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MAD City vol.9:
住居用の間取りを取り払い、
人工芝と白壁がさわやかな
デザイン事務所に!

リノベのススメ
vol.033

posted:2014.6.16   from:千葉県松戸市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
日本各地から、物件を手がけたその人自身が綴る、リノベーションの可能性。

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MAD City

マッドシティ

千葉県・松戸駅周辺エリアにて、まちづくりプロジェクト「MADCityプロジェクト」を推進中。クリエイターなどを誘致する不動産サービス事業「MAD City不動産」、新旧住民のコミュニティを創出するまちづくり事業に取り組み、創造的なエリアづくりを目指しています。

MAD City vol.9
築40年弱のレトロなマンションの一室をDIY!

MAD City利用者のなかでも、特に多いのがクリエイターの方々です。
自分の個性やセンスを生かして、自由にDIYできる物件を求める彼らにとって、
MAD Cityの扱う「DIY・リノベ完全自由」な物件は、絵を描くキャンバスと一緒です。

なかでも人気があるのが「MADマンション」と呼ばれる、築40年弱の賃貸マンション。
DIYはもちろん、改造も自由。さらに原状回復不要というMAD Cityの人気物件です。
加えて、家賃も手頃で駅から徒歩5分という好立地も、住人の方々からは評判がよいのです。

MADマンションの外観。

今回、ご登場いただくグラフィック・デザイナーの佐藤大輔さんも、
このMADマンションの住人のひとりです。

佐藤さんとMAD Cityとの出会いは、数年前のことでした。
もともと「生まれも育ちも松戸」というチャキチャキの松戸っ子の佐藤さんが、
松戸の駅前を歩いているときふと目に入ったのが、MAD Cityのオフィス、MAD City Gallery
江戸時代に宿場町として栄えたまち並みの名残ある松戸で、
異彩を放っていた弊社オフィスに好奇心をかきたてられた佐藤さんが
その扉を叩いてくれたのがはじまりでした。

オフィスにいたMAD Cityのメンバーとさまざまな話をしていくうちに、
「松戸にクリエイターの拠点をつくる」という、
MAD Cityのコンセプトに共感してくださった佐藤さん。
その後もイベントに参加してくれたり、
ウェブサイトをこまめにチェックしてくれたり、
なにかとMAD Cityのことを気にかけてくれていました。

とはいえ、8年ほど前にフリーのデザイナーとして独立されてから、
ずっと松戸にあるご自宅でお仕事をしていた佐藤さんは、
当時は物件を借りる気はなかったそうです。
でも、MAD Cityのウェブサイトなどをチェックしていくうちに、
「仕事場と家を別にしたい」「事務所を構えたい」という想いを抱くようになったのだとか。

物件探しの際に、佐藤さんが考えていた条件は3つ。

1)安い
(やっぱり値段は肝心とのこと!)
2)駅から近い
(せっかく事務所を持つなら、クライアントを呼んで打ち合わせもしたいし、
プレゼンとかもできるスペースだとなおうれしい)
3)リノベができる
(自宅だとあまり自由にリノベするのはこわいけれども、
仕事場は思いっきり自分の好きな空間をつくりたい)

以上の条件を満たす物件を1年間ほど探し求めていた佐藤さんの目に止まったのが、
この「MADマンション」でした。

「安くて、駅から近くて、リノベもOK」
という条件をすべて満たしたこの物件の内見後、佐藤さんは即入居を決意。
入居開始の2012年7月から、一気にリノベを開始したそうです。

さて、気になるのが、佐藤さんが行ったリノベ。
「リノベができる物件」をあえて探していた佐藤さんだけに、相当気合が入っています!

まずは、間取り。
もともと1DKだったお部屋の壁と押入れを打ち抜き、巨大なワンルームにします。

もともとこんな部屋だったのが……、
扉や押し入れを取り払って……。

押入れは、すべて佐藤さんの独力で取り払ったそうです(しかも、道具は釘抜きやトンカチなど!)

まだまだ取ります!

さすがに床張りや壁などはひとりでは手におえないため、このあたりから工務店さんにお願いしてキレイに仕上げてもらったそうです。でも、途中までほぼ作業は終えていたため材料費を入れてもかなり安く済んだとか。

押し入れを取り払ってきたら偶然出てきたコンクリの壁。「これは面白い!」と思った佐藤さんは、ここだけ壁を貼らずにむきだしのコンクリのままでキープ。費用も浮くし、部屋にメリハリが出て一石二鳥!

壁や柱を取り払ったら、こんなにキレイになりました!
その後は、業者の方にお願いして、フローリングを張ってもらいます。

きれいに張られたフローリング。

白い壁とコンクリ壁にはさまれた、事務所が完成!

「こういうちょっと無機質な部屋にいると気分がピシっとして、余計な雑念が入らない。
だから、仕事部屋はこういうシンプルでできるだけモノがない空間を心がけました」
と佐藤さん。

リノベしたのはここだけではありません!
脂がギトギトだったビニールカーペットが敷かれていたキッチンも……。

木目調のシールと人工芝のカーペットでさわやかに!

ダイニングキッチンから、ワンルーム部分の印象はこんな風に変わりました。

壁を取り払ったお陰で、部屋がスッキリ。
なお、壁塗りは過去ご自宅でも経験があったので、自分で全部手がけたとか。
「また飽きたら別の色にしたい」と佐藤さんのリノベはまだまだ進化を続けています。
「土間をイメージした」ということで、なぜか玄関・キッチンエリアには人工芝が。
「仕事スペースと遊びスペースを分けたかった」という佐藤さん。
ONとOFFが見事にくっきり分かれてます!

キッチンと玄関。玄関ドアの内側の数字は「302」が反転しているのは……?

こちらが入り口からみた玄関ドアの302。裏側では反転していたのでした。

MADマンションの特徴は、部屋の内側だけでなく、
共用部にあたる玄関ドアの外側まで改装OKなこと。
各部屋のドアは、そこに住まう住民の方々の個性が爆発しています。
佐藤さんのドアも、もちろんデザイン&作業ともにご自分でDIYしています。

ちなみに、こんな大胆なリノベをおこなっていらっしゃった佐藤さんですが、
なんとリノベは一度もやったことがなく、今回が初挑戦だったのだとか。

「僕がこの部屋をリノベするときに考えていた条件は、
とにかく『手間をかけないこと』と『シンプルにすること』。
僕はプロじゃないので、あまりにテイストに凝り過ぎると
すごく大変なことになってしまうと思ったんです。
だから、部屋はとにかく余分なものは取りはらって、
より広いスペースを確保できるように意識しました。
また、色も使い過ぎず、壁はシンプルに白で、床はフローリング。
これだったら家具やなんかにもあまりこだわらなくて済みますしね」

なるほどー。
なお、これだけのリノベを行って、総工事時期間はほぼ1か月。

「いろいろと大変だったけれども、やっぱり自分の好きなようにDIYできるのは楽しかったですね!」と笑う佐藤さん。

ステキすぎるDIY事務所を手にいれた佐藤さんですが、
しかしそれ以外にもMADマンションに住むメリットを感じているそうです。

「このMADマンションの住人になるまで、
松戸在住のほかのクリエイターの方に会う機会はほとんどなかったんです。
僕は松戸に長らく住んできたけれども、MAD Cityができて、
こんなにたくさんのアーティストやクリエイターの人がいるなんて思いませんでした。
自分の思い通りの事務所が手に入れられたのももちろんですが、
ほかの住民の方々と一緒にイベントをやったり、
ときどき食事会をしたりして情報交換したり、
いろいろと刺激を受けられるのが魅力的ですね」

MADマンションに住む人たちは、たしかにどなたも個性が爆発している方ばかり。
さらに、佐藤さんのようなグラフィック・デザイナーの方もいれば、
イラストレーター、現代アーティスト、またフードコーディネーターの方など、
それぞれの専門分野も結構バラバラです。

このように強いキャラクターやセンスを持つクリエイター同士が出会うことで
化学反応を起こして、新たな何かをつくり出す。
そんな流れが、またどんどんMADマンションを起点に生まれてくれたら、
MAD City的にはこんなにうれしいことはありません!

なお、そんなほかの住民たちに刺激されて(?)なのか、
佐藤さんは6月にはこの事務所を使って、
日頃お世話になった方向けに作品展を開催予定だそうです。
デザイナーを始めて最初につくった名刺から、最新作まで展示されるとのこと。
会場がマンションということで不特定多数は入場できないので、
まずは佐藤さんとコンタクトをとっていただく必要があるようです。
ご興味ある方は、こちらからお問い合わせください。

こちら作品展のフライヤーも玄関ドアのビジュアルになっています。

information


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MAD City(株式会社まちづクリエイティブ)

住所 千葉県松戸市本町6-8
電話 047-710-5861
http://madcity.jp/

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