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いちはらHOMEROOM通信 vol.2

ローカルアートレポート
vol.051

posted:2014.4.11   from:千葉県市原市  genre:アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  各地で開催される展覧会やアートイベントから、
地域と結びついた作品や作家にスポットを当て、その活動をレポート。

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NAKAZAKI Tohru

中崎透

なかざき・とおる●美術家。1976 年茨城県生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科博士後期課程満期単位取得退学。現在、水戸市を拠点に国内のさまざまな地で活動。看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーションなど、形式を特定せず 制作を展開している。展覧会多数。2006 年末より「Nadegata InstantParty」を結成し、ユニットとしても活動。2007 年末より「遊戯室(中崎透+遠藤水城)」を設立し、運営に携わる。

中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」のメイン会場のひとつ、
旧里見小学校を改装したIAAES(Ichihara Art/Athlete Etc. School)。
ここでアーティスト中崎透さんが、さまざまな講師たちを招き
「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」を開催。
そのようすや芸術祭の風景を、中崎さんと仲間たちが5回にわたりレポートします。

教室に集まっているものたち。

こんにちは、中崎透です。
前回の堀切さんの記事でも紹介した、中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」の
会場のひとつ、IAAES(旧里見小学校)にてホームルームを担当している美術家です。
今回は「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」と題して
9組の講師陣を招いてのワークショップ、ライブ、トークなどのイベントの企画と、
2組のアーティストのレジデンスと展覧会の企画、
それとワークショップ会場にインスタレーション作品を制作、
といった感じで芸術祭に関わっています。

まず、IAAES(旧里見小学校)のことなんですが、
「Ichihara Art/Athlete Etc. School」が正式名称で、
廃校になった学校を舞台に、アーティストやアスリートといった
さまざまな人々が集う地域の開かれた学校として
芸術祭以降も継続して活動されていくことを視野に入れた場所になっています。
リノベーションはなんと、みかんぐみです。
学校の雰囲気を最大限に残した丁寧な場所づくりをしてくれています。

さて、ここで芸術祭なのにアスリート? と思った方もいるかもしれませんが、
そうなんです、そこがミソなんです。
IAAESの入口にある「Café Camp!」、
一見すると普通のオシャレなカフェなんですが
実はここで見えているのは氷山の一角だったりします。

このカフェを運営する
AAA(Athlete & Agriculture Association/アスリート&アグリ組合)では、
耕す人を求めている里山の農業と、体力に自信のあるアスリートたちが出会い、
地域密着農園クラブチーム・プロジェクトを実施、とあり、
さらにはそこにデザイナーチームも加わった社会実験プログラムだったりします。
「Café Camp!」はそういった活動の一環であり、
IAAESの芸術祭以降の展開は、AAAを中心に進めていくようだ、と
関係者の方が話しているのを耳にしました。

カフェを抜けると「YOUR PARTNER」と書かれた自転車が置いてあります。
レンタサイクルなんですが、実はこれは小沢敦志さんの作品でもあります。
よく見るとハンドルのところに言葉がついていますが、
これは一台一台の自転車につけられたニックネームです。
どうやらワークショップで名づけられたものもあるらしいです。

続いて進むとホームルームでもお世話になっている、大ワークショップ室があります。
普段イベントがないときは中崎の作品が設置されています。
いくつかのオブジェにはキャスターがついていて、
イベントに合わせて会場のレイアウトが変化できるようになっています。

ちょっと作品のことを。
下見に来たときに、もともと図書室にあったであろう
ミヒャエル・エンデの「モモ」を見つけました。
その本の中から21のテキストを引用し、そのテキストにどこかしら対応するような、
学校備品を主な素材とした立体作品を組んでみました。

かつての劇場に少女が住み始め、
それとなく人々がなんでもない時間を過ごしに集まってくる物語と、
この学校という役目を終えた場所に、それぞれ異なる時間の流れを過ごす人たちが
集まってくる感じが、他人事には思えません(笑)。

時間泥棒から、時間を取り戻すために子どもたちが立ち上がる。
学校の備品は、子どもたちが身近なものを手に取った武器のようなもの。
豊かさを求め、時としてかえって豊かさを失っていくありがちな私たちの日常。
この場所の存在や、芸術祭を開催するといったアクションが、
豊かさや自分たちの生きることへの物思いに耽るような、
一見無駄な場所のように機能していくといいなあと思い制作しました。
ちなみに、タイトルの「Most Of Modern Opinion」は
頭文字が「モモ(MOMO)」になるちょっとした言葉遊びです。

このペースで紹介していくと膨大な量になりそうなので
ダイジェストでいくつかの作品を。

栗林隆「プリンシパル オフィス」。これはすごいです。マイナス30℃の世界を体験せよ!!

滝沢達史「おかしな教室」。子どもに大人気具合がやばいです。

ミシャ・クバル「スピード・スペース・スピーチ」。結構くらくらします。

2階の教室のひと部屋は、壁面で半分に区切ってスタジオとギャラリーになっていて、
レジデンスプログラムのために使用しています。
前回も紹介していましたが、「HOMEROOM/After School プログラム」として、
現在は友枝望さんが展覧会を開催しています。4月13日(日)まで。

友枝望「CLUSTER - study tool at S.E.S.-」

スタジオスペースでは、数日前から写真家の松本美枝子さんが滞在制作を始めました。
あちこち足を運んで撮影をしているようです。展覧会は4月19日(土)からです。

教室そのままの雰囲気を残したレジデンススタジオ。

全部は紹介できませんでしたが、IAAESの普段の雰囲気が伝わったでしょうか?
これに加えてホームルームをはじめ、ほかにもアーティストや
地元の方々の手によるさまざまなワークショップやイベントが開催されています。

ホームルームにて。

先日の「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」の様子を少し。
4月4日、5日とアーティスト下道基行さんのトークとワークショップを開催しました。
ワークショップのタイトルは「撃つか撃たれるか/Dead or alive」。
菜の花と桜が満開のこの季節、小湊鉄道はカメラを構えた人々で溢れます。
そんな中、電車に乗り込み、電車を撮影する人々を撮影するというワークショップでした。

これがめちゃくちゃ面白かったです。ひとつの発明かもしれません。
なんというか、この視点をインストールすると、
誰でもこの体験を共有することができる、というとても秀逸なワークショップでした。
戻ってからの編集作業というか、振り返りの時間のオペレーションに
少しまごつきましたが、アウトプットのかたちを探ることと合わせて
いい課題が残ったかな、と。
うん、これは定期的にやったりすると面白いです。

4月6日の遠藤知絵さんと木下真理子さんのトーク
「当てはまらないところで、自分らしく生きてみる」。
建築設計事務所に勤務する遠藤さんと、雑誌の編集長をしている木下真理子さん、
設計する、編集する、といったキーワードで話してみようか、とお誘いしたんですが、
それぞれ仕事以外にも、福島市を拠点にさまざまなまちづくりの活動に関わる
ふたりのお話は、いろんなところに行ったり来たりして興味深かったです。

木下さんの話の中で、震災以降、これまで雑誌づくりで、
例えば20代女性、といった対象の設定があったとしたら、それがわからなくなった、
だって20代女性っていってもみんなバラバラだし違う、
といった内容の言葉が印象的でした。
たぶん以前からそうだったんだけど、気づかざるを得ない、
でもそれを積み重ねて自分らしくなっていく。
そしてそれは、他人の、それぞれの自分らしさを
お互い尊重できることでもあるのかな、なんてことを勝手に考えたりしました。

なんだかとても長文になってしまいました……。
最後に、僕も実はまだそんなにアート×ミックスの
ほかの会場に行けていないのですが、イベント前に下道さん、
遠藤さん、木下さんと一緒に少し作品を巡れたのでいくつかスナップを。
菜の花と桜に彩られたここ中房総は、本当に桃源郷のような風景が
あちこちに当たり前のように出現していて、改めてビックリしてます。
これからはだんだん新緑の季節に移り変わっていくのも楽しみだったりします。
みなさま市原へぜひ足をお運びくださいな。

KOSUGE1-16「湖の飛行機」(photo: ENDO Tomoe)

木村崇人「森ラジオ ステーション」裏庭部分(photo: KINOSHITA Mariko)

開発好明「モグラTV」

次回の「NAKAZAKI Tohru HOMEROOM」は
4月26、27日にvol.5 アサノコウタのワークショップ「教室の中のちいさな教室」。
4月29日にvol.6 環ROY×蓮沼執太×U-zhaan「体育館ライブ」。
ではでは、ホームルームでお待ちしております。

(photo: ENDO Tomoe)

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IAAESプログラム
NAKAZAKI Tohru HOMEROOM

会場:IAAES 旧里見小学校(千葉県市原市徳氏541-1)
中房総国際芸術祭「いちはらアート×ミックス」のメイン会場のひとつ、旧里見小学校を改装したIAAES(Ichihara Art/Athlete Etc. School)では、展覧会やカフェなどさまざまな企画を通して地域に開かれた新しい学校のカタチを目指しています。今回、IAAESではアーティスト中崎透がホームルームを担当。9組の講師陣を招いてのワークショップ、トーク、ライブイベントの開催に加え、「HOMEROOM/ After Schoolプログラム」と題して、2組のアーティストのレジデンスプログラムを実施します。
http://homeroom18.exblog.jp/
https://www.facebook.com/homeroom.nakazaki

information

ICHIHARA ART × MIX
中房総国際芸術祭 いちはらアート×ミックス

2014年3月21日(金)~5月11日(日)
メイン会場:千葉県市原市南部地域(小湊鐵道上総牛久駅から養老渓谷駅の間)
連携会場:中房総エリア(茂原市、いすみ市、勝浦市、長柄町、長南町、一宮町、睦沢町、大多喜町、御宿町)
http://ichihara-artmix.jp

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