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チームで新しい東北の食をつくる
カフェ・カンパニー後編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.014

posted:2015.7.28   from:岩手県  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!

editor’s profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

写真提供:東の食の実行会議

前編【コミュニティをつくるためのカフェ空間カフェ・カンパニー前編】はこちら

農家と企業を結ぶ〈東の食の会〉

全国でたくさんのカフェや飲食店を経営しているカフェ・カンパニー。
前編でお伝えしたとおり、食の業界がチームを組んで向き合っていくことで、
開ける未来があると考えている。
食業界はすそ野が広い。農業、流通食品、外食など、多岐にわたる。
それらがバラバラに活動しているよりも、
みんなで考えていけば、解決していける問題も多いだろう。
そんなチームを目指し活動を始めていたところに、東日本大震災が起きた。

「震災が起きて、いきなり待ったなしの状況になってしまいました。
原発事故は別にして、遅かれ早かれ全国で起こり得る問題が、
東北で一気に噴出したわけです。
特別なつながりがあったわけではありませんが、まずは東北で始めようと思いました」
と話すカフェ・カンパニーの楠本修二郎代表取締役社長。

東の食の実行会議にて、カフェ・カンパニーの楠本修二郎代表取締役社長もディスカッションを牽引する。

こうして立ち上がったのが〈東の食の会〉。
代表理事は楠本さんと、オイシックス代表取締役社長の高島宏平さんだ。

「農家と企業をダイレクトに結ぶプラットフォームです。
細かいことを抜きにして、競合他社が一緒に参加してくれています。
なでしこジャパンでも、侍ジャパンでも、日本人は世界を目指すと団結しますよね。
そんな発想で地域を考えると、違うおもしろさが見えてきます」

東北には、ものづくりのすぐれた人がたくさんいる。
しかし、必ずしも発信力が強いわけではない。しかしそれは補い合えること。

「最近話題のポートランドやブルックリンは、スモールビジネスが活況ですよね。
ものづくりの人たち自身が、ブランディングが上手なんです。
ところが日本人は、ものづくりの人であればあるほど職人気質で、
“そんなことは関係ない”というようなスタンスだったりする。
それはずっと昔から日本人の血に流れている美学だし、誇らしい側面でもある。
それならば、日本人はチームプレイすればいいんです。
ものづくりの人、デザイナー、キュレーター、コーディネーターなどが
ワンセットになって、もっと連携していけるようにしたい」

具体的には、商品開発やイベント開催、参加企業による食材利用などが進んでいる。
商品開発では、
トップクリエイターがお米のブランディングをするというような事象が起きている。
大きなヒットとなったのが2013年9月に発売された〈Ca va?缶〉だ。
オリーブオイルに浸けて洋食にアレンジしやすいという要因のほかに、
なんといってもこれまでのサバ缶にはない、黄色が目立つ派手なデザインと、
思いついたとしても自ら避けてしまいそうな大胆なネーミング。

「こういった議論自体、これまであまりなかったんです。
特に地方だと敵対関係になりがちで、議論を諦めていた。
A vs Bではなく、AもBもイエスと言えたらオールイエスですよね。
そういうことができるのが、デザインやクリエイティブの視点だと思います。
矛盾と思われているものを、“矛も盾も素敵じゃん”と思わせること。
それも妥協ではなく、意見を闘わせた結果、
高い位置で両者がすっと落ちる瞬間があるはずです」

昔からあるものづくりに、
デザインやコミュニケーションなど現代的なアプローチを加えて成功に導く。
それがチームで行う醍醐味だろう。

東の食の実行会議にて。(左から)オイシックスの高島宏平代表取締役社長、キリンホールディングスの磯崎功典代表取締役社長、小泉進次郎復興大臣政務官。

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第2回〈東の食の実行会議〉が開催

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より実行を目指して。動くことに価値がある

7月10、11日には、昨年に引き続き2回目の〈東の食の実行会議〉が開催された。
東の食の会で行われている内容を、集中的に会議していく。
そのため、農家や漁師など以外にも、それらリソースを生かすべく企業人が集まっている。

約130名の参加者が一堂に会し、先進事例や現状報告に耳を傾ける。

3つのルールがある。
「Be (Re)Constructive 〜復興のために建設的な議論を〜」
「No Ego As We Go 〜自社の利益や競合関係を超えて〜」
「Discussion for Sustainable Action 〜持続的アクションにつながる議論を〜」
これに則って、自分たちの企業でどんなことができるのか、実行ベースで検討していく。

会場となったのは、岩手県の〈遠野みらい創りカレッジ〉。廃校を利用したスペースだ。
アドバイザリーボードには大企業の代表やCEOなどが名を連ねる。
そして実行委員には、ソーシャルな場で活躍しているプレイヤーたちがズラリ。

会場となった遠野みらい創りカレッジ。クラシックな雰囲気にリノベーションされている。

まずは昨年の東の食の実行会議から生まれたアクションについて、現状が発表された。
どれも短い時間で実行に結びつけていることが素晴らしい。まさに実行会議の本質。
これらのプレゼンを聞いているうちに、
“ふわっとしたやる気”が、より“確固たるやる気”になっていくのかもしれない。
せっかくの能力を持っていても、使わなければ意味がない。
実行していくことにはそんな役割もありそうだ。

「『新しい東北をつくる人をつくる』、もしくは
『つくる人をつくるという雰囲気をつくる』」という楠本さん。
自身が「ものはつくれない」というだけに、ここでの役割は明確だ。
「根回しというと、聞こえは悪いかもしれませんが、
ポジティブな空気をつくるという意味では、創造的な作業です」

その後のパネルディスカッションに駆けつけた
小泉進次郎復興大臣政務官も発破をかける。
「ビジョンも大切ですが、この場は実行会議。
ぜひ、目の前のことや、来年できることを検討して実行してもらいたい」

各グループに分かれて、より具体的な議論を深めていく。

そう、これらの発表やパネルディスカッションは、あくまで前段にすぎない。
ここからがこの会議の本筋となる。
課題別にグループに分かれて、ディスカッションが行われた。
人材育成&資金、品質管理&輸出、小売&外食&物流、行政&支援団体、
そして芸術祭という6つのアクション。
さらに農業、水産業、食文化という3つのビジョンがテーマとなった。

この会議から、どんなものが生まれてくるのだろうか。
カフェ・カンパニーは、カフェというものが持つ機能をどんどん高めて、
東北の食を中心にした新しい地域づくりを試みる。
それも単独ではなく、みんなで行っていく。

Information

東の食の会
http://www.higashi-no-shoku-no-kai.jp/

東の食の実行会議
http://www.east-jikko.jp/

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