まるで民家のような佇まいの「後藤万十店」は、
代々受け継いできたという甘酒麹菌を発酵させ、
生地に練り込み、もっちりとした食感に仕上げた甘酒万十が名物のお店です。
定番の小豆をはじめ、阿蘇高菜、きんぴら、
切り干し大根、からいもなど特製餡がおいしいと評判で、
ご近所さんはもちろん、遠方から訪れる人も。
小さいながらも店内にはイートインスペースがあるので、
目の前に広がる阿蘇谷の風景を見ながら、
手づくりの万十でお茶するのも、阿蘇ならではの楽しみ方。
名物の甘酒万十はすべて手づくりで、丁寧につくられているため、数に限りがあります。
せっかく行ったのに「売り切れ!」とならないためにも、
事前に電話して確認しておいた方がいいようです。
ビビッドな色使いが目をひく「きじ馬」と「花手箱」。
その歴史のはじまりは約八百年前、平家一族が人吉の奥地、
木地屋や大塚地区へと逃げ延びてきた頃にさかのぼります。
奥深い山のなかで新たな暮らしをはじめた彼ら。
胸に去来するのは、雅な日々を過ごした京への郷愁だったのではないでしょうか。
そのさびしさを紛らわすためにつくりはじめたのが
きじ馬」と「花手箱」という説があります。
人吉市の住岡忠嘉さんは、今でも唯一、昔ながらの完全手作業を貫く職人です。
材料として用いるのは、桐や朴の木。丸太を作業台に、手斧1つで荒削りにしていく住岡さん。
木の曲線を生かし、きじ馬の形を切り出していく様は圧巻です。
「昔はイセビ(ハクサンボク)の実で赤を、クチナシの花で黄色を、
麦の若葉で緑をと、すべて草木染めで描いていました。
本来、きじ馬は子どもが乗る遊具として作られよったとですが、
最近は民芸品として小さなサイズのものが主流ですね」と語ります。
そんなきじ馬や花手箱の絵付け体験ができるのが「人吉クラフトパーク石野公園」です。
外遊びゾーンと、伝統工芸ゾーンからなる伝統文化のテーマパークで、
ほかにも、陶芸やガラスのサンドアート、革小物づくり、包丁鍛冶の体験などもできます。
シルバーアクセサリーの製作体験はカップルでの利用やプレゼント製作にも人気です。

きじ馬・花手箱絵付け体験は、1000円〜。事前予約がおすすめ。

この道50数年。住岡さんの手にかかると、見る間に丸い棒がきじ馬に姿を変えていく。
肉そのものの食感と熟成した風味が楽しめるハム、
肉と脂身から溢れる甘み・旨味を芳醇な薫りで包むベーコン。
それらの美味しさに思わず顔がほころびます。
一の宮町「阿蘇神社」の横参道に延び、〝水基〟を訪れる人で賑わう門前町商店街。
その一角にある薬店「蔵原薬品」の中に、「阿蘇クララファーム」の工房と販売所があります。
約30年前、この薬店を営む蔵原政喜さんが、
家族や仲間のために趣味で作っていた燻製が評判を呼び、
その声に応えて、9年前から営業を始めました。

「家族や仲間など、大切な人に安心して食べてもらえる〝正直な製品づくり〟がモットー」
という政喜さん、政和さん親子の言葉通り、安全で美味しい肉選びから、
防腐剤や保存料などの添加物を使用せず、
ひとつひとつ丁寧に手作りすることにこだわっています。
肉を長めに塩漬けしてじっくり熟成させ、
季節や天候によって塩分や香辛料のブレンドを調整し、
チップではなく波野産の桜の木そのものを使って燻製するなど、
長年の研究で独自の味をつくりあげてきました。
肉の旨味、塩分、香辛料の香り、燻製の薫りなど各々が主張せず、
優しく調和する逸品。その美味しさの背景には、
地域の人々とのつながりや、ベーコンやハムがつなぐ新たなご縁を大切に考える、
蔵原一家の温かな気持ちが感じられます。

プレスハム(大1,890円、小840円)、ベーコン840円、スモークソーセージ735円。※その他、阿蘇高菜入り「たかなウィンナー」(525円)、唐辛子入り「チョリソー」(525円)、「馬刺しの燻製」840円、などもある。
イタリア料理に欠かせないトマトソースとチーズ。
そして、日本人が愛してやまないカレーライス。その3つを組み合わせてできたのが、
「イタリア小料理コラッジオ」の名物「あしきた牛の焼きカレー」です。
トマトの酸味と、ピリッとスパイシーなカレー、そしてチーズがまろやかさを加えて、
絶品料理に仕上がっています。
一度食べたら、もう一度食べたくなる! 根強いファンをもつ一品です。
また、芦北・水俣で毎年夏休み期間中に開かれている、
「芦北伽哩街道」と呼ばれるイベントでは、
このエリアの10数店舗が、毎年趣向を変えたオリジナルカレーを提供。
NHKの料理番組ではじめて日本の過程にカレーを紹介したといわれる
料理研究家、芦北出身の江上トミさんの功績を讃えようとはじまったイベントです。
夏季限定ながらも、徐々にファンが増え、毎年盛り上がりをみせています。
参加店やイベント情報については、HPでチェック。
熊本県八代市にある「五家荘」は、
平家落ち人が、隠れ里ととして住み着いたという伝説が残る場所。
平家の落人たちは、焼き畑農業にいそしむ傍らで、保存食づくりにも力を入れていました。
通常の四倍もの大豆を使う「樫木(かしのき)豆腐」はずっしり重い、堅めの豆腐。
これを軽く炙り、味噌に漬け込むことで長期保存を可能にした「豆腐のみそ漬け」は
貴重なタンパク源として、人々の暮らしを支えました。
物流が発達していない時代に、生きるために考えられた独自の食文化が、
時を超えて“郷土の味”として広く愛されていることに、歴史のおもしろみを感じます。
この伝統的な「豆腐のみそ漬け」を半年間かけて発酵・熟成し、
ウニやチーズを思わせる風味と食感に仕上げたのが五木屋本舗の『山うにとうふ』。
酒肴としてはもちろん、熱々のごはんやトースト、肉・野菜との相性も抜群です。

「山うにとうふ」はオリジナルに加え、ゆずや唐辛子など全6種類の味わいがある。大648円(90g)。
熊本県阿蘇郡南小国町は、全国から観光客が押し寄せる温泉郷のメッカ。
多くの人で賑わう温泉郷とは対照的に、
ひっそりとした佇まいながら、どこか懐かしい、独特の風情を醸し出しているのが、
田の原(たのはる)温泉です。江戸時代からお武家さん御用達の湯治場として栄え、
それ以前には源氏にまつわるお屋敷があったとも伝えられています。
この田の原温泉で、江戸時代から明治期まで「亀屋」という屋号で
御客屋を営んでいた温泉郷随一の老舗が「せせらぎの御宿 大朗館」。
森のなかにぽつんっと湯煙がたちのぼる風情ある佇まいは、
映画『男はつらいよ』の21作目(昭和53年公開)のロケ地に選ばれたほど。
宿のご主人からは当時の撮影のエピソードなど、
寅さんファンにはたまらないこぼれ話を聞くことができるかも!
日帰りでの貸切湯もあるので、ドライブの途中に、寅さんのようにふらっと立ち寄るのも一興。
古くから打ち身や神経痛に良いと評判のお湯は、弱酸性の泉質。
現代的にいえば、美肌効果も期待できます。

木立のなかに突如現れる、高さ約9メートル、幅約25メートルの滝。
深い緑と水しぶきをあげる滝とのコントラストが、
なんともいえない美しい光景をつくりだしています。
まさに、自然がつくりだす造形美。
テレビCMのロケ地として選ばれたことで一躍有名になった「鍋ヶ滝」は、
通称「裏見の滝」とよばれ、滝の裏側にまわりこんで水が落ちる様を眺めることもできます。
奥行き約10数メートルにわたってえぐられている滝の裏側は、
表で見る滝とは違う表情を見ることができ、その様子は「水のカーテン」に例えられています。
5月のゴールデンウイーク期間中は夜間ライトアップされるので、
昼間とはまた違うロマンティックな雰囲気です。

熊本を訪れたことがない人には、驚きのある魅力を。
熊本で生まれ育った人には、あたらしい出逢いを。
熊本県と熊本県観光連盟が発行している
季刊誌「くまもとたいむ」。
熊本をこよなく愛するスタッフがタッグを組み、
熊本の「本物」と「こころの贅沢」を
写真とことばでお届けしています。
北海道の真ん中にある、鹿追町(しかおいちょう)。
日本一広い十勝平野を一望し、
森と湖や珍しい動植物を擁する北欧風の環境のまちです。
この鹿追町には、原生林におおわれた幻想的な「然別湖」があるのですが、
稀に湖上に唇山(くちびるやま)と呼ばれる
湖のシンボルが出現することがあります。
唇山が出現するのは、然別湖がまったく無風になり、
湖の表面にさざなみが立たない時だけ。
湖の東にある天望山の姿とその影が映しだされて、
セクシーなくちびるが現れ、その姿が唇山と呼ばれているのです。
冬は湖が凍ってしまうので見ることはできず、
なかなかレアな出現度となっております。
然別湖
写真:総支配人の部屋さん
しいたけが嫌いな人には申し訳ないですが、
きのこ好きにはワクワクするような、心躍るネーミング。
実は、鳥取には「一般財団法人 日本きのこセンター」なるものがあり、
きのこ類を専門に調査・研究しています。
国内唯一のきのこ研究機関だそうです。
きのこ産業の発展にも力を入れており、
そんなわけで、鳥取にはおいしいきのこが多いのです。
ここは、「きのこ会席」「きのこランチ」など、
四季折々の多種多様なきのこを使ったコースメニューがあります。
しいたけ、エリンギ、柳松茸など3種のきのこをたっぷり使ったきのこごはん、
ふわふわしたウサギのシッポのような姿もかわいい山伏茸のお吸い物、
しいたけの粉末を練り込んで、讃岐の製麺所で作られた、しいたけうどんなど、
きのこ尽くしの珍しいメニューが続々と登場。
中でもひと際びっくりするのが、しいたけステーキ!
一見「ハンバーグかな?」と思うほど、肉厚で大きなしいたけが、
鉄板皿の上にどんと乗り、ジュージューといい音を立てています。
ぶるるん、と噛みごたえのある弾力で、うまみがじゅわっと口の中に広がります。
鳥取で開発された、特殊な品種のおいしい原木しいたけなのだそうです。

しいたけステーキが味わえる「きのこランチB」は1890円。
そしてなんと、こちらで料理をいただくと、もれなく温泉がついてきます。
旅館なのでお泊まりもできますが、
ランチをいただくだけでも温泉はセットになっています。これは嬉しい。
飲用もできる天然温泉で、旅の疲れを癒せます。
(注:温泉にしいたけは入っていません)。

さて、風呂上がりには「しいたけソフトクリーム」もいいですね。
え? しいたけのソフトクリーム!?
一瞬ぎょっとするかもしれませんが、
決してキワものではなく、素直においしいです。
しいたけの粉末を香ばしく炒ったものと、
しいたけ焼酎を火にかけてアルコール分を飛ばしたものが入っているそうです。
少しシャリっとしたシャーベット状の食感で、
ナッツのようなうまみと香ばしさがあります。
建物の脇には「しいたけ本舗」という売店があり、
生のきのこはもちろん、うどん、カレー、ドレッシング、お菓子、焼酎など、
きのこを使った商品がいろいろと並んでいます。
自宅でしいたけステーキを作れる、乾燥しいたけセットもあります。
お土産にも嬉しいアイテムです。
緑溢れる山奥深くに、突然現れる高台のモダンな建物。
こんなところになぜ? と一瞬びっくりしてしまうのですが、
卵にとてもこだわった自然牧場が運営する、カフェとショップなのです。
高台に上がると、一面に広がる美しい田園風景を見渡すことができ、
清々しい空気に、思わずふぅっと深呼吸したくなります。
特に新緑の季節は一段と気持ちがいいです(冬の雪景色もきれいだそうです)。
養鶏、と聞くと鶏舎にぎゅうぎゅうと入ったにわとりを
思い浮かべる方もいるかもしれませんが、
ここは平飼いといって、にわとりたちは元気にあちこちを歩き回り、
お日様の光をたっぷり浴びて育っています。
よく運動すれば足腰も丈夫で、自由に動ければストレスもなく、
病気をしにくい健康なにわとりになります。
餌に抗生物質を与える必要もありません。
飼料は自然の素材だけを使い、
穀類や貝類、魚粉、とうがらし、にんにく、木炭、牧草、おから、
米ぬかを酵母で発酵させたもの、などなど20種類以上のものを混ぜ合わせて作られているそうです。
人間が食べても大丈夫、といえるような飼料です。
栄養バランスの整った飼料で育つので、おいしく健康な卵が生まれます。
ココガーデンでは、このおいしい平飼い卵(「天美卵」と呼ばれています)を使って、
バウムクーヘンやプリン、ロールケーキ、シフォンケーキなどを作っています。
卵のうまみがこっくりと深くて、
素材そのもののおいしさを存分に感じられるお菓子たち。
卵を最大限においしく味わえるようにと、
小麦粉や乳製品など材料にもとてもこだわっています。
そして、そんなお菓子の中でも特に心奪われてしまったのが、
現地でしか食べられないスフレパンケーキ!
さっくりふかふかのパンケーキは、生地そのものの味があまりにおいしくて、
バターやメイプルシロップすらいらないかも、と思ってしまうほど
(でも途中からシロップをかけて、味の変化を楽しむのもいいです。
シロップはもちろんオーガニック)。
味、香り、食感、全てにおいてパーフェクト!
余計なことをしていない分、素材で勝負のシンプルなパンケーキです。
生地にはベーキングパウダーを使わず、卵白の力のみが頼り。
しっかりとしたコシのある卵白で、ふっくら弾力のあるふくらみを作れるのは、
ここの卵だからこそなんだそう。
注文を受けてから生地を作るので、少し時間はかかりますが、待ってでも食べたい。
ガラス張りの大きな窓からは気持ちよい景色が広がり、
また店内は北欧を意識したスタイリッシュなインテリアで寛げるので、
時間を気にすることもありません。
鳥取の窯元の器がさりげなく棚に並んでいるのも興味深いです。
炭火焙煎のオーガニックコーヒーは、
地元の窯元・中井窯の器でいただけるのも嬉しいサービスです。


絶品パンケーキとドリンクのセットは¥980。
カフェの隣りにショップもあるので、
プリンやバウムクーヘン、シフォンケーキなどはお持ち帰りができます。
そして卵も売っています。
建物の回りでは、愛嬌あるヤギが出迎えてくれたり、
ユーモラスなかかしがのんびり立っていたり。
ふらっと散策しても楽しいところです。

卵の味が力強い「ロールケーキ」(ドリンクセット¥700)も人気。

コクのある卵のお菓子はお土産にも喜ばれそう。
鳥取といえば、砂丘。
誰もが知っている(はず)の鳥取県を代表する観光名所です。
その砂丘のすぐ近くに、砂をテーマにした美術館があります。
はてさて、砂の作品とは?
実物を観ないと、ピンとこないかもしれませんが、
ここには、砂だけでできた彫刻作品である「砂像」が展示されています。
まるで体育館のような(いやもっと広い)天井の高い館内に、
巨大な砂像群がどーんと設置されています。
実際に目の前にすると、かなりの迫力があります。
例えば過去にはアンコールワット、バッキンガム宮殿、兵馬俑、などなど!
(※展示作品のテーマは時期によって変わります)。
有名建築物や世界遺産などが砂像で表現されていることも多く、
作品に近寄って見てみると、あまりに緻密で精巧な様子に
「これ本当に砂だけでできてるの?」とびっくりするのですが、
本当に砂だけだそうです。

砂像作品は1年毎に内容ががらりと変わります。
砂なので、会期が終わったら崩して、また新たに別のものを作ります。
毎年テーマを決めて、プロデューサーがその年にちなんだ内容を考えるのだそうです。
総合プロデューサーの茶圓勝彦氏は、砂像彫刻家として世界各国で活躍している人。
粘りの強い砂を使い、しっかり水で締め、型枠にはめて、まずは土台を作ります。
約8か月に渡る長い展示に耐えられるよう、土台作りは大切な行程です。
そして砂像の彫刻は、茶圓氏をはじめ、
イタリア、ロシア、アメリカ、中国、シンガポールなど、
世界のさまざまな国から集められた彫刻家によって作られます。
それぞれ作った人の個性も少しずつ表れていて面白い。
一部の作品は公開制作として、会期中にも制作の過程を見ることができます。

屋外にもいくつか作品展示があり、公園のような緑の小道を散策していると、
木の陰にちょこんと、小さな砂像を見つけたりします。
野外スペースは見晴らし良い高台になっており、
坂を上った展望台からは本物の砂丘、そして日本海が一望に見渡せます。
ドリンクなどを頼めるちょっとした休憩スペースもあり、
天気の良い日はここでただぼぅーっと寛ぐのもよいと思います。

ちなみに、砂の美術館に隣接しているお土産屋さんはなかなか充実していて、
砂丘のポストカードやピンバッジなどのオリジナルグッズの他に、
鳥取産の食品やお菓子、お酒などが品揃え良く販売されています。
鳥取の代表的農産物、らっきょうを漬けたものも種類豊富だったり。
オリジナルでは「砂チョコ」という不思議な食感のチョコレートもあります。
併せて覗いてみてください。
information

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鳥取砂丘 砂の美術館
住所 鳥取県鳥取市福部町湯山2083-17
TEL 0857-20-2231
開場時間 9:00〜20:00(最終入場19:30)
入場料 一般 600円 小中学生 300円
(20名以上の団体の場合は、一般 500円 小中学生 200円)
http://www.sand-museum.jp
鳥取駅から長く伸びるメインストリート、若桜街道の道沿いにあるお蕎麦屋さん。
といっても外から見ると蕎麦屋らしからぬ外観です。
古材と波板ガラスを使いながらもモダンな雰囲気で、
店内はコンクリート打ちっぱなしに木の家具を合わせ、音楽はジャズがかかっています。
地元の内装デザイン会社、工作社が手がけたものだそうです。
蕎麦、とあまり身構えることなく、誰でも気軽に入りやすい雰囲気です。

元々和食店で修行していたという店主の川口正之さん。
鳥取には蕎麦屋さんがあまりないし、
自分は何かひとつに絞るほうが向いている、と蕎麦一本で勝負することに。
メニューはシンプルに、
殻付きで蕎麦の香りが高い、いわゆる田舎蕎麦を「黒」、
殻を取った繊細で滑らかな食感のものを「白」と呼んでいます。
どちらも粗挽きで、蕎麦らしい風味を大切にしています。
材料にはこだわりがあり、本日の蕎麦粉が黒板に書かれています。
産地は毎度変わりますが、
できるだけ山陰のものを使いたいと思っているそうです。
鳥取県日南町の蕎麦粉は特に気に入っているそうで、
開店以来ずっと使っています。
打った蕎麦はしばらく置いて落ち着かせます。
そのほうが香りが立ち、しっとりと水分が回り、
火の入りが均一になるのだそうです。
2階に上がると、電動の石臼が蕎麦を挽いている様子を
ガラス越しに見ることができます。
そして器使いがとてもかっこいいです。
鳥取の窯元、岩井窯の器を使っています。ザルは長野の根曲がり竹を編んだもの。
それらが折敷に乗って、凛とした風情で出てきます。
川口さんは昔から岩井窯の器が好きで、
お店をやるならぜひ使いたい、と思っていたそうです。

そしてここ、蕎麦はもちろんですが、夜のおつまみメニューも魅力的です。
豆腐の味噌漬けやへしこ、玉子焼き、油揚げの炙り焼きなど、
心惹かれるラインナップです。
日本酒も鳥取産で、ひとつひとつ個性の違うものを揃えているそうです。
この空間や器を楽しみつつ、地元のお酒と一緒にちびちびやって、
最後に蕎麦で締める、それだけでもう、大満足です。
information

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手打蕎麦 かわぐち
住所 鳥取県鳥取市栄町204
TEL 0857-30-5705
営業時間 11:00〜14:00、18:00〜21:00 (日曜は11:00〜14:00のみ) 月曜休
柳宗悦が興した民藝運動。
無名の工人が作った、日常使いの手仕事の道具に「用の美」を見い出し、
芸術品ではなくとも、美しい暮らしができることを、
世の中に広く伝え、実践していった運動です。
そんな柳氏の活動に感銘を受けた医師が、鳥取におりました。
吉田璋也は耳鼻咽喉科として開業する傍ら、
民藝運動に深く関わり、地元の腕の良い作り手を探し出して、
制作のアドバイスを行っていました。
今でいう、クリエイティブディレクター、プロダクトデザイナー、総合プロデューサー
といったところでしょうか。

そして1949年、ついにこの美術館をオープン。
ここの美術館の大きな特徴は、ただ展示品を観るだけでなく、
民藝の道具を使って食事を楽しめる割烹と、それらを買えるショップが
隣りに並んで建っていることです。
実際に道具の使い心地を確かめ、設えた空間を体感し、
道具を家に持ち帰って普段の暮らしの中で活用することができるという、
実践型の美術館なのです。
こういう美術館を作ったのは日本で初めてのことでした。


こじんまりとした展示室は、お家のような居心地良さがあります。
全国、及び海外からも集められた民藝の品々は、
古いものが多いですが、今観ても新鮮で、数々の発見があります。
さらに、グラフィカルな窓枠や、小洒落た木製の電気スイッチカバーなど、
室内の隅々まで吉田氏がデザインしているので見逃せません。
展示内容は年2回入れ替えをし、地元の作り手が実際に作品に触れつつ、
陳列のお手伝いをするそうです。


展示室を観たあとは、並びの「たくみ割烹」でお食事を。
地元の食材にこだわり、
鳥取の特産物である松葉ガニや岩牡蠣、鳥取和牛などを楽しめます。
また、吉田氏が考案したメニュー「すすぎ鍋」は、
しゃぶしゃぶのルーツといわれています。
バーナード・リーチがお気に入りだったというカレーもあり、
ルーの中に味噌が入っているのが、どうやらリーチ氏の考案だそうです。
室内の調度品も器も、全て民藝の品を使っています。
そして最後は「鳥取たくみ工芸店」でお買い物。
山陰のものを中心に、全国各地の民藝の道具が集まっています。
手頃な値段で、丁寧な手仕事の道具を手にすることができます。
特に器は種類が多く、普段使いによい、実用的なものが揃っています。
information

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鳥取民藝美術館
住所 鳥取県鳥取市栄町651
TEL 0857-26-2367
開館時間 10:00〜17:00(水曜休 祝日の場合は開館、翌日休)
入館料 一般 500円 大学生 300円 70才以上・高校生以下無料
鳥取市内の中心地、駅から県庁のほうへまっすぐ向かう商店街の途中、
真ん中辺りを小さな川が流れています。
程よく自然が残され、川の辺をぶらぶら歩くにも気持ちいいところ。
その川沿いに並ぶ、黄緑色に塗られた建物の2階に
おいしいベーグルを食べられるカフェがあります。
建物脇にある、目立たない細い階段を上がると、大きなフクロウの木彫りがお出迎え。
扉の向こうのガラス越しに、お行儀良くベーグルが並んでいるのが見えます。
店名「森の生活者」は、
店主が大好きなヘンリー・デイビット・ソローの本「孤独の愉しみ方」
のサブタイトルから取りました。
本の内容に共感したこと、
自然を感じさせる店名にしたかったこと、
そして店主の名前にも“森”がつくことから、
この名前になりました。


元々パンが好きでパン屋で働いていたという店主。
鳥取にはベーグル屋さんがなかったからと、ベーグルに絞ったお店をすることに。
全粒粉のシンプルなベーグルから、くるみ、クランベリー、ブルーベリー、
あんバターやクリームチーズの挟まったもの、
ハム、チーズを挟んだクロックムッシュなど食事系のものなど
さまざまな種類があります。
表面はサクサク、中はもっちりふかふかで軽い食感のベーグルです。
飲み物にもこだわり、コーヒーは神戸のお気に入りの豆を使って、
ハンドドリップで一杯一杯丁寧に淹れています。
テイクアウトもできますが、
店内の窓際のカウンターテーブルに座ると、
川の流れとのどかな散歩道を見渡すことができて、なかなか良い気分です。
冬は雪景色、春は桜並木を眺めることができます。
店内には古い本棚があり、店主の趣味で集まった本がずらっと並んでいて、
自由に閲覧できます。
ひとりで訪ねても気兼ねすることなく、ゆったりと寛いで過ごせます。

やりたいことがまだまだいっぱい、という店主。
近所の仲良しカフェや雑貨屋さんと共同で「森鳥カルン」という
楽しいフリーペーパーを作ったり、
駅前の商店街で月に1度行われる朝市「お袋市」などのイベントに参加したり。
まちの中に人と人との緩やかなよいつながりがあって、
日常的に楽しめるような、
普段の暮らしに根づいたイベントを開催できたら嬉しい、とのこと。
これからも色々楽しいことを計画中だそうです。
information

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ベーグル喫茶 森の生活者
住所 鳥取県鳥取市弥生町103-2F
TEL 0857-50-1170
営業時間 9:00〜18:00 火曜休
昔話の絵本の中にでも出てきそうな、
山と田んぼに囲まれた、小さな一軒の窯元。
田んぼのあぜ道を抜け、ちょっと高台を上ったところで振り返ると、
一面に広がる田園風景は、清々しく気持ちがいいものです。

延興寺窯の山下清志さんは、
民藝運動のメンバーでもある河井寛次郎に師事していた陶芸家・生田和孝の元で学び、
その後、兄の山下碩夫氏と共に、
地元に古くからある浦富焼の復興に務めました。
そして1979年に独立して自身の窯を持ち、作陶しています。
カップや茶碗など、日常に気兼ねなく使える、肩肘張らない健やかな器で、
白、黒のシンプルな色合いが中心です。
料理が映えやすい、自然で落ち着いた質感の色合いです。
無駄のないすっきりしたフォルム、手で持ったときの収まりやすさも魅力です。

土は地元のものを採取、といっても家から徒歩2、3分くらいのところで、
自然なまま伸び放題の草むらをざくざく抜けていくと、
壁にぽっかり穴の開いた、小さな採掘場があります。
あれれ? というくらい、こじんまりとしていますが、
材料にするには十分なくらい、まだまだたくさんあるそうです。
地層を調べてもらったところ、びっくりすることに、
1600万年前くらいの土らしい、とのこと。
沖縄・読谷村の北窯へ弟子入りしていた三女の裕代さんも、
鳥取に戻ると一緒に作陶を始め、
親子で展示を行うことも多くなってきました。
控えめでもの静かな風情の裕代さんでしたが、
清志さんと一緒にいると、いつの間にか親子漫才になっているとか。
同じ土で同じように作っていても、
きりっと端正な印象の清志さんの器に対して、
裕代さんの作るものはどこか柔らかく女性的で、
沖縄の大らかさがほのかに表れていたり。
親子のそんな微妙な違いを感じられるのも、器選びの楽しさです。

工房の壁には毎年ツバメが巣を作り、かわいいヒナがかえるそうです。
(狙いにくるヘビもいるそうで、危ない危ない!)
近くにたぬきがひょっこり現れたりして、
のどかでほのぼのとした時間が流れている、穏やかな場所です。
information

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延興寺窯
住所 鳥取県岩美郡岩美町延興寺525-4
TEL 0857-73-1219
時間 9:00~18:00 不定休(訪問時は要連絡)
鳥取市は県庁所在地でありながら、温泉地でもあります。
公衆浴場や温泉旅館も多く、JR鳥取駅から徒歩圏内にぽつぽつ点在しています。
市街地に温泉があるのは、全国でもなかなか珍しいそう。
「こぜにや」も駅からほど近い、住宅街の中にあります。
家やマンションが建ち並ぶ中に、ふと現れるので、ちょっとびっくりします。
でも館内に入ると、
まちの中心であることを忘れてしまうくらい、静かで落ち着いた雰囲気です。

建物にぐるりと囲まれた中庭には、趣向を凝らした大きな池があり、
ロビーからもよく見渡せます。
ロビーとちょうど反対側に、法隆寺の夢殿をイメージするような
情緒ある八角円堂の湯殿があります。
お風呂は6種類あり、檜造り、岩造りの大浴場と、
露天風呂、貸し切りの家族風呂などがあります。
源泉に何も手を加えていない、掛け流しの天然温泉です。
大浴場と露天風呂は、宿泊でなくとも、立寄り湯として利用できます。

客室は鉄筋造りのモダンなタイプと、木造造りの純和風タイプの2種類があります。
ひと部屋ひと部屋それぞれ造りが違い、同じ部屋はありません。
こぜにやの創業は江戸末期より、180年の歴史ある旅館。
離れの特別室、宝殿は、古い調度品や波板のガラスなど、
昔の旅館から引き継いでいるものがあります。
窓の外に見える日本庭園も味わい深く、和みます。

料理もボリュームたっぷりで、
日本海の海の幸、鳥取和牛など地元の特産物を使って、
素材を生かした丁寧な料理を心がけているそうです。
冬の味覚、松葉ガニを使った「カニ会席」もあります。
宿泊ではない食事だけの利用も可能です。
外から見ると、ちょっと不思議な建物。
空想の世界のような、まるでジブリの映画にでも出てきそうな、
古いものと新しいものをミックスさせた、のほほんとユニークな外観です。
古い建物部分は、元々あった鳥取県立図書館を復元し、レトロな風情を残したもの。
珍しい建物なので、建築に携わる人が見に来ることもあるそうです。
建物横には遊んだり寛いだりできる広い芝生とベンチがあって、
木には山桃のような実がなっていました。
外壁に面したレリーフは1時間毎に時計の蓋がくるりと回転して、からくり時計が登場、
中からクマやうさぎや金太郎、大黒様などが出てきて音楽を演奏します。

館内は1階が主に童謡と唱歌、2、3階がおもちゃをテーマにしています。
まず1階を覗いてみると、昔の学校の教室や廊下、下駄箱など、
まるで舞台のセットみたいに、そっくりそのままの空間が再現されていました。
教室の机には落書きが掘ってあったり、
引き出しを開けるとアルミのお弁当箱が入っていたり、
細かいところまで凝っています。
昭和15年、と書かれた古い足踏みオルガンは今も現役で、
矢絣の着物を着た“先生”と一緒に
教室で唱歌を唄う「唱歌教室」は、人気だそうです。


学校の奥には鳥取の音楽家たちを紹介する部屋があり、
田村虎蔵、永井幸次、岡野貞一という3人の音楽家たちが登場しています。
名前だけ聞くとピンとこないのですが、田村虎蔵は金太郎、永井幸次は七夕の作曲、
そして岡野貞一は「春の小川」や「ふるさと」と聞けば、
歌を思い出す人も多いかもしれません。
さらに次の部屋は童謡について収集した展示コーナー。
昔の童謡雑誌やレコードなどが並んでいて、
レトロでかわいいイラストや素朴なデザインに胸がきゅんとします。
そしてなんとカラオケコーナーまで!
子どもが遊ぶためと思いきや、熱唱しているお母さんお父さんも多いそうです。

2階は子どもたちが遊べるおもちゃ体験スペース、
そして3階は世界のおもちゃが一同に集まった迫力のコレクションスペース。
約2000点のおもちゃが展示されているそうです。
乗り物、人形、動物、ヒーローもの、などテーマ毎にコーナーが作られており、
各時代の懐かしい玩具がいっぱいで、自分のツボを見つけてしまうと、
つい夢中になって眺めてしまいます。
鳥取の素朴な郷土玩具を集めたコーナーや、
鳥取出身の漫画家・水木しげるのゲゲゲの鬼太郎のおもちゃを集めたコーナーもあります。
着せ替え、こま回しなど、おもちゃを使って遊ぶ体験もでき、
時間を忘れ、童心に帰って楽しめるミュージアムです。

information

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童謡・唱歌とおもちゃのミュージアム わらべ館
住所 鳥取県鳥取市西町3-202
TEL 0857-22-7070 FAX 0857-22-3030
営業時間 9:00~17:00(最終入館は16:30まで)
休館日 毎月第3水曜日(祝日の場合は翌日)、年末・年始(12月29日~1月1日)
入場料 個人:大人 500円 団体(20名以上):大人 400円 外国人旅行者:大人 250円
※高校生以下の方、障がい者・要介護者とその介護人は無料です。
http://www.warabe.or.jp
鳥取県、奥地へ行くほど思いがけない素敵な場所が見つかったりするのですが、
ここはもう兵庫や岡山の境目あたり。まわりは山と森しかありません。
秘境といってもいいかもしれません。
さらさらと川が流れ、放し飼いのにわとりたちが、辺りをひょこひょこお散歩しています。入り口の門をくぐると、自然の野花がうららかに咲く小道の先に、
時代劇のような藁葺き屋根の家々が見えてきます。
家の中には囲炉裏があって、火を焚いた煙で屋根の藁を燻しています。
小道の奥ではたくさんの枝を立てかけて椎茸の栽培が行われていました。
ちょろちょろ流れる小川の中には石で囲いを作って、ラムネを冷やしていたり。
昔ながらの素朴な日本の暮らしがあちこちに感じられ、
まるでタイムスリップしたようです。


ふとしたところに、こんな風情ある光景が。
そんな古き良き日本を体感しながら、
気持ちよい景色の中でお食事ができます。
藁葺き屋根の鄙びた古民家の中で頂くのも味わいがありますし、
川沿いに点々と建てられた小さな川床で、
川の流れと緑の木々を眺めながらいただくのもいい気分です。
うど、ぜんまい、わらび、たけのこなど、季節の山菜をふんだんに使った手作りの料理で、
豆腐は朝から豆を挽いて作り、
わずかしか採れない天然のわさび、3年熟成の自家製味噌、
川で採れたヤマメやニジマス、山で仕留めたキジやイノシシなど、
自然の恵みがたっぷり。
さらに自分たちで育てた酒米を使って、
地元の酒蔵に仕込んでもらったという特別なお酒が、
キーンと冷やされた竹筒に入って出てきたりするのですから、ますます食が進みます。
食後に園内を散策していると、女将さんに声を掛けられ、
石臼で挽いたばかりのきなこをまぶした、ぷるぷるの草餅まで出していただき、
お腹いっぱいなのにぱくりと平らげてしまいました。

敷地の奥まで歩くと、山合いから静かに滝の流れる、気持ちの良いスポットがあったり、
その抜群の景色をぼおっと眺めながらお茶できるログハウス風のカフェがあったり。
ただぷらぷらと散策し、のんびり気ままに過ごしていても楽しい。
日頃の疲れがすうーっとほぐれます。
入り口には小さな売店があるので、ほかほかの田楽や手作りの味噌、野菜やお菓子、
地元の工芸作家の作品など、お土産にいいものを持ち帰りましょう。


カフェでちょっとコーヒーでも。緑に囲まれ時間がゆったりと流れます。
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山菜料理 みたき園
住所 鳥取県八頭郡智頭町芦津277
営業時間 8:00〜17:00(食事は10:30~)
※要予約(電話にて)
不定休
開園:毎年4月1日
、閉園:毎年12月上旬・積雪の時期まで
予約・お問い合わせ
[昼] TEL.0858-75-3665
[夜] TEL.0858-75-3311
http://www.mitakien.com/
鳥取砂丘から兵庫県の県境のほうへ向かっていくと、
浦富海岸という、有名なリアス式海岸があります。
「山陰の松島」とも呼ばれ、断崖絶壁、洞窟や奇石など、
ダイナミックで美しい景観が見ものです。
その海岸からもほど近い場所にぽつんと一軒建っている、かわいらしい建物。
建物の脇には薪がたくさん積まれています。

店名のTORJOURSとは、フランス語で「永遠に、まだ、ずっと」などを意味する言葉。
その言葉通り、店主の稲木稔さんは日々コツコツとお菓子を作り、
真摯にお菓子と向き合っています。
「自分が本当においしいと思っているものを出せるようにしたい。
フランスの文化から学んだもの、いいものを作っている生産者から受け取った素材、
そして山陰という風土。それらを生かし、伝えていきたい」と語ります。
お店のロゴマークである天秤は、店内にも同じものが飾られています。
フランスで見つけてきたアンティークだそうです。
稔さんは天秤が好きで、理由は「人生もお菓子もバランスが肝要だから」と。

店の脇に置かれたたくさんの薪は、ガトー・ア・ラ・ブロッシュを焼くためのもの。
フランス・ピレネー地方の郷土菓子で、バウムクーヘンの原型と言われています。
長い棒をくるくると回し、生地を巻き取りながら時間をかけてゆっくりと焼いていきます。
薪の火力によって表面はパリッと、そして中はしっとりに仕上がるそうです。
でこぼこといびつな形に仕上がるのも面白く、
かりっ、ふわっ、と様々な食感が口の中で混じり合い、
粉とバターの豊かな風味がじんわりと広がります。おいしい!
ケーキは素材と季節感を大切にし、ブラックベリー、フランボワーズ、杏など、
店の回りで育てているものもあります。
鳥取ではなかなか手に入れることができない果物で、冷凍物よりおいしいから、
と自分で育てることにしたそうです。
採れたてのフランボワーズは甘みがぎゅっと詰まっていて、力強い味がしました。

生菓子、焼き菓子、コンフィチュール、そして不定期ですがパンも作っています。
(土日はあることが多いそうです)。
かまどでしっかり焼かれたパンはなかなかの人気で、
大きなカンパーニュを丸ごと買っていくお客さんもいるそうです。
毎日食べても飽きない、食事パンが中心です。
日本酒造りをヒントに、フランスの小麦で酵母を起こし、
それを使ってパンを焼いているそうです。

お店の中にはカウンター式のイートインスペースがあるので、
たくさん積まれた薪や、外の自然を眺めながら、ちょっと一休みできます。
コーヒーや紅茶にもこだわり、オーガニックのものを使っています。
回りはなんにもないけれど、ここへ来ておいしそうなお菓子たちに出会うと、
ほくほくと幸せな気持ちになれます。

平日でもひっきりなしにお客さんが訪れ、ケーキは午後になると売り切れも続出。
周りは延々とひたすら続く、森と山と田園風景。
人里離れた山奥深くに、ふと現れる瀟洒な佇まいのお屋敷。
広々とした敷地に、ぐるりと回廊で囲まれた建物は、異国情緒に溢れ、
スペインの古い教会か、はたまた中国の四合院か、
空想の世界にいるような、不思議な趣が感じられます。
中庭の真ん中には、大きな睡蓮鉢に蓮の花が、
ふわりとピンクのあでやかな花びらを広げていることもあり、
一層、夢見心地な気分になります。
岩井窯の山本教行さんは、鳥取の民藝運動のリーダー、吉田璋也氏、
そしてバーナード・リーチ氏に出会って感銘を受け、
陶芸を志します。
島根の出西窯で修行し、1971年にこの地で窯を開きました。
岩井窯の器は、飾っておいても十分に嬉しい器ですが、
日々使うことでより深い味わいを感じることができます。
洋の東西を問わず、世界各国からさまざまなインスピレーションを受けた、
どこにもない独特の風合いの器です。
飄々と描かれた模様に、どこかユーモラスな愛嬌があり、
素朴でどっしりとした耐熱の器に、心強い安心感を感じます。
「作品それ自体はもちろん、その器にまつわるストーリーや、
展示空間を丸ごと味わってもらい、より多くの思い出を持ち帰って欲しい」
と山本さんは語ります。



せっかく遠くまで来ていただいたのだから、できるだけ楽しんで行ってくれればと、
敷地内には、山本さんのコレクションを展示した参考館や、
喫茶、食事処もあります。
参考館では世界各国から集めた手工芸品や、
山本さん自身の過去の作品を拝見することができます。
企画展やイベント、コンサート等が開催されることもあるそうです。
「喫茶 HANA」では、
素材を吟味して丁寧に作られた手作りのお菓子や軽食を
岩井窯の器で楽しむことができます。
趣味良く整えられた、素朴な部屋のインテリアにも心惹かれます。
「食事処 花」は、一日一組の予約制。
地元の食材をふんだんに使った贅沢な料理で、
岩井窯の器を中心に他のものも組み合せてコーディネートされ、
器使いの参考にもなります。
旅人へのおもてなし心があちこちに感じられ、一日いても飽きない場所です。
時間を忘れてゆっくり過ごしてみてください。
