「長野市といえば」を集めた定食をつくろう!
山好きが高じて大阪から長野市に移住し、
善光寺近くで〈小とりの宿〉を営む福田舞子さん。
山と同じくらい好きなのが、おいしいものを食べること、つくること、
そして、それを誰かに食べてもらうこと。
1日1組限定の小さな宿は、料理がおいしいと評判で、
火曜から木曜のランチ限定で〈小とり食堂〉として営業し、
宿泊客でなくとも舞子さんの料理をいただくことができます。

会社勤めをしていた頃に山の魅力にとりつかれ、退職後は山小屋で働きながら、海外へも遠征する日々を送っていた。客の胃袋をつかむ料理の腕前は、かつて通っていた料理教室や、日々ごはんをつくっていた山小屋で培った。やわらかな関西弁を話す人。

善光寺から北へ徒歩5分ほど。静かな住宅街のなかにある平屋。古い民家の飴色の柱や建具などはそのままに、無垢材を多用して改装した。

広い庭に面した縁側に出ると、水路を流れる水の音、鳥のさえずりが聞こえる。
山を下り、山に囲まれた長野に腰を据え、自分の居場所を構えた舞子さん。
この地を訪れる人、この地に住む人を、この地が育んだ食材でもてなしたい。
そんな思いから、長野市の食材を生かして定食をつくろうと、
生産者のもとを巡りました。
まずは、集めた食材と生産者のみなさんをご紹介します。
信州サフォークを育てる峯村元造さん
メインの食材にと考えたのが、長野市信州新町で飼育されている羊、
ジンギスカンでおなじみの「サフォーク肉」です。
峯村元造(もとなり)さんは、長野市内で
400頭のサフォークを飼育・繁殖させている人。
峯村さんの育てたサフォークの肉は臭みがなく、
脂に甘みがあると定評があり、全国の飲食店から注文が寄せられます。

それにしても、つぶらな瞳の羊たちのかわいいこと。
思わずもれる「かわいい」のつぶやきに、峯村さんは
「料理人たちは『おいしそう』って言いますよ」
さらに重ねて舞子さんは
「私の料理の師匠は、魚の切り身を見て『かわいい』って言います」
いやはや、上には上がいます。
峯村さんが手塩にかけたサフォーク肉は、ほとんどが飲食店向けに出荷され、
市場には出回りません。
そんななか、せっかくの特産品を地元で買えるようにしたいと、
サフォーク肉の小売に力を入れているのが〈フレッシュトップ田中屋〉です。

とはいえ、一頭買いが基本のため、欲しい部位を欲しい量だけ買いたい、
という要望を叶えるのは難しいのが現状です。
「それでも、まずはご相談ください」という店長の田中利加子さんの心意気を買って、
舞子さんは肉を注文するのでした。
減農薬有機のりんごをつくる〈羽生田果樹園〉
続いての「長野市といえば」は、りんごです。
〈羽生田果樹園〉の羽生田春樹さんは、
20年以上前から減農薬有機栽培に取り組んでいます。
その技術を学ぶため、国内外から研修生がやってきます。
妻の寿子さんは、畑を手伝いつつ、果樹の加工に力を入れます。
うす切りのりんごはパリパリのチップスに、
くし切りのりんごはモチモチとした「天日干しりんご」に。
りんごのほかにもイチジク、柿、プルーンなど、さまざまな果物を加工しています。
また〈小布施ワイナリー〉に委託醸造するシードルも人気があります。

秋に収穫したりんごは、大型冷蔵庫や戸隠の雪中で保存され、春まで出荷されます。
舞子さんも、冷蔵庫に眠るりんごを寿子さんから受け取りました。
信州伝統野菜「松代一本ねぎ」をつくる〈カネマツ倶楽部〉
「松代一本ねぎ」は、長野県が認定した信州伝統野菜のひとつ。
肉質はやわらく、火を通すと甘さが増し、さらにトロみが出ます。
城下町・松代では古くから栽培されていましたが、
原種を守ってきたのは1軒の農家のみ。
〈野菜のカネマツ〉5代目の小山修也(のぶや)さんは、
その種を受け継ぎ、仲間の農家とともに育てています。

冬の寒さにあたる頃が一番おいしくなりますが、
雪が降れば畑は凍りつき、掘り起こすことはできません。
地下部は越冬するので、雪解けとともにふたたび収穫されます。
野菜を通じて地域の文化や伝統を守ろうと活動する小山さんが
「焼きねぎ、すき焼き、鍋にぴったり」と推す地元のねぎを、
舞子さんはどう料理するのでしょうか。
地釜で豆を炊く豆腐屋さん〈デンショウとうふ店〉
いまでは日本に数軒しかない地釜で豆を炊く豆腐屋さん〈デンショウとうふ店〉。
長野県産の大豆のみで、消泡剤や乳化剤といった添加物を加えずにつくる豆腐は、
大豆本来の甘みや旨みがきちんとします。
店を営むのは伝田敬康(ゆきやす)さんと恂子さんご夫妻、
そして長男のお嫁さんのかお里さん。
昔ながらの実直な豆腐づくりに、お嫁さんの感性が加わって、
味良しセンス良し、唯一無二のお店となりました。

豆腐屋さんが食べる豆腐の料理に、興味津々の舞子さんでしたが、
「うちはあんまり食べないのよ」と、恂子さん。
「食べるとしても冷や奴とか、そのまんまかな」と、かお里さん。
それでも話すほどに、炒り豆腐や、おぼろ豆腐でつくるけんちん汁など、
料理のヒントをうかがうことができました。
若手杜氏が醸す蔵元〈西飯田酒造店〉
花酵母で日本酒を醸す蔵元〈西飯田酒造店〉の9代目であり、
杜氏も務める飯田一基さん。
昭和59年度生まれの酒蔵跡取り息子から成る〈59醸〉メンバーのひとりとして、
以前コロカルでもご紹介しました。

飯田さんの搾った酒粕を料理に加えたいと、お訪ねしたのは酒造り真っ盛りの頃。
少々お疲れ気味ながら、快く酒粕を分けてくださいました。
「板粕に砂糖をふって焼くとおやつになるそうで」
そんな話をすると、
「酒粕は、酵素が生きているので、発酵が進んでゆるみます。
搾りたてはかたいので、焼くのにもいいですよ」とのこと。
後日、搾りたての板粕まで分けていただき、
舞子さんのもとに大量の酒粕が届けられました。
長野産はちみつのオリジナルブランド〈なごみつ〉
東京から帰省の際に、父親の趣味の養蜂を手伝ってきた小泉徹司さんは、
脱サラして〈北信濃養蜂場〉を起業し、
オリジナルブランド〈なごみつ〉を展開しています。

「はちみつには殺菌・抗菌作用がある」
「ミツバチは自己組織化の進んだ生き物で、子育て、掃除、採ミツなどを分担している」
「働きバチの寿命は1、2か月で、一生のうちに採ミツできる量はスプーン1杯程度」
などなど、興味深い話の数々。極めつけは
「ご存知ですか。長野県は、はちみつ生産量が全国第1位なんです」
知りませんでした!
この記事のタイトル「羊とりんごと一本ねぎ」に、
「そして、はちみつ」と加筆訂正いたします。

































































































































