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料理ユニット〈つむぎや〉がつくる
干しえのき、昆布、いりこを使った
土と緑のSUNDAYスープ

うまみのくにの、おいしいスープ
umamiのおべんきょう
プロジェクト × colocal
vol.001

posted:2017.4.28   from:全国  genre:食・グルメ

sponsored by やまやコミュニケーションズ

〈 この連載・企画は… 〉  「和食」が無形文化遺産に登録され、世界中から注目されるようになりました。
その理由のひとつが、だしからとるうまみです。日本には、豊かな自然と風土に育まれた
天然の素材がたくさんあります。そのうまみをじっくり感じられるのがスープ。
おいしいものには目のない料理家さんたちに、さまざまな食材をだしにしたスープを教えてもらいました。
この食材からこんなうまみが……? まだ味わったことのない“うまみ”の世界にお連れします。

umamiの
おべんきょう
プロジェクトとは?

いま「umami」という言葉は、世界中に広がっています。甘味、塩味、酸味、苦味に続く、第5の味覚。日本人が発見した「おいしく食べる」ための最大の知恵です。いま「和食」は世界中で注目されていますが、おおもとの日本ではどうでしょう。うまみを楽しんでる? 子どもたちに伝えてる? ということで、さまざまな人や企業が集まって「umamiのおべんきょうプロジェクト」が始まりました。
公式プロジェクトサイト:umamiのくにから

writer profile

Kaori Kai

甲斐かおり

かい・かおり●執筆・編集。長崎県生まれ、東京・熊本の二拠点生活にトライ中。日本各地を取材し、食文化やものづくり、地域コミュニティ、里山・郷土文化、農業をテーマに取材し、雑誌やウェブで紹介。著書に『暮らしをつくる』(技術評論社)。

photographer profile

Tetsuka Tsurusaki

津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。料理・人物写真を中心に活動。東京での仕事を続けながら、移住先探しの旅に出る日々。コロカルで「美味しいアルバム」「暮らしを考える旅 わが家の移住について」連載中。

自然の力を取り入れた、春らしいスープ

1年でもっとも気持のいい季節になりました。
野山はまぶしいほどの緑。植物は一気に芽吹き、
夏にかけて勢いよく伸びようとするエネルギーに満ちています。

そんな自然の力を体にも取り入れたい! 
と料理家の〈つむぎや〉さんにお願いしたのは「土と緑」がテーマのスープ。
菜の花や新ごぼう、新じゃがなど季節の野菜を用いて、
味のベースには干しえのきに昆布、いりこなどの和だしを使います。
うまみはしっかり、でもやさしい味わいのスープができました。

つむぎやは金子健一さんとマツーラユタカさんのおふたりからなる料理ユニット。
「もともと仲間うちで集まったときによくふたりで料理していたのが始まりです。
つくるのも好きだったし、その場で食べた人から
おいしい! って反応がダイレクトに得られるのがうれしくて。
とにかくふたりで料理しまくってました(笑)」

ごく自然に料理が仕事になっていったというおふたりは、今年で活動12年目。
雑誌やイベントなどに引っ張りだこです。
日本各地で行われる展示会などにも声がかかるようになると、
食材との出会いも多くなりました。
とくに3年前、金子さんが長野県松本市の奥さんの実家に住まいを移して以来、
生産者の知り合いも増え、つむぎやで扱う食材の幅もぐんと広がったのだとか。

昨年1年かけて松本、安曇野の生産者や木工作家のもとをまわり、
その人たちの食材や調理道具を使って料理のイベントを行ったという金子さん。

「直接生産者の方々に話をうかがうことで、新しい料理のアイデアが浮かんだり、
試食した野菜に合った調理法を考えてみたり、思考が広がります。
イベントには生産者の方もお呼びして、お客さんと交流してもらうことで、
近くに無農薬でいい野菜をつくっている農家さんがいることや
その思いを知ってもらうきっかけにもなりました」

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伝統野菜「松本一本ねぎ」を使った「緑のスープ」

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菜の花、松本一本ねぎと塩麹を使った「緑のスープ」は深みのある味わい

そんな金子さんが長野から持ってきてくれたのは、
昨年一緒にイベントを行った〈ふぁーむしかない〉の春野菜。
野沢菜、小松菜と2種類の菜の花に、
くいと曲がった形が特徴の伝統野菜「松本一本ねぎ」。
長野のきれいな空気で育った野菜は、新鮮でいきいきしています。
自家製の塩麹と干しえのきをうまみのポイントに。
「塩麹も、安曇野の農家さんが、冬の間に仕込んだ米麹をいただいてつくったものです」

「ふぁーむしかない」で栽培された菜の花(小松菜)と松本一本ねぎ。

干しえのきと昆布をひと晩水に浸けただしに、
ねぎをよく炒めて甘みとうまみを引き出し、
さらにじゃがいもと塩麹のうまみを加えます。
とろりと緑色の春らしいスープに、桜エビと菜の花のトッピングが鮮やか。

さっそくいただくと、ぎゅっとうまみの濃縮したような深みのある味わい。
桜エビの香りと菜の花の苦みがアクセントに効いています。
しっかりした味でも重たくないのは、やっぱりベースがきのこと海藻の“和だし”だから。
ゆっくり体を休めたい日におすすめのスープです。

気になる〈金子きのこ園〉の干しえのき

だしに用いた「干しえのき」はそのままぱりぱり食べてもおいしい食材で、
「根元までこんがりおいしそうなのが気になって」と金子さん。
生産元の〈金子きのこ園〉に電話してみると、
宮下順行さんがお話を聞かせてくれました。

金子きのこ園は長野県中野市にある、きのこ製造会社。
中野市と言えば、えのき茸の生産日本一を誇る地域です。
昭和40年代からえのき茸をひと筋につくってきましたが、
干しえのきは平成24年に新しくできた商品なのだそう。

「長年、生のえのきを生産してきたんですが、
ある方の紹介で干しえのきにトライしてみようかという話になりまして。
乾燥させてみたら香ばしくってうまみがあって。これはうまいなぁってことになり、
じゃあどんな食べ方ができるだろうと考えていきました」

金子きのこ園の「干しえのき」。昆布と一緒にひと晩水に浸したものを味見すると、きのこの香りとうまみが何ともいい風味。スープのだしに使います。

乾燥のさせ方もずいぶん試行錯誤し、12時間、2段階に分けて
じっくり乾燥させる手法にいきついたのだそう。
天日干しのような見るからに香ばしそうな茶色は、そのためでした。

「生えのきの10分の1の量になっている分、
香ばしさやうまみもぎゅっと凝縮されています。
そのまま食べてもおいしいし、だしにするのもいいんですが、
軽くフライパンで炒ってね、マヨネーズをかけて食べるとおいしいんですよ。
そのまま天ぷらにするのもおすすめ。
さきいかみたいな味になってね、これがうまいんですよ〜」

その話しぶりに、宮下さん自身、干しえのきをこよなく愛しているのが伝わってきます。
愛情と時間をたっぷりかけてつくられた干しえのき。
そのスープが、おいしくないはずはありません。

「緑のスープ」材料とつくり方

◎材料(4人分)

菜の花100g(葉と茎に分けて茎はトッピングに)

松本一本ねぎ1本

新じゃが2個

塩麹約大さじ5

米油大さじ2

昆布えのき水(真昆布10g、干しえのき10gを水1リットルに浸したもの)

[トッピング]

桜えび10g、菜の花の茎適量、白ごま大さじ2、塩ひとつまみ、米油大さじ1

◎つくり方

 切り込みを入れた真昆布、干しえのきを水1リットルに入れて冷蔵庫でひと晩寝かせて昆布えのき水をつくる。

 菜の花は葉と茎に分けて葉は細かく刻み、茎は1センチ幅に。ねぎは小口切り、じゃがいもは1センチ角にカットする。

 鍋に米油、ねぎを入れて中火で5分ほど木べらで混ぜながらよく炒める。

 に菜の花の葉、じゃがいも、塩麹を加えて3分ほど炒める。

 昆布えのき水を具もすべて注ぎ、中火にしてひと煮立ちしたら、昆布だけを取り除く。じゃがいもがやわらかくなるまで弱火で煮る。

 をブレンダーなどで全体を撹拌し、弱火でコトコト5分ほど煮込む。

 フライパンに油、桜えびを中火で熱し、桜えびがカリッとしてきたら、菜の花の茎部分、白ごま、塩を加え、1分ほど炒める。

 を器に注ぎ、をトッピングしてできあがり。

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「生きたまま加工する」いりこを使ったスープ

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“生きたまま加工する”と言われる、新鮮ないりこの産地

続きましては、マツーラさんのスープ。
こちらも春らしく、新ごぼうと新じゃがいもを使います。
だしにするのは、香川県観音寺市の〈やまくに〉のいりこ。

マツーラさんは普段からこのいりこを愛用していて、
お味噌汁にも洋風のスープにも、煮干しを丸ごと割いて入れ、
そのまま具材としていただくのだとか。

「やまくにさんは、 “いりこのおっちゃん”の愛称で親しまれている
山下公一さんがやってらっしゃる会社で、
奥さんや娘さんと3人で全国のイベントを飛び回っていて、
とてもかわいくてすてきなファミリーなんです」

実際に観音寺まで訪れたことのあるというマツーラさん。
向こうでは“おっちゃん”が香川を案内してくれたのだそう。

「やまくにさんがあるのはのんびりしたまちで、海がすごくきれいなところでした」

観音寺市は香川県の西の端。瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)に面しています。
西沖にある伊吹島は「いりこ島」と呼ばれるほどの、いりこの産地。
いりことはカタクチイワシの煮干しで、
昆布やかつお節が高価で庶民の手に入らなかった時代から、
西日本ではだしの材料として使われてきたのだそう。

穏やかな瀬戸内海でとれるイワシは身もやわらかく、
“生きたまま加工する”と言われるほど、水揚げから瞬時に茹で上げて乾燥させる新鮮さ。
やまくにさんの「銀付きいりこ」はとくに、
肌のきれいな銀色のいりこのみを手で選別した商品です。
どうしても生臭いイメージのある煮干しですが、やまくにさんのものはおすすめです。

新ごぼうと新じゃがいもの和ポタージュで「土のスープ」

「今回は大羽(8〜10センチ)と呼ばれる大きめのものを使います。
水に浸してだしにしてもいいのですが、もっと手軽に、
そのまま具材として炒めて煮込んでもいいだしが出ます。
そのままとれるので栄養もありますし」

いりこと玉ねぎ、新ごぼうを合わせて軽く炒め、
新じゃがいもを入れたら数分煮込んでミキサーにかけます。
そこに甘めでクリーミーな白みそを加えるのが、舌ざわりを滑らかにするポイント。
さらにいりこを割いて軽くあぶったものとピンクペッパーを散らしてできあがり。

ひと口いただくと、ごぼうの土の風味といりこのうまみと、
じゃがいもと玉ネギの甘みが口いっぱいに広がります。

「土のスープ」材料とつくり方

◎材料(4人分)

新ごぼう2本(約100g)

新じゃがいも3個

玉ねぎ1個

いりこ(10cmくらいのもの)6尾

水1リットル

酒、みりん各大さじ2

オリーブオイル大さじ3

塩小さじ1

白味噌大さじ2

ピンクペッパー適量

いりこ(トッピング用)3尾

◎つくり方

 ごぼうは5ミリ幅にスライス、玉ねぎは粗みじん切りする。じゃがいもは皮をむき、薄く輪切りに。いりこは頭からエラを外して内蔵を取り出し、手で粗くちぎる(中骨も外れてくる場合は取り除く)。

 鍋にいりこを入れ、弱火で1分ほど乾煎りしてオリーブオイルと玉ねぎを入れ、塩小さじ4分の1(分量外)をふって弱めの中火で炒める。玉ねぎが透きとおるぐらいまで5分ほど炒めたらごぼうを入れて2分ほど炒め、じゃがいもを入れ、水と塩、酒、みりんを加えて中火にする。

 アクが出てきたら取り除き、弱火にして7分ほどじゃがいもが崩れるくらいまで煮込む。

 スープを煮込んでいる間にトッピング用のいりこを煎る。頭を取り、身を半分に開いて内蔵を取り出し、食べやすい大きさにちぎったら、フライパンで弱火で1〜2分炒る。

 の鍋を煮込んだら、ブレンダーやミキサーにかける。白味噌を溶かしてよく混ぜ合わせる。再び弱火にかけ、ひと煮たちしたら、器に盛って、ピンクペッパーを散らす。

心と体にじんわりくる、2種類の春の恵みのスープ。
乳製品は一切使わない和だしのスープですが、うまみがしっかりしている分、
食べ応えは充分。休日のブランチにいかがでしょう。

profile

つむぎや

金子健一とマツーラユタカからなるフードユニット。「食を通して、人と人とを、満ち足りたココロをつむいでいく」をモットーに、和食ベースのオリジナル料理を、雑誌、イベント、ケータリングなどで提案している。金子は結婚を機にご縁ができた長野の松本、マツーラは地元である山形の鶴岡など、さまざまな出会いからつむがれた地方の風を運ぶ活動にも力を入れている。 『和食つまみ100』(主婦と生活社)など著書多数。

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