odekake
posted:2013.7.11 from:鳥取県 genre:旅行
〈 おでかけコロカルとは… 〉
一人旅や家族旅行のプラン立てに。ローカルネタ満載の観光ガイドブックとして。
エリアごとに、おすすめのおでかけ情報をまとめました。ぜひ、あれこれお役立てください。
editor’s profile
Kaori Ezawa
江澤香織
えざわ・かおり●神奈川生まれ、東京在住。フリーライター。友人に誘われふらっと訪ねた鳥取の旅で、その良さに感動し、以後、山陰と深く関わることに。「山陰旅行 クラフト+食めぐり」(マイナビ)著者。食、旅、クラフト等を通じて、日本文化とものづくりを応援。
credit
撮影:上原朋也
取材協力:鳥取県
鳥取砂丘のある海沿いから、どんどん内陸に車を走らせていくと、
回りはすっかり山と田畑に囲まれた、緑濃い静かな農村地帯へと景色が変わっていきます。
単線のローカル列車がのどかにコトコト走っていたり、
きれいな川や果樹園の横を通り過ぎたり、
朝方は濃い霧が立ちこめて水墨画のようだったり、
冬は雪に覆われ一面銀世界だったり。
目を見張るような風景が次々に現れ、車窓を眺めていても飽きることがありません。
太田酒造場があるのは、そんなローカル線の終着駅近く、
若桜と書いて“わかさ”と読みます。
兵庫県と岡山県に隣接する、鳥取の中でも特に奥地のほう。
歩いてすぐ一周できるくらい小さなまちには、
まだ古い家もたくさん残っていて、情緒が感じられます。
太田酒造場は、主に家族で営んでいる小さな酒蔵。
仕込みは杜氏を中心に3人で行います。
農家さんをとても大切にしていて、
使うのは全て地元若桜町で収穫された酒米です。
春には自分たちでも田植えをして、酒米を作っています。
お米の種類(山田錦、五百万石、強力、玉栄、鳥姫など)ごとに、
また、同じ種類のお米でも、生産農家が違えば別々のタンクに仕込んで、
ブレンドせずに出荷されています。
なので、酒瓶のラベルの裏には農家さんの名前も紹介されています。
もろみを搾るのは槽搾りといって、見た目はお風呂のような、
中はステンレスだけど柿渋を塗った木枠の槽に、もろみを詰めた酒袋をどんどん載せ、
昔ながらの方法で、ぽたぽたゆっくり搾ります。
酒造りに大忙しな冬の季節は、3人では人手も足りないかと、
この蔵のファンだという一般の人が休みを返上して駆けつけ、
嬉しそうにお手伝いしていることもあります。
建物は築100年以上経っているそうで、天井を見上げると立派な梁があり、
造りには昔ながらの蔵らしい知恵があちこちに見られます。
急な木の階段を上った2階は蒸し立てのお米を冷ますところで、
冷たい風が来るようにと、北側に窓が開いています。
奥には昔蔵人さん(お酒を造る人)が寝泊まりしていたという部屋が残っており、
資料室として古い道具がたくさん納められていました。
狐桶と呼ばれる、先が細くなって狐の顔のようなかたちをした木桶
(もろみを酒袋に移すための道具)など、珍しいものを見かけます。
ここのお酒は全て純米酒で、しっかりとお米そのものの味が感じられます。
ふくよかでコクの深い、うまみのあるお酒だと思います。お燗で飲むのもおすすめ。
お米の種類毎に味比べをするのも楽しいです。
強力、玉栄、鳥姫などは鳥取ならではの酒米です。
冬には酒粕を販売していることもあり、
できたての板状の酒粕を少し炙っていただくのもたまりません。
また、蔵では酒粕を使った奈良漬けも作っており、
やはり地元産の大根やきゅうりを使い、
2年掛けて7回酒粕を漬け替え(きゅうりは6回)熟成し、
手間暇掛けて作られています。材料は酒粕と塩のみ。
奈良漬け蔵の中で、漬け終わった酒粕をちょこっと味見させてもらったところ、
塩と野菜の出汁が染み込んで、まろやかないい味になっていました。
漬けた粕でさえおいしいのだから、そんな奈良漬けがおいしくない訳がありません。
いつも人気であっという間に売り切れてしまうのだそうです。
information
太田酒造場
住所 鳥取県八頭郡若桜町若桜1223-2
TEL 0858-82-0611 FAX 0858-82-0612
http://www1.ocn.ne.jp/~bentenmu/
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