BS朝日で放送中の『アーツ&クラフツ商会』(提供:セキスイハイム)の監修を務める、
小山薫堂さんと、〈BEAMS fennica〉(以下fennica)のディレクターとして、
日本の伝統工芸の職人とコラボレートした商品づくりを行ったり、
世界各国のクラフトをバイイングしたりしている北村恵子さん。
日本の手仕事にフォーカスするという共通項を持ちながら、
違うアプローチでそのよさを多くの人に伝えているおふたりが、
今回、初めて顔を合わせました。
放送作家としてさまざまな番組を手がけてきた小山さんが、
伝統工芸のものづくりを番組テーマにした理由とは?
そして北村さんはどのようにして、
愛される別注の工芸品を生み出しているのでしょうか。
多くの人に、手仕事のよさを知ってもらうために
小山: 僕はいままで、いろいろな職業にスポットを当てたTV番組をつくってきました。
古くは料理人にスポットを当てた『料理の鉄人』、
そのあと美容師にスポットを当てた『シザーズリーグ』。
『ニューデザインパラダイス』という番組ではデザイナー、
『おくりびと』という映画では納棺師……。
メディアって、世の中にスポットライトを当てる仕事だと思うんです。
それで「次は、何にスポットを当てようか」と考えたんですね。
いまは日本の手仕事や伝統工芸に注目が集まっていますし、
僕もそれらが人々の関心を呼ぶといいなという思いがあった。
それで生まれたのが『アーツ&クラフツ商会』(提供:セキスイハイム)という番組です。
なぜテレビがいいかというと、どれくらい大変な思いでこのクラフトが生まれたのか、
といった、その背景にある物語を伝えやすいから。
そうすれば、見た人が職人さんやクラフトに感情移入できます。
いままで何気なく見ていたものでも、背景を知ることによって、より魅力的に映る。
それが“素敵”という気持ちや“好きだ”という思いを生み出す、
すべての元になると僕は考えているんです。
番組ではさらに、伝統的な技術をいまにマッチさせるために〈ニュー・クラフツ〉といって、
新しいプロダクトを生み出しています。
北村: なるほど、そうなんですね。
小山: それでちょうど番組を企画しているときに、
僕が教鞭をとっている東北芸術工科大学に訪ねていらっしゃった仙台市の方が、
お土産で〈インディゴこけし〉をくださったんですよ。
「これいいですねえ」って言うと「BEAMSさんがつくられているんですよ」とおっしゃって、
「なるほど、こういうものがあったか」と。
これを、北村さんが企画されていたんですよね?

遠刈田系こけしをはじめとした木地挽物を手がける、仙台木地製作所が制作したインディゴこけし。日本独特の染料である“藍”を使ったもの。仙台、宮城の手仕事を伝えるwebサイト『手とてとテ』でも紹介されている。
北村: ええ。きっかけは、私のパートナーで、
一緒にfennicaのディレクターを務めているエリス(テリー・エリス氏)なんです。
縁あって、仙台市との伝統工芸のプロジェクトに参加させていただくことになったんですが、
準備期間が決まっていて、7か月ととても短かったんですね。
そこで、仙台、宮城県内の伝統工芸の中から、
まずは自分たちの興味のあるもの、好きなものを選ぼうということで、
染物、こけし、和紙、焼き物の4つにカテゴリを絞り込みました。
とりあえず、それらがつくられている現場を見せていただきたいと思って工房を訪ね、
そこからひとつひとつ、職人さんと相談しながらつくっていったのです。
なぜ青いこけしが生まれたかというと、エリスが日本の藍染めが大好きだったから。
そこで、こけし職人である佐藤康広さんに
何気なく「青いこけしってないんですか?」と聞いたら
「そういえばないですね」という返事が返ってきて。
「日本にこれだけ藍があったのに、どうして青いこけしができなかったんでしょうね」
という話から「ちょっと試してみていただけますか?」という流れになったんです。
その場に黄色と紫の染料はあったので、混ぜて何種類か青をつくり、
試作の絵付けをしていただきました。それが、とても素敵だったんです。
佐藤さんも「案外いいじゃないですか」とおっしゃって。
本藍は紫外線に弱いので退色して白くなってしまうのですが、
「そういうビンテージ感もいいかもしれないから、
経年変化を楽しむような感じで本藍も試してみていただけますか?」
というところからこれが完成しました。
小山: そうだったんですね。いま思えばこのこけしも、
僕が番組をつくるときのひとつのヒントになっていたかもしれないです。

こちらも仙台市のプロジェクトのひとつ。佐藤紙子工房の丈夫な白石和紙でつくられたiPadケース。江戸から続く伝統の型を使いながら、現代の感覚に合うよう色は新しくつくっていただいたものもあるそう。
北村: 私たちが大切にしているのは、職人さんとのコミュニケーション。
だからいきなり何かお願いするということはほとんどなくて、
お付き合いしていって「ちょっと私たちのことを信頼していただけたかな」
というタイミングから始めることがほとんどです。
あとは、今までその職人さんや師匠がつくってきたものを、必ず遡って見るようにしています。
案外、忘れられてしまっているものや「そういえばしばらく、これつくってないね」
というものの中に、いま提案したらすごくいいんじゃないかなというものが結構あるんですよ。
そうすると職人さん側も、今までつくっていたものと丸っきり違うものではないので、
制作に入りやすいですよね。
そこからいろいろなかたちに進化させたり、発展したりということが多いです。

北村さんからは職人さんひとりひとりの技術や思いが次から次へとあふれ出てくる。
編集部: 同じ伝統工芸でも、時代によって違う部分はありますか。
北村: 普段使いするものに関しては、
60~70年前にデザインされたものがいま使えるかというと、
やっぱり生活様式が違いますから、同じものでも少しずつ変わってはきています。
でも、それはそれで自然なことですよね。
時代を振り返ってみて「いまだからあえてこっちをやってみる」
というタイミングもあるかもしれませんし、
つくり手さんのほうでいまの時代に合わせようと悩んでできる作品もあるんです。
その作品からちょっと何かを引き算するだけで、すごくすっきりする場合もあるんですよね。
私たちはデザイナーではないので新しいものをデザインするということはできませんが、
そういう提案をすることはあります。
小山: 僕らは番組として毎回新しいものをつくるというフォーマットがあるので、
いまの北村さんのお話と真逆かもしれない。
締め切りがあって、新しいクラフトを月にふたつずつ、つくるわけです。
でもものづくりがゴールではなく、
その仕事や歴史を紹介することが一番の本筋です。
ニュー・クラフツはつくりますが、売ることが前提ではなく、
職人さんたちに「こういうやり方もあるのか」と感じてもらったり、
刺激になったりすればいいなと思っているんです。
何らかのきっかけを番組がつくってあげられたら、最大の使命を果たせるのかな、と。
商品として売るためには
「販売価格はどうするんだろう」
「それに対する労働時間はどうなんだろう」
などと考えなければいけないので、何でもかんでも商品にできるわけではないですしね。
むしろ、そこが一番難しいだろうなと思いますね。
北村: つくったからには少しでも多くのお客さまに見ていただきたいし、
楽しんでいただきたいので、
私たちには“手のとどく価格帯の中で”という問題が必ずつきまといますね。
ちなみにこのこけしは3000円、小さいものだと2000円、1500円程度です。
焼き物も3000~4000円、大きいもので5000円くらいなんですよ。
小山: 手に取りやすい価格ですね。
北村: そうなんです。
小山: ……ところで、これはふんどしですか?

テーブルにあった商品を手にとる小山さん。































































