千年の歴史を刻む千枚田を再生させたい
岡山市内から北東へクルマで1時間ほど。
中山間地域ならではの、のどかな風景を眺めながら山道に入ると、
やがて視界が開け、小さな神社と大きな谷が姿を現します。
谷の斜面には棚田と、その間を縫うように走る狭い農道。
さらにその道沿いには民家が点在し、
春には桜、夏には蛍、四季折々の風景が広がります。
ここは岡山県美作市上山地区。
かつて、ここには奈良時代に拓かれたと伝わる、
日本最大級の「上山の千枚田」がありました。
その棚田の数は、実に約8300枚とも言われています。

上山地区のランドマークである上山神社。旧英田(あいだ)町による観光案内には「今でも『田毎の月』『耕して天に至る』と言った、農耕にまつわる風流な言葉が残っております」と紹介されています。
1970年代中頃まで、上山では棚田を中心にした昔ながらの生活が営まれ、
棚田の集落に独特の、伝統や文化が受け継がれていました。
しかし残念なことに、その後の減反政策や高齢化により、
千年の歴史を刻む“循環型の食料生産プラント”とも呼ぶべき千枚田は、
続々と耕作放棄されていきます。
やがて、一面の笹藪や竹藪、あるいは植林による杉林となり、
すっかり荒れた谷へと姿を変えてしまいました。

すっかり草や蔓に覆われてしまった棚田。2003年10月。(撮影:高田昭雄)
このままでは、千年の歴史も知恵も景観も二度と取り戻せなくなる。
上山の千枚田を再生させようというグループが現れたのが2007年。
やがて、2011年にNPO法人〈英田上山棚田団〉が結成されます。
「どうせ再生なんてできない」と眺めていた地元のお年寄りたちも、
竹藪を切り払い、野焼きを始めた彼らの姿に「本気」を感じ、
やがて懐かしい石積みの畦畔が現れたときには、彼らと一緒になって歓声をあげました。

上の写真と同じ場所に再生された棚田。耕作放棄された1枚の水田を掘り起こし、再び作付けできる状態にするには3~4年かかると言われています。2016年10月撮影。
2016年現在、若い移住者も増えて再生活動は加速し、
約60ヘクタールある農地の、17ヘクタールが再生され、
約4分の1の棚田が息を吹き返しています。とは言え、まだまだ先は長い。
かつての棚田を取り戻す活動は、これからが本番です。
自然に寄り添う暮らしと知恵を学ぶ、観光ツアーがスタート

一方で、再生活動を支える経済的な基盤もつくらなくてはなりません。
生産される米の収入だけでは、とてもおぼつかないからです。
そこで、米を酒造好適米に変えて、日本酒の製造、販売。
あるいは高齢化する住民たちの足として、超小型電気自動車の活用。
野菜や果物など、新たな農作物の開発。などなど、多くの取り組みが行われています。

2016年10月、全国のICT技術者たちが上山に集まって、農林業の課題に向き合った「上山集楽農業ハッカソン」を開催。
いずれも、かつての棚田を取り戻し、
棚田ならではの景観や文化を未来に残すための取り組み。
そんな、「未来の田舎」を目指す上山のようすは、
すでに多くの企業や自治体から熱い視線を浴び、
今では絶え間なく、視察や研修のツアーが開催されています。

野草の豊かな土地柄、視察や研修のツアーでは、野草料理やジビエが評判を呼んでいます。
であれば、このツアーを一般の観光客に向けて開放してはどうか?
千枚田の景観はもちろん、棚田での農業体験や、食材としての野草やジビエ、
晴天率の高い岡山県ならではの星空キャンプ、あるいは超小型電気自動車の体験試乗。
それは棚田千年の歴史を通じて培われてきた、“自然に寄り添う暮らし”を学ぶ観光です。
そんな〈上山ツーリズム〉が、この4月からスタートします。
具体的なツアーの内容は、次のページから。






























































































































