子どもがふれることで 伝統産業がよみがえる! 和える(aeru)前編

ジャーナリストから始まったaeru

“0から6歳の伝統ブランド” 〈aeru〉は、
産着や食器などの乳幼児向けの日用品を展開するブランドだ。
矢島里佳さんが大学在学中に立ち上げた。

矢島さんは、小学生の頃から将来はジャーナリストになりたいと夢を描いていた。
大学に進学してすぐに、OBOG訪問をし、
新聞記者やニュースキャスターの方に会いに行った。
そして、自分は何を専門的に伝えたいのかということを考えなければならないと感じた。
そこで中学・高校時代に、茶華道部に属していたことから、
自身が日本の伝統に興味を持ち始めたことに気がつき、
伝統産業を専門にするジャーナリストになることを思い立つ。
企業へ企画書を持ち込むと、それが採用され、
大学1〜3年生の間、若手職人を取材し、雑誌で連載記事を書いていた。
こうして日本の伝統産業の現状を世に広く伝えてきた矢島さんだが、
メディアを通して伝えているだけでは、現状打破が難しいことを痛感することになる。

「3年間連載してきても、伝統産業が衰退していくことを止めることはできず、
むしろ廃業する人は増えていくばかりでした」

伝統産業が衰退する根本的な原因を考えてみると、
現代の生活様式に合わなくなったことがあげられる。

「今は核家族化が進んで、親子3世代で住むことは珍しくなっていますよね。
昔は、おじいちゃん、おばあちゃんが伝統的な日用品を使っているところを見ていたり、
子どもたちも一緒に使って育つ中で、自然と伝統が引き継がれていたのだと思います」

つまり、子どもの頃に、大人が使っている“ホンモノ”にふれる機会が
少なくなったことが原因のひとつだ。
子どもの頃に、大人が使っているものがうらやましく、
同じものを使いたがった経験がある人も多いだろう。
なんだか大人が使っているものは、いいものに見えた。
実際にいいものだったのかもしれない。

「そもそも、子どもの頃に、伝統産業にふれる機会がほとんどないから、
大人になっても知らないので、興味を持つきっかけがないのです。
若い人が伝統産業に興味を持っていないわけではないということを、
自身の実体験を通して感じました。
その魅力を感じたからこそ、次世代につなげたいと思ったのです」

こうして、赤ちゃん・子ども向けの伝統産業品を生み出すという
アイデアが固まっていった。

和える代表取締役の矢島里佳さん。

ものを通して、想いを伝える

aeruはプロダクトを展開するブランドではあるが、
矢島さんの想いが、“伝える”から“つくる”に移り変わったわけではない。
“伝える”という芯のジャーナリズムはまったくブレていないのだ。

「書いて伝えるだけではなく、
ものを通して、子どもたちに伝えるという方法もあることに気がつきました。
ものを売ることそのこと自体は、私たちの会社のミッションではありません。
ひとりでも多くの子どもたちにこれらが贈られて、先人の智慧が自然と伝わっていくこと。
伝わった結果として、売れるという状態になっていることが自然だと思うのです」

間接的ではなく、直接的に子どもたちに伝統産業品にふれてもらう。
そのときは意識的ではなくても、手のなかで大切に持ち、使っている感触を得られれば、
感性はきっと育まれていくはず。
その感性があれば、大人になっても伝統産業品をきっと選んでくれるのではないか。
それは、職人に仕事を生むことにつながる。

「問題解決をしたくて始めたのではなく、
先人の智慧が次世代にしっかりとつながっていってほしいという願いから、
aeruは誕生しています。
そんなaeruは、“三方良し”の考え方を大切にしています。
aeruらしい生き方や働き方、心地のいい暮らしを生み出していきたいです」

近江商人の心得ともいえる“三方良し”は、売り手良し、買い手良し、世間良しという
サステナブルな社会。単なるプロダクトのプロデュースではなく、
その先の循環を見つめる姿勢を大切にしているのだ。

番組「アーツ&クラフツ商会」で 今回登場するのは 〈津軽こぎん刺し〉。 地元青森ではさまざまなコラボも!

毎回、日本各地で積み重ねられてきた、
伝統工芸の職人技術にスポットをあてる、
BS朝日の番組『アーツ&クラフツ商会』(提供:セキスイハイム)。
何百年も続いてきた工芸美がそこにはあります。

さて、23回目の放送となる今回は、
津軽地方に伝わる、伝統的な刺し子技法〈津軽こぎん刺し〉を紹介。
布目に沿ってひと針ずつ入れる刺し子の幾何学模様が特長で、
ぬくもりあるこぎん刺しの雑貨は女性を中心にとても人気です。

もともと重たい荷物を背負うための補強として、
寒さをしのぐ工夫のひとつとして、
また山歩きの魔除けとして、刺繍を施していたことなどが
津軽こぎん刺しの由来と言われています。
青森ならではの気候風土によって生まれた工芸品なんです。

この緻密さと美しさを兼ね備えた津軽こぎん刺し。
その魅力を伝えていこうと地元でコラボレーションが生まれています。
例えば、〈星野リゾート 界 津軽〉では、
koginアーティスト・山端家昌氏とともに考えられた客室が2015年7月にオープン。
〈津軽こぎんの間〉と呼ばれる部屋には、
上品な掛け軸に、座布団やクッションなど、
合計約10個の客室備品が津軽こぎん刺しでつくられています。
こぎん模様の障子は和製ステンドグラスといった雰囲気です。

場所は弘前駅から車で30分の名湯・大鰐温泉。星野リゾート 界では全国にある12旅館で、このような地元の文化を体感できる“ご当地部屋”を展開中です(〈箱根寄木の間〉は「アーツ&クラフツ商会」の20回目の放送で紹介)。

また弘前市にあるセレクトショップ〈green〉では、
オーナーの小林さんと番組にも登場する〈弘前こぎん研究所〉との
コラボレーションしたオリジナルの商品を販売しています。
津軽こぎん刺しのカードケースやしおりなど、
伝統を踏襲しながらも、デザイン性の高いアイテムばかり。
津軽こぎん刺しの魅力がより一層引き出されています。

2015年夏に登場した山吹色のこぎん刺し。しかし、greenのこぎん刺しは人気のため品切れ中。次回入荷予定は10月末頃の予定です。

手仕事ならではの可憐なあたたかい刺繍に、
時代が変わったいまでも、魅了されてしまいますね。

green店内の様子。おでかけコロカル青森編より。

北陸で ワインをつくり続けて、8年。 SAYS FARMがプレミアムな 収穫祭「SAYSDAYS」を開催

10月17日(土)18日(日)、富山県氷見市のワイナリーSAYS FARMにて
収穫祭「SAYSDAYS」が開催されます。

SAYS FARMは、氷見の里山の小さな丘の上にある
ワイナリー、農園、レストラン、そして小さなホテル。

2008年の春に1本の葡萄の苗を植え、
一からワインづくりを始め、栽培から醸造までを一貫して行う
「ドメーヌ」としてワインを生産してきました。
現在では、約6,000本の欧州種系のワイン用葡萄を栽培しています。

今年、最初に植えた葡萄の木が8年目を迎えるのだそう。
SAYSDAYSは、そんなSAYS FARMにて
これまでの感謝と、これからの希望を願って開催される収穫祭です。

イベントは、300名限定のゲストとともに楽しむDAY1、
地元の方々のへ感謝を込めたDAY2と、2日間に分かれて開催されます。
(DAY1:27,000円 / DAY2:入園無料)

二日間の間には、富山のトップクラスの名店によるブッフェやライブステージ、
この日のためだけに、特別に醸造されたワインなどなど、プレミアムなプログラムがたくさん!

今年のテーマは“紅白”! ものづくりびとたちの 一年に一度の祭典 「もみじ市2015」開催

9月26日(土)27日(日)、東京オーヴァル京王閣に
“ものづくりびと”が集う「もみじ市2015」が開催されます。

もみじ市は、陶芸家、布作家、料理家、音楽家、農家、
イラストレーター、エッセイスト、カフェなど、
さまざまなつくり手が2日間だけのマーケットを開く“大人の文化祭”。
2006年に始まり、今回で11回目を迎えます。

今年のテーマは、”紅白”。
116組のつくり手が紅組と白組に分かれて
事務局スタッフとペアを組み、お客さんをワクワクさせる表現にチャレンジするそう。

もみじ市は、毎年多摩川河川敷で開催されていたのですが、
今年は一時的に雨という予報のため、多摩川河川敷に隣接する
東京オーヴァル京王閣にて開催することに。

大きな屋根のある解放的な空間に
ウィスット・ポンニミットさんの「マムアンショップ2015」や
「日菓」さんの“クスッと楽しい和菓子”をテーマとした屋台(27日のみ)、
槇塚登さんの“灯台守の暮らし”をイメージした展示、
CICOUTÉ BAKERYの“白組だけど白くないパン”の店(27日のみ)、
惜しまれつつ閉店した目黒のカフェ「TORi」によるお惣菜屋さんなどが並びます。

マーケットのほかに、ライブ、映画上映、
子どものための絵本の読み聞かせ、ワークショップなども開催。

ライブには、高野寛さん、コロリダス、
珍しいキノコ舞踏団、空気公団、tico moon、
成山内さん(sleepy.ab)、ザ・プーチンズが登場します。
これは楽しみ!

「MAGONOTTE」 富山の鋳物技術と 愛知のジュエリー技術が融合。 至福の掻き心地な孫の手

ご家庭にある「孫の手」の、「美しさ」を追求したら、、?!
そんなプロダクト「MAGONOTTE(マゴノッテ)」が発売されました。
プロデュースは大阪の「セメントプロデュースデザイン」。
富山県の「TAKATA FACTORY」による、仏具にルーツを持つ鋳物技術と、
愛知県の「PROOF OF GUILD」による、ジュエリー制作ならではの精緻な
原型造形技術がコラボレーション。
富山の鋳物技術と、愛知の精緻なジュエリー技術が融合した、
「産地技術の交配」をテーマに制作されたプロダクトです。
フラミンゴとウマをモチーフとした
スタイリッシュなデザイン。
アルミならではの軽やかでエレガントな掻き心地です!

フラミンゴ

台座もエレガント

オートクチュールのように細部までこだわった意匠と、
アルチザンを感じる、力強いデザイン。
高純度鋳物とポリッシュが、キラリと光ります。
さてこの孫の手のお値段は?!

TV番組「アーツ&クラフツ商会」 に漆工芸の〈蒔絵〉が登場! 目白漆學舎では、この伝統技術の 教室を開催中です。

長い長い時間をかけて、少しずつ価値を積み重ねていく。
そんな日本の伝統工芸を現代の視点で見つめ直すのが、
BS朝日でオンエア中の番組『アーツ&クラフツ商会』(提供:セキスイハイム)。
伝統工芸に息づく技術で現代のライフスタイルに適したプロダクトをつくるという、
セキスイハイムの提供、小山薫堂さんの企画・監修によるプログラムです。

今回番組で取り上げるのは、蒔絵。
蒔絵とは、漆で絵や模様を描き、漆が固まらないうちに金粉を「蒔き」つけて、
器の表面に定着する技法のこと。
古くは、奈良時代にはその技術が確立したと言われています。
また漆は保存性にすぐれ、漆工芸品も100年は使用に耐えられるそう。
漆と蒔絵は、そうした長い年月をかけて人々に親しまれてきました。
あの漆黒の闇の空間に、華々しく輝く金の色。
繊細さと力強さを兼ね備えた蒔絵の美しさに魅了される人は、決して少なくありません。
番組では、蒔絵の人間国宝・室瀬和美さんの工房にお邪魔し、
蒔絵の細かな工程、貝を用いた装飾「螺鈿」、
そして金の板から切り出した模様を漆で貼りつける「切金」と、
炭を用いた「研ぎ」など、ひとつひとつの作業を追っていきます。

こうした蒔絵の伝統を現代のプロダクトへ落とし込むために、
今回番組が用意したテーマは、「ドアノブ」。
家族が集う空間を華やかに彩るこのニューアイテム、どんなものが完成したかはぜひ番組で。

このニューアイテムの制作に挑んだのは、東京・目白にある〈目白漆學舎〉のみなさん。
その設立メンバーとして名を連ねている若き漆芸家・智弥さんと祐(たすく)さんは、
実は室瀬さんの息子さんでもあります。
目白漆學舎は、蒔絵だけでなく金継ぎや鎌倉彫塗りなどの漆に関わる技術や知識を、
専門家だけでなく一般の人にも学んでもらうことを目的として、今年2015年に始まりました。

目白漆學舎の外観。

ブラッシュブランド 「SHAQUDA」に要注目。 熊野の伝統と 洗練されたデザインがひとつに!

江戸時代から続く全国一の筆の産地、広島県安芸郡熊野町から、
熊野化粧筆の伝統と洗練されたデザインが融合した
ブラッシュブランド〈SHAQUDA(シャクダ)〉が誕生しました。

今年の6月、「けしきを みたす」というコンセプトのもとにスタートしたこちらのブランド。
「けしきを みたす」という言葉には、
手作業で仕上げた穂先と環境に優しいデザインが
使うひとの所作を美しく、素肌にこころよく、
心に映るけしきを豊かに満たすように、という思いが込められています。

上の写真は、SHAQUDAの〈UBU(ウブ)〉シリーズ。
木製の長い柄とこだわりの穂先がなんとも優美ですね。
デザインを手がけたのは、デザイナーの寺内ユミさん (TERAUCHI DESIGN OFFICE)。
なめらかさを追求した穂先のうつくしさを最大限に生かし、
筆本来のオーセンティックなスタイルに帰依した、
手になじむフォルムに仕上がっています。

この新しいブラッシュを手がけたのは、広島県にある化粧筆メーカー「瑞穂」。
素材選びから整毛、加工、組立、検品までの工程を一貫して行っている、筆総合メーカーです。

600もの島がある長崎県。 「長崎新聞」の配達ルートを データと映像で表現した 「The Way」

長崎県には、なんと約600もの島があります。
そんな島づくしの長崎では、どうやって各家庭に
新聞を配達しているのでしょうか、、、?

このたび公開されたプロジェクト「The Way」は、
そんな長崎県の「長崎新聞」がどうやって県内各地に
配達されていくかをデータで明らかにしたもの。
総勢2,285名にのぼる長崎新聞配達員にGPS受信機を配布。
印刷センターで印刷された新聞が、
県内各地の配達店に配送され、そこから個人のお宅に配達されていくさまを、
MAPを自由に閲覧できる「プロジェクト特設サイト」と、
「ドキュメンタリームービー」で表現しました。
総販売センター数148店、GPS使用台数150台、
そしてデータ計測期間40日を費やした、
データのアニメーションと美しい映像によるムービーは必見です!

ドキュメンタリームービーの撮影は、
海外からも注目を集める映像作家、永川優樹。
長崎新聞配達員の日々の営みに密着した、臨場感あふれる映像です。

世界有数の高度な技術集積地、 新潟・燕三条のものづくりに 触れるチャンス。 「燕三条 工場の祭典」

世界に名だたる金属加工の産地、新潟県の三条市と燕市からなる「燕三条」エリア。
ここで今年も10月1日から4日までの4日間にわたり、
燕三条 工場の祭典」が開催されます。
普段は閉じられている工場がひらき、職人たちの手業を
直接見て、対話出来るという年に一回のお祭りです。
見るだけでなく、実際にものづくりを体験できる
ワークショップも開催します。
大人から子供まで気軽に参加できるのもポイント。

昨年は12,000名超が参加したこのイベント。
今年は、68拠点の工場を解放!
自由に回って見学していただけるほか、
ワークショップでは、
「山崎研磨工」で日本酒杯を鏡面研磨する体験をしたり、
「タダフサ」でオリジナル庖丁を作る体験をしたり、
「マルナオ」で木を削って八角箸を作る体験をしたり。

そして今年の「燕三条工場の祭典」は、夜も続きます。
開催初日10月1日の夜は、三条市の繁華街に隣接するお寺
「真宗大谷派三条別院」に参加工場の職人たちが集結。
モノを作ることや道具を使うことが楽しめる、一夜限り
の体験型の屋台、地元で活躍する飲食店などが出店。
10月2日~4日にかけては、6つの工場(タダフサ、玉川堂、マルナオ、スノーピーク、
武田金型製作所、諏訪田製作所)を職人たちとの交流の場として開放し、
各工場でその個性を活かしたイベントが開かれます。

見学ツアーやワークショップも

他にも「畑の朝カフェ」など、趣向を凝らしたイベントがたくさん。
旅行会社とタイアップしてバスで数工場を巡るツアーも開催されるので、
お一人様でも、遠方からでも楽しめますよ。

地場産業+情報産業で イノベーションを起こす 情報科学芸術大学院大学(IAMAS) 産業文化研究センター 小林 茂教授

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新しいイノベーションの創出〈コア・ブースター・プロジェクト〉

岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学(IAMAS)。
情報科学技術と地域文化を結びつけ、
産業界と連携するさまざまなプロジェクトを行っている。
前回はIAMASが行っている地域の連携や共創について取材した。
今回はIAMASの新しいイノベーションの創出について、
小林 茂教授にお話をうかがった。

IAMASでは県内外の企業・団体とさまざまな連携を行っている。
高度な技術を共同で研究開発する一方、
社会の期待となるようアイデアを創造している。

小林さんはそのコーディネートや商品開発などを行ってきた。
具体的にはどんなプロセスで進んでいくのか。

ものづくり拠点としてのイノベーション工房。3Dプリンターやレーザーカッターなどの工作機器を完備している。

「岐阜県内には製造業を中心に多様な地場産業があり、
同時に情報産業にも力を入れている。
それらをかけ合わせることで
イノベーションを起こしたいと考えた行政からの発案として、
FAB 施設のようなものをつくることで、地場産業と情報産業を混ぜ合わせ、
イノベーションを起こす拠点にできないか、という提案があったんです。
それを受けて2012年にデジタル工作機械を備えた市民工房〈f.Labo〉を
立ちあげたとき、見学者だけで1000人以上がやってきました。
ワークショップを通じて多くの市民が利用し、
ある企業がデジタル工作機械を使って素早く試作品をつくり、
それを元に特許をとったような事例はいままでもありましたが、
単に工房を開いているだけで異業種が混ぜ合わされることはありませんでした」

どうしたら混ぜ合わせられるのか。ただ施設だけつくってもだめ。そのためには
「いままで一緒にやるようなことがなかった人たちが
コラボレーションすることが必要」だと小林さんは考えた。

そうしてできたのが〈コア・ブースター・プロジェクト〉だ。

コア・ブースター・プロジェクトのパイプライン。地場産業と情報産業に参加を呼びかけてチームをつくる。フィールドワーク、コンセプトづくりから、プロトタイプづくり、量産型のデザインまで策定し、最終的にはクラウドファンディングで商品化するところまでをIAMASが中心となるチームでファシリテートする。図版提供:IAMAS

「ビジネスの種は、いろんな人と人が出会うなかで生まれてくる。
でもそれを商品などのかたちにして、
世の中まで送り出そうと考えると時間も労力もかかる。
途中で失速して消えていくパターンも見てきました。
だったらちゃんと世の中に出すところまでをブーストしようと。
そのやり方がコア・ブースター・プロジェクトというものです」と小林さん。

思いついてから、1週間くらいで企業に声をかけ始めた。

「最初に、それまでにIAMASやf.Laboとつながりのあった
岐阜県内の地場産業の中でものづくり系の人々に参加を呼びかけました。
そして、スマートフォンのアプリやウェブサービス、
基幹システムの開発など情報産業の人です。
新しいことを始めるので集まってください、と」

2013年に最初の企業説明会を行った。
プロジェクトマネージャー、デザイナー、ソフトウエアやハードウエアの開発者など、
十数社、30人ほどの人たちが集まったという。

「参加の意思を示したところには、その人が
何ができて、どういう目的で参加したいのか、どのくらい予算を動かせるか、
権限はどのくらいかなど、ひとつひとつヒアリングに出かけました。
それぞれどこと組めるか、利害関係などを調整して、
それをもとに5つのチームをこちらでつくったんです」

小林さんたちは、それぞれのチームにインプットになるような
技術のハンズオンやフィールドワークを提供し、
各チームがコアとなるアイデアを見つけ、
アイデアを統合し、コンセプトをかたちにしていくところまでをサポートした。
そうして現在、第一弾として商品化まで進行しているのが、
傾けることでほのかに底面が光り、
お酒を飲む場面に彩りを添える酒枡〈光枡—HIKARIMASU〉だ。

IAMASが主催したコア・ブースター・プロジェクトから生まれた、傾けることでほのかに底面が光る酒枡〈光枡-HIKARIMASU-〉。地場産業と情報産業の出会いから生まれたIoTの製品。写真撮影:井戸義智

〈アトリエデフ〉 家づくりは暮らしづくり

家は、小さな地球である

20年前に創業した長野県上田市に本社を構える工務店〈アトリエデフ〉は、
自然素材にこだわった家づくりを推進している。
代表取締役社長の大井明弘さんはかつて別の工務店に勤めていた。
新建材を使った自邸を建てたところ、家族にアトピーなどの健康障害が出てしまった。
そこで「自然素材の家を建てたい」と提案したが、
「無垢材なんてとんでもない」と強く否定されてしまった。
それならばと、やりたいことのために独立し、アトリエデフを立ち上げた。
しかし、時代が早かった。

「20年前は自然素材といっても理解はされないし、需要もありませんでした。
国産材を探そうとしても、どの製材屋さんも外材ばかり。
たまに国産材があったとしても、どこのものかもわからない状態だったんです」

代表取締役社長の大井明弘さん。毎朝4時に起きて、畑作業と薪割りが日課。

キッチンなどの水回りは、ヒバやヒノキを使用。

その後、時代が徐々に追いついてきて、
2010年に建てられたのが〈循環の家〉と名づけられたモデルハウスだ。
建物自体はもちろん自然素材にこだわっているが、
それ以上に驚かされるのが、循環型の暮らしの提案。

「この土地内ですべて循環する“小さな地球”であってほしいという
コンセプトで建てました。なるべく外部のエネルギーに頼らず、
遠くからエネルギーを買うのではなく、循環のなかで、
自然の恵みを生かして自分たちでつくる。そして還す。
そこに人が暮らすことで、より豊かになるような暮らしをつくりたい」

その哲学はすでに家づくりというものを超越している。

「私たちがやっていること、特にこの循環の家で提示したいことは、
家づくりではなく、暮らしづくりなんです。家は暮らしの一部に過ぎません。
家が良ければすべて良しというわけではなく、暮らしを変えていかないと、
大量生産/大量消費も、環境問題も変わっていきません」

エネルギーや水の循環など、取り組んでいる人たちはたくさんいるが、
それを最初から家に組み込んでしまっているコンセプトは思い切っている。

コンパクトに見えるのは、すべてを循環させることで余計なものを必要としない証拠だ。

“木のある豊かな暮らし”に つながるモノ・コトを大募集! 「第1回 ウッドデザイン賞 2015」

2015年9月30日(水)まで、「第1回 ウッドデザイン賞 2015」の作品を募集しています。
これは、木の良さや価値を再発見させる製品や取り組みの中から、
消費者目線で優れたものを選び出し、表彰するデザイン賞です

この顕彰制度によって、“木のある豊かな暮らし”が普及し、
日々の生活や社会がいろどられ、木材利用が進むことを目的としています。

応募対象は、建築・木製品・取り組み・技術・研究などの、
木材利用促進につながるモノ・コト、すべて。
建築物やプロダクトなどの「モノ」や、
新たな工法・素材活用の技術などに加えて、
イベントやワークショップ、地域での取り組み・サービスなどの
「コト」も応募可能なんです。
受賞者の方には、「エコプロダクツ2015」での発表・表彰など、
さまざまなPRの場が提供され、
生産から消費に関わる人とのマッチングが進められていきます。
コロカルを読まれている、木でものづくりされている作り手さんに
ぜひご応募して頂きたいアワードです!

沓澤製材所 写真:津留崎徹花

「TAKETA ART CULTURE 2015」 大分県竹田市から、 新しいアート、クラフトの風

九州内陸の“おへそ”に位置する、
大分県竹田市の城下町エリア。
9月12日(土)から10月3日(土)までの土日・祝日の10日間、
このまちを舞台にアート・クラフト・食・まちあるきが楽しめる
イベント「TAKETA ART CULTURE 2015 暮らし/衣食住」が開催されます。

リサーチ展示「竹田 衣 プロジェクト」より「かどぱん 臼田朗」

竹田の城下町は、およそ400年の歴史をもつまち。
江戸時代には日本南画界の巨匠、田能村竹田(たのむらちくでん)が居をかまえ、
多くの南画家たちが 絵や書、煎茶に取り組んでいたのだそう。

大分県で一番歴史のある和菓子舗「但馬屋老舗」

「Osteria e Bar RecaD」

会期中セレクトショップ/インフォメーションセンターになる、パチンコ屋をリノベーションしたギャラリー「咲う花(わらうはな)」

また、一般市民のあいだには、江戸時代から
能楽をたしなむ文化が受け継がれてきたそうです。
まちでは、田能村竹田が暮らした旧竹田荘や
音楽家の瀧廉太郎が10代の一時期を過ごした瀧廉太郎記念館も公開されています。

「TAKETA ART CULTURE」は、そんな城下町で
2011年から始まったアートプロジェクト。
イベントの醍醐味は、作品展示に加えて、
染織や竹細工などの作家さんに学ぶワークショップや、
食事会、トークイベントなど、参加型プログラムがたくさん用意されていること。

「紺屋そめかひ」でのワークショップ「竹田産有機栽培の藍の生葉染め」

朝からまちあるきを楽しみ、
お腹が空いたら古民家カフェでモーニング、
午後は創業二百十年を超える和菓子屋さんで
お抹茶体験…などといった楽しみ方ができるんです。

10月3日(土)は、竹田分館にて中村好文さんによる
無料のトークイベント「住宅建築家の流儀」も。

中村好文さん

住宅設計と家具デザインをライフワークとする中村さんが、
個とまちの関わりを、あらためて見つめます。

京都「MTRL KYOTO」オープン! 国内外のクリエイターに向けた、 新コワーキングスペース

クリエイター向けコワーキング施設「MTRL KYOTO(マテリアル京都)」が
2015年10月、京都市下京区にオープンします。

手がけるのは、日本初のデジタルものづくりカフェ「FabCafe」の運営など、
これまでにさまざまなデザインやクリエーションを展開してきた、株式会社ロフトワークです。
コロカルでも先日、連載「ローカルビジネス・スタディ」がスタートしたばかり。

この「MTRL KYOTO」は、
国内外から集めたユニークな素材(マテリアル)と、
個人では購入が難しい、3Dプリンターやレーザーカッターといった
高額なデジタル機器を常設しています。

物件は、明治時代に印刷工場として誕生し、
その後、家具店として使われてきた、
築110年の3階建て一軒家をリノベーションした建物です。

1階ラウンジでは、1分10円から手軽に利用できる
「ドロップイン型コワーキングサービス」として場を提供。
個人作業はもちろんグループでの利用もでき、
デザイン制作や電子工作などのクリエイティブワークにも適した
150平米の多目的ワークスペースとなります。

また、キッチン付カウンターが設けられ、
日中は「FabCafe Tokyo」でも取り扱われているスペシャルティコーヒーを楽しめたり、
夜になれば、クリエイターたちが交流するバーとしても機能します。

2階は、クリエイターのアイデアソースや試作の素材となるような
さまざまなマテリアルを収集し、展示販売も行われます。
飛騨紙や北山丸太といった伝統的素材から、
電子部品や化学材料などの最新テクノロジー素材まで、
利用者はさまざまなマテリアルに触れることができるそうです。

逆に開くから濡れない! 愛知県春日井市の歯科技工所が 生んだ世界初の傘 「GAX G-1」

雨模様が続く日本列島。
今日ご紹介するのは、愛知県春日井市うまれの
逆に閉じる傘「GAX UMBRELLA」です。

傘って、何世紀も形が変わらなくて、
現代のライフスタイルでは、不便に感じることが多かったりします。
でもこの「GAX UMBRELLA」は、
傘布の開き方、閉じ方が全く逆になるので、
周りを濡らすことがありません。
また車でも、乗り込んだ後に傘を閉じることが出来たり、
降りる際には、ドアを少し開けるだけで
傘を開く事ができます。
これは世界初の、それぞれのリンクした傘骨を
的確に制御し複雑に可動させる機構によって実現されたもの。

閉開はこのように

「GAX UMBRELLA」を制作する「ユートレーディングコーポレーション」は、
もともと義歯や差し歯、銀歯などを作る歯科技工を25年にわたって
おこなってきた会社。
納品などで車を使う機会が多く、車を使う人にとって
使いやすい傘を開発したいと思うようになったのだそう。
歯科技工の会社ということで、切削の工具などの道具を使い、
たくさんの試作品を作りました。
そして10年間を費やし、製品化を実現したんです。

産地をまるごと伝える 「産地ゴト展」、 第一回は眼鏡で有名な 「産地ゴト展 vol.1鯖江」

東京・南青山にある、
地場産業の継続・発展を目指し、産地をまるごと
伝える場所「コトモノミチ at TOKYO」。
ここで、産地をまるごと伝える体験イベントのシリーズ「産地ゴト展」がスタート。
記念すべき第一回は「産地ゴト展 vol.1鯖江」として、
眼鏡で有名な福井県鯖江市をクローズアップしています。
会期は9月7日(月)まで。

鯖江は、国産眼鏡産業の発祥の地として110年もの歴史を持つほか、
世界に誇るチタンの加工技術でも新たな展開が期待されているところ。
他にも漆器や繊維産業なども盛んなのです。
会場では、200年以上続いてきた塗師家を現在も守り続ける「漆琳堂」や、
メガネメーカーの「BOSTON CLUB」、
スポーツウェア用の細幅テープ等を作る「テクノワープ」による、
リフレクターにもなるブレスレット「ブレスレイ」、
眼鏡のフレームに使われる素材、セルロースアセテートを用いた
かわいいアクセサリー「TSUGI」など、鯖江の魅力的な商品が展示されます。
ほかにも、鯖江の職人さんを招いてのトークショー、ワークショップなども。
それでは出展される商品をご紹介。

「テクノワープ」による、リフレクターにもなるブレスレット「ブレスレイ」。

200年以上続いてきた塗師家を現在も守り続ける「漆琳堂」

眼鏡のフレームに使われる素材、セルロースアセテートを用いたかわいいアクセサリー「TSUGI」

メガネの材料商社「キッソオ」の、飴のような色とりどりのリングやブレスレット

FabCafeのものづくりとローカル、 グローバルコミュニティの つくりかた

「ロフトワークのローカルビジネス・スタディ」シリーズがスタート!
株式会社ロフトワークは、オープンコラボレーションを通じて、
Web、コンテンツ、コミュニケーション、空間、イベントなどの
“デザイン”を手がけるクリエイティブ・エージェンシーで、
ローカルに関わるプロジェクトも数多く手がけています。
ロフトワークは、「クリエイティブの流通」をミッションに2000年に渋谷に創業、
現在100人近くのメンバーで、京都や飛騨にリノベーションしたオフィスを(これから)構え、
石垣島のプロジェクト、日本の良さを海外に発信するプロジェクト……など、
さまざまなプロジェクトを手がけています。
第1弾はロフトワークが運営するカフェ〈FabCafe〉について、
ロフトワークの広報の石川真弓がご紹介します。

2012年ロフトワークは、日本で初めてのデジタルものづくりカフェ〈FabCafe〉を
渋谷にオープンしました。
2015年夏現在、FabCafeは、気がつけば台湾からスペイン、タイと、
海外4か国・5店舗に展開する、
各都市でたくさんのクリエイターが訪れる人気のスポットとなり、
現在はフランスやシンガポール、アメリカなどで、
FabCafeを新たに立ち上げる話が現在進行中です。

最初に渋谷に立ち上げたFabCafeは、
今年の夏、店舗面積を2倍に拡大リニューアルしたばかり。
今ではレーザーカッターだけではなく、3Dプリンターなどの
新しいデジタルファブリケーションマシンが増え、カフェやフードメニューも増え、
メンバーも増え、イベントやワークショップも週に何件も行われるようになって、
多様な人が集まる「クリエイティブなプラットフォーム」としての役割を
果たせているようになってきたんじゃないかと思います。

FabCafeは、デジタルなものづくりカフェでもあり、
ローカルなクリエイティブコミュニティでもあり、
それらのコミュニティのグローバルなネットワークでもある。
もし、「レーザーカッターがある渋谷のちょっとおしゃれなカフェ」だけだったら、
ただの流行りのカフェで終わってしまっていたかもしれません。

小山薫堂さん(放送作家) × 北村恵子さん (BEAMS fennicaディレクター) 手仕事を未来につなぐには。

BS朝日で放送中の『アーツ&クラフツ商会』(提供:セキスイハイム)の監修を務める、
小山薫堂さんと、〈BEAMS fennica〉(以下fennica)のディレクターとして、
日本の伝統工芸の職人とコラボレートした商品づくりを行ったり、
世界各国のクラフトをバイイングしたりしている北村恵子さん。
日本の手仕事にフォーカスするという共通項を持ちながら、
違うアプローチでそのよさを多くの人に伝えているおふたりが、
今回、初めて顔を合わせました。

放送作家としてさまざまな番組を手がけてきた小山さんが、
伝統工芸のものづくりを番組テーマにした理由とは?
そして北村さんはどのようにして、
愛される別注の工芸品を生み出しているのでしょうか。

多くの人に、手仕事のよさを知ってもらうために

小山: 僕はいままで、いろいろな職業にスポットを当てたTV番組をつくってきました。
古くは料理人にスポットを当てた『料理の鉄人』、
そのあと美容師にスポットを当てた『シザーズリーグ』。
『ニューデザインパラダイス』という番組ではデザイナー、
『おくりびと』という映画では納棺師……。
メディアって、世の中にスポットライトを当てる仕事だと思うんです。
それで「次は、何にスポットを当てようか」と考えたんですね。
いまは日本の手仕事や伝統工芸に注目が集まっていますし、
僕もそれらが人々の関心を呼ぶといいなという思いがあった。
それで生まれたのが『アーツ&クラフツ商会』(提供:セキスイハイム)という番組です。

なぜテレビがいいかというと、どれくらい大変な思いでこのクラフトが生まれたのか、
といった、その背景にある物語を伝えやすいから。
そうすれば、見た人が職人さんやクラフトに感情移入できます。
いままで何気なく見ていたものでも、背景を知ることによって、より魅力的に映る。
それが“素敵”という気持ちや“好きだ”という思いを生み出す、
すべての元になると僕は考えているんです。
番組ではさらに、伝統的な技術をいまにマッチさせるために〈ニュー・クラフツ〉といって、
新しいプロダクトを生み出しています。

北村: なるほど、そうなんですね。

小山: それでちょうど番組を企画しているときに、
僕が教鞭をとっている東北芸術工科大学に訪ねていらっしゃった仙台市の方が、
お土産で〈インディゴこけし〉をくださったんですよ。
「これいいですねえ」って言うと「BEAMSさんがつくられているんですよ」とおっしゃって、
「なるほど、こういうものがあったか」と。
これを、北村さんが企画されていたんですよね?

遠刈田系こけしをはじめとした木地挽物を手がける、仙台木地製作所が制作したインディゴこけし。日本独特の染料である“藍”を使ったもの。仙台、宮城の手仕事を伝えるwebサイト『手とてとテ』でも紹介されている。

北村: ええ。きっかけは、私のパートナーで、
一緒にfennicaのディレクターを務めているエリス(テリー・エリス氏)なんです。
縁あって、仙台市との伝統工芸のプロジェクトに参加させていただくことになったんですが、
準備期間が決まっていて、7か月ととても短かったんですね。
そこで、仙台、宮城県内の伝統工芸の中から、
まずは自分たちの興味のあるもの、好きなものを選ぼうということで、
染物、こけし、和紙、焼き物の4つにカテゴリを絞り込みました。
とりあえず、それらがつくられている現場を見せていただきたいと思って工房を訪ね、
そこからひとつひとつ、職人さんと相談しながらつくっていったのです。

なぜ青いこけしが生まれたかというと、エリスが日本の藍染めが大好きだったから。
そこで、こけし職人である佐藤康広さんに
何気なく「青いこけしってないんですか?」と聞いたら
「そういえばないですね」という返事が返ってきて。
「日本にこれだけ藍があったのに、どうして青いこけしができなかったんでしょうね」
という話から「ちょっと試してみていただけますか?」という流れになったんです。

その場に黄色と紫の染料はあったので、混ぜて何種類か青をつくり、
試作の絵付けをしていただきました。それが、とても素敵だったんです。
佐藤さんも「案外いいじゃないですか」とおっしゃって。
本藍は紫外線に弱いので退色して白くなってしまうのですが、
「そういうビンテージ感もいいかもしれないから、
経年変化を楽しむような感じで本藍も試してみていただけますか?」
というところからこれが完成しました。

小山: そうだったんですね。いま思えばこのこけしも、
僕が番組をつくるときのひとつのヒントになっていたかもしれないです。

こちらも仙台市のプロジェクトのひとつ。佐藤紙子工房の丈夫な白石和紙でつくられたiPadケース。江戸から続く伝統の型を使いながら、現代の感覚に合うよう色は新しくつくっていただいたものもあるそう。

北村: 私たちが大切にしているのは、職人さんとのコミュニケーション。
だからいきなり何かお願いするということはほとんどなくて、
お付き合いしていって「ちょっと私たちのことを信頼していただけたかな」
というタイミングから始めることがほとんどです。

あとは、今までその職人さんや師匠がつくってきたものを、必ず遡って見るようにしています。
案外、忘れられてしまっているものや「そういえばしばらく、これつくってないね」
というものの中に、いま提案したらすごくいいんじゃないかなというものが結構あるんですよ。
そうすると職人さん側も、今までつくっていたものと丸っきり違うものではないので、
制作に入りやすいですよね。
そこからいろいろなかたちに進化させたり、発展したりということが多いです。

北村さんからは職人さんひとりひとりの技術や思いが次から次へとあふれ出てくる。

編集部: 同じ伝統工芸でも、時代によって違う部分はありますか。

北村: 普段使いするものに関しては、
60~70年前にデザインされたものがいま使えるかというと、
やっぱり生活様式が違いますから、同じものでも少しずつ変わってはきています。
でも、それはそれで自然なことですよね。
時代を振り返ってみて「いまだからあえてこっちをやってみる」
というタイミングもあるかもしれませんし、
つくり手さんのほうでいまの時代に合わせようと悩んでできる作品もあるんです。

その作品からちょっと何かを引き算するだけで、すごくすっきりする場合もあるんですよね。
私たちはデザイナーではないので新しいものをデザインするということはできませんが、
そういう提案をすることはあります。

小山: 僕らは番組として毎回新しいものをつくるというフォーマットがあるので、
いまの北村さんのお話と真逆かもしれない。
締め切りがあって、新しいクラフトを月にふたつずつ、つくるわけです。
でもものづくりがゴールではなく、
その仕事や歴史を紹介することが一番の本筋です。

ニュー・クラフツはつくりますが、売ることが前提ではなく、
職人さんたちに「こういうやり方もあるのか」と感じてもらったり、
刺激になったりすればいいなと思っているんです。
何らかのきっかけを番組がつくってあげられたら、最大の使命を果たせるのかな、と。
商品として売るためには
「販売価格はどうするんだろう」
「それに対する労働時間はどうなんだろう」
などと考えなければいけないので、何でもかんでも商品にできるわけではないですしね。
むしろ、そこが一番難しいだろうなと思いますね。

北村: つくったからには少しでも多くのお客さまに見ていただきたいし、
楽しんでいただきたいので、
私たちには“手のとどく価格帯の中で”という問題が必ずつきまといますね。
ちなみにこのこけしは3000円、小さいものだと2000円、1500円程度です。
焼き物も3000~4000円、大きいもので5000円くらいなんですよ。

小山: 手に取りやすい価格ですね。

北村: そうなんです。

小山: ……ところで、これはふんどしですか?

テーブルにあった商品を手にとる小山さん。

杉の新たな活用法を紹介する 「山と形」展。 山形で育まれた杉が どうやって家具になるのか?

2015年8月28日(金)から、
東京・新宿の「新宿パークタワー 1F アトリウム」にて、
山形の杉と、その新たな活用法を提案する展示会
「山と形 展」が開催されます。

展覧会を主催するのは、山形県内の家具製造企業が
集まる「山形県家具工業組合」。
そもそも山形県は約7割を森林が占め、出羽三山、奥羽山脈などには
ブナやナラなど広葉樹の天然林がひろがる一方、
戦後、盛んに植林された杉の人工林では、
その活用が大きな課題となっているところ。

美しい杉山

こうした背景をうけ、山形県の家具職人たちは、
伝統的な木工技術を受け継ぎながら、杉の新たな活用法と
その可能性を広げる技術開発に挑んできました。

本展では、その真摯な取り組みによって誕生した
杉の「圧密加工」による成形合板の技術を中心に、
この技術が広げた杉の魅力と可能性、自然資源である杉を
大切に守りつづけている地域の取り組みを紹介します。

「圧密加工」による成型合板で出来た杉のベンチ

伐採する様子

〈森びとの会〉 国産の木材を愛する 家づくり集団

自然素材住宅のため、思いをひとつに

葉山に建築中の、ある立派な戸建て住宅。国産木材で建てられている。
建築士は地元・鎌倉にアトリエを構える日影良孝さん。
施工会社は東京の〈エコロジーライフ花〉。
使用している木材は宮城の〈くりこま木材〉。
実はこの3者は、〈森びとの会〉を結成しているおなじみの仲間だ。

森びとの会は、現在5社が集まり、
国産材を中心に、自然素材の家づくりを目指す集団。
思いをひとつにする工務店が集まり、1社ではできないことも、協力して行っていく。
日影さんはオブザーバーを務めている。

「ひとつの工務店で得られる知識量は、
たとえ積極的に勉強をしていたとしても限られます。
しかし何社か集まって、講師を呼んでセミナーを催したりすることで、
より情報を得られます。例えば、この木造2階建てを建てるとき。
通常は耐震対策としては合板を使いますが、
“それを使わずに無垢材を利用したいときは、どうすればベストか”。
構造の大家に聞きに行き、大学で実験もしました」と教えてくれたのは、
自身も一級建築士であるエコロジーライフ花の直井徹男さん。

「同じ方向性の考え方を持っている者同士で、宣伝して、信用力を高めていきたい」と、
くりこま木材の大場隆博さんも言う。

通常の合板ではなく、無垢材でも斜めにすることで、耐震性を高められる。

(左から)エコロジーライフ花の直井徹男さん、建築士の日影良孝さん、くりこま木材の大場隆博さん。

自然素材の家を建てることが山の活性化へ

エコロジーライフ花の直井さんは、
自然素材へのこだわりを「起業してからのポリシー」だと語る。
「昔ながらの素材を使うことを心がけていきたいと願って会社を始めたけど、
当初は材料が手に入らないし、職人もおらず、しんどかったですね。
町場の材木屋さんに行っても、商社から買った外材のオンパレード。
自ら山にも行ったけど、まだ閉鎖的な社会で、国産材は出てきませんでした。
そんなとき、大場さんに出会い、オール国産材という夢が叶いました」

10数年前、大場さんに宮城県の栗駒の森を見せてもらったという。
光の射す森もあるが、薄暗い森が多い。下草も映えておらず、細い木ばかり。
森の問題点をまざまざと見せつけられた。
もちろん大場さんの思いは、そんな森を改善していくこと。
いまのままでは、日本にとっても海外にとってもいいことはない。

「外材は、途上国で乱獲されている木材が多い。
つまり私たちはほかの国の森を荒らしているんです。
しかも、国内の森も手入れをしないので、荒らしている。
だから、自分たちの森に手を入れてきれいにすることで、
他人の森を荒らさないようにしたいと思いました」(大場さん)

どちらにとっても、よくない負のスパイラル。
そしてまさに目の前にあるのは、荒れた森。これを放置するわけにはいかない。

「荒らした森の木を、誰かが使わないといけません。
そうしないと、次世代にいい森を残せるわけがない。
なんとか建築材として利用していきたい」(大場さん)

木の香りがすがすがしい建築中の家から。各所のこだわりを説明してくれた。

そうした山側の気持ちをくんだ仕事を、日影さんも心がけている。
日影さんは、山に行って、森を見て、木を見て、丸太を見ないと図面を書けないという。
それはすべてが顔の見える関係ということ。

「大場さんに、建て主と会ってもらうことはとても重要なんです。
木を準備する人も、建て主の顔を思い描いて仕事できる。
これができるのとできないのとでは、大きな違いです」(日影さん)

「誰かわからないのと、あの人だ! って顔が思い浮かぶのとでは、
モチベーションが全然違います。
逆に、建て主もどこの木材を使っているか、理解につながる。
それは知らないうちに宮城の森を守っていることになるんです。
僕たちみたいな小さな工場が各地にたくさんあれば、
森の活性化につながると思います」(大場さん)

通常は隠れてしまう壁の中。構造的な特徴である登り梁は、大きな屋根でひさしを深く出すため。

「TOKYO ICON」 東京のアイコンを有田焼で表現。 東京名物がぎっしり詰まった プレート

世界最大のメガシティ、東京。
行きたい場所も、食べたいものも、
やりたいことも多すぎる!
そんな東京の魅力を69のアイコンで
表現した陶器のシリーズ「TOKYO ICON」が発売されました。
佐賀県の「有田焼」と、江戸・東京の地域デザイン、
ともに400年の歴史を誇る両者のコラボレーションです。

シンプルなアイコンで表現されるのは、
東京タワー、大相撲、招き猫、寿司、雷門、山手線、
どじょう、雷おこし、ほおづき市、三社祭、アメ横、
東証アローズ、日本橋、メイド喫茶、江戸切り子、
などなど。
大小のプレート、カップ、
マグネットがラインナップしています。
デザインを手がけたのは、
グラフィックデザイナー・中尾千絵によるデザイン事務所「ちえのわデザイン」。

「TOKYO ICON プレート(L)」3,780円(税込)

「TOKYO ICON カップ」2,160円(税込)

「TOKYO ICON マグネット」各540円(税込)

岐阜県美濃市に 「マーマーマガジン」の ショップがオープン! エシカルでホリスティックな 「エムエム・ブックス みの」

文筆家で詩人の服部みれいさんが編集長を
務める雑誌『マーマーマガジン』。
冷えとりや自然農法、塩浴や断食、心と身体のつながりなど、
エシカルでホリスティックなアイデアを紹介し、
女性を始め圧倒的な支持を集めています。

この『マーマーマガジン』を発行するエムエム・ブックスが、
編集部も含めて丸ごと岐阜県美濃市に移転してから早4か月。
このたび、エムエム・ブックス初となる
セレクトショップ「エムエム・ブックス みの」が、
同じく美濃にオープンしました。

なんでもこのショップは築90年の古民家を利用してつくられたのだとか。
店内のデザインは、現代美術作家でCOSMIC WONDERを主宰する前田征紀さん、
木工の家具は地元岐阜県在住の木工作家・川合優さんが、それぞれ担当し、
日本建築の古い伝統を生かしながら、とても丁寧に整えられた空間が広がっています。

ショップの1階では、天然素材の冷えとり靴下などの冷えとりグッズ、
オーガニックコットンのインナーや服、
COSMIC WONDERのアイテム、
無農薬のお茶などの自然食品やオーガニックコスメ、
『マーマーマガジン』などの書籍を販売。
2階の和室は講座やお話会、ワークショップ、
上映会を行うスペースになっています。

「欲しいモノ」が 漆塗りで艶やかに! うるしの活用アイデアを募集する コンテスト開催

普段使っている木やプラスチックの商品も
日本の伝統工芸である漆を塗ったら、ちょっと贅沢に!?
福井県鯖江市と越前漆器協同組合では
8月23日(日)まで「うるしのある生活」をテーマに
新しい漆の活用方法を募集しています。

これまで漆といえばお椀が主流でしたが、
最近はパステルカラーを含むさまざまな色や食洗機・IH対応などの漆も開発され、
手軽に和の味わいを楽しめます。
本漆のしっとりとした質感とその光沢は
普段から手に触れる道具や食器をより華やかにし
日本の伝統と文化を肌で感じさせることでしょう。

〈木工房 ようび〉 マンション木質化という 都心部の新しい住まい方

西粟倉村のスギを全面的に使ってリノベーション

岡山市街地にある、見た目は普通のマンション。
しかし高校教員をしている大石智香子さんのお宅を訪ねると、
そこは木質化された別世界が広がっている。
ドアを開けた瞬間にフワッと漂う木の香り。
右を向いても左を向いても、木ばかりが目に飛び込んでくる。

大石さんは木を使った空間への憧れを、昔から持っていた。
マンションを購入後、リノベーションを考えていたとき、
岡山の西粟倉村にある〈西粟倉・森の学校〉と出合った。
“百年の森林構想”を掲げ、村ぐるみで森林から地域づくりを行っている会社である。
ここにリノベーションをお願いすることにした。

「私は岡山県の県北、美作地域にある3つの高校に勤務していました。
西粟倉出身の学生が担当クラスにいたこともありますし、
岡山市に来ても、その地域の木材を使った家に住めるなんて喜ばしいことです」

高校教員の大石智香子さんは、小さくてかわいいものが好き。木の節すら「模様みたいでかわいい」。

森の学校から紹介された設計士が、〈木工房 ようび〉の大島奈緒子さんだった。
ようびは、7年前から西粟倉村で家具の制作を中心に活動していたが、
3年前に建築設計部門を立ち上げていた。
ここから大石さんと大島さんによる、二人三脚のリノベーションが始まる。

「せまい玄関から、トンネルをくぐってリビングに行くような間取りを
変えたかったんです。ドアを開けた瞬間に開放感がほしかった。
だから広い玄関はお気に入りです」

異なる色のスギが模様のように見える広い玄関。自転車も余裕で置ける。

部屋は全面的に木質化されている。
ほとんどの内装に採用されているのは西粟倉村のスギである。

「床材をスギにするか、ヒノキにするか、サンプルを持ってきてもらいました。
でも、すぐにスギに決めました。香りこそヒノキがよかったですが、
さわった感触は断然スギが好みでしたね」

素足でぺたぺた過ごしたくなる。床にはワックスなど特別なメンテナンスは必要ない。

広いお風呂は、大石さんからの数少ないリクエストだ。壁はヒノキを使用。