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人生をともにできる
未来目線のプロダクト
和える(aeru)後編

貝印 × colocal
「つくる」Journal!
vol.021

posted:2015.10.6  from:東京都品川区  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  歴史と伝統のあるものづくり企業こそ、革新=イノベーションが必要な時代。
日本各地で行われている「ものづくり」もそうした変革期を迎えています。
そこで、今シーズンのテーマは、さまざまなイノベーションと出合い、コラボを追求する「つくる」Journal!
ものづくり・しくみづくり・ひとづくり・食づくり、場づくりetc、
貝印 × コロカル × earthradioチームが、フレキシブルにテーマを取り上げていきます。

writer's profile

Tomohiro Okusa
大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ●フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog//

前編【子どもがふれることで伝統産業がよみがえる! 和える(aeru)前編】はこちら

魂がこめられた製品

“0から6歳の伝統ブランド” 〈aeru〉は、
産着や食器などの乳幼児向けの日用品を展開するブランドである。
最初に発売したのは産着、タオル、靴下が入った
〈徳島県から 本藍染の 出産祝いセット〉だ。

「aeruとして最初にふさわしい商品は何かと熟考を重ねていくと、
この出産祝いセットがaeruの想いを一番体現している商品だと思いました。
日本に産まれてきてくれた赤ちゃんを、日本の愛でお出迎えしたい。
本藍染と愛情の”あい”を込めてつくりました」と話してくれたのは
代表取締役の矢島里佳さん。

商品開発には1〜3年ほどかけている。まずaeruチームがコンセプトを考える。
たとえば、“生後半年までの赤ちゃんが、離乳食を食べることを応援する器”など。
常にいろいろなことに興味と疑問を持ち、仮説も立ててみる。
その後、デザイナーと共に話し合いを重ね、デザインを具現化してもらい、
それをもとに職人に製作してもらう。
コンセプトを、デザイナーにも職人にも、しっかりと伝えることが重要だ。

「職人さんには、完璧にデザインに従わなくてもいいので、
デザインのなかでどこがポイントか、
変えていい場所と変えてはいけない場所をお伝えします。
職人さんの手の感覚に任せる余白を残すことは、
すべてのプロの立場からの知見が入った良い製品が誕生するために
大切なことだと思っています」

〈こぼしにくい器〉シリーズは、
器の内側に“かえし”がついていて、子どもでも食べやすい。
磁器の砥部焼、陶器の津軽焼、大谷焼の他、山中漆器のシリーズもある。
子どもが自分で食べられるようになるので、もりもり食べるようになるとか。

「 “食欲が3倍になった” “ごはんを集中して食べるようになった”という
お声をいただいています。やはり自分でできる、ひとりでできる、
ということは、子どもたちにとって大切な成長なのでしょうね」

aeru代表取締役の矢島里佳さん。ビジネスコンテストの優勝賞金でaeruを立ち上げた。

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生み出すのは大変だけど、妥協なきものをつくりたい

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職人のすばらしい技術を生かす

最近では、伝統工芸と現代的感性を組みあわせた製品やプロジェクトも増えてきた。
これによって伝統工芸の職人側にも仕事が増え、お金が回り、
結果的に技術が継承されていくことにつながっていく。
その素晴らしい技術をどのように生かしていくか。

「aeruの商品は、作家のように名前を売りだして販売しているわけではありません。
たしかにそのほうが、売りやすくはなるかもしれません。
しかしそれでは、ひとりの人しかつくれないものになってしまいます。
aeruでは、産業として発展させていくことを大切にしています。
ですから、ひとつの工房だけではなく、
産地内のいくつかの工房でaeruの商品を協力してつくっていただいたりもしています。
業界が後継者育成という体質に変わっていくのには、重要なことだと考えています」

お世話になっている本藍染職人さんに、
300年ほど前の正絹の着物に本藍染を施した製品を見せてもらったことがあるという。

「まるで昨日や今日、染めたような光沢感があって、素晴らしい仕事でした。
しかし、どこにも名前が残されていないんです。でも仕事は、今もここに残っている。
かっこいいなと思いました」

名もない職人だがしかし、手がけた仕事のすばらしさ。
職人の真髄を感じるエピソードだ。

「いいものをつくりたいという想いは、みんな変わらないんです。
職人さんは色、かたちなど、納得いくまでやり直します。
生み出すのは大変だけど、妥協なきものづくりをしたいのです。
私たちの注文は
“いつも難しいけれど、できなくもないものを持ってくるから挑戦したくなる”と
言っていただくことが多いですね」

職人さんがこれまで伝統産業品をつくってきたプライドを大切にし、
リスペクトの心は忘れない。
それにいたずらに奇抜なものを目指しているわけではなく、
意匠にはすべて意味があって、普遍的なもの。

お食い初めはもちろん、その後の日用品として使っていける〈漆塗りのお食い初めセット〉。桐箱入り。

aeruの商品は、子ども向けだから、小さい。
しかしデザインはというと、決して子ども向けにかわいいキャラクターがいたり、
ポップな色使いが特徴というわけではない。
ちょっと小さい、ということ以外は、私たちが普通に欲しくなるものばかりだ。

「0〜6歳の限定のブランドではなくて、
小さい頃からずっと人生をともにできるようなものを
最初から使いましょうと提案しているブランドです」

大人目線というよりは、未来目線。
長く使えるホンモノに、子どもの頃からふれてほしい、そして長く使ってほしい。
そんなデザイン。

「お子さんは、生まれながらにして自然といいものを選びます。
実は、一番お目の高いお客様は赤ちゃんなんですよ。
だれもが持っている豊かな感性を、
aeruは磨き続けていくお手伝いがしたいのです」

感性を磨くときに、身の回りにホンモノがなかったら磨きようもない。

「でも大人になっても、まだまだ磨けますよね。
大人も子育てをきっかけにして、もう一度気がついてほしい。
自分の食生活やライフスタイルを見直している人が多いなかで、
aeruの商品たちが、すっと寄り添っていけたらと思います」

例えば津軽塗のコップ。小さなサイズで子どもが飲むのに使いやすい。
でも、大人になったら、日本酒など入れるお猪口にちょうどいいし、
小物入れや調味料入れに使ってもいい。
製作にかかっている手間や材料費などから上代は決まるので、少し高いかもしれないが、
子どものころから大人になるまで20年使ったとしたら、果たして高いのだろうか。

「何をもって高い、安いと考えるか。
その価値観は目の前の数字だけではありませんよね」

前編でも述べたが、aeruは売り上げを伸ばすということが第一義ではない。
目的は、伝統産業を次代に伝えること。

「売り上げ目標も設定しませんし、
シーズンごとに必ず商品を発売するわけでもありません。
継続のためには経済活動ももちろん大切ですが、
数値目標を設定してしまうと、そのために動き始めてしまいますし、
本質からずれてしまうと思います。
何のために会社をやっているのかという目的を
忘れやすい社会構造になっているように感じます。
どんな会社も創業時は想いが必ずあるはずです」

本質的には暮らすためにつくること、生きるためにつくること。
aeruはその原点を思い起こさせてくれる。

「aeruの取り組みは、まだまだ小さな取り組みかもしれませんが、
みなさんにお伝えし続けることで、それらが重なって、
ひとりひとりの行動が少しずつ変わっていけば、
大きな社会の変革につながっていくのではないかと思っています。
気がついたら、自然と日本の伝統が生活の中で息づく社会を目指していければ嬉しいです」

Information


map

和える(aeru)

https://a-eru.co.jp

東京直営店〈aeru meguro〉
住所:東京都品川区上大崎3-10-50
https://shop.a-eru.co.jp

aeruオンラインショップ
http://www.aeru-shop.jp

※11月7日 、京都に『aeru gojo』がオープン予定。築100年経つ町家。お店のコンセプトは、おじいちゃんとおばあちゃんのお家。

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