこをむき出しにした蘭を
コルクに付ける(着生させる)ワークショップもあり、
蘭の意外な魅力を知ることができます。
なんだか蘭の見方がガラリと変わりそうですね。
ぜひ覗きに行ってみてください!

【LET IT GO, LET IT GO.
MOGNO6. and PLACERWORKSHOP EXHIBITION curated by Playmountain】
会期|5月31日(土)~6月15日(日)不定休
会場|CURATOR’S CUBE
東京都港区愛宕1-1-9
営業時間|12:00~19:00
Tel. 03-6721-5255
http://curatorscube.com/

・ランいじりワークショップ
以下のいずれかが選べます。
1、メンテナンスついでにお好きな器を持ってきていただいて植替え。
2、メンテナンスついでに根っこむき出しにしてコルクに付ける。
3、器だけ持ってきて用意されたランを付けるか植込む。
4、手ぶらできて、用意されたランをコルクにくっつける。
開催日:6月7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日)
時間:10:00〜(2時間程度)
参加費:3,000円(税込)
受付は、placer@placer-workshop.com (ご希望日、お名前、ご連絡先をお願いします)
お問い合わせは、placer@placer-workshop.com へ

PLACERWORKSHOP(プラセールワークショップ)

地元のおじいちゃんおばあちゃんを スタイリッシュに発信する 『鶴と亀』待望の第弐号

長野県『鶴と亀』

発行/鶴と亀編集部

長野県飯山市から、地元のおじいちゃんおばあちゃんにフィーチャーするクールなフリーペーパー、待望の2号がリリース。稲刈り作業中のおじいちゃんのファションスナップなど、見ず知らずのおじいちゃんおばあちゃんたちのスナップ写真には、なぜだかとっても癒されます。今号も田畑がひろがるのどかな飯山市からイケてるおじいちゃんおばあちゃんを発信中です。

鶴と亀

http://www.fp-tsurutokame.com/

発行日/2014.3

札幌が舞台の初のアートフェス「札幌国際芸術祭 2014」開催!ゲストディレクターは坂本龍一

北海道札幌市を舞台にした初めてのアートフェスティバルがこの夏開催されます!
その名も「札幌国際芸術祭 2014」。
2014年7月19日(土)から9月28日(日)までの72日間、
札幌市民にもお馴染みの札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)、
北海道庁赤れんが庁舎、モエレ沼公園などで
展覧会やパフォーマンス、プロジェクトが展開されるんです。
芸術祭のテーマは「都市と自然」。
明治維新とともに北海道と名づけられたこの土地は、
先住民族や自然そのものも、近代化と無縁ではいられなかった場所。
そうした過去の歩みをアートとしてふりかえることで、
21世紀の札幌・北海道の自然、都市のあり方、経済、暮らしを
模索するという試みなのです。

■札幌がメディア・アーツ都市に

〈参考作品〉セミトランスペアレント・デザイン《Semitra Exhibition tFont/fTime》2009 山口情報芸術センター[YCAM]での展示風景 Courtesy of Ycam InterLab

日本各地でたくさん開催される芸術祭ですが、
「札幌国際芸術祭」の大きな特徴は、
ゲストディレクター坂本龍一のもと、
高度なテクノロジーを使った「メディアアート」の作品が
多くラインナップしていること。
坂本龍一と、「Perfume」の演出も
手がけるアーティスト真鍋大度の共作や、
ドイツのカールステン・ニコライ、
「ダムタイプ」の高谷史郎、エキソニモ、毛利悠子、
セミトランスペアレント・デザインほか
先端的技術を用いた新しい芸術表現の
アーティストたちが展示を行います。

これは、札幌市がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の
「創造都市ネットワーク (メディア・アーツ都市)」
に2013年11月正式に加盟したため。
もともと札幌は、ITのほかデザインなど文化芸術で
まちの活性化をはかる「創造都市さっぽろ」を掲げるまち。
新たなメディア技術を用いた文化芸術表現や、市民の自発的な表現活動
を通して経済活動の促進を目指す「メディア・アーツ都市」
への参加もうなづけます。

シディ・ラルビ・シェルカウイとダミアン・ジャレによる「BABEL(words)」 BABEL(words) © Koen Broos

ほか、参加アーティストには現代のヨーロッパを代表する
美術作家のアンゼルム・キーファー、写真家の畠山直哉や松江泰治ら。
彫刻家アントニー・ゴームリーによる5つの大きな直方体フレームの
舞台装置を使う、コンテンポラリーダンスの振付師シディ・ラルビ・シェルカウイと
ダミアン・ジャレによる「BABEL(words)」なども注目です。

大竹伸朗が北海道で発見し作品にした、ボーリング場の巨大サインも里帰り展示。大竹 伸朗(Shinro Ohtake)《時憶/美唄》2013 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での展示風景 Photo: 山本真人 ©Shinro Ohtake

また本芸術祭では、ボランティアも募集中。
おもな業務は、美術館内での受付や作品監視、
各会場で行われるイベントやワークショップのサポートなど。
参加することでまた新しいことが見えてきそうです。
詳細は下記にて。

札幌国際芸術祭2014

いちはらHOMEROOM通信 vol.5

中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」のメイン会場のひとつ、
旧里見小学校を改装したIAAES(Ichihara Art/Athlete Etc. School)。
ここでアーティスト中崎透さんが、さまざまな講師たちを招き
「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」を開催。
そのようすや芸術祭の風景を、中崎さんと仲間たちが5回にわたりレポートします。

ホームルームを無事終えて。

こんにちは、中崎です。早いもので、寒空のもとで準備を始めた
中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」は、
のんびりとした初夏の日差しの中で無事閉幕しました。
この52日間で9本のイベントと、2本のレジデンス、
自分の展示作品も含めると12本の企画を担当させていただき、
なんとか事故もなく終えることができて正直なところホッとしています。
成功かどうか、まあ、何を持って成功とするかというのは難しいところですが、
現場での感触としてはなかなか好評だったようで、
関わってくださったアーティスト、スタッフ、サポーターのみなさん、
足を運んでくださったみなさん、本当にありがとうございます。

とりあえず、終盤のホームルームのレポートを。

GWの4連休、前半の5月3日、4日は
藤井光さんのワークショップ「校内暴力のハードコア」。
タイトルやアーティストの作成した広報イメージから、
だいぶ過激なものを想像したりもしましたが、
丁寧な映像に関するレクチャーに始まり、途中野外に場所を移して撮影に入ったり、
終始穏やかな空気でワークショップは進んでいきました。
映像制作のワークショップには手慣れている藤井さんですが、
今回は参加者を受講生といった立場ではなく、
共同制作者に近い立ち位置で関わるための枠組みを試したい、ということで
お互い手探りで進む部分も多く、リラックスしながらも緊張感のある有意義な時間でした。

藤井さんの制作した広報イメージ。

1日目の演出編、体育館裏の草むらでカメラをまわします。
それぞれが過去の体験談を話したりするなか、
藤井さんのいくつかの言葉で場の空気がその都度変化します。

藤井さんの架空(?)の体験談、その言葉によって起こった場の空気の変化について、演出的視点で最後に種明かしが……。

2日目の編集編、しばらく使われていないプールサイドで、
編集後の映像のイメージを意識しながら撮影に入ります。
アイデア出しを重ね、最終的にひとりの体験談をもとに
複数の人間がその出来事について話す、といった撮影方法を選択しました。

アイデア出しの過程で、体験談を本人が話す、第三者が話す、といったことを撮影し比較したのですが、他人の言葉のほうが意外とはっきりと情報が頭に入ってきたりして、いろいろ考えさせられました。

トークでは、この夏に公開を予定している、藤井さんの監督した
南相馬の映画館をモチーフにしたドキュメンタリー映画『ASAHIZA』の話を中心に、
東日本大震災の以前以後の活動を紹介していただきました。
今回の「校内暴力」というキーワードは、
たぶん「校内暴力」自体を問題としているわけではなく、
そこにまつわる個人の体験、記憶といったものを、
映像という技法を用いて、どう定着させ、どう他者と共有し、普遍化しうるか、
といった問題と向き合うためのきっかけであり、
震災以降、被災地で多くの個人へのインタビューを重ねていったなかで、
いま現在も藤井さんが試行錯誤していることの一部分に、
少し触らせてもらうような機会となっていた気がします。

4連休後半、5月5日、6日は、珍しいキノコ舞踊団のワークショップ
「カラダと遊ぶ! ダンスの状態で楽しむ!」。
今回は主宰の伊藤千枝さんを含め、6人のダンサーがやって来てくれた
超豪華ワークショップでした。
絶賛運動不足真っ盛りの私、中崎も両日参加させていただいたのですが、
楽しくてハード。普段意識しない身体の部分をたくさん発見しました。
伊藤さんの進行もすばらしく、ゆっくりとしたウォーミングアップのつもりが
いつの間にか面白おかしく過酷なポーズをとらされていたりしました。
離れて様子を見ていたスタッフの話だと、それ自体がダンス公演のようにも見える、
といった感じで、子どもから年配の方まで心地よい汗をかきました。

©MATSUMOTO Mieko

©MATSUMOTO Mieko

ワークショップ前の呼び込みダンスも披露していただきました!!

おまけにこのダンス、3月に行われた本公演『金色時間、フェスティバルの最中。』のテーマ曲だったりしていて、始まる前からうきうきする時間でした。©MATSUMOTO Mieko

ワークショップ後に開催された20分ほどのショーイング。
さっきまで一緒にワークショップをしていたダンサーの皆さんが、
プロフェッショナルの舞台を見せてくれました。
本当にすばらしくて、両日100人前後の方が楽しみました。
演出で一部参加者が乱入してみんなで一緒に踊るシーンがあったり、
体育館ステージの緞帳が上がり伊藤さんのソロシーンがあったり、
20分と思えない濃密な時間となりました。

©MATSUMOTO Mieko

最終の週末、5月10日は辺口芳典さんのワークショップ「ヒップホップな作文の時間」。
約1時間のワークショップを3時間で3回り立て続けに開催、
そのたびに最後には辺口さんの新作の詩が披露されるという、
なかなかハードで贅沢なワークショップでした。

タイトルで掲げた「ヒップホップ」という言葉は、
いわゆるみんながパッと想像する「ヒッピホップ」のことを指すのではなく、
何もないなかで、それでも身の回りにある一見なんでもないものを使って、工夫して、
それを面白がる、身体を使って生まれてきたカルチャーであること、
そのなかでも今回は、サンプリングやリミックス、といった作法を詩に応用して
遊んでみること、自身の生い立ちも含めて熱血レクチャーから始まりました。

里見小学校に残されていた本を題材に、そこから気になる言葉を集めて繋いでみる。不思議と意味が繋がったりちぐはぐだったり、でもなんだかその人それぞれの色が出てしまって、なんだか面白かったです。

奇遇にも会場となったスペースに設置された中崎の作品も、
里見小にあった一冊の本『モモ』から引用したテキストでつくられており、
せっかくなので、ということで最初の練習用のテキストとして『モモ』の
あとがきの部分を使用してくださったりして、ちょっとしたコラボレーションも。
最後にはそれぞれ制作した詩を朗読して発表する場面も。
何気なく選んだだけの言葉が、声に出してみるとその人だけの詩になってしまう、
そんなことに、朗読する本人が声に出してみて初めて気がついて戸惑う、
みたいなことも何度かあったりして、僕自身も発見の多いワークショップでした。

というかんじでホームルームのプログラムも終わり、
翌日の最終日の閉会式ではIAAESの校庭に350人ほどが集まり、
各会場のメンバーがアトラクションを披露したり、
市長や北川フラムさんからのスピーチがあったり、
なんだかんだで深夜まで打ち上がったりしました。
みなさん、本当にお疲れ様でした!!

種をまいた、第一回目の芸術祭。

さて、そんなこんなで撤収も終わり、水戸に戻ってきたわけなんですが、
芸術祭やホームルームを振り返って少し書いておこうと思います。

会期中、滞在している時間が長かったので、
展示だけでなく公演やイベント、飲食だったり、全部は網羅できていないながらも、
ほかの作家と比べて芸術祭のいろいろな部分を見て回ることができたのですが、
正直なところ、なかなかよくできた芸術祭だと思いました。

僕たちの関わったIAAESは比較的準備期間が短く、
メイン会場のひとつとしてほかの会場よりも
たくさんの観客が足を運ぶエリアだったこともあり、
地元の方だったり、顔が見える限られた人たちと深くコミットする状況というのは
あまりなかったなあ、という印象なんですが、
会場やプロジェクトごとに役割や色があるように、各会場や作品のなかで、
アーティストが地元の人たちと長い時間をかけて一緒につくることを楽しみながら
進めている様子をあちこちで見かけて、なんだかいいバランスだなと感じました。

岩間賢/月出校舎(旧月出小学校)

指輪ホテル『あんなに愛し合ったのに〜中房総小湊鐵道篇〜』の公演のラストシーンを電車内から見守る観客たち。

もちろん、運営なども含めていいことばかりではありませんが、
この地域での初めての芸術祭ということもあり、準備不足もあれば、
一体どんなことをするんだろう、と手探りなことも多かったし、
問題はいろいろなところでたくさんありつつも、それが一回目というやつで、
今回の開催があったことで、なるほど、こういうことか、と
だいたいのイメージを共有した人が、地元でどういう関わり方にしろ
何百人、何千人とできたということが大事なことであり、
それはよく思う人もいれば悪く思う人もいて、
でもだからこそ現実的な議論を始めることができるのではないかなと思います。

内田未来楽校(旧内田小学校)

僕たちアーティストの立場からすると、たいてい地域の方には最初、
偉い芸術家の先生、もしくはわけわからんニーチャン、といった
どちらかに見られることが多いんですが、それってどちらも意外とやりにくくて、
でもだんだん顔なじみになってきて、
よくわかんないけど金なさそうな若いやつ、もしくは中年が一生懸命何かやってんな、
これ、うちで採れた野菜だけど食うか、そうかうまいか、
お、意外と面白いことやってるじゃねえか、
みたいなことがよくあります。
それはなんだかいい流れで、芸術かどうかはよくわからないけど、
そういうやつらがまたやってくるのは別に悪い気はしないな、
という空気感みたいなもの。そういうものが会期の終わり頃にあちこちで漂っていて、
それはアーティストはじめそれぞれの現場に関わった人たちが、
丁寧な仕事と地域への接し方をしたからなんだろうと思いました。

滞在先の月崎荘での多くのアーティストやサポーターの方々との出会いや過ごした時間は、楽しくも貴重なものでした。

先日、芸術祭の動員数が8万7000人と発表されました。
目標動員数を20万人と設定していたので、大きく下回ったようです。
ですが、その数とは別なところで地域にとって開催の意義というか
得たものは大きかったようで、実行委員長であった市長は、
次回開催に向けて意欲的である、といった記事が出ていました。

芸術祭の評価というとき、目に見える数字として
動員数はひとつの基準とされるのですが、
実のところその数は実際の内容というより広報戦略に左右されることが多く、
そんなにあてにならないな、という印象を僕個人は持っています。
一方で、そのような数字になりにくいような出来事が、
ここ中房総では本当にいろいろな場面で多数起こっていました。
これからそういった出来事を誰がどのように評価し、
さらにはその種を拾い上げて育てていくなかで、
また数年後にこの中房総で開催されるであろう芸術祭に
どのように繋がっていくのか、とても楽しみです。

ということで、「いちはらHOMEROOM通信」もこれが最終回となります。
僕たち自身、試行錯誤しながら企画を進めていくなかで、
寄稿するためにその都度言葉にしていくことで
思考や実践を整理するいい機会となりました。
みなさま、お付き合いいただきありがとうございます。

information


map

IAAESプログラム
NAKAZAKI Tohru HOMEROOM

会場:IAAES 旧里見小学校(千葉県市原市徳氏541-1)
Vol.1 山城大督《映像芸術実験室〜時間を操ろう〜》
Vol.2 テニスコーツ&YOK.《School PICNIC》
Vol.3 下道基行《撃つか撃たれるか/Dead or alive》
Vol.4 遠藤知絵×木下真理子《あてはまらないところで、自分らしく生きてみる》
Vol.5 アサノコウタ《教室のなかのちいさな教室》
Vol.6 環ROY×蓮沼執太×U-zhaan《体育館ライブ》
Vol.7 藤井光《校内暴力のハードコア》
Vol.8 珍しいキノコ舞踊団《カラダと遊ぶ! ダンスの状態で楽しむ!》
Vol.9 辺口芳典《ヒップホップな作文の時間》
◎「HOMEROOM/After school プログラム」
Vol.1 友枝望
Vol.2 松本美枝子
http://homeroom18.exblog.jp/
https://www.facebook.com/homeroom.nakazaki

information

ICHIHARA ART × MIX
中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス

2014年3月21日(金)~5月11日(日)
メイン会場:千葉県市原市南部地域(小湊鐵道上総牛久駅から養老渓谷駅の間)
連携会場:中房総エリア(茂原市、いすみ市、勝浦市、長柄町、長南町、一宮町、睦沢町、大多喜町、御宿町)
http://ichihara-artmix.jp

デコトラ、ブチ上げ改造単車、相田みつを。広島・鞆の津ミュージアムで「ヤンキー人類学」

広島県福山市の鞆の浦にある、
「アール・ブリュット鞆の津ミュージアム」。
2012年にオープンした、築150年の蔵をリノベーションした美術館です。
ここで展示されるのは、普通のお行儀の良い美術作品ではありません。
「アール・ブリュット」または「アウトサイダー・アート」と呼ばれる、
芸術の伝統的な訓練を受けていないアーティストたちによる
自由で型破りな表現の作品たちが中心なんです。

こちらで現在開催中の展覧会の名は「ヤンキー人類学」。
そう、70~80年代にかけて全盛だった
リーゼント・変形学生服・特攻服・改造車などに代表される
文化を好んだ若者たち、「ヤンキー」がテーマ。
いまではその姿をほとんど見られなくなった、時代の徒花的
存在に大きくスポットを当てた展覧会です。
一般的には否定的な目で見られてしまう「ヤンキー」文化を
肯定的にとらえ直す、大変意義深い試みなのです。

丸尾龍一さん:12歳の頃、デコチャリ(デコレーション・チャリンコ)の存在を知り、独学で制作を開始。沢山の電球を使用した電飾や、カーステレオ、カーナビ、ワンセグ、バックモニター、無線機などを全て搭載した豪華なデコチャリを作り続けている。

展示されるラインナップはこちら!

・伊藤輝政さんによる超精巧なデコトラのミニチュア
・自作のデコチャリ
・ブチ上げ改造単車
・ド派手な成人式の衣装
・相田みつをの書
・メンズナックル
・新潟県南魚沼市にある日本最大級のアウトローショップ「BIRTH JAPAN」
・平成8年、北海道枝幸郡枝幸町で結成されたYOSAKOIソーラン団体

「ヤンキー」、それは、自らを表現せずにはいられない強烈な主張。
いずれも権威や常識、既成概念に反発し、自由な編集性を持つ、
生命力に満ちた表現たちです。
展覧会を企画した「鞆の津ミュージアム」キュレーターの
櫛野展正さんにコメントを頂きました。

「本展覧会展示作品は、どれも実現に向けて自分の足で探したり、
人づてに頼んだりして、リサーチや作品収集を行ったものです。
そもそも展覧会というものに初出展の方がほとんどのため
苦労した点は作品の選定でした。
実現には1年かかっています。

見どころは、市井の人たちが作ったデコチャリ、改造単車、
アートトラックという3つの乗り物系が揃っていること。
そして、相田みつをさんも展覧会の出展者と
なっていることでしょうか」(櫛野さん)

地下格闘技団体「漢塾(おとこじゅく)」塾長の前田島純さん

会場においては、展示だけでなく
茂木健一郎(脳科学者)や斎藤環(精神科医)によるトークイベント、
光輝くデコトラを撮影する「アートトラックチャリティー撮影会」
など、催しも盛りだくさん!
ぜひ日本文化のひとつ「ヤンキー」が放つ
仏恥義理(ぶっちぎり)のパワーを感じてください。
開催は7月21日〈月・祝〉まで。

鞆の津ミュージアム「ヤンキー人類学」

山ノ家 vol.8: ドミトリーの完成と夏の終わり

山ノ家 vol.8
工事が終わりそうでなかなか終わらない?

カフェには連日いろいろな人が訪れ、あっという間に過ぎていく時間。
そして2階のドミトリーのための工事も大詰め、のはずなのだが、
なかなか終わりが見えない……?
それもそのはず、手を入れる部分はカフェのときよりもはるかに多い。
床貼りや塗装など、わかりやすく進んで見える工程もほぼ終えて、
納まりの細かい部分が多くなり、調整が重なってくるとさらに進みが遅く感じる。
加えて1階のカフェを営業させながらの作業は、やはり少しやりづらい。
仮囲いをいつまでもつけているわけにもいかない。
このままでは、完成がどんどん遅れる可能性も……。
大工さんからの進言もあり、考えた末に運営チームとも相談して
8月の後半は週末のみカフェを営業、平日はクローズにして、
その間は工事のみに集中することにした。

2階廊下の壁と天井を塗装。これが終わらないと、客室のドアや、天井照明などを取り付けることができない。塗装は常にさまざまな作業工程と絡んでくる。

1階の客席、テーブルを一度片付けて場所を空ける。ここは、茶箱を利用したベンチの席が最終的に設置される。

そんなさなか、8月の最後の週末には、
山ノ家のあるほくほく通りで昔から行われているお祭りがあった。
(知ったのが直前過ぎて、盆踊りのとき〈vol.7参照〉のように出店をする余裕はなかった)
「しちんち祭り」と呼ばれ、
目の前のほくほく通りを2日間に渡って、手づくりも含めた
さまざまな神輿がにぎやかに通り過ぎていく。
楽しげな中にもなんとも言えず、季節の変わり目が近づいているような、
そんな名残り惜しそうな気分を醸し出しているように思えた。

地元の人によれば、このお祭りは
やはりこのまちの夏の終わりを告げる風物詩のようだ。

「しちんち祭り」の様子。山ノ家のある通り沿いをさまざまな神輿が行列で練り歩くお祭り。

少しずつ、みなが現場を離れる日が

8月の後半の平日をクローズにしてでも(芸術祭は開いているのにも関わらず)
工事を優先しようと考えた決断には、
もちろんドミトリーを早くオープンできるようにしたい
というのもあったのだが、もうひとつ理由があった。

実は、8月いっぱいに作業を終わらせることを
あらかじめ目標にしていたこともあって、
そのタイミングを最後にこの現場から離れなければならない人が何人かいた。
7月からずっとこのリノベーションにつきあってくれたアキオくんと、
インターンで約1か月滞在し続けていたジュンくん。
さらに、立ち上げやインターンの取りまとめなど、
さまざま奮闘してくれたgift_スタッフのメグミさんも、
9月からの3か月、海外に語学留学にでることになっていた(戻ってきたら、
また一緒にgift_の一員として復帰してもらうことももちろん約束の上で)。

彼らに、少しでも最終形に近い山ノ家を目にしてもらいたかったのだ。
結局彼らがいる間には完成できなかったのだが。

それまでにも、インターンとして入ってくれていた人たちが
1週間から2週間ほど来ては帰っていく、ということを繰り返し、
何人もの協力のもとにこの山ノ家はつくりあげられてきた。
引き続き芸術祭が終わる9月後半まで、
インターンさんたちは入れ替わり来てくれるシフトになっている。
さまざまな経緯、興味で応募してきてくれた彼ら・彼女らへの感謝は、
いくら述べてもつきない。

現在もgift_スタッフとして活躍中のメグミさん(左)。後ろ髪ひかれながらもあわただしく現場を後にした。

アキオくんとジュンくん。滞在最終日にお祝いのシャンパンならぬお気に入りのトラピストビールを掲げて記念写真。彼らもドミトリーの完成を見ずに現場を離れなければならなかった。

ついにドミトリーもオープン、新たな日常が始まる

ずっと滞在して寝食を共にした人たちが現場を離れていくなか、
まだその後も滞在してくれている人たちと最後の仕上げ。
最後まで完遂することがミッションの工務店の大工さんももちろんいる。

主要なメンバーがいなくなった後に、残った人たちで最後に1階のレセプション部分となる床の染色を行ったり。

実は、山ノ家でつかわれているインテリアのなかには
もともとこの家に残っていた
いろいろなものを利用してできている什器や家具がある。

例えば、カフェオープン時にはなかったベンチソファー席。
この家の放置されていた茶箱を利用することをある時に思いついた。

工事前の写真。もともとこの家にあった、6つの茶箱。これを何かに利用できないかと当初から考えていた。

この茶箱の紙を剥がして、外壁と同じ黒染めの塗料で塗って。

その箱を脚として、別手配したクッション部分をのせて、ベンチソファーが完成。

茶箱を利用すると、座高が高くなってしまうことが懸念されたが、
小さな子にとってはテーブルが近くなり食べやすく、
ベンチだと親との距離も近くなるようで、
小さな子を持つ親には好評となった。

それから、桐たんす。
調湿に優れ、持ちがよく本当に美しい伝統的な家具だが、
独特な時代感が漂ってしまう家具なのでどう扱うか最初はちょっと考えあぐねた。

これも工事前の写真。この立派な桐たんすが、ふたつもあった。

池田の「引き出しを取り外して棚として使ったらよいのでは」
という思いつきをやってみることにした。
そこに置くものを美しく並べることで、
見違えるような感じになり、これがとてもよかった。

カフェにて、引き出しを全てはずしてオープンな棚として使用した。日常をより美しくみせるツールに。

そして、店舗の什器で使用していたと思われる鉄のフレームがあったので、
これを物販用の棚として再利用したり。

少し錆び付いていたので紙ヤスリをかけ、鉄の生地肌ともとの塗装を何となく残しながら、その後錆び止めクリアの塗料を塗った。

板を新調し、現在はショップの棚として利用している。

他にも、ここにもとあったものを新たなかたちで再利用することができたことは、
とてもラッキーだった。
それらをどう使うかは、僕らにとっては一番の楽しみでもあり、
この空間にとっても幸せなことなんだと思う。
この場所の雰囲気をつくりだすのにとても重要な役割を果たしている。
例えば近所の人がカフェに来てもなじめる雰囲気があるとしたら、
これらもとあった家具たちのおかげだと思う。
そんな1階の空間づくりとは異なり、
2階のドミトリーは、逆の考え方によって構成されている。
宿泊するのは、カフェに比べれば少なからずこの土地以外の人。
外から来る人を想定し、モダンな気分となる要素を取り入れたかった。

既存の屋根裏の梁などを露わにしながらも、
この家のもとあった古くからの部分を引き出すのとは
対照的な雰囲気のインテリアを取り入れる。

その象徴となるのは2段ベッド。
ハシゴを木造などにはせずに、
金物(ステンレス)にしようと考え、
金工をやっている知人に製作を依頼することにした。

ベッドは、個別に区切れるカーテンレールをなるべく自然に使えるよう考えたり、
携帯や小物や手元灯りを置けるような細い台になるスペースをつくったり、
寄りかかれるような大きなクッションを置けるようにしたりと、
少しでも快適に使えるようにと工夫した。
その上、マットレスの底の通気性を考えたら
スノコ状にスキマを空けて張るべきだったりと、
造作としては結構な複雑さとなり大工さんと納まりについて
侃々諤々(かんかんがくがく)とやりあいながら、最終的にまとめ、ようやくの完成となった。

最後の山場、2段ベッドがついにでき上がった!

これで、ドミトリーもかたちが整い、およそ全体の要素が揃った。
そうしてなんとか、9月に入ってドミトリーを無事オープンさせることができた。

最初に泊まったお客さんは、
スタッフの知人だったこともありとても和やかな夜となった。

ドミトリーを利用するお客を迎えることは、とても新鮮で不思議な感覚だった。
個人的には「客」を迎える、というよりは、
「新しい友人」を迎えているような心持ちで、
できることなら全ての人と話をしたいくらいだった。
これは現在でもそうで、どちらかというと家をシェアしているような感覚なのだ。
(もちろん、プライバシーはきちんと尊重した上で)

次の日の朝、宿泊客を見送ったあとに、
シーツなどを片付けにいったところで嬉しいサプライズを発見。

写真ではちょっと見えにくいが、「おめでとう!」とマジックで書かれた風船が枕元に並んでいた。

季節はすでに、夏から秋に向かっていた。
大地の芸術祭の終わりも見えてきたころにようやく、
山ノ家の全体の新しい日常が始まりだした。

つづく

制作予算上限200万円!大阪・御堂筋を舞台にアートする「おおさかカンヴァス」参加受付中

大阪の街を大きなカンヴァスに見立て、
アートやデザインを通し
新たな街の魅力を創造・発信する
プロジェクト「おおさかカンヴァス」。
昨年は、中之島西に設置したトイレで用を足すと
その水圧を感知して小便小僧から大量の水
(水質を浄化する微生物を含んだ水)が噴出するという
「大小便小僧」など
3作品を発表し話題になりました。

今年の舞台は御堂筋。
南北にまっすぐ伸びた大阪のメインストリートです。
普段から多くの人が行きかうこのオフィス街の空間をつかった
パフォーマンス、音楽、演劇、インスタレーション、
ワークショップ、ペインティングなど、
あらゆる表現活動を幅広く募集。
採用されると、なんと
制作費200万円までの支援が受けられます。

また秋の作品発表時には、
アートに加え音楽、フードが楽しめる
多様なプログラムとの連携も予定。
多くの人が集まる中で
斬新なアイデアを形にするチャンスです。
いつもと違った御堂筋の魅力を
あなたの手で作り上げてみませんか!

【おおさかカンヴァス 募集スケジュール】
応募受付:平成26月5月9日(金)~平成26年6月25日(水)必着
概要説明会+現地案内:5月24日(土)14:00~15:30、5月29日(木)19:00~20:30
結果発表:平成26月7月下旬
作品展示・発表:平成26月10月上旬(3日間程度)

おおさかカンヴァス
Facebook

MAD City vol.8: 古びた一軒家から生まれた 真っ白な壁が囲むアトリエ空間

MAD City vol.8
古くてボロい残りもの物件にだって、「福」がある?

誰も借り手がいなくて、空き家のまま放置されているようなボロボロ木造の一軒家。
みなさんのまわりにも、そんなおうちがあるんじゃないでしょうか?

普通の不動産屋さんならば「ここは普通には貸せないな」「値段がつけられないな」
と思うような物件も、実はMAD City不動産で扱っています。
なぜこれらの物件を扱うのか。それには理由があるんです。

まず、ひとつ目のメリットは
これらの物件は、単純に「借り手が少ないのでそもそも賃料が安い」という点。

また、もうひとつは改造が自由なケースが多い点。
木造建築は長年人が住んでいないと傷んでしまうため、
ボロボロの物件は、多くはそのまますぐに住めるような状態ではなく、
入居の際には内装工事が必要になります。

業者に工事を頼めば数百万円ぐらいかかってしまいますが、
DIYができる人にとっては、材料費のみで自分の使い勝手が良いように、
自由にいくらでも改造ができるわけです。

さらに、木造物件はコンクリートや鉄筋の住宅と違って、
壁や床、天井などもいじりやすいため、
自分でリノベがしやすいという利点もあるんです。

なんだかちょっと褒めすぎてしまっているようですが、
人によってはこれが理想的な物件になることもある、ということです。

まさにこんな物件を探し求めていたのが、
兄弟そろってペインターというアーティストの菅 隆紀さんと雄嗣さん。
ふたりが当初探していたのは
「とにかく安くて、アトリエとしても住居としても使える物件」でした。

お兄さんの隆紀さんは油絵を主体としたアーティスト。http://sugar-w.com/
弟の雄嗣さんも現在東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻に在籍する油絵画家。

とにかく壁が広くて、大きな作業音を出しても近隣の方から怒られず、
しかも、住居としても利用可能な物件。
でも、いざ探してみると、この条件に合う物件は、どれも賃料が高かったり、
お風呂などの生活スペースがなかったりと
住居として使うのは難しい物件ばかりだったそうです。

そして、2012年の年末。
物件探しに明け暮れるふたりが出会ったのが、
MAD City不動産の築年数40年以上の木造建築「それもできます」でした。

「それもできます」はMAD City不動産の命名ですが、
その名の通り、「なにをしてもOK」という物件。
改造・DIYはもちろんのこと、住居としての利用だけではなく、
カフェやアトリエなどの店舗としての利用も相談可能。
しかも、庭付きの2階建て。
それでいて、家賃は一軒丸々借りきって4万円台と、
管兄弟のニーズにばっちり合った物件だったのです。

「それもできます」のDIY前の室内。広さはあるものの、ボロボロの木造の壁と腐りかけた畳張りの室内で、すぐに住むのはちょっとむずかしそうな様子でした。

「この物件を最初見たときに、『一見ボロボロだけど、
自分たちでリノベすればまだまだ使える!』と思ったんです。
そこで、即入居を決めました」と語る菅兄弟。

壁はボロボロ。畳の床は腐りかけ。
普通の人ではちょっと躊躇してしまうような大変な中古物件ではありますが、
そのポテンシャルを一度の内見で見抜いた菅兄弟。
これまでにもスーパーの居抜き物件に手を加えて
アトリエとして利用していたことがあったというだけあって、
ふたりにとってリノベはお手のものだったそうです。

そして、この物件をDIYするときにふたりが心がけた一番のポイントは
「とにかく作品を飾れる広い壁をつくる」ということでした。

「僕らペインターにとって、広い壁のあるアトリエスペースって、
実はすごく重要なんです」と語る菅兄弟。
作品を客観的に見るためには、家具も壁紙もない白い壁に自分の作品を飾って、
何度も眺める機会を持つことが重要。
視界に邪魔が入らない場所に作品を置いて、作品を客観的に眺め、また再考する。
この作業を繰り返すことで、自分の作品に対するポテンシャルを探ることができるのだとか。

「でも、普通の住居だとなかなか数メートルもある大型の作品を飾れるだけの
広い壁がないので、この物件を改造するときは
『とにかく広くて白い壁をたくさんつくろう』と心がけました」

まずは広い壁とスペースを確保するべく、押入れも壁もすべて取り払って巨大なワンルームに!
屋根を支える大事な柱や壁以外の箇所は、ほぼ全部取り払ったそうです。
そして、従来のボロボロだった壁には、真っ白に塗ったベニヤ板を張り巡らせて、
念願だったホワイトキューブのような真っ白なアトリエスペースをつくりました。
「木造で老朽化していたからこそ、作業も楽でしたね」と語る菅兄弟。

DIY前の居間。

押入れや壁を取り払い、ベニヤを貼り付け真っ白に塗り直すことで、巨大なアトリエスペースに! 奥行きがあるので、壁をシアターとして利用して、映画を大画面で観たりしているとか。

また、腐りかけてボロボロになっていた畳も全部剥がして、
骨組みをつくり、その上からベニヤ板を敷き詰めて床も補強。

床も全部張り替えてます! 作業時にペンキが飛び散るので、現在はベニヤ板の上からシートを敷いて利用しています。

これらの作業はすべてを兄弟ふたりで行って、かかった期間は約1か月間。

費用は板やペンキなどの資材とゴミの廃棄代以外はほとんどかかりませんでした。
DIYのよいところは、自分たちの思う通りに部屋を変えられるし、
失敗してもすぐにつくり直せる。
また、壊れてきたらそこからまた補強できるところですね」

改造前(上)と後(下)のキッチンスペース。

作品づくりに使用するペンキ類はもともとあった靴箱を再利用して置き場を確保!

改装で余った木材を使って、本棚もDIYしています。たった4枚の木材でできていますが、ハードカバーを数十冊置いても壊れません。

隆紀さんが「sugar-w」という名前でペイントした靴の作品制作もこのアトリエで。できた靴がずらりと並びます。

DIYした白い壁には、数メートルある大型のものから小さなものまで、
十数点の作品がところ狭しと展示されています。

残り物には福がある」という格言にもありますが
今回、菅兄弟の物件の活用ぶりを見ていたら、
そのポテンシャルさえ見抜ければ、
どんなに古い物件もリノベとアイデア次第で
いくらでも生まれ変われるんだと思わずにはいられません(しかも格安!)。
ポテンシャルの高い物件はきっと日本中にたくさんあるのに、
本当にもったいないです!

1階の間取り図がこちら。赤枠部分が、白い壁が全面つながるワンルーム。2部屋をつなげただけでは飽きたらず、押し入れを取り払ってさらにもう1部屋つなげるという荒業!

さらに、当初は「物件重視」で松戸付近にアトリエを構えることになったふたりですが、
松戸近辺に住むことで、次第に松戸の地理的メリットにも気づくようになったのだとか。

「松戸は常磐線沿線で芸大の取手キャンパスにアクセスしやすいし、
東京や表参道にも電車1本で行ける。
また、成田にも近いので、海外からのアーティストが立ち寄ったりすることもあるため、
アーティストにとっては地理的にかなり便利な場所なんです。
だから、松戸近辺に定住したりアトリエを構えたりするアーティストは結構多いんですよ」

なお、兄の隆紀さんが今年度からオーストラリアでアーティスト活動を開始するため、
今後しばらくは弟の雄嗣さんだけでこの物件を使用する予定とのこと。

「この物件のようにスペースが広くて、汚してもOKなアトリエを借りようと思ったら、
なかなか見つからないし、あってもかなりお金がかかってしまいます。
芸大仲間のアーティストでもこの立地、この価格、この条件ならば、
アトリエスペースとして利用したいという人はいるはずなので、
兄がいなくなった後はこの家を共同アトリエとして複数人で利用するつもりです」
と雄嗣さん。

また、雄嗣さんはアトリエ自体の利用だけではなく、
今後は、自分たちと同じように松戸を拠点として集まるアーティストたちと一緒に、
まちとつながるようなアートイベントや展示会などもどんどん行って、
まちをアートで活性化させていきたいとも考えているそうです。
こういうあたりも、MAD Cityで取り組んできたことと関連しているので、
これから一緒に何ができるか夢が膨らみます。

菅兄弟のように、地方都市に眠る宝の山を掘り起こす人たちが
つながっていける仲間の輪を広げたいし、つくっていきたい。
MAD Cityでは、そういう人々が集まるエリアを目指して日々奮闘中です。

information


map

MAD City(株式会社まちづクリエイティブ)

住所 千葉県松戸市本町6-8
電話 047-710-5861
http://madcity.jp/

今秋、秋田の「地域因子」をアートで刺激する。大館・北秋田芸術祭 2014「里に犬、山に熊。」

先日コロカルニュースでお伝えしたところ
大変大きな反響を頂いた、
秋田県大館市のNPO「ゼロダテアートセンター」に
広報として着任した「ののちゃん」。
カワイすぎる秋田犬という評判でもちきりの
ののちゃんが先日、東京に出張に来ました!

たくさんのフラッシュにも物怖じしないののちゃん。

それは、ののちゃんが広報を担当する
大館を含む地域を舞台とした広域アートイベント、
大館・北秋田芸術祭 2014「里に犬、山に熊。」が
10月4日(土) - 11月3日(月・祝)の期間にわたり行われるため!
芸術祭が開催されるエリアは、大館市と北秋田市にわたる地域。
都市である大館市が「里に犬」、豊かな生態系の中で熊と
人間が共生してきた北秋田市が「山に熊」を担当。
各地域を舞台にしたアート作品の展示や、地元の方と協力した作品制作
が行われます。

「大館・北秋田芸術祭2014」記者会見にて。メインビジュアルを手がけるのはシンプル組合

こちらが、北秋田市のほうの熊です。

この芸術祭の統括ディクレターを務めるのは、
大館出身で18歳までこの地で過ごした、
アーティストであり、東京藝術大学の准教授であり、
3331 Arts Chiyodaの統括ディレクターでもある中村政人さん。
芸術祭の参加アーティストにも、劇作家の平田オリザさん、
アーティストの日比野克彦さん、栗林良彰さん、遠藤一郎さん、
鴻池朋子さん、鈴木理策さん、パトリシア・ピッチニーニさんら
豪華アーティストが名を連ねているんです。

芸術祭の舞台となる、大館市のシンボル的存在「正札竹村デパート」。過疎化などの影響で現在は閉店しているが、大館で生まれ育った中村政人さんにとっては特別な場所だという。

パトリシア・ピッチニーニさんの作品 〈Skywhale〉Patricia Piccinini, 2013
Photo: Martin Ollman

本芸術祭のキーワードは、「地域因子×アーティスト」。
遠方からやってきたアーティストが、ただアート作品を作って帰って
いくのでは意味がありません。地域のなかに眠っている資源の発芽を
促すため、アーティストの作品が土地に刺激を与え、
芸術祭の後も地域が発展していくことを目指すのだそうです。

マタギのふるさと・北秋田市の阿仁町根子集落 写真:船橋陽馬

参加アーティストにも、地元にゆかりの有る方が多くおられます。
平田オリザさんは、「自分は日本一大館北秋田に詳しい劇作家」と
語られるとおり、お母さんが大館の出身。
いまもご親戚が多く大館に住まれているという、大館にご縁のある方。
秋田内陸縦貫鉄道の中で、内田百閒の「阿房列車」をアレンジした
お芝居を上演されるのだそう。
ほかにも、「のんびり」を手がける田宮慎さんらも参加し、
地元密着型の催しを数多く行っていきます。

まちのどこでも大人気なののちゃん

豪華なアーティストのラインナップはもちろんですが、
芸術祭における、「ののちゃん」の役割は大きなもの。
実は地元でも、成犬になるとすごく大きくなる秋田犬は
飼うのが難しいとされていて、実際に飼っているご家庭は少ないんです。
ののちゃんの存在があることで、今までは接点がなかった人たちも、
コミュニケーションを取ろうと近づいてきてくれるのだとか。

「今までも秋田犬を飼おうと提案してきたのですが、
大きくなると反対されてきたんです。でも実際に飼い始めてみると、
初日からゼロダテに市民の皆さんが気軽に入ってくるようになりました。
犬がいると、人と人の距離がやわらかくなるんです」
と、中村政人さんはおっしゃっていました。

里と山に心を開き、小さくてもかけがえのない、
自分たちの「新しいひろば」をつくり始めていくこと。
実は秋田とは、変わっていて面白いものがたくさんある
ところ。秋田の里山を舞台に、どんな芸術祭が繰り広げられるのか
今から楽しみです。

大館・北秋田芸術祭 2014「里に犬、山に熊。」

東京の下町、三ノ輪に自由で新しいスペース「undō(運動/ウンドウ)」が誕生

都電がのどかに走り、元気な商店街がある、
いまも東京の下町の風情が色濃く残るまち、三ノ輪。
ここに、2014年5月1日、オルタナティブ・スペース
「undō(運動/ウンドウ)」がオープンしました。
3階建てのビルの3階が倉庫で、2階はキッチン、1階が店舗になっています。
カフェでありギャラリーでありバーでもある、自由な場所。
展示やイベントを行ったり、ちょっとしたお酒や食べ物を
囲んで人が集います。
主宰の中心メンバーも、編集者、写真家、
翻訳家、神主という一風変わった集まりなんですよ。

もともとは自転車屋さんだったビル。自分たちでリノベーションしました

オープン後には地元の人やおしゃれなご夫婦も訪れてくれる場所になっているとか

今後undoでは写真展などの開催を予定。
夜はバーとしても営業しています。
何か新しいことが起こりそうな予感がする場所。
ご近所の方は、ぜひ気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

undō(運動/ウンドウ)

「山ノ家」チームが運営!千葉・いちはらアート×ミックスの「DIY Café Camp!」とは

千葉県の市原市で開催中のアートフェス、
中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」。
コロカルでも連載「いちはらHOMEROOM通信」でお馴染みですよね。
このフェスのメイン会場のひとつである
旧里見小学校を改装したIAAES(Ichihara Art/Athlete Etc. School)には、
"DIY"をコンセプトにしたカフェ「DIY Café Camp!」があるんです。

こちらが「Café Camp!」外観。小学校のリノベーションを手がけたのは「みかんぐみ」。

運営の山ノ家・後藤寿和さん。「山の家プロジェクトが今回のプロジェクトにつながりました」とのこと。

「DIY Café Camp!」を運営するのは、コロカル連載「リノベのススメ‎」
でもお馴染みの山ノ家運営チーム!
このカフェは「Athlete & Agriculture Association
(アスリート&アグリ組合、略称AAA)」という
プロジェクトの一部でもあります。

そもそもAAAとは、高齢化が進み農業の後継者がいなくなる悩みを抱えている
市原において、スポーツ人材と農のマッチングをするプロジェクト。
現役・引退後のスポーツ選手、指導者、トレーナーら体力に
自信のあるアスリートたちが市原に移住し、
里山農業をしたり、好きなスポーツを続けるライフスタイルを
計画しているんです。
アートミックス後もIAAESを拠点に、ワークショップ開催など
継続的に活動を行う予定なのだそう。
いちはらアート×ミックスは今月11日まで。
どんな場所になっていくのか、これからが楽しみです。

小学校を改装した店内。

カフェのコンセプトは「DIY」。スムージーやコーヒー、そしてピザを手作りすることができます。ピザ生地をのばして、好きな具を乗せるだけなので、お子様でも簡単。

カフェの日替わり提供メニュー。イチハラ豚を使ったキーマカレー。おいしいです。

市原の名産品をアレンジした魅力的なお土産「いちはら名産品リ×ミックスプロジェクト」。

この日はライブ・イベントが行われていました。詳しくは「いちはらHOMEROOM通信 vol.4」にて!

週末、IAAESには旅するパン屋「TAKIBI BAKERY」の出店も。

IAAESの学校長、美術家・中崎透さん。

ちなみにIAAESから車で15分程度走ると、古道具坂田の坂田和實氏が運営するミュージアム「museum as it is」もあります。ただいま「My Foolish Heart 愚かなりし我が心 T氏コレクション」を開催中です。こちらもぜひ合わせてどうぞ!

中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス

増田の内蔵 後編

家を守り、蔵を守る

秋田県横手市増田町の目抜き通りとなる、中七日町通りに建つ内蔵群を訪ねる旅。
次に伺ったのは、増田の内蔵の中で最も特徴的な内蔵を持つとされている佐藤又六家だ。
佐藤家は、この中七日通りで約350年にも渡り、連綿と続く商家で、
当主となる佐藤又六さんは現在で13代目となる。
幕末から明治前期に建てられたとされる蔵はふたつあり、
ひとつは主屋(明治前期)で、店舗と住居を兼ねている。
もうひとつは、文庫蔵(幕末から明治前期)で、
昭和初期頃には、家族の部屋として利用するために座敷間に改造された経緯を持つ。

佐藤又六家の外観。一見すると切妻の木造家屋だが、内部は店舗スペースから土蔵づくりとなっている。

これらふたつの蔵が奥行き120mの敷地に対し60mに渡ってつながり、
それを巨大な鞘建物ですっぽりと覆う様はまさに圧巻の姿だ。
手斧刻みの梁や桁がダイナミックに走る構造体、
華美には走らず明治建築の質実剛健さを伝える意匠。
そのひとつひとつが長い時のなかで一体となり、
内蔵空間にどっしりとした深みをもたらしている。
佐藤家の内蔵の特徴のひとつは、主屋を含む店蔵で、
一般的な増田の内蔵が敷地の奥に位置するのに対し、佐藤家の場合は、
店蔵という役割を持つため通りに面するかたちで建てられている。
そのため、鞘建物の2階正面の開口部からは、土蔵の妻壁が顔をのぞかせる。
建物が入れ子状態になっているようにも見えるこの様式は、
増田地区で唯一のものだという。

2階正面には縁側的なスペースがあり、内蔵の壁が顔をのぞかせる。

店舗と住居部をなす内蔵も黒漆喰で仕上げられていた。

店舗の奥に入ると、そこは座敷のある生活空間。まさに内蔵での生活がそこにある。

13代当主の佐藤又六さんによると、こうしたつくりになったのは、
大火による延焼を食い止める役割があったからだという。
「幕末から明治にかけて、ほかのまちと同様、
増田でも幾度か大火があったようです。
火事が出たときに木造家屋だと簡単に燃え移っていく。
そのため、土蔵で遮るという目的があって、
こうした建築様式がとられたようです」
かつて佐藤又六家は味噌醤油販売を営んでおり、
増田一の販売高を有した時期もあった。
増田銀行開設期はその発足にも関わるなど、
増田町に大きな影響をもたらす商家だった。
大火被害を軽減するための蔵づくりは、
増田における佐藤又六家の存在の大きさを今に伝えるもののひとつなのだ。

店蔵の奥に進むと、又六さんが「外蔵」と呼ぶ文庫蔵が現れる。

文庫蔵の内部。昭和期に生活空間として使用するために改修された。

明治期に蔵の前で撮られた写真。家族の記憶のひとつ。

現在、佐藤又六さんは、カメラ店を営んでいる。
先代は雑貨店を営んでいたが、写真好きが高じて、
代替わりのタイミングに商いを変えた。
その際、どうしても蔵をカメラ店として改修しなければならず、
又六さんは、先代にその内容を申し出た。
「当然、反対されました。蔵に手を入れるものじゃないって。
蔵は守るものだって。だから願いでたんです。
いつか絶対元通りにするから、手を入れさせて欲しいと」
又六さんは先代にこの約束を取り付け、どうにか店舗の改修を始めた。
どうにかというのは、改修着工日になって突然、先代が怒り出し、
改修を止めろと大騒ぎする一幕もあったからだ。
「いよいよとなると、急に不安になったのかもしれません。
父は、本当に蔵を大切にしていましたからね」

店蔵の座敷の差鴨居には、先祖の肖像が並ぶ。店蔵を建てたのは8代目又六だった。

佐藤家13代目の当主となる佐藤又六さん。「蔵を守るのは当然のこと」と語る。

改修工事も無事に終了した後に念願だったカメラ店を開き、
今日まで営業を続けてきた又六さんが先代との約束を果たしたのは、
数年前のこと。
「私も年老いて、カメラ店の忙しさも一段落した。
そうしたら、父親との約束を守らなきゃと思い立って、
元に戻す計画を立てたんです。父はすでに亡くなっていましたが、
こうして元と同じ蔵構えに戻せてよかったって、心底思っているんですよ」と笑った。
こんな話を伺っていると、
若い女性が就職活動用の証明写真を撮って欲しいと、お店にやってきた。
又六さんは慣れた手つきでカメラをセットし、丁寧にシャッターを押していく。
現像、仕上げまでの間、又六さんは、女性にひと言、
「奥に古い蔵があるんですよ。
写真が出来上がるまで、ご覧になったらどうですか」と見学を勧めた。
又六さんのこの言葉によって、女性は立ち上がり、光が差す店内から、
ひんやりと澄んだ闇が占める蔵のほうへと消えて行った。
「今はもう、こんな風にのんびりね、蔵と一緒に暮らしているんですよ」
と笑う又六さんの柔和な表情が印象的だった。

明治の頃とほとんど変わりないという横座。主人が座る場所だった。

蔵の2階は客間として利用したほか、結納など家族の大切な場所として使用されてきた。

又六さんにとって、この内蔵とはどういう意味があるのだろうか。
山中家で、蔵が家族の生き死にを見守る場所だということを知った僕は
率直に問いを投げかけた。
又六さんから返ってきたのは、
「そうですね、家を守る象徴でしょうか」というひと言だった。

又六さんの日常は、カメラ店を営む店舗スペース。ここでゆったりとした時間を過ごす。

「家を守る」。普通に日常のなかで聞く言葉だが、
僕にとってはその真意をつかみかねるものである。
祖父母のいない核家族で、しかも両親のルーツとはまるで関係のない
新興住宅地で育ったことに起因しているかもしれないが、
「家」はどこか遠いものだ。
田を埋め立てて造成したどこにでもある住宅地の
どこにでもあるような我が家には、仏壇もないし、
周囲には深い闇を宿すような寺や神社もなかった。
寄せ集めの人間たちが新たにつくり出す祭りもどこか空々しく、
子どもの目から見ても、下手な芝居のようだった。
そんな人間にとって、多くの人が語る
「家を守る」、「家を継ぐ」という言葉は、わからないものだった。
家や土地に関するもので守り続けたいものなど、どこにもないからだ。
その証拠に、最近、関西にある実家が引っ越しすることになり、
自分が育った実家は人の手に移ったのだが、
正直なところ、何の感傷もわかなかった。
15年前に岩手の片田舎に移住して、
土地に残る伝統や文化を大切にする暮らしをたくさん経験した。
どれも素晴らしいことだと感じてきた。
けれど、「家を守る」ことの「わからなさ」は
自分の中にはっきりと在り続けていると感じている。
だから、「奥山さんは、家を守るってことがわかりますか」という
又六さんの問いには窮するしかなかった。
また、今では恥ずかしいことだと思っているが、
両親の実家が遠方にあったこともあり、
僕は一度も両親の実家の墓と呼べるものを訪れたことがなかった。
簡単な話、自分のルーツと呼べるものに触れずに生きてきた。
でも、だからこそと言えるのだが、
おそらくルーツとしての「家」や「先祖」を持たない人間しか持つことができない
自由さも感じている。
自分は、どこにでも住めるし、
生きていける自由さのなかにいることを感じることができる。
「家」なんてものはかたちでしかない。
かたちあるものはすべて壊れ、消える運命にあるもので、
そこに今を生きる人間が自らの存在を投入するのは、
少しばかりおかしなことではないか。
良いとか悪いとは別にして、そんな風に僕は感じて生きてきた。

佐藤家の内蔵には、ここにしかない時間が流れる。

又六さんは続けた。
「家を守るって言っても、修繕したりね、
親父との約束を守って、元通りにしたり、そういう役割もありますが、
それは目に見えることにすぎません。
じゃあ、何が大切かというと、簡単に言うと、先祖を供養する、
ずっと続いている家族の歴史を大切にするってことなんですよ」
そういって、佐藤さんは、仏壇に置かれた過去帳を見せてくれた。
「ここには、先祖の名前が50人、記されているんです。
そのひとりひとりを知るわけではありませんが、
私もここに続くわけで、そういう流れの中にあるってことを、
子どもらはもちろん、孫たち皆で大切にしていきたいと思っているんです」
その言葉通り、佐藤さんは、ご先祖の法要を営む際には、
親類縁者に広く呼びかけ、
子どもから大人まで年齢を問わずにみんなで役割分担しながら法要を営むという。
「そうしているうちにね、孫のひとりが、自分が次にこの蔵を守っていく、
なんて元気いっぱいに言い出して。
先のことはわかりませんが、まあ、私の家を守るという役割としては、
こういうことなのかなって最近感じているんですよ」
と言って又六さんは、親類縁者が蔵にある仏壇の前で手を合わせる姿を捉えた
法要時の写真も見せてくれた。
それは、間違いなく、見えない何かに結ばれた人のつながりで、
僕や僕の両親がつくってこなかった世界だった。

佐藤家に残る過去帳。先祖代々の名がここに記されている。

ふと、こうしたつながりを持つことで
人は自分自身という存在を認めていけるのではないかと感じた。
自分は自分以外誰ものではない。
そんなことは当然で、誰もが自分は自分だと思って日々を生きている。
でも、そんな自分なんてものは、
ときに手に負えないモンスターのようなものでもあり、
その存在を心底認められるかとなると少しばかり難しいと思う。
その結果、自分の存在、自分が存在する意味を見出せなくなってしまう。
その深みに落ち込んだ際の生きづらさ。
僕自身も若い時に人並みに経験したことだった。
でも、もしそのとき、自分へとつながる多くの人のこと、
その人たちが何を思って生き、そして死んでいったか、
少しでもリアリティーを持って想像できたとしたらどうだっただろうか。
顔のディティールまでは想像できないにせよ、祖父母たちや両親から、
さらにその祖父母や両親たちの生きたエピソードを聞けたらどうだっただろうか。
自分が存在すること、存在していってよいということを、
そんなことを自然と後押しされるのではないだろうか。
自分を認め、人間のつながりに不思議な安心感を得られたのではないだろうか。
その安心感は、もしかしたら「家」を知らぬ者が持つ自由さとはまた違った
生きることの自由さを生み出しはしないだろうか。

神棚と仏壇が見える座敷。法要や親類の集まりはこの場所で行う。

増田の内蔵を訪ね、感じたこと。
それは、山中家にしろ、佐藤家にしろ、「家」という存在の大きさと意味だった。
今僕にとっては、「家」はどこか抽象的で不思議なものだった。
個人的に「家」というものに希薄な意識で育ったということが影響しているだろうが、
たぶん、わからなさの本当の源は、「家」というもののなかで
当たり前のものになっている、人と人のつながりに不思議さや不安さを
感じてきたのかもしれない。
でも、考えてみると結局のところは、人と人のつながりとは、
どこを切り取っても不思議な縁に彩られていて、
同時に、か細い糸のようなものでもある。
増田の内蔵とは、人と人がつながっていく縁の不思議さや弱さに、
少しばかりの確かさと強さを与えてくれるような存在に思えた。

内蔵の存在は、僕たちに家族について、家について、静かに語ってくれるようだ。

先人たちが何を思い生きていたか。内蔵への旅は、そんなことを考える時間でもある。

増田のまちなみ。内蔵とそれぞれの家族の歴史がこのまちの佇まいをつくりだしている。

NO ARCHITECTS vol.7: 住んでいるみんなでDIYする シェアハウス 前編

NO ARCHITECTS vol.7
衣食住がそろうシェアハウス

前回の記事の最後に登場した、
僕らが住む家「大辻の家」の裏にある
アパートの一室のリノベーションが現在進行中です。
進捗状況を2回に分けてリアルタイムでリポートしようと思います。

左にあるのが僕らが住む大辻の家、右が今回リノベーションする部屋があるアパート。2棟合わせてSPACE丁(スペース・テイ)と呼んでいます。

部屋の場所がわかりにくいと思うので、スケッチを描いてみました。
丁字路の正面右手の路地を抜けて左手にある階段を上がってすぐの、
2階の踊り場に面した部屋が今回の物件です。

大辻の家とアパート丸々一棟を合わせて借りていて、
アパートには4部屋あります。
2部屋は各々が生活するプライベートな部屋として使っていて、
残りの2部屋の活用法をずっと考えていました。

その空き部屋は、押入れ付きの6畳の座敷がふた間と、
板の間の台所がひと間のL型2DK。
僕らが入る以前から、かなり長いあいだ空き部屋だったらしく、
廃墟同然で、カビ臭いどんよりした空気が流れていました。

今までは倉庫として使ってきましたが、それではもったいないので、
みんなの生活と連続するかたちで、
ものを作ったり考えたりするための共同アトリエとして、
リノベーションすることになりました。
ちなみに1階にも同じ間取りの部屋が空いていて、
ここの使い方はまだ思案中です。

vol.1の記事でも紹介させてもらったように、
大辻の家と裏のアパートとは、2階の踊り場で繋がっています。

クローゼットの奥に勝手口を開けると左に玄関が見えます。vol.1「住みながらつくる家」より。

屋上への階段の下の洗濯機置き場より、現場の玄関を見たところ。上のスケッチではわかりやすく広めに描いたけど、実際はとてもせまい。

今のところ、服をつくっている黒瀬空見と、シェフでパティシエの遠藤倫数、
空間をつくる僕らの4人で借りています。
それぞれが“衣食住”をかたちにすることを仕事としています。
着たい服があればミシンを、食べたいものがあればフライパンを、
住みたい家があればインパクトドライバーを。
そんなメンバーが揃ったシェアハウスです。
皆、大学院の同級生で、同い年で、仲良し。

ひとまず、ふたりの紹介を。

黒瀬は、
2010年より「日常のなかに物語を」をコンセプトに、
ツクリバナシとして日常着の制作を始めました。
そして、2013年の春に、東京からこのはなに越してきました。
「このまちは物語があふれていて、
もはや“日常を物語に”という気持ちになってきています。
ですので、最近では、その生活に合う服をつくることを目指しています」(HPより抜粋)
とのことです。

ツクリバナシの服の写真です。撮影場所はSPACE丁の屋上。(撮影:樋口祥)

つづいて、遠藤は、
岐阜県のケーキ屋とレストランで修業し、
2012年の春にこのはなに越してきました。
モトタバコヤのオープンスタッフとして、
シェアショップ内の「Café the End」の店長に。
月に1回開催されていたカクテルパーティは、毎回大盛況でした。
最近では、新規事業に向けて準備を進めているそうです。

カクテルパーティの様子。毎回違うテーマに沿ったカクテルメニューを考案して、それにあうケーキやキッシュなどを食べられるという企画。この会は、ピーチナイトでした。

みんなで決めて、みんなでつくる

さて、本題のリノベのリポートです。

特に打ち合わせしたり、図面を描いて検討したりはせず、
一緒にご飯を食べている時や、家の前でたまたま会った時に
立ち話したりしながら、それぞれのイメージを少しずつすり合わせていって、
あとは、現場スタートの日時の調整をして、作業が始まりました。
それぞれが計画者でもあり、施主でもあり、
現場作業までするといったプロジェクトになりました。

解体途中の写真です。

3部屋あるうちの奥の部屋は、黒瀬のアトリエに。
玄関からキッチン辺りを遠藤のバーカウンターとオープンキッチン、
そして、黒瀬のアトリエとキッチンの間に共有のリビングルームをつくる計画。

まず、部屋と部屋とのあいだの間仕切りの垂れ壁を解体し、
L型のワンルームにすることを目指しました。
不要な壁をなくすことで南側からの太陽光を奥の部屋に取り込もうとしました。
さらに部屋を少しでも広げるために、
押入も解体して、段差をなくして床も繋ぎました。

解体のゴミの処理や、床と壁の施工や電気工事などは、大学の後輩で大工チームのshirokuroにお任せしました。左が親方の伊藤くん。右は見習い中の杉本くん。杉本くんは大学で建築を学びながらというから将来が期待大。

ぼろぼろになった畳も撤去し、床も入り口からひとつながりの板張りに。
黒瀬は染色作業などもするので、防水塗料は厚塗りで。

もとの壁は砂壁で粉がぽろぽろ落ちてくるので、薄いベニヤ板でおさえて塗装。
染めた色や布の色が際立つように、柱を残して真っ白に。

抜群の集中力を見せる、塗装作業中の黒瀬先生。

トイレは、ドアを付け替えて壁も補強。床のタイルはそのままに。
押入れ部分の天井は、遠藤がベニヤを張って点検口まで取り付けてくれました。

といったところで、前編はここまで。
来月の後編では、いったん完成した姿を報告できると思います。
僕らも完成形があまり見えてないリノベーションの行く末は——
乞うご期待。

ハンマーで既存の台所を破壊する遠藤シェフ。新しくできるキッチン楽しみです。

information


map

NO ARCHITECTS

住所 大阪市此花区梅香1-15-20
http://nyamaokud.exblog.jp/
https://www.facebook.com/NOARCHITECTS.jp

兵庫県姫路市でPerfumeの最先端演出を体験!「Rhizomatiks inspired by Perfume mini ver.」

不動の人気を誇るテクノポップユニット、Perfume
彼女たちはカワイイだけでなく、抜群の身体能力と
豊かな表現力を持ち合わせるパフォーマンスで、
アーティストとしても高い評価を得ています。
近年では、ダンスパフォーマンスにテクノロジーを取り入れた
演出で、日本だけでなく世界からも注目を集める存在です。
ダンスする体にプロジェクションマッピングをしたり、
Webサイトで自分たちのデータを配布したり、いろいろ面白い
取り組みをしています。

そんな彼女たちの展覧会が、JR姫路駅のショッピングセンター、
「piole姫路」にて開催中!
その名も「Rhizomatiks inspired by Perfume mini ver.」。
Perfumeとタッグを組むクリエイター集団「ライゾマティクス」による、
Perfumeの先端技術演出を紹介する展覧会です。
会場で展示されるのはPerfumeが実際に着用した、
遠隔からコンピュータ制御でLEDが自在に光る「Spring of Life」の衣装や、
コンサートに来場したお客さんの3Dスキャンデータを使った演出の展示など
ハイテクなものばかり。
またご自分で3Dスキャンの体験も出来ます。

「Spring of Life」の衣装。紅白歌合戦でも使われたものも。

「3D Scan Syatem for Perfume」昨年末のPerfumeドームツアーにて行われた演出。会場外に設けられた3Dスキャンブースにて得た観客のスキャンデータをパフォーマンスの映像に使用しました。

このほかにも、グローバル展開された
ウェブサイト「Perfume "Global Site Project"」や、
コンピュータ処理で仮想メイク体験ができる「Happy Halloween!」なども展示。
Perfumeのファンも初心者も、テクノロジーとアート、
パフォーマンスとの融合を
姫路で体験できる機会です。
開催は5月6日(火・振休)まで。

ピオレ姫路開業1周年記念イベント開催!「Rhizomatiks inspired by Perfume mini ver.」
ライゾマティクス

ライゾマティクスとは:Perfumeの舞台演出等のテクニカル・サポートやミュージックビデオ・CMなどの演出、メディアアート作品の制作など、エンターテインメントとアートの境界を横断するクリエイター集団。本展示は昨年9月に東京のNTTインターコミュニケーション・センターにて開催された展覧会を、ピオレ姫路版にカスタマイズしたもの。

いちはらHOMEROOM通信 vol.4

中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」のメイン会場のひとつ、
旧里見小学校を改装したIAAES(Ichihara Art/Athlete Etc. School)。
ここでアーティスト中崎透さんが、さまざまな講師たちを招き
「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」を開催。
そのようすや芸術祭の風景を、中崎さんと仲間たちが5回にわたりレポートします。

はじめまして、「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」スタッフの里村です。
桜の頃も過ぎ、渡る風も爽やかな季節になりました。
「いちはらアート×ミックス」が開催されている南市原でも、
水の張られた田んぼは空の雲を映し、若々しい苗がちょこんと顔を出しています。
芸術祭に来られるお客さんも増え、里山に人の行き交う風景が見られる今日この頃。
ここでは芸術とともに日常や毎日の生活が続いています。

芸術祭に限りませんが、私自身、旅先でその地の暮らしに触れたり、
そこで暮らす人に出会ったりすることで、
その地に培われてきた時間や人の痕跡を感じることに幸せを感じます。
それぞれの人がひとりひとり、作品やその土地との出会い方を見つけられること。
芸術祭の面白さは、ここを訪れた人の数だけあると思うのです。
ですので、この連載がそんな出会いのヒントになることを願いつつ、
芸術祭の会場やその地域のことを少し紹介したいと思います。

しゃわしゃわと鳴くカエルの合唱をBGMに、IAAESを飛び出して、まずは養老渓谷へ!
NAKAZAKI Tohru HOMEROOMのメンバーも登場します~。

養老渓谷エリア

養老渓谷は、紅葉狩りで賑わう観光地。
それがこの土地の「オン」だとしたら、「オフ」の時間もとってもいいのです。
「オフ」とされてきた時間を「オン」に転換したり、
あるいは「オフ」のまま触れられるようにするのが芸術祭かなと思います。

養老渓谷駅裏手の坂を上ると、かつて小学校の校庭だった気持ちのいい広場が現れます。
いまは、ゲートボール場などがある住民の憩いの場所になっています。
一画には、キャベツが芽を出している小さな畑の下にモグラも暮らしているとか。
ん? モグラ?

開発好明「モグラTV」。会期中毎日(木曜休み)13:00〜14:00に日替わりのゲストを招いて、ustream番組「モグラTV」を生放送。これまでの放送もアーカイブされています。芸術祭参加アーティスト、地域のお父さん、市長までさまざまな方をお迎えしての放送は必見。

坂を下りて、崖に寄り添うように家が並ぶ道を抜けて鉄橋を渡ると、
「アートハウスあそうばらの谷」に辿り着きます。

HOMEROOMスタッフの林暁甫さんからの推薦の辞!

「アートハウスあそうばらの谷」は、
「いちはらアート×ミックス」に来たならば忘れずに立ち寄りたいところ。
ここには、大巻伸嗣さんの作品「おおきな家」が展示されており、
これがすばらしいのです。まっさらな気持ちで作品と出会ってほしいので、
敢えて画像や内容は紹介しません。
特に最後の作品は時間をかけてじっくり丁寧に体験してほしい。
その価値は保証します。(林)

作品鑑賞後は同じ敷地内にある「山覚俵家」で、腹ごしらえをオススメします。地域で採れた野菜とご飯を混ぜる「混ぜご飯」は、アートをめぐる旅にはうってつけです。

月崎エリア

月崎駅の詰所だった建物を苔で覆い、「森ラジオステーション」として
生まれ変わらせた木村崇人さんの作品に入ってみましょう。
扉を開いて中へ入ると、晴れの日には空間いっぱいに
木漏れ日と森の匂いが満ちています。木漏れ日の暖かさに包まれ、
いつしか森に溶け出していくような時間を過ごせると思います。

木村崇人「森ラジオステーション」。森との接点を思い出すきっかけがいま本当に必要だと思っているんだ、という木村さんのお話が印象的でした。

月崎駅を背に左へずっと進んでいくと「いちはら市民の森」があります。
その入口にある藁の家、ここが岩田草平×プロマイノリティ「サンタルの食堂」。
中は想像以上に広い快適な空間になっていて、藁のいいにおいに満ちていて気持ちいい!

「サンタルの食堂」サンタルカレーセット。

「サンタルの食堂」では、チキン、野菜、フィッシュの3種のカレーを味わえます。
個人的にフィッシュのサンタルカレーがお気に入りです。
ほかにも、サリーを着たり、「村民証」をつくったりする体験プログラムもありますよ。
村民証で使っている紙は、インドから持ってきたものだそう。紙マニアは要チェック!

月崎駅から市民の森への道中、チェーンソーアートを見ることができます。
チェーンソーアートのご紹介は、中崎先生にお願いしました。

市原市在住のチェーンソーアーティストの栗田宏武さんの呼びかけで
3月後半にチェーンソーアート大会を開催。
そのときに全国から集まった達人たちによる
数時間で制作されたチェーンソー彫刻がいくつも並びます。すごいです。
なお、栗田さんの出品作品は高滝エリアの「やもかのなかま」に設置されています。
大会のためにやってきたカーバー(チェーンソーカービングをする人)のみなさんが
我々と同じ宿舎だったので、交流ができて楽しい夜を過ごしました。(中崎)

チェーンソーアートをレポートする、きじとらさんのブログはこちら

月崎駅を背にして右へ進むと「山登里(やまどり)食堂」があります。
竹で組まれたテラスに、屋根から大根が干されて風に揺れているのが目印。
ユニット「とぬま」のおふたりと、シェフのルミちゃんが切り盛りする
アットホームなカフェです。

閉店した食堂「山登里」を改装したこともあり、ご近所さんが親しみを持って訪れたり、お仕事途中に寄った背広姿の人、作業着の人、さまざまな方が立ち寄るオープンな場所になっています。

地場産の食材を生かし、昼はサンドイッチやカレーなど、夜はイタリアンメニューがラインナップ。自家製果実酒や、生姜たっぷりのジンジャーエールなどドリンクも丁寧に作られていて、とにかく全部おいしい! 山登里『夜』食堂は、金土日祝限定。

月崎エリア・番外編

月崎駅周辺は人の手が入ったことで自然を感じられる場所がいくつもあります。
駅の近くの道の脇にふと現れる「素掘りのトンネル」。
壁面から浮かび上がる凹凸に、道を通すことの執念を感じたり、
人間は移動する動物だなあなんて思ったり。
トンネルをくぐって先へ進むと、静かな山の中に佇むことになり、
タイムスリップしたような錯覚に襲われたり。トンネルはみごとな舞台装置です。

里見、月崎、養老渓谷付近は街道を一歩入ると、変化にとんだ地形に寄り添いながら
工夫を重ねてきた集落に出会うことができます。
小高い丘から見下ろすと、この地は箱庭みたい。
時間があったら自転車に乗って、ときに道に迷ったりしながら、
複数の風景と出会ってほしいと思います。

いかがでしたか?
それでは後半戦に入ってきたホームルームのようすをダイジェストで。

まだまだ続くホームルーム

4月26日(土)、27日(日)には福島市を拠点に活動する建築家、
アサノコウタさんによるワークショップ「教室のなかのちいさな教室」と
トークを開催しました。

学校らしい「鉛筆」と「消しゴム」というシンプルな素材を使って、教室の中にコンパクトな教室を出現させました。

鉛筆と消しゴムで組む立方体は案外ユラユラして、
ワークショップ中に何度も崩壊の危機を迎えたりもしたのですが、
それが偶然に会場で出会った人たちを結びつけるきっかけとなったり。
「いままででいちばん楽しい」と一日中黙々と立方体をつくり続けた男の子や、
アサノさんのアシスタントとしてパーツの鉛筆をどんどん削り出してくれる女の子など、
みんなを主役にしてくれるアサノさんの人柄と、
部屋をつくるという人間の本能をくすぐられて(?)
一日中賑やかなワークショップでした。

トークでは「建築以下の設計」をコンセプトに活動する
アサノさんの仕事を紹介していただくとともに、
聞き手の中崎先生とも一緒に関わっている「プロジェクト FUKUSHIMA!」についても
面白く、ときにはシリアスにお話いただきました。

©MATSUMOTO Mieko

©MATSUMOTO Mieko

4月29日には、体育館を会場に環ROYさん、蓮沼執太さん、U-zhaanさんによる、
フリーセッションの1時間半、「体育館ライブ」を開催!!

左から、環ROY、U-zhaan、蓮沼執太。©MATSUMOTO Mieko

ラップ、シンセサイザー、タブラの異色の組み合せで、
即興でリリックを紡ぎ出していく環さんと、
寄り添いながらも音楽をつくっていく蓮沼さん、U-zhaanさん。
音楽もMCもみごとな駆け引きでかっこ良くも伸びやか、
クールでありつつアットホーム。
中崎先生の絶妙な空間づくりもあって最高に心地いい時間でした。
体育館の壁面にかかっている里見小学校校歌を即興で歌ったり、
なんと、お客さんの中に里見小学校の卒業生がいて実際の校歌が判明したり。
小さいお子さんから年配の方まで、学校という会場ならではの幅広い年齢層のお客さんが、
本当に楽しそうにしていたのがとても嬉しいライブでした。

©MATSUMOTO Mieko

©MATSUMOTO Mieko

©MATSUMOTO Mieko

©MATSUMOTO Mieko

©MATSUMOTO Mieko

それではみなさん、ゴールデンウィークは市原で会いましょう!!

information


map

IAAESプログラム
NAKAZAKI Tohru HOMEROOM

会場:IAAES 旧里見小学校(千葉県市原市徳氏541-1)
◎Vol.7 藤井光《校内暴力のハードコア》
5月3日(土)13:00~16:00 ワークショップ
5月4日(日)13:00~16:00 ワークショップ、16:30~18:00 トーク
◎Vol.8 珍しいキノコ舞踊団《カラダと遊ぶ!ダンスの状態で楽しむ!》
5月5日(月・祝)14:00~15:30 ワークショップ、16:00~16:20 ショーイング
5月6日(火・祝)14:00~15:30 ワークショップ、16:00~16:20 ショーイング
◎Vol.9 辺口芳典《ヒップホップな作文の時間》
5月10日(土)13:00~16:00
◎「HOMEROOM/After school プログラム」Vol.2
松本美枝子《スライド》
4月19日(土)~5月11日(日)9:30~17:00
http://homeroom18.exblog.jp/
https://www.facebook.com/homeroom.nakazaki

information

ICHIHARA ART × MIX
中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス

2014年3月21日(金)~5月11日(日)
メイン会場:千葉県市原市南部地域(小湊鐵道上総牛久駅から養老渓谷駅の間)
連携会場:中房総エリア(茂原市、いすみ市、勝浦市、長柄町、長南町、一宮町、睦沢町、大多喜町、御宿町)
http://ichihara-artmix.jp

3000年の歴史を持つ松山市の道後温泉でアートをたのしむ「道後オンセナート2014」

コロカルでもご紹介している「瀬戸内国際芸術祭」や
「越後妻有 大地の芸術祭」、「BEPPU PROJECT」など、
すっかり日本に定着した感のある、
地域を巻き込んだアートフェスティバル。

このたび、愛媛県松山市を代表する観光名所であり、
日本最古の温泉である「道後温泉」にて、
アートフェスティバル「道後オンセナート2014」が開幕しました。
2014年12月31日(水)のフィナーレまで、
さまざまな展示やイベントが行われるんです。

霧の彫刻 / 中谷 芙二子 Photo: Laura Miglone (C)FUJIKO NAKAYA

道後温泉本館ではアーティスト中谷芙二子が
「霧の彫刻」を展示し、幽玄な世界を作り出します。
ほかにもパブリックスペースに美術作品が出現し、
非日常的な情景が演出されるのだそう。

■泊まれるアート作品「HOTEL HORIZONTAL」

草間彌生「わが魂の記憶。そして様々な幸福を求めて」 草間彌生が「宝荘ホテル」の一室をプロデュース。草間によるソフトスカルプチャーの新作「愛はとこしえ」や「ナルシスガーデン」が部屋の中に。(C)YAYOI KUSAMA/Dogo Onsenart 2014 & HOTEL HORIZONTAL, All Rights Reserved

また「道後オンセナート2014」で話題なのは、
道後温泉の9軒のホテル・旅館の各一室の内装を
草間彌生、荒木経惟、谷川俊太郎、皆川明ら
著名アーティストが手がける宿泊対応可能なアート作品
「HOTEL HORIZONTAL(ホテルホリゾンタル)」。
各ホテルから提供される1室に、
各アーティストが「最も深い夢 The deepest dream」という
テーマでインスタレーションを施します。
宿泊しなくても、予約をすれば見学も可能。
このプロジェクトは架空のアートホテルとして、
各部屋を一覧できるWebサイトもオープンしていますので、
遠方の方もぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。
約3,000年の歴史を誇る日本最古の温泉である道後が、
どんなふうに新しい顔を見せてくれるのか楽しみなフェスティバルです。

道後オンセナート2014

冒頭写真クレジット:
Haunted Onsen / ライゾマティクス。
4月10日〜13日まで限定公開されていた、
ライゾマティクスによるプロジェクション作品。
イメージ写真(C)Rhizomatiks Dogo Onsenart 2014

作品タイトル「新・道後温泉絵図」。120年前に存在した観光地図「道後温泉絵図」を現代版として新たに描きおこしたものです。(C)YUJI SUMIKAWA 道後温泉は約3,000年の歴史を誇る日本最古の温泉。足を痛めた白鷺が湧き出る温泉で傷を癒したことが起源とされているのだとか(ホームページより)。

いちはらHOMEROOM通信 vol.3

中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」のメイン会場のひとつ、
旧里見小学校を改装したIAAES(Ichihara Art/Athlete Etc. School)。
ここでアーティスト中崎透さんが、さまざまな講師たちを招き
「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」を開催。
そのようすや芸術祭の風景を、中崎さんと仲間たちが5回にわたりレポートします。

風景を見つめ直す。

こんにちは。写真家の松本美枝子です。
私は今回、中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」の
メイン会場のひとつであるIAAES(旧里見小学校)で行われている
「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」のレジデンスプログララム、
「HOMEROOM/After school プログラム」のレジデンスアーティストとして、
滞在制作と展示を行いました。
現在この会場にて、写真と文章による新作のインスタレーション
《スライド》を5月11日(日)まで展示中です。
ここでの滞在制作と生活についてお話ししたいと思います。

「HOMEROOM/After school プログラム」は会期を前後期に分けて、
ふたりのアーティストがそれぞれ約3週間滞在し、作品制作と展示を行いました。
前期は広島在住の美術家・友枝望さん、後期は私。

まだ寒さの残る3月末、ちょうど友枝さんの展示が完成した頃に、
私は市原のIAAESへとやって来ました。
以前に下見には来ていましたが、この日から本格的な制作に入るため、
まずは友枝さんから制作拠点となるレジデンススタジオの引き継ぎ。
4台のカメラとそのほか多くの写真器材などを持ち込み、
水戸にある自分のスタジオ(「水戸のキワマリ荘」といいます)と同じように
仕事ができるようにしました。

スタジオと展示スペースは、教室だった部屋を半分に仕切ってつくっています。
廃校になった小学校の元の雰囲気をいかしたIAAES会場内において、
私たちが展示するこのスペースだけが、完全なホワイトキューブです。

私は一貫して、日常をテーマに人物を中心とした写真と文章で
作品を制作しています。そこでは時間をかけた、
人と人とのやり取りのうえでしか成立しえない写真を、作品の核としています。
しかし今回の滞在制作では、3週間という短期滞在を通して見えた情景だけを
作品化しようと考えていました。
短い時間の中でどれだけのものを見て、自分が反応できるのか、
不安もありましたが、まずは毎日この周辺を歩き回り、
ここの環境を見つめ直すことから始めました。

©HOMEROOM

「いちはらアート×ミックス」の会場は、
市原市内を走る小湊鉄道沿線を中心に点在しています。
私たちの会場IAAESがある里見エリアは、
養老渓谷の麓の風光明媚な里山ではあるけれど、
確実に高齢化、過疎化が進んでいる地域でもあります。

私が来たときはちょうど桜と菜の花が同時に咲きみだれる、最もいい季節でした。
ローカル鉄道が走る里山にアマチュアカメラマンたちの活気が溢れ、
典型的な日本の春の理想の風景とも言えました。
その誰もが美しいと思える景色の中で、
少し視線をずらして風景を見つめ直すことが、今回の私の作品のテーマです。
自分たちが生活する空間の中にいつでも存在するにもかかわらず、
見過ごしているもの。決してドラマチックではないそんな光景を
独立して立ち上がらせることはできないだろうか、という試みです。

撮影はIAAESから歩いて1時間以内で行ける範囲を中心に、
幹線道路から一本奥に入った脇道、
観光客が集まる景色の裏側や足下といったところを狙って行いました。
細い道を分け入ると、渓谷に点在する人々の暮らしが見えてきます。
撮影中は築百年の家に住んでいる地元のおじいさんに
湧き水やセリの自生地を教えてもらったり。
一方、養老渓谷一帯で行われている、
廃棄物の不法投棄の実体も目の当たりにしました。

今回展示した作品のタイトルである『スライド』という言葉は英語ですが、
ズレるという意味と、時間などが過ぎるというふたつの意味があり、
そして写真の「スライドショー」という言葉の通り、
映像そのものに関する言葉でもあります。
春の華やかな美しさではなく、季節の変わり目の
(あるいは地域のあり方の変わり目とも言える時代なのかもしれない)
何とはなしに不安でぼんやりとした光景が映し出せればと思っています。

合宿のような生活。

ちょっとだけ制作中の生活の裏話を。
「いちはら×アートミックス」に参加しているアーティストや
スタッフ、サポーターの人たちは、「月崎荘」と呼ばれる
元国民宿舎で寝起きを共にしています。
そこでは施設を管理している地元のお母さんたちが
お掃除や、ときには食事の差し入れなどをサポートしてくださり、
私たちの生活を支えてくれています。

©HOMEROOM

月崎荘では各プロジェクトのチームで共同生活していますが、
その枠を超えて、夜はほかのアーティストたちとごはんを食べたり、
ときにはお酒を飲みながら、それぞれの作品や芸術祭について突っ込んだ話をしたり。
特に会期折り返しを前に「山登里食堂」で行った中締め会には、
たくさんのアーティストとスタッフが集まり、とても楽しい夜を過ごしました。

「いちはらアート×ミックス」食のプロジェクトに参加している「山登里食堂」。閉店した食堂をカフェとして改装し、みんなが集う場所となっている。©HOMEROOM

制作に煮詰まったときは、ほかのアーティストの作品を見に行くこともありました。
私がみなさんに特にお勧めしたいのは、小湊鉄道を貸し切って上演される
指輪ホテルの演劇「あんなに愛しあったのに~中房総小湊鐵道篇」。
神話のようなセリフと、電車が進むにつれ物語にぐっと入り込んでくる市原の風景。
物語が終わるとき、乗客もいつの間にか
演劇にとりこまれていたのだということに気づく、
ドラマと現実の境目のなさが絶妙で、本当に夢のような一時間でした。

撮影:野村佐紀子

撮影:野村佐紀子

それぞれが限られた時間と空間の中でプロジェクトを完成させるために、
忙しい毎日なのですが、毎日が宿泊学習のようで楽しく、刺激的でもありました。
いまは会期も折り返し、この合宿のような生活もそろそろ終わりに近づいているのかな、
と思うとちょっぴり寂しくもあります。

さて、今日は近所の小学生(市原市立加茂学園5年生)の団体が
鑑賞にやってきました。IAAES担当である市原市の飯高さんに
「松本さん、子どもたちに作品の説明をしてみませんか」と言われて、
急遽、アーティストトークを開催することに!

©HOMEROOM

20人ほどの子どもたちは、写真を見て興味津々な様子。
自分たちの住む地域を写した写真でありながら、どこだかよくわからない光景をみて、
「どうしてこれを撮ったのですか?」という質問の手がどんどん挙がります。
作品のテーマを説明しながら、ひとつひとつ質問に答えていきます。
子どもたちは私の回答に納得するときもあれば、不思議そうな顔をするときも。
小学生には少し難しかったかもしれませんが、いわゆる「写真らしい写真」ではない、
ということは何となく伝わったようです。

今日のこのトークがきっかけで、滞在中、展示室内で
不定期にアーティストトークを行うことに決めました。
主に今回の作品について、そして自分にとって写真とは何かについて話す予定です。
小学生とお話することで、その率直な視点に気づかされることが多々ありました。
今日のようにさまざまなお客さんと作品を介して話し合うことで、
お互いが何か見つけられたらいいなと思っています。

NAKAZAKI Tohru HOMEROOMでは、会期終了まで
4本のワークショップ、トーク、ライブと展示を予定しています。
詳細は下記インフォメーション、HPをご参照ください。

それではみなさん、「いちはらアート×ミックス」でお会いしましょう!

information


map

IAAESプログラム
NAKAZAKI Tohru HOMEROOM

会場:IAAES 旧里見小学校(千葉県市原市徳氏541-1)
◎Vol.6 環ROY×蓮沼執太×U-zhaan《体育館ライブ》
4月29日(火・祝)15:30~17:00
◎Vol.7 藤井光《校内暴力のハードコア》
5月3日(土)13:00~16:00 ワークショップ
5月4日(日)13:00~16:00 ワークショップ、16:30~18:00 トーク
◎Vol.8 珍しいキノコ舞踊団《カラダと遊ぶ!ダンスの状態で楽しむ!》
5月5日(月・祝)14:00~15:30 ワークショップ、16:00~16:20 ショーイング
5月6日(火・祝)14:00~15:30 ワークショップ、16:00~16:20 ショーイング
◎Vol.9 辺口芳典《ヒップホップな作文の時間》
5月10日(土)13:00~16:00
◎「HOMEROOM/After school プログラム」Vol.2
松本美枝子《スライド》
4月19日(土)~5月11日(日)9:30~17:00
http://homeroom18.exblog.jp/
https://www.facebook.com/homeroom.nakazaki

information

ICHIHARA ART × MIX
中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス

2014年3月21日(金)~5月11日(日)
メイン会場:千葉県市原市南部地域(小湊鐵道上総牛久駅から養老渓谷駅の間)
連携会場:中房総エリア(茂原市、いすみ市、勝浦市、長柄町、長南町、一宮町、睦沢町、大多喜町、御宿町)
http://ichihara-artmix.jp

山ノ家 vol.7: 気だてのいい移民になろう  二拠点生活への覚悟の芽生え

山ノ家 vol.7
カフェのにぎわいと、熱気の中でのドミトリー工事

無事、山ノ家の「カフェ」はオープンしたが、2階のドミトリーはまだ工事中。
少しでも早く来訪者に開きたいという想いから、
まずは1階のカフェだけでも先に工事を終わらせて、
お盆より前にはオープンしようという計画だった。
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の期間中に
遅ればせながらオープンし、手配りのチラシの効果もあって、
カフェを利用するお客さんも増えてきた。
僕らは連日泊まりがけで合宿のように生活しながら、
カフェの運営チームは来訪者のために大忙しで、
数少ない男子と、大工さんたちはドミトリーの工事を進めている。

カフェのキッチン内には常に3〜4人のスタッフが入り、忙しく動き回っていた。ここが元和室であったことを考えると、何とも新鮮な光景。

ドミトリーができるまでに必要な残りの作業は、2階の床張り、
壁のボード貼り+塗装、1階のシャワーブースや2階の水回り、
そして一番の作業はドミトリーのための、2段ベッドづくりなど。
カフェのにぎわいの裏では、ドミトリー完成へ向けた工事が続いていた。

カフェはこんな感じでにぎわっていてうれしい限り。しかしその裏で……。

2階ではこのような感じで作業をしている。これは廊下の塗装を行うための、階段の養生。

カフェが営業している時は外への出入りに気を使ったり、
道具や資材の搬入などでどうしても融通がききづらかったりと、
作業をするためのスペースや導線確保の大切さを再認識した。

追加資材の搬入は2階の窓からユニック(クレーン付きトラック)でカフェの開店前に行った。

まつだいの8月は焼けるように暑く、
1階に設置したばかりのエアコンがフル稼働という状態。
しかし、2階にはまだエアコンがついていない。
こもる熱気の中でみな黙々と作業を続けていた。

暑い中での作業。アキオくんは大工さんからアドバイスをもらいながら自分で床張りをマスターしていた。

カフェから生まれる、地元との接点

カフェが開店したこともあってか、
いろいろなかたちで地元の方々とつながる機会がいくつか生まれていた。
ある日、工事を見てくれていた近隣の大工棟梁さんが、
僕らに相談を持ちかけてくれた。
「お盆の8月15日に、近くの小学校で盆踊り大会があるんだけど、
近隣の人に知ってもらうのにいいチャンスだと思うから、
店を出してもらえたらと思うんだけど」
地元で彼の世代(30〜40代)がこの盆踊りを仕切ることになったから、とのことだった。
始めたばかりのカフェの営業はまだまだ落ち着かないが、
これはとても良い機会だからなんとか工夫してやろうということになり、
夕方に店頭に貼り紙をして、小学校で出店することにした。

近隣の小学校の盆踊り大会に、キーマカレーやマフィンなどを急遽仕込んで出店。反応はなかなかよかった。

またある日は、関東圏から十日町に帰省した大学生が立ち寄ってくれて、
「地元にこんな素敵なお店ができたなんて!」と感激してくれた上に意気投合。
なんとカフェのお手伝いを1日してくれることになった。

写真の奥にいるのが、地元がこの近くという大学生。地域の過疎化を心配し、まちづくりなどにも興味があるようで、僕らがここで拠点を持つことになった経緯などにとても共感してくれた。

また、お隣の方などが「たくさんとれたから」
と野菜をドサっと持ってきたりしてくれたのはとてもうれしいことだった。
冬の工事の時から、通りかかるおばあちゃんなどに
「ここは何かできるの?」と聞かれ
「ここで喫茶店をやります。是非来てくださいね!」
などとなるべく丁寧に接してきたことなどが思い出された。

この先の可能性がいろいろと広がるのが少しだけ見えた気がして、
本当にここでやってよかったと思った瞬間だった。
このころから何となく「気だてのよいヨソモノでいよう」
というキーワードが自分たちの中で浮かびあがっていた。

根城を転々とする、移民としての生活

僕らは若井さんが使用している近隣の一軒家
(味噌づくりのために使っている「味噌工房」と呼ばれている借家)
の部屋を借りて寝泊まりをしていた。
実はその前にも、工事が始まるころから
しばらく寄せていた場所があった。
しかし、大地の芸術祭をお手伝いをする方たちが来たら
部屋を空けることになっていたので、
その後に若井さんの「味噌工房」に移動していた。

若井さんの味噌工房のある家。この脇の土地で、少し前から畑もやらせてもらっていた。

もちろん、山ノ家の上に泊まれたらそんなに楽なことはないのだが。
アキオくんは「ここのユニットシャワーがついたら、休憩中に汗を流せる!」
などと冗談を交えながら作業していたが、
そこはまだ粉塵が舞う戦場のような工事現場で、
とても落ち着けるような状態ではない。
泊まるための場所をつくりながら、自分たちは別の場所に寝泊まりしている。
なんとも歯がゆい状況での現場、というか、生活。
例えばこれが東京での話ならば、
皆それぞれの住む場所から通って現場で集まるだけという、あたりまえのこと。
ここでは、その前提が無い状況なのだ。
普段とは全く違う土地で生活をしながらリノベーションを行うということ、
そして共同生活を伴ったかたち。楽しくもあり、難しい部分でもある。
この状況のなかで、皆が生き生きと活動していることが
本当に何ものにも代え難い心の支えだった。

そんな中、カフェがオープンする前後に、
若井さんが言いづらそうに僕に相談をしに来た。
「実はお盆前後に、毎年農作業を手伝ってくれる人たちが
泊まりにくることが前から決まってしまっていて、君たちの寝泊まりする場所を
どこか他に移動してもらわなくてはならないんだよ」と。
お盆が近づいてきて、宿泊できそうな場所はみな似たような状況で、
新たな宿を見つけなければならない状態になっていた。
また、移動しなければならないのか……。
とはいえ、どこにも行くアテが無い。
まさに移民(というかむしろ難民に近い)。

若井さんがいろいろと周辺の人をあたってくれて、
なんとかなりそうな場所の情報を持ってきてくれた。
そこは僕らがよく行く温泉のすぐ近くのロッヂで、
地元の有志でつくったらしいが、震災のあとは使っておらず、空いているという。
なぜなら、ほんの少しだけ床が傾いていたりして、
直す目処がたたない状態だから、とのこと。
加えて、いままでは現場に徒歩で行ける距離だったが、
そこはちょっと離れていて車での移動が必須な場所だ。
いろいろとハードルは上がるが、いまのところ他に選択肢がない。
掃除をして、そこにあった布団を使用するので干すついでに、下見に行く。
うーん……大丈夫だろうか。
1年半空いているだけならきっと大丈夫だろう……。
というより背に腹はかえられない。
お盆を目前にした頃、僕らは「大移動」をした。
その時現地に乗り込んでいた僕らのチームは、およそ10人くらい。
実際には、1年半空いていただけというにはずいぶんとラフな状況だった。
しばらく人が使っていない場所というのは、どうも空気が重たい。

ロッヂでの生活がしばらく始まる。

ペンを置けば転がる床で寝ることは、思ったよりも不安定な気持ちだった。
正直キツかったが、皆連日の疲れもピークなせいか、すぐに寝てしまった。

次の日の朝、なぜかいつもよりも早く目が覚めた。
その時、窓に広がっていたのは、

見事な雲海!

いまの大変な状況が一気に報われるような、素晴らしい景色だった。

ここまで長くひとつの所に滞在して活動するということはなかなかない経験で、
短期間の滞在では気づけない日々のわずかな気候の変化や、
この地の風景をさまざまな角度から見ることや、
鳥や虫や、木々や緑の生命力のたくましさや美しさなどを
目の当たりにしていくことで、得難い何かをからだ全体で感じていた。
そしてときどきこんなふうに、
風景はその土地の特別な顔をかいま見せてくれるのだ。

これが別の土地で日々の営みをつくっていくことなのかもしれない。
旅行でも移住でもない、二拠点生活への覚悟の芽生えが出てきていた。

そしてとても好きなのは、カフェがオープンしたことで、
みんなで朝食を山ノ家でとれるようになったこと。

眠そうにしているが、みんなリラックスしているのがわかる。

自分たちの作った空間で、とてもおいしい朝ご飯を食べられるというのは
何とも言えない充実した時間だった。

朝のまかないご飯。自分たちが借りていた畑でとれた野菜や、ご近所の方にいただいた野菜を使って。

すべて出来上がるまで、あともう少し。

金沢21世紀美術館「島袋道浩:能登」 くちこづくり

能登の珍味をつくり、味わう。

金沢21世紀美術館が毎年行っているプログラム
「金沢若者夢チャレンジ・アートプログラム」。
アーティストとプログラムメンバーが共同制作することにより、
若者たちの社会参加や文化活動を促すという1年間にわたるプログラムだ。
昨年度は、ベルリン在住のアーティスト島袋道浩さんとメンバーたちが、
能登でさまざまな活動を展開し、その成果を美術館でも展示。
以前「ローカルアートレポート #048」でも紹介した。

島袋さんが能登をテーマにしようと思ったのは
「くちこ」に興味を持ったからだったという。
くちこは能登の特産品で、なまこの卵巣を干した珍味。
プログラムが始まる前にリサーチをしていた島袋さんは、
くちこづくりの名人に出会い、すっかりその人に魅せられてしまった。
それが森川仁久郎さん。
2月と3月の限られた時期にくちこづくりをする以外は、
なぜか「鉄をつくる」という森川さんに、メンバーたちは鉄づくりを教わりに行き、
そのようすは展示でも紹介された。

そして3月の頭、今度は森川さんの本業、くちこづくりを習いに、
島袋さんとメンバーたちは能登の穴水を訪れた。
森川さんの作業場は、まちのはずれの、すぐ海に面したところにある。
鉄づくりで何度か森川さんのもとを訪れているので、
森川さんとは顔なじみのメンバーも。
作業場には、森川さん同様、くちこづくりの名人のお母さんたちが3人、
手際よく作業をしている。
なまこの腹を割き、取り出したものをきれいに分けていくのだ。
オレンジ色の細い糸のようなものがくちこ、
腸にあたる「このわた」と口のまわりの「くちわた」、
そして「えら」と部位によって選別する。
ちょっと見ただけではよくわからないが、
お母さんたちがさっさと分けていく様を、メンバーたちも興味深く見つめる。

なまこの腹を割いて内臓を取り出す。たまに何も入っていない「はずれ」もあるのだとか。

名人お母さんたちのそばでその手つきに見入ってしまう。

1匹のなまこから少ししかとれないくちこを選り分け、きれいに洗う。

こうして選り分けたくちこを、三角形のかたちにして干すのが森川さんの仕事。
森川さんは夜にその作業をするらしく、
残念ながらそのようすは見ることができなかったが、
前の晩につくったとおぼしききれいな三角形のくちこが干してあった。
これも熟練の技が必要だそうだ。
干したものが落下してしまうこともあり、
森川さんの言葉によれば「くちこづくりは重力との戦い」だそう。

森川さんが深夜までかかってきれいに干したくちこが並ぶ。孫がたくさん訪れたかのような雰囲気。

作業場の外にはなまこがたくさん入った生け簀が。なまこ製品の直売もしているので、商品を買うお客さんがたまに訪れる。

島袋さんは1年前のくちこづくりも体験していたので、メンバーたちよりちょっと先輩。
まずは島袋さんがやってみてから、メンバーたちも順になまこの腹を割いてみる。
日常生活のなかでは、なまこに触れることなどあまりないし、
ましてなまこの内臓となるとなかなかグロテスクなものだが、
これまでも鱈をさばくなどいろいろな体験をしてきたメンバーたちは、
度胸がついたのか、物怖じせずにチャレンジ。しだいに楽しんでいるようにも見えた。
そんなメンバーたちを森川さんも島袋さんもやさしく見守る。

最初はぎこちない手つきでも、みんな勘がよく上手にこなしていく。

部位の判別は難しく、お母さんに教わりながら。

メンバーが順になまこの割腹作業をしているあいだに、
牡蠣を焼いて食べようということに。
森川さんが、みんなのために牡蠣を用意してくれていたのだ。
と、何を思ったか、森川さんは海辺のほうに降りていく。
そしてなんと朽ちかけの大鍋を拾ってきて「これで焼こう」と森川さん。
まさか海から鍋が出てくるとは思わず、その場は驚きと笑いに包まれた。
その鍋を使い、みんなで焼いて食べた牡蠣がおいしかったのは言うまでもない。

放置してあったのを思い出したのか、森川さんが海から鍋を引き上げてきたのには、みんなびっくり。

一度に焼ききれないほどたくさんの牡蠣。

牡蠣を焼く一方、おにぎりを握ってお昼の準備。
森川さんの奥さんが、なまこのえらの部分を入れたすまし汁をつくってくれた。
えらや生のこのわたも、地元の人の口にしか入らない珍味中の珍味。
このわたは、口に含むとウニのような磯の香りがふわっと広がり、
イカの塩辛のような食感。みんな口々に「おいしい」と顔がほころぶ。
これまでも島袋さんとメンバーたちは、出かけた先々で
能登産の七輪を使って魚や干物を焼いて食べ、能登の食を味わってきた。
おにぎりと一緒に珍味を味わったこのひとときも、
その場にいた全員にとって忘れられないものになったに違いない。

昼過ぎになり、島袋さんとメンバーたちは何度も森川さんにお礼を言って、
名残惜しそうにその場をあとにした。

作業をしながらこのわたを食べさせてもらう。

塩むすびにこのわたを乗せて食べ、えらが入った汁をいただく。

これからが、本当の始まり。

金沢在住のメンバーの広田祥子さんは
「いままでは観光地としての能登しか知らなかったけれど、
くちこづくりや干し柿づくりをする人に会えたり、
自分では行かないような場所に行くことができて楽しかった。
能登のものを買うことはあっても実際につくっているところは
見たことがなかったので新鮮でした」と、1年間のプロジェクトを振り返る。

富山に住む勝島則子さんは、プロジェクトに参加する以前から能登に興味を持って
たびたび訪れていたが、こんなに能登に通った年はなかったという。
「くちこづくりもそうですが、あんなふうに森川さんが鍋を引き上げてきて
牡蠣を焼いて食べるなんて、思いもよらない展開だし、ふだんは体験できないこと。
その場所のものを食べるということがその土地を知ることになるし、
その味の記憶がそこに行った記憶になるんだと思います」

ふっくらした牡蠣。能登でのいろいろな体験がからだに染みていく。

プロジェクトは終わったけれど、島袋さんには、
これから何かが始まるという予感がある。
「みんな、なかなか経験できないことをしてきたと思う。
そういうことがこれからのみんなの生活のなかにどう生きるか。
鱈をさばいたりなまこをさばいたり、そういうことを
経験しているのとしていないのでは、大きな違いがあるんじゃないかな」
何か作品をつくって見せるよりも、こういう場所を見せるほうが大きな経験になる。
そう考える島袋さんならではのプロジェクトになった。

そしてもうひとつ、島袋さんが感じたのは「間に合った」ということ。
「みんなの手つきを見ていると、おぼつかないけれど様になっていたというか。
こういうことをして生きてきた人たちの末裔なんだなあと思いました。
現代の人たちがどこかに置いてきてしまったものを、いまならまだ拾いに戻れる。
みんなの姿を見ていて、そんなことを実感しました」

1年間、能登で活動を展開してきて、
ようやく旅をするためのガイドブックができたという島袋さん。
「またお祭りも見に来たいと思うし、自分たちがよりよく旅するための
友だちができたような、道しるべができたような感じ。
これからもっといろいろなことができると思うし、
展覧会が終わって、何かが始まる気がします」

美術館の中で行われるワークショップとはまた違う、
能登という土地でのさまざまな体験は、島袋さんにとっても、
メンバーたちにとっても、大きな収穫になったはずだ。

可愛らしさと郷愁にみな心奪われる。秋田出身の版画家、池田修三没後10年作品展『いろどり』

秋田県発行のフリーマガジン「のんびり」3号で特集が組まれ、
全国的に反響を呼んでいる版画家・池田修三さんの
没後10年作品展『いろどり』が
2014年4月29日(火・祝)~5月6日(火・祝)、
秋田県にかほ市にて入場無料で開催されます。

にかほ市象潟(きさかた)町うまれの
池田修三さんは、高校の美術教諭を経たのち上京し版画に専念、
2004年に82歳で亡くなるまで
主に子供たちの情景や風景画を手がけました。
子供の可愛らしさとともに、どこか郷愁をさそう印象的な作品は
企業カレンダーや銀行の通帳、広報誌の表紙などに使われ
秋田を中心に全国の人々に愛されています。

フリーマガジン「のんびり」をきっかけに昨年行われた展覧会では、小さい町ながら全国から10日間で2500人もの人が訪れたとか

開催期間中である4月30日(水)は池田修三さんの誕生日。
「のんびり」編集長・藤本智士さんと
イラストレーター・福田利之さんによるトークや、
秋田出身のシンガーソングライター・青谷明日香さんによる音楽LIVEも開催。
その後みんなで花みこしをもってお墓参りもします。
*春を愛したという作者にむけて
会場を飾るお花を一輪から受け付けているそうです。

さらに、5月3日(土)と4日(日)には
池田修三さんがただ一人「俺と同じ色が出せるやつがいる」と言った摺り師、
小林義昭さん(竹芳洞)を迎えての
木版画を摺るワークショップも開催(要予約)。

木版画ならではの温かみと
花のように様々な彩りを見せる作品たち。
作者の生まれた町と季節に訪れることで
より伝わるものがあるかもしれませんね。
ぜひこの機会に訪れてみてください!

池田 修三 没後10年作品展『いろどり』
会期|2014年4月29日(火・祝)~5月6日(火・祝)10時~17時
会場|にかほ市象潟公会堂 大ホール(にかほ市象潟町三丁目塩越163)
主催|にかほ市、にかほ市教育委員会
協力|Re:S、のんびり編集部
入場無料(ワークショップのみ有料・要事前申込)

池田 修三 没後10年作品展『いろどり』