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子どもたちの五感を刺激する
〈真鶴未来塾〉の
フィンガーペインティングイベント

真鶴半島イトナミ美術館
作品No.25

posted:2017.3.21   from:神奈川県足柄下郡真鶴町  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

sponsored by 真鶴町

〈 この連載・企画は… 〉  神奈川県の西、相模湾に浮かぶ真鶴半島。
ここにあるのが〈真鶴半島イトナミ美術館〉。といっても、かたちある美術館ではありません。
真鶴の人たちが大切にしているものや、地元の人と移住者がともに紡いでいく「ストーリー」、
真鶴でこだわりのものづくりをする「町民アーティスト」、それらをすべて「作品」と捉え、
真鶴半島をまるごと美術館に見立て発信していきます。真鶴半島イトナミ美術館へ、ようこそ。

writer profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer profile

MOTOKO

「地域と写真」をテーマに、滋賀県、長崎県、香川県小豆島町など、日本各地での写真におけるまちづくりの活動を行う。フォトグラファーという職業を超え、真鶴半島イトナミ美術館のキュレーターとして町の魅力を発掘していく役割も担う。

手で、足で! 体を使って描く感覚を養う

真鶴町にある公共施設〈コミュニティ真鶴〉を管理している
一般社団法人〈真鶴未来塾〉は、スタートアップ支援など
さまざまなイベントや講座などを開催しているが、
子どもに向けた催しにも力を入れている。

2月26日に開催されたのは「フィンガーペインティングを体験しよう」というもの。
この日集まったのは10人の子どもたちと保護者たち。
会場には壁一面と床に大きな白い紙が貼られ、なんだか自由な空間が広がっている。

「絵の具だまり」に素足で進入!

この日の講師は、真鶴出身の友人に誘われて参加したイラストレーターのユウナラさん。
普段は、自らが住んでいる団地のパーティなどで子どもたちと接しているという。
もうひとりは、真鶴で似顔絵作家・グラフィックデザイナーとして
活動している山本知香さん。
自らが開催するイベントでもよく子どもたちとふれあっていて、
真鶴の子どもたちにはよく知られているお姉さん的存在。

しかし講師といっても特別なことを教えるわけではなく、
先頭になって一緒に楽しむ係だ。

山本知香さん(左)とユウナラさん(右)。

まずは山本さんのレクチャーが行われた。
「今日は、筆ではなく、自分の体で描いてください。
手のひら、腕、足で描いてもいいよ」と、普段、家でやったら怒られることを
やってもいいと許されたことでワクワクする子どもたち。

まずは床に貼られた紙をキャンパスにして描いていく。
フィンガーペイントといっても、指だけでなく体全体を使っていいみたいだ。

手のひらでベターっと。何が描かれるのだろう?

ここからは、子どもたちの自由な感性が爆発する。
手のひらいっぱいに絵の具をつけて縦横無尽に動き回る子、
座り込んで1か所に絵の具の層ができるかと思うくらい色を塗り重ねている子、
足の裏に絵の具をつけてすべって転びまくっている子。
みんな髪の毛や顔にも絵の具がついて楽しそう。
この日ばかりは、洋服を汚したってお母さんに怒られない。

泥遊び感覚の子どもたち。握った指の間から出る絵の具の感触がたまらないようだ。

「普段、学校の授業などで絵を描くと、ウマイ・ヘタという差が出てきてしまいます。
絵があまり上手ではなく、萎縮してしまう子もいると思うんですね。
でもここはウマイ・ヘタという価値基準ではない。
みんなどんどん描いてくれてよかったです」と主催である真鶴未来塾の奥津秀隆さん。

お母さんたちも協力して描くけど、子どもたちのほうが思いっきりがいい!

お化粧のように、きれいに手のひらにピンクの絵の具を塗れました。

30分ほど自由に描いてもらって、絵の具の使い方を理解してもらった。
「フィンガーペイントは絵を描くというよりは、
指や体を使うという五感を鍛える目的が大きいです」と言う山本さん。
いまでは機会の少なくなった泥遊びなど、手足で直接素材をさわるという感触。
そして体のいろいろな箇所を使って表現していくという感覚を鍛える。

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みんなで描いた真鶴の海

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子どもたちが感じる真鶴の海を描く

次は、壁に貼った白い紙の中央を横断するように、
先生ふたりが蛇行する青い線を引いた。これは水平線だ。
線の下には海の中の世界を、線の上には海の上の世界を描くというルールを設けた。

まずは海の中の世界。いつも見ているお魚は得意だ。

さすが港町、真鶴の子どもたち。
海のなかには魚や貝、海藻、水面には船が浮かんでいる。
しかもしっかりと漁船とボートを描き分けている。
海というテーマは身近では入りやすかったようだ。

髪の毛に絵の具がついてもへっちゃら。

「思ったよりおもしろい発想が見られてよかったです。
手のひらを使った大量のカニコーナーとか、リュウグウノツカイなんて
なかなか描けるものではありません」と、
真鶴訪問2回目のユウナラさんは港町である真鶴っ子たちに感心する。

「巻き貝なども、真鶴っぽいモチーフですね」と山本さんも言う。

大量のカニと秀逸なタコ。

ちびっ子画伯たちが合作で描き出したダイナミックな地元・真鶴の海は、
すごくにぎやかで楽しそう。
五感を解放して感性を鍛えるいい機会になった。

お皿を絵の具で貼り付けようとするナイスアイデア。

学校などとは違う方向性の学びを得られる真鶴未来塾は、現代の寺子屋のようだ。
地域住民が積極的にこのような場をつくり、未来の真鶴を支える財産が育まれていく。

information

map

一般社団法人 真鶴未来塾

住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴504-1 コミュニティ真鶴内

TEL:0465-68-0789(火~金9:30~16:00 祝日除く)

http://manazurumirai.jp/cms/

真鶴半島イトナミ美術館

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