日々の暮らしに心地よい、丁寧な手仕事の器。
昔話の絵本の中にでも出てきそうな、
山と田んぼに囲まれた、小さな一軒の窯元。
田んぼのあぜ道を抜け、ちょっと高台を上ったところで振り返ると、
一面に広がる田園風景は、清々しく気持ちがいいものです。

延興寺窯の山下清志さんは、
民藝運動のメンバーでもある河井寛次郎に師事していた陶芸家・生田和孝の元で学び、
その後、兄の山下碩夫氏と共に、
地元に古くからある浦富焼の復興に務めました。
そして1979年に独立して自身の窯を持ち、作陶しています。
カップや茶碗など、日常に気兼ねなく使える、肩肘張らない健やかな器で、
白、黒のシンプルな色合いが中心です。
料理が映えやすい、自然で落ち着いた質感の色合いです。
無駄のないすっきりしたフォルム、手で持ったときの収まりやすさも魅力です。

土は地元のものを採取、といっても家から徒歩2、3分くらいのところで、
自然なまま伸び放題の草むらをざくざく抜けていくと、
壁にぽっかり穴の開いた、小さな採掘場があります。
あれれ? というくらい、こじんまりとしていますが、
材料にするには十分なくらい、まだまだたくさんあるそうです。
地層を調べてもらったところ、びっくりすることに、
1600万年前くらいの土らしい、とのこと。
沖縄・読谷村の北窯へ弟子入りしていた三女の裕代さんも、
鳥取に戻ると一緒に作陶を始め、
親子で展示を行うことも多くなってきました。
控えめでもの静かな風情の裕代さんでしたが、
清志さんと一緒にいると、いつの間にか親子漫才になっているとか。
同じ土で同じように作っていても、
きりっと端正な印象の清志さんの器に対して、
裕代さんの作るものはどこか柔らかく女性的で、
沖縄の大らかさがほのかに表れていたり。
親子のそんな微妙な違いを感じられるのも、器選びの楽しさです。

工房の壁には毎年ツバメが巣を作り、かわいいヒナがかえるそうです。
(狙いにくるヘビもいるそうで、危ない危ない!)
近くにたぬきがひょっこり現れたりして、
のどかでほのぼのとした時間が流れている、穏やかな場所です。
information
延興寺窯
住所 鳥取県岩美郡岩美町延興寺525-4
TEL 0857-73-1219
時間 9:00~18:00 不定休(訪問時は要連絡)
