連載
posted:2017.5.15 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
毎年5月3日に開催される「肥土山農村歌舞伎」。
300年以上続く小豆島の伝統行事です。
去年おととしと雨やら暴風やら悪天候が続きましたが、今年は3年ぶりに晴れ!
気持ちのいい新緑の中で開催されました。
私たちにとって、今年は5年目の農村歌舞伎になります。
小豆島に引っ越してきてから半年後、何もわからずに勢いで参加したのが1年目。
3年目からはたくちゃん(夫)といろは(娘)は役者として舞台に立たせてもらい、
今年もふたりそろって、それぞれの演目で役を演じました。
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5年も経つと、そこにあるいろんなことが当たり前のように思えてきますが、
あらためて考えてみると、肥土山農村歌舞伎が続いているというのは
本当にすごいことだなと思います。
まず茅葺きの歌舞伎舞台が美しい状態でここにあり続けているということ、
それ自体だけでもすごいなぁと。
そしてその舞台が農村歌舞伎跡地ではなく、現役で使われているということ。
1年に1回その日のために、その年の担当組(肥土山自治会の中には6つの組があって、
年ごとに順番に歌舞伎の担当をします)と歌舞伎保存会の人たちが中心になって
準備を進めていくという仕組みが動き続けています。
ここで暮らす者としての使命感なのか、好きだからなのか、理由は違うと思いますが、
それぞれが自分の役割を果たすことで、つくりあげられていく。
この場所と、ここで暮らす人たち、見に来てくださる人たちの力でできあがるのが、
肥土山農村歌舞伎当日の光景。
お母さんたちがつくってくれるお弁当。
新緑のもみじの下から眺める舞台。
化粧をしていつもとは違う雰囲気の子どもたち。
暮れゆく景色の中、歌舞伎舞台で演じる人、桟敷で観る人。
この光景が少しずつ変われど、世代を超えて300年以上も続いている。
300年前の5月3日にもこの場所でこの光景を見ながら、
きれいだなーって誰かが思ってたりするのかなと考えると、なんだかじんわりとする。
いままでと同じように続けていきたい、受け継いでいきたい。
そう思っても、人数が減っていくなか、大変なこともけっこうある。
例えばお弁当づくりひとつとっても、歌舞伎本番の日には
300人分ものお弁当を担当組の女の人たちがつくるのですが、
いまは10人以上でしているこの仕事を
私たちの世代では数人でしなければいけないなど。
きっとそれは無理なことで、やり方を変えていかなければならないのかもしれません。
来年も再来年も5月3日に肥土山農村歌舞伎は開催されます。
農村歌舞伎は、観客の方々も含めてその光景ができあがります。
どなたでも自由に見られますので、ぜひ来てくださいね。
お弁当とおやつを持って、それと座布団なんかもあると幸せです。
来年も楽しみだ!
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