連載
posted:2014.7.24 from:千葉県松戸市 genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築
〈 この連載・企画は… 〉
地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
日本各地から、物件を手がけたその人自身が綴る、リノベーションの可能性。
writer's profile
MAD City
マッドシティ
千葉県・松戸駅周辺エリアにて、まちづくりプロジェクト「MADCityプロジェクト」を推進中。クリエイターなどを誘致する不動産サービス事業「MAD City不動産」、新旧住民のコミュニティを創出するまちづくり事業に取り組み、創造的なエリアづくりを目指しています。
千葉県松戸市は年2回のお御輿、花火大会、献灯祭り、松戸まつりなど、
地域イベントも盛んな土地柄。
その都度MAD Cityの関係者も関わらせていただいたり、
ほかにもMAD Cityが運営するイベントスペースFANCLUBなど、
毎週のようにさまざまなイベントが開催しています。
そんなとき、MAD Cityがいつも「知恵袋的存在」として頼りにしているのが、
建築家・デザイナーの西尾健史さんです。
松戸在住の西尾さんは、数年前からMAD City周辺で開催される、
イベントの什器制作などでよく中心となって活躍してくださっており、
もはやMAD Cityにはなくてはならない重要人物なのです。
ちなみに、普段西尾さんがメインで手がけているお仕事は、
都内を中心とした展覧会の設計デザイン、プロダクトのデザインなどです。
たとえば……。
東京でもデザイナーとして活躍している西尾さんが、
いったい松戸ではどんな活動をしているのか。
今回はそれをちょっとご紹介したいと思います。
たとえば、前回紹介したMAD マンションの住民の方で、
屋外で「食」に関するイベントを行っている、
フードユニットteshigotoさんを中心に開催された「Outdoor Kitchen」。
これは松戸中央公園の林のなかでかき氷を作って食べるというイベントだったのですが、
西尾さんはキッチンカウンターのデザインと制作を担当してくれました。
「さまざまな場所でこのカウンターキッチンを使用したい」
というteshigotoさんの要望に応えて、分解ができて、どこででも組み立てが可能。
さらに移動も可能なキッチンカウンターをつくったのだとか。
ちなみに、全部西尾さんの手づくりです。
また、MAD Cityが管理する物件 古民家スタジオ旧・原田米店にある
「松戸探検隊ひみつ堂」さん。
この古民家物件の改装デザインを手がけたのも西尾さんでした。
もともとは何年も使われていなかったこのスペースが……
素敵な観光案内所になりました!
いまでこそ、デザインのみならず、インテリアや家具など
実際に「つくる」ところまで手がけている西尾さんですが
実はこの頃はまだあまりリノベやDIYをやったことがなかったのだとか。
「ひみつ堂さんは、色んな条件が重なり、
僕がDIYリノベをやりはじめるきっかけとなった物件だったので、思い出深いですね。
本格的に大工修業をしたことがあるわけでもないので、
最初は『ちゃんとできるかな』と心配だったんですが、
意外とやってみるとできるもので(笑)。
この物件に携われたのは、ものづくりの達成感以上に
DIYのもつ魅力を感じることができて、すごく自信になりましたね」
出身は長崎で、数年前まで都内に住んでいたという西尾さん。
いったい、なぜ松戸に興味を持つようになったんでしょうか。
西尾さんが松戸に興味を持つようになったのは、
以前の職場が柏だったので土地勘があったということがひとつ。
もうひとつは、MADCityを知り、
いい意味でも悪い意味でも「手を入れる余地を感じられるまち」だったから。
「最近は、いろんな地方都市でその土地に合わせて
デザインの取り組みがおこなわれるようになってきています。
松戸も都心に近く、人口も多いので、おもしろいことができるはず。
活動や取り組みがまちの人に受け入れてもらえれば、
少しずつかもしれないけどきっと成長していくと思うんですよね。
だから、僕はそのきっかけになる『場やコト』を松戸でつくれればいいな、
と考えています」
そんな西尾さんが空間づくりのときに常に大事にしているコンセプトが
「これからの暮らし方、及びそれを取り巻く状況全般をデザインする」ということ。
「僕はもともと単に建築物をつくったり、家具をつくったりするというよりは、
『空間そのもの』をデザインすることに興味があるんです。
できればつくった後も、その場で起きる出来事とともに
成長していくような空間をつくりたいんです」
だからこそ、空間をつくるときには
決して「モノだけのデザイン」にならないように意識するそうです。
では、いったいどんな空間づくりをしているんでしょうか?
たとえば、先日西尾さんがMAD Cityプロジェクトとともに手がけたのが、
松戸市内のショッピングセンターオウル五香の
コミュニティスペース 「ほうほうステーション」。
ショッピングセンターから空きテナントを一時的に活用するアイデアを依頼され、
「親子の交流が生まれる公園のような場をつくろう」という提案をし、実現しました。
西尾さんがつくったのは、本棚にもなるキャスターつきのベンチ。
単なる休憩スペースだけではなく、ここで買い物途中の親子連れが、
本を読みながらひと息つき、
絵本を介したコミュニケーションが生まれるよう配慮したのだとか。
今後は、本の内容も絵本だけでなく、料理本や旅行本等も増やしていきたいそうです。
「お母さんと子どもがここで本を見ながら今日の献立を相談して、
ショッピングセンター内で買い物をしたり、
週末の予定を考えたりと日常的に来てもらえる場所にしたい」
という構想もあるそうです。
また、利用者同士の交流を生むために、
「2冊本を持ってくれば好きな本1冊と取り替えてもOK」
という絵本の交換サービスを行ったりもしているそうです。
可動のベンチや山の形をしたパーテーションで、
いろいろな用途に合わせて空間をつくれるため、
「ここでイベントをしたい」という希望者の方も出てきているそうです。
ショッピングモールからは、この場所に次のテナントが埋まったら終わりではなく、
今回の可動式の什器を別の空きテナントに持っていけば
引き続き活動できるというアイデアも評価をいただいたとのこと。
「自分がつくったスペースを地元の方々が気に入ってくれて、
さらにいろいろな利用方法を考えだしてくれるのは本当に嬉しいです。
このスペースも、もっと地元の方々に使っていただけるようになったらいいですね」
せっかくつくった空間だから、成長させないともったいない。
その場限りで終わらせず、その後も独自に成長していくきっかけとなる種を植えていく。
そんな西尾さんと一緒にMAD Cityもエリア中に
さまざまな種を残していきたいと思います!
information
MAD City(株式会社まちづクリエイティブ)
住所 千葉県松戸市本町6-8
電話 047-710-5861
http://madcity.jp/
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