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小豆島の霊場を歩く卒業遍路。
歩くことでわかる島のこと

小豆島日記
vol.172

posted:2017.3.28   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/

この春、中学・高校を卒業した学生たちのお遍路

「お遍路」といえば四国が有名ですが、実は小豆島にも「八十八ヶ所霊場」があり、
お遍路されてる方がたくさんいます。
私もいままでに「女子へんろ」という企画に参加したりして、
歩いて何か所かの霊場(お寺や庵)をまわりました。

お遍路は年配の方がされるもの、宗教的なものというイメージがあったりして、
私たち世代にとってはなかなか身近に感じられないものかもしれません。
都会で暮らしていたら、お遍路さんを見かける機会もほとんどないですしね。
私もその言葉しか知らず、まさか自分が歩いて霊場をまわるなんて
思ってもみませんでした。

小豆島で暮らすようになってからは、お遍路が身近なものになりました。
島は四国本土に比べたらぐっと狭く、その狭い島の中に八十八ヶ所の霊場があるので、
普段の暮らしのなかでお寺の前を通ったり、お遍路さんを見かけたりします。
同世代の「おじゅっさん(お寺の住職さんや副住職さん)」も何人かいて、
普段からつながりがあったりするので、そういう意味でもお寺やお遍路が身近です。

この3月は、お遍路する機会が2回ありました。
ひとつは、とある雑誌の取材で一緒に歩くことに。
すごくおもしろい特集になると思うので、お楽しみに!
そしてもうひとつは「卒業遍路」。
私は撮影スタッフとして一緒に歩いてきました。

小豆島のお遍路は山や海など自然のすぐ近くを歩くコースが多く、歩いてるだけで楽しい。

山の中の遍路道。先達さんについて歩きます。

卒業遍路実行委員会のメンバーのひとり、常光寺副住職の大林慈空さん。

卒業遍路は、島の有志メンバー(卒業遍路実行委員会)による企画で、
今年で3回目の開催となります。この3月に小豆島の中学・高校を卒業した
学生さんたちを対象とした歩き遍路行事です。
その目的は、こんなふうに書かれています。

春、卒業シーズンになると鈴の音を鳴らしながら、
白装束のお遍路さんが近所のお寺をお参りしている光景を目にします。
一体彼らは何者で何をしているのでしょうか? 
自分達には関係の無い存在。そう思ってしまえばそれまでなのですが、
遠方から10時間以上かけて、或いは50年欠かさず、
毎年小豆島を巡礼される人たちがいます。

卒業遍路はたった一日の行事ですが、本格的な遍路行をすることで、
その理由の一旦に触れ、わたし達が生まれ育った場所を知り、
自らの言葉で語れる機会にしたいと思っています。
卒業という人生の大きなターニングポイントにおいて、
この経験が今後の人生を有意義にしてくれるはず!
そう信じて小豆島に根付いていく行事にしたいと想っています。

小豆島歩き遍路通信てくてく』より

自分が生まれ育った場所のことを、自分の言葉で語れるようにする。
それってすごくすてきなことだと思います。

私は生まれ育った場所のことをほとんど知らずに出てしまいました。
離れてみて、時々人から話を聞いたりして、
あー、岡崎(私の地元です)ってそんなところだったんだなと
あらためてその魅力を知ることが多いです。

同じ部活の仲間と一緒に。

山の中で休憩。中学3年生のみんな。

今回の卒業遍路には、中学3年生が22人、高校3年生が14人の計36人が参加。
島の遍路コースの中でもかなり険しい道のりである、
島北東部の土庄町小部から小豆島町吉田、福田地区までのコースを歩き、
小豆島霊場81~85番札所をまわりました。

島出身、島で働く先輩たちの話を聞く時間も。

洞窟の中で護摩焚き。こんな経験はなかなかできない。

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お昼ごはんは「お接待」

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今回歩いたルート。峠を越えてお寺からお寺へ歩いて行きます。(巡拝図作成:大林慈空さん)

豆坂峠。山道を登って下って4キロ。険しい道のりです。

峠越えを含む20キロ弱の道のり。
普段は絶対に歩かないだろう山の中の道を歩いていきます。
小部から吉田に抜ける「豆坂峠」は歩いて2時間かかります。
昔はこの道が幹線道路で、普通に使われていた道です。
そんな道があったこと、その道を歩くと見える景色。
そしてお遍路の途中でいただく「お接待」という島の人たちの優しさ。

峠からの眺め。海と山と。こういう景色を楽しみに歩きます。

お接待のお昼ごはん。島で育てられた豚とこんにゃくの佃煮丼。はぁ〜、おいしい。

歩き遍路は、島のことを知る一番の手段なんじゃないかなと思います。
島の芯の部分というか深いところというか、そういう場所に近づけるような気がします。

小豆島八十八ヶ所霊場をすべて歩いてまわろうとすると1週間かかるといわれています。
1週間は必要な最低の日数で、かなりハードな日程。

もっと日にちをかけて巡ってもよし。
全部巡らなくても行きたいところだけ行ってもよし。
コーヒーとお菓子を持って、山歩きみたいな気分で遍路道を歩くのもよし。

難しく考えなくてよくて、まずは歩いてみよう。
歩きながら、島を感じ、人に出会い、
時々「お遍路」ということについて考えてみたり。
そうそう、歩き始めるにあたっては、小豆島霊場会が発行している
おへんろ道案内図』があるといいと思います。

菅笠(すげがさ)。日除け、雨除け、万能です。

金剛杖。杖なくして歩けません。

般若心経などのお経が書かれた経本もあったほうがいいですね。

歩き遍路、おすすめです。
私も少しずつ島を歩こうと思います。

information


map

HOMEMAKERS 

住所:香川県小豆郡土庄町肥土山甲466-1

営業時間:金曜、土曜のみ 11:00~17:00(L.O. 16:00)

http://homemakers.jp/

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