被災地・珠洲市にできた 小さなホテル〈notonowa〉 海と田んぼが見渡せる場所で 移住者が運営

古いモーテルのリノベーションをきっかけに
ノマド生活から珠洲に土着する暮らしへ

能登半島地震から半年が経った2024年7月1日。
被害が大きく、復旧作業が遅れる能登半島の先端、珠洲市に、
客室は7部屋だけという小さなホテル〈notonowa〉がオープンしました。
運営の中心となっているのは、能登に住みはじめてちょうど1年になる移住者です。

〈notonowa〉があるのは珠洲市の海沿い。
内浦である飯田湾を臨む、少しだけ高い場所に建っています。
道路を挟んで、若い稲が風に揺れる田んぼ、
そして穏やかな海が広がる見晴らしのいい場所です。
冬の空気が澄んだ日には東側に立山連峰も見えます。

ホテル〈notonowa〉

ホテル〈notonowa〉の裏

裏に回るといっそう建物の歴史が感じられます。

〈notonowa〉の建物はかつてモーテルとして使われていました。
L地形の建物の裏に回ると、1階部分が駐車スペース、2階部分が客室だとわかり、
独特のスタイルに少しドキッとします。

入り口も駐車スペース側にひっそりとあり、フロントはなくタブレット端末でチェックイン。
非対面式の採用は省人化だけでなく、建物の歴史を匂わせる目的もあるのだとか。

角部屋の「珠」。

角部屋の「珠」。窓からの景色は最高!

7部屋ある客室は、それぞれ能登や珠洲にまつわる名前がついています。
部屋のリノベーション案には金沢美術工芸大学の学生たちが参加。
「このホテルが地域に馴染むためには?」と問いかけてアイデアを出してもらいました。

「珠」という名前の部屋は、
珠洲が持つ洗練されたシンプルさとナチュラルな姿を見せることがテーマ。
一見白い壁紙も、右と左では模様が異なり、一方は波の模様が採用されています。
カーテンを開けると穏やかな海が見渡せる部屋にぴったりです。
また、一部の家具はこの場所で以前から使われていたものも活用しています。

カフェ〈惚惚(ほれぼれ)〉

建物1階ではカフェ〈惚惚(ほれぼれ)〉も営業を開始しました。
カレーや季節に応じたスープ、チャイなどスパイスを利用したメニューに加えて
地域の人たちが、集まる場所にしたいとお酒も用意。
車での移動が当たり前の地域なので
飲酒後は空いている客室に宿泊可能です。

珠洲の人たちが共有する恩送りの文化に触れて

改装工事前の様子。

改装工事前の様子。(notonowa提供)

建物は、モーテルの営業を終えてからずいぶん経っていて廃墟同然でした。
リノベーション計画が持ち上がったのは、2023年の春のことです。
そのとき建物のオーナーから声がかかったのが
現在ホテル運営を担当し、カフェの〈惚惚〉を経営する畠山陸さんです。

現在27歳の畠山さん。
20歳前後から出身地の札幌でゲストハウス立ち上げに関わったり
イベントでのカフェ出店をしたりしてきました。

その一方で、webのプログラミングやデザインの技術を身につけて
複数の地方拠点と東京を行き来。いわゆるノマド暮らしを実践していました。

ストレスで体調を崩した経験から、人間らしい生き方って?と考えていた頃
移住で珠洲に住む知人から
「君が探しているものはここにあるかもしれない」と
誘われ、初めて珠洲を訪れたのが2022年の夏です。

「最初は1週間ほどの滞在でしたが、
珠洲の人たちはとてもよくしてくれました。
いろいろ手配をしてくれたり、人を紹介してくれたり、野菜をたくさんくれたり。
お世話になったお返しがしたいというと、
『自分ではなくて子や孫の世代や、次に珠洲に来る人にしてくれたらいい』。
ほとんどの人にそう言われました」

畠山陸さん

畠山陸さん。ホテルとカフェ運営の傍で珠洲の発信にも意欲的。

土地の人たちが持つ、代々に渡って助け合い続ける文化は、
本州に比べると歴史が浅い札幌で育った畠山さんにとって
それまで触れたことがなかったもの。

金銭的な利益追求一辺倒とは異なる暮らしぶりに惹かれ
繰り返し訪れるうちに伝統ある祭りや工芸品の魅力にも気づきました。
知り合いも増えてリノベーションホテルの計画に参加しないかという声もかかったのです。

〈Satologue〉 奥多摩の沿線を丸ごとホテルに。 レストラン・サウナが先行オープン!

地元の自然を目一杯生かしたレストラン&サウナ

東京の避暑地であり、夏になると深い緑が生い茂り、
太陽の光を含んでキラキラと輝く渓谷が美しい奥多摩。

ここに2024年5月16日、沿線全体をホテルに見立てる
地域活性化プロジェクト〈沿線まるごとホテル〉の一環で、
プロジェクトの中核となる施設 〈Satologue(さとローグ)〉の
レストラン及びサウナが期間限定特別サービスメニューでオープンしました。

〈沿線まるごとホテル〉とは、
地方創生事業を手掛ける株式会社さとゆめ
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が出資する〈沿線まるごと株式会社〉による、
駅とその周辺の集落に点在する地域資源を”編集”し、
地域全体を”一つのホテル”に見立てる世界観をつくりだすプロジェクト。

〈Satologue〉

photo by Daisuke Takashige

その第1弾となる〈Satologue〉は、過去にこの地が林業で栄え、
養魚場が営まれていた背景を引き継ぎ、歴史・文化・自然や特産品、
人々の営みと地域資源の魅力を生かしたさまざまな体験をお客さまへ提供し、
「ふるさと」を感じる滞在体験の創出を目指していく施設です。
地域の新たな雇用創出も期待されています。

設計は、瀬戸内の宿泊型客船〈guntû(ガンツウ)〉
などを手掛ける堀部安嗣氏が担当。

レストラン〈時帰路(ときろ)〉

photo by Daisuke Takashige

「すでにそこに存在している宝物のような価値あるものに気づき、
それに囲まれているということを、訪れるゲストの方に感じていただきたい」
という思いのもと、土地の空気感と非日常を体験できる空間を設計。

レストランは、屋外と室内を極力隔てることのないよう、
古民家のフィールド側に大きな窓をデザイン。
床座である日本家屋の特徴を生かし、
窓に沿って床座のカウンター席が設けられ、
景色と一体感のあるつくりになっています。

発汗を重要視した薪サウナは、湿度と温度のバランスや、
サウナ小屋の壁といった表面温度と熱容量など、
より快適なサウナ体験ができるよう加味された本格派です。

堀部 安嗣

photo by Daisuke Takashige 
堀部 安嗣 1967年神奈川県横浜市生まれ。1990年筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒業。1991−1994年益子アトリエにて益子義弘に師事。1994年堀部安嗣建築設計事務所を設立。2002年第18回吉岡賞を「牛久のギャラリー」で受賞。2016年日本建築学会賞(作品)を「竹林寺納骨堂」で受賞。2021年2020毎日デザイン賞受賞。2007年−京都造形芸術大学大学院教授。2022年−放送大学教授。

限定コースを提供するレストランのランチ営業と、
宿泊者以外の方が使えるサウナを、
5月16日から宿泊棟開業までの期間限定オープン。

奥多摩の多彩なストーリーを詰め込んだレストラン

レストラン〈時帰路(ときろ)〉

photo by Daisuke Takashige

学生時代、共に料理を学んだ駒ヶ嶺侑太さんと高波和基さんが
都内から移住し、奥多摩のさまざまなストーリーを詰め込んだ
料理を提供するレストラン〈時帰路(ときろ)〉。

期間限定のランチコース

photo by Kazuhiko Hakamada

ここでは、奥多摩の自然を感じられる沿線ガストロノミー(*1)に、
フレンチのエッセンスを加えた期間限定のランチコースを提供。
宿泊棟開業後は、宿泊者のみに提供されるフルコースディナー相当を
ランチにアレンジした期間限定のお得なコースとなるそうです。

(*1) 沿線ガストロノミー:「ローカルガストロノミー」が、地域の風土、歴史、文化を
料理で表現することであるのにもとづき、
沿線地域の風土、歴史、文化を料理で表現する意味の造語

敷地内の養魚場跡地を再利用した畑

photo by Daisuke Takashige

そうだ 京都、行こう。 青紅葉が美しい夏の京都がくれる “癒し”をめぐる旅

JR東海で1993年からスタートしたキャンペーン
「そうだ 京都、行こう。」は今年で30周年を迎えました。
今ではすっかりお馴染みのCMですが、
今年は「京都がくれる癒し」をテーマに、女優の安藤サクラさんが登場。
青紅葉の美しい季節ならではの京都をぶらりと巡ってみませんか?

ここでしか体感できない空気を感じに〈蓮華寺〉へ

京都市左京区に位置する〈蓮華寺〉は、
江戸時代に洛中から現在の場所に再興された天台宗の寺院です。

安藤サクラさんがCMで青々とした青もみじを眺めながら座っているシーンで
話題となっているのは〈蓮華寺〉の池泉回遊式庭園。
本キャンペーンのキービジュアルとなったシーンは、本堂の方から書院を撮影しています。

書院からは柱を額に見立てて絵画のように庭園を眺めることはできますが、
本堂のほうからの撮影は禁止のためご注意を。

庭園の青もみじも美しいのですが、お寺は信仰の場所。
石組みや灯籠など、庭園にはどんな意味があるのかを学びつつ、
ここでしか感じられないお寺の空気を体感してみては。

information

蓮華寺

住所:京都市左京区上高野八幡町1

電話番号:075-781-3494

拝観時間:9:00~17:00

拝観料:500円

Web: 蓮華寺

〈カフェ・ドン バイ スフェラ〉

緑が豊かな遊歩道沿いにある〈スフェラ・ビル〉は、
2003年にスウェーデンの建築ユニットの設計により、
インテリアブランド〈スフェラ〉の発信拠点として、
既存のストラクチャーを総床面積1200平米に拡張し、リノベーションされたビルです。

緑道沿いの入り口から〈カフェ・ドン バイ スフェラ〉の店内へ。
スフェラオリジナルのファニチャーやインテリアアイテムなどが設置された
広々とした空間で、お茶や食事が楽しめます。

ドリンクは、お薄、煎茶やほうじ茶などの日本茶のほかに、
挽きたての豆をハンドトリップで淹れるコーヒーなどを提供。

フードは京都の銘店による上生菓子や和菓子、新鮮な野菜を使った軽食など、
季節のメニューが味わえます。

また、1階にある〈スフェラ・ショップ〉は、
個性豊かなクラフトから、最先端のコンテンポラリーデザインまで
魅力的なファニチャーやインテリア雑貨が並びます。
柔らかな空気が漂う空間は散歩途中に立ち寄るのにピッタリ。
ここでしか出合えない癒しを見つけに立ち寄ってみては。

information

カフェ・ドン バイ スフェラ

住所:京都市東山区縄手通り新橋上ル西側弁財天町17 スフェラ・ビル0F

電話番号:075-532-1070

営業時間:12:00〜19:00

定休日:水曜(臨時休業あり)

Web:カフェ・ドン バイ スフェラ

石川県小松市の秘境、 滝ヶ原町で開催される 音楽、食、アートの祭典〈ishinoko〉

美しい山々に囲まれたまち、石川県小松市の秘境・滝ヶ原町

地域の食や音楽、アートの祭典〈ishinoko〉は、
石川県小松市の秘境、滝ヶ原町で開催されている。
会場はのどかな場所で、自然を満喫しながら、
ローカルのおいしいものを食べたり、音楽やアートを体感できる。

オーガナイザーはイギリス、デンマーク、大阪とインターナショナルな若者たちで、
地元住民と一緒に楽しく過ごす姿を見ていると、
なんだか不思議な空間に感じる。

オーガナイザーの若者たちは、
滝ヶ原町の豊かな自然と地域コミュニティからインスピレーションを受け、
地域に暮らす若いアーティストやクリエイター、友人グループを集め、
独自の祭典を始めた。

簡易なテントと1台のステージから始まったishinokoは、
2023年に4回目を迎え、国内外から約520人の来場者を集める国際的な祭典となった。

2023年、ishinokoでの様子。

2023年、ishinokoでの様子。(写真提供:Hiro Yamashina

小松市・滝ヶ原町はもともと、採石、九谷焼、炭焼き、紙すき……、
さまざまな工芸文化と手仕事の生活が受け継がれ、
町民は米や野菜を自給し、隣人と助け合いながら暮らす地域。

豊かな自然と文化が息づくこのまちで行われている〈ishinoko〉とはどんなものか。
元来、地域と深く結びついているはずの「日本の祭りの精神」への
リスペクトから生まれた祭典。
目指すのは滝ヶ原町の自然と調和した未来の地域づくりだという。

保護猫との宿泊体験ができる複合施設が 大分・阿蘇くじゅう国立公園内に オープン

気に入った猫は譲渡を受けることも

大分県の〈阿蘇くじゅう国立公園〉内に6月21日、
保護猫との宿泊体験ができるユニークな複合施設
〈YUFUIN HOGONEKO FOREST〉がオープンしました。

運営するのは、自身も3匹の保護猫と暮らし、ジュエリーブランド〈Catton〉や
イタリアンレストラン〈ZORO〉などの運営の傍ら、5年に渡り保護猫活動を
行ってきた崔昌奎さん・梅崎尚子さん夫妻。

ふたりの「保護猫という存在をもっと多くの人に知ってほしい」という想いから、
4年の構想期間を経て、この複合施設が開業しました。

およそ8100平米もの広大な敷地には、レストランなどが入る本館とコテージが点在。

クヌギの木々に囲まれたコテージ。

クヌギの木々に囲まれたコテージ。

「森と猫のヒュッゲ」をテーマにつくられたコテージでは、
さまざまな理由で飼い主を失った保護猫たちとの宿泊が体験できます。

木の香りや温もりが感じられるウッディーなリビングには、
保護猫たちを愛でたり、まったりしたりする時間を
大切にしてほしいという想いから、あえてテレビは設置されていません。

キッチン完備のリビング。

リビングにはキッチンも完備。

ベッドが設えられたロフト。

ベッドが設えられたロフト。

そして、3重扉の向こうには、猫のための部屋が用意されています。

室内には、ソファや机、椅子も用意されているため、
猫に癒されながら仕事をすることもできます。

また、リビングにいるときでも猫の様子を愛でられるよう、
部屋の全面がガラスで仕切られているのも、猫好きには
たまらないポイントです。

明るい光が差し込む猫のための部屋。

明るい光が差し込む猫のための部屋。

保護猫と過ごす様子。

保護猫と思い思いの時間を過ごせます。

彼ら、彼女たちはどう表現した? 文化人が愛した船旅

船旅への愛情表現を通じて、船旅の楽しさを知る

1990年頃、バブルの影響もあって海外旅行への機運が高まっていた時代。
日本籍の大型客船が誕生し、クルーズ旅行は一部の富裕層のものから、
頑張れば手が届く憧れとなった時代でもある。
優雅で刺激的なクルーズ船旅は、数多くの文化人からも愛され、
クルージングを楽しむ様子は作品を通してうかがい知ることができる。

今回は5名の作家や脚本家、イラストレーター、フォトグラファーのエッセイや著作から、
船旅への愛情表現を紹介する。
詩的で独特な表現を通して、船旅の真のよさを感じてもらいたい。

物見遊山は楽しいけれど、移動は疲れるというのが旅ならば、
船旅は、旅にあって旅にあらずと言い切れます。
移動のあいだののんびりとした時空間、
浮き世の憂を、丸ごと全部陸に置いてきぼりにしてきてやったぞぉ、という快感! 
たまりません。
(宮部みゆき『波』掲載『なんでもありの船の旅』新潮社刊より)

ミステリー作家の宮部みゆきさんが〈ふじ丸〉に乗り、
小笠原クルーズを初体験した紀行文。
ふじ丸は2013年に引退し、2021年にはスクラップとなってしまっただけに、
今や貴重な体験記だ。
その内容はデラックスルームをひとり占めし、
クジラありカジノあり機関室見学から冷凍庫探険まで。
まさしく“なんでもありの”船の旅を軽快に綴る。

人には惚れてみよ、船にはのってみよ。
360度の水平線から登って沈む太陽、白い雲、青い海、
24時間変化に富んだ揺り籠。
たまらんです、たまらんです。
ああ、もう、乗りたい! 船が呼んでいる!
(杉浦日向子『杉浦日向子ベスト・エッセイ』掲載『日経おとなのOFF』より)

オシャレにもグルメにも美容にも収集にも興味がないという文筆家・杉浦日向子さんの、
唯一の道楽は「船旅」なのだとか。
ギャラの換算は、「船何泊分」で考えるというから筋金入りの船好きだ。
NHK『お江戸でござる』レギュラー撮りの関係で、
6日以内の国内ショートクルーズが多かったそうだが、
2度のがんの手術後に南太平洋クルーズへ出かけたという。
最期まで船を愛していた人柄が偲ばれる。

私はアラスカクルーズで船旅に目覚めてから、
郵船クルーズの「飛鳥」や
その後継船の「飛鳥」でよく船旅をするようになりました。
長い航海になると、乗った時は別々だった人たちが、
船を降りる頃にはたいてい長年の知り合いのようになっています。
つくづくクルーズは友だちをつくるにはもってこいの場だなと感じています。
(橋田壽賀子『旅といっしょに生きてきた』祥伝社刊より)

夫婦で船に乗り互いにじっくり向き合うことにより、喧嘩をすることがあっても、
逃げも隠れもできないし、海の上だから、嫌なことを水に流すのは簡単かも……
と、夫婦での船旅参加を提唱する脚本家の橋田壽賀子さん。
ご自身も、世界一周クルーズ、南極クルーズ、南米クルーズと4度のクルーズ旅を
経験しているのだとか。旅の準備、持ち物や船上での人付き合いの話は、
現代にも通じるものあり。乗る前に読みたい1冊だ。

船旅は愉しい。それはめちゃくちゃに愉しいといってもいい。
素敵な人と出会い、コックさんご自慢の最高の料理を味わい、
海という自然の中に身を任せながら、連夜のパーティーで盛り上がる。
そこではあらゆる愉しみがよりどりみどりなのである。
(中略)
ナーンにもしない。ただひたすら遊ぶ。
こんなぜいたくな時間の過ごし方が船旅の豊かさなのだろう。
(石郷岡まさお『船旅への誘い クルージング讃歌』東京書籍刊より)

1990年に〈にっぽん丸〉3代目の初航海に参加した
フォトグラファーの石郷岡まさおさんが写真を、
イラストレーター柳原良平さんが文章を寄せた、『船旅への誘い クルージング讃歌』。
そのあとがきに記されているのは、クルーズ船に対する石郷岡さんの熱い思い。
スナップフォトのような軽やかな写真からも船の魅力がひしひしと伝わってくる。

今、家にいて、こうして文章を書いていて、一息入れて目をつぶり、
静かな甲板の上でデッキチェアにもたれて
海の音だけが聞こえてくる情景を思い出すと、
ああまた船に乗りたいなァと思えてくる。
キャプテンのパーティーやカジノを思い出しても
私はさして船に乗りたい気持にはなってこない。
何もしないもの憂げな甲板でのひとときが私には魅力なのだ。
(柳原良平『船旅への誘い クルージング讃歌』東京書籍刊より)

時は平成元年。クルーズ元年ともいえる、日本籍の大型客船の相次ぐデビュー。
国内外問わずクルージングに魅了され続けてきたイラストレーター・柳原良平さんが、
仲間たちとともににっぽん丸の初航海へ。
食事、バーはもちろん、甲板でぼんやりと過ごしたかと思えば、
船内プログラムにも顔を出し、客人との会話を楽しむなど、船を使いこなす技はお見事。
「楽しませてもらおうと思うのではなく、楽しんでやるぞと思って船に乗ってほしい」
という氏の言葉が思い返される。

クルーズ船で有明からまずは別府へ、 そして佐世保へ。 港をつないでいく旅

船上から見た港まちは、味わい深い

港まちにとって、クルーズ船の初寄港はとても大きなニュースらしい。
そのことを知ったのも〈クイーン・エリザベス〉での船旅がきっかけだった。

5月上旬。英国〈キュナード〉社の大型客船クイーン・エリザベスが、
大分・別府と長崎・佐世保に初寄港(佐世保は初停泊)した。

船上から見た別府のまち。白い船は大阪行きの〈さんふらわぁ号〉。

船上から見た別府のまち。白い船は大阪行きの〈さんふらわぁ号〉。

先に寄港したのは別府。早朝にもかかわらず、埠頭で「Welcome to Beppu」と手書きの看板を掲げる人がいる。巨大な船舶をひと目見ようと大勢の市民が待っていた。

先に寄港したのは別府。早朝にもかかわらず、埠頭で「Welcome to Beppu」と手書きの看板を掲げる人がいる。巨大な船舶をひと目見ようと大勢の市民が待っていた。

別府港に碇泊したクイーン・エリザベス。

別府港に碇泊したクイーン・エリザベス。

別府では入港セレモニー、佐世保では〈クイーン・エリザベスフェスティバル〉が行われ、
旅客船ターミナルは歓迎ムードに包まれた。

別府でのセレモニーの様子。大分県国際観光船誘致促進協議会長の長野恭紘別府市長(左から3番目)とアウレリアーノ・マッツェッラ船長(中央)ら関係者が挨拶し、港章の交換が行われた。

別府でのセレモニーの様子。大分県国際観光船誘致促進協議会長の長野恭紘別府市長(左から3番目)とアウレリアーノ・マッツェッラ船長(中央)ら関係者が挨拶し、港章の交換が行われた。

佐世保港では、佐世保市のご当地キャラクター・バーガーボーイとボコちゃんが出迎えてくれたほか、地元の高校生によるバトントワリングの演舞や、ゴスペルコンサート、地元企業による出店で、初寄港・初停泊を歓迎した。

佐世保港では、佐世保市のご当地キャラクター・バーガーボーイとボコちゃんが出迎えてくれたほか、地元の高校生によるバトントワリングの演舞や、ゴスペルコンサート、地元企業による出店で、初寄港・初停泊を歓迎した。

初めてその土地に寄港をすると、寄港地から盾や記念品が贈呈されるという慣習がある。
船内の一角に、それらの品物が博物館のように納められているのだが、
世界各国の贈り物のなかで、ひときわ存在感を放つ、
日本の伝統工芸品の数々を見ることができる。
広島港の記念品はしゃもじ、神戸港は高砂人形、
秋田港は本荘ごてんまりといった品々が並び、
世界中を旅してきたクイーン・エリザベスの軌跡と、
寄港地の名産・特産を知ることができるスペースは一見の価値ありだ。
今回の旅を経て、別府市の竹細工と、佐世保市の三川内焼の記念品も加わるのだという。

日本の伝統工芸品が集合する一角。バー〈コモドアー・クラブ〉へ行く通路にあり、多くの客が目にする。

日本の伝統工芸品が集合する一角。バー〈コモドアー・クラブ〉へ行く通路にあり、多くの客が目にする。

別府と佐世保に共通することは、どちらも陸地からは行きにくいところで、
空港からバスやレンタカーで1時間ほど移動することになる。
インバウンドの観光客がもともと多い両市だが、
ダイレクトに2000人から3000人が寄港地にアクセスするクルーズ船は、
インパクトも大きい。

近年ではクルーズ船客を呼び込もうと、国際ターミナルの新設や整備改修、
多言語対応が進んでおり、
別府港は2011年に大型旅客船が接岸可能な旅客船ふ頭が利用開始され、
佐世保港も2015年に国際ターミナルビルを改修し、
〈葉港テラス〉という愛称がつけられた。
他県に目を向けると、2020年に金沢港クルーズターミナル、
東京・有明に東京国際クルーズターミナルがオープン。
隻数も増え、今後ますます“日本のローカル巡りは船旅で”という需要が高まるといえそうだ。

クイーン・エリザベス乗船記  美しき洋上の女王で日本をめぐる

やっぱり船でないと!

筆者はこれまで、『コロカル』の取材先や旅先で大小さまざまな船に乗船してきた。
何なら、すすんで海路を選んですらいた。
博多港から五島列島へ行く深夜便のフェリー、長崎は佐世保の九十九島クルーズ、
竹芝客船ターミナルから大島や式根島へ行くジェットフォイルやフェリー、
北欧や欧州でのクルージングも経験した。

大海原に繰り出していく冒険感、ゆったりと流れる船上の時間、
陸地が見えたときのささやかな喜び。
船旅が好きな理由はいくつもあるが、
とどのつまりは、どんな場所のどんな船からでも、
海上からの景色は忘れ難い美しさで、
それは船でないと経験できないからだろう。

長いコロナ禍が明け、国内外の渡航も規制がなくなった。
久方ぶりの船旅に思いを馳せていた矢先に、
〈クイーン・エリザベス〉に乗る機会を得た。
別府、釜山(韓国)、佐世保、清水に寄港する初夏の10日間の船旅だという。
これが渡りに船か。

こうして私はクイーン・エリザベスに乗る。
初めに言っておくと、これがなんともすばらしい体験だった!
今回の特集のタイトル「船旅礼賛」は、私の心からの気持ちだ。

洋上の女王 クイーン・エリザベスに乗る

5月某日、出港日。乗船の2時間前に到着すると
有明の東京国際客船ターミナルにはすでにクイーン・エリザベスが碇泊していた。
英国女王エリザベス2世に命名された、世界で最も有名な豪華客船だ。

クイーン・エリザベス

船体のデザインは、非常に「船らしい船」だ。
サントリー社「アンクルトリス」の生みの親である
イラストレーター・柳原良平氏が
好んで〈クイーン・エリザベス〉や〈クイーン・エリザベス2〉を
モチーフにしたと聞いていたが、
その流れを組むこの3代目のクイーン・エリザベスもまた、
気品ある佇まいが非常に美しかった。

外観からして巨大だとは思っていたが、
この船が12階建てだと知ったのは船内のエレベーターに乗ってからだった。
2000人超の乗客と約1000人のクルーが10日間以上生活できる、
洋上の移動式ホテル、いや、ここで生活を送るのであれば“まち”だ。
ショップがあり、カフェやバーがあり、アートギャラリーや図書館があり、
トレーニングジムがある。船内では乗客同士すれ違いざまに軽く会釈をしつつ、
プライベートが尊重されるこの感じは、町内会のコミュニティに近いのだと思った。
非日常の環境のなかで、好きに飲食をしたり体を動かしたりと日常を感じられるのは、
船旅のいいところだった。

現行の3代目クイーン・エリザベスは2010年に就航。
初代クイーン・エリザベスの、1930年代のアール・デコを基調とした
落ち着きのある雰囲気に、
タイタニック号の流れをくむ英国伝統の格調の高さを感じさせる。

エリザベス女王乗船の記録が博物館のように展示されている。

エリザベス女王乗船の記録が博物館のように展示されている。

細やかな装飾が美しい大階段。

細やかな装飾が美しい大階段。

注目したのは床。タイルや大理石、カーペット、フローリングなど、
場所によって素材やデザインが細かく変えられ、
パブリックスペースには扉があまり取り付けられていない船内では、
床のデザインの切り替えが空間の区切りのような役割とリズムをもたらす。

廊下のカーペット。直線的で左右対称な図案はアール・デコスタイルを象徴する意匠だ。

廊下のカーペット。直線的で左右対称な図案はアール・デコスタイルを象徴する意匠だ。

船内中央の吹き抜けの、寄木細工製の大きなレリーフも見事だ。
ひと目で上質さや高貴さが伝わるレリーフを中央に据えつつ、
そこまでの動線となる床や階段、手すり、調度品など、
細部にわたって塵ひとつなく磨き上げられている。

船内のシンボル、寄木細工でできた大きなレリーフは、エリザベス女王の甥で世界的な彫刻家・デビッド・リンリーの作品。

船内のシンボル、寄木細工でできた大きなレリーフは、エリザベス女王の甥で世界的な彫刻家・デビッド・リンリーの作品。

ライブラリーの天井はステンドグラス。

ライブラリーの天井はステンドグラス。

そして伝統を重んじるスタイルでもある。
珍しいことに現在でも等級制を維持しており、
キャビン(客室)は大きく4つのカテゴリーに分かれ、
それぞれ専用のメイン・ダイニングを有する。
だが、それも堅苦しいものではなく、メイン・ダイニング以外のカフェや
たいていのレストランはどのカテゴリーでも利用可能なのだ。

 伝統を重んじつつ、この軽やかさも魅力。日当たりのよいカフェスペース〈ガーデン・ラウンジ〉にはポップアート界の奇才・Mr. Brainwash の特注壁画が。

伝統を重んじつつ、この軽やかさも魅力。日当たりのよいカフェスペース〈ガーデン・ラウンジ〉にはポップアート界の奇才・Mr. Brainwash の特注壁画が。

どうやって申し込む? 船内の過ごし方は? クルーズ初心者に捧げる、船旅AtoZ


知っておきたい、クルーズ船のあれこれ

移動手段であり、ホテルでもあり、まちでもあるクルーズ船。
今まで空や陸の旅しか体験していない人は、
クラシカルなのに新しい! と、驚くかもしれない。

今回は、クルーズ船にまつわるあれこれを、AからZのキーワードで紹介。
未知の世界だったクルーズ船の旅が少しでもクリアになればうれしい。

Agency or Official site(旅行代理店か公式サイトか)
クルーズ旅行を申し込む際には公式サイトの直予約などの個人手配のほかに、
代理店を通じて申し込むことも多い。
代理店の場合は、クルーズアドバイザー認定試験に合格した「クルーズコンサルタント」や
「スペシャリスト」による事前説明会があると、初めての方も安心。

Boarding(乗船)
いざ、乗船。以下はクイーン・エリザベスのケース。
乗船券に記載されている乗船時間に合わせてターミナルへ向かう。
オンラインチェックインで事前に顔写真やパスポートナンバー、
クレジットカードなどの登録を済ませておくとスムーズだ。

さらにクイーン・エリザベスのような外国船舶に乗船する場合は、
日本発着の国内クルーズであってもパスポートが必要となる。
飛行機同様、残存期間が下船日より6か月以上あることが必須なので、期限を要チェック。
渡航先によってはビザ(訪問国査証)や場合によっては予防接種証明書が必要な場合も。

また、乗船前にターミナルで荷物は預けておくことができるので、
ラゲージタグの印刷・荷物への貼り付けも忘れずに。

Crews(乗務員)
これから一緒に数日間過ごす乗務員たち。
クイーン・エリザベスの場合、
サービス料(ホテル・ダイニングサービス料)は自動的に加算される。
また、特別なサービスを受けたスタッフヘのチップは直接本人に渡すことができる。
日本発着のクルーズであれば、日本語応対スタッフが常駐しており、
快適で贅沢な旅をサポートしてくれる。

Dance(ダンス)
社交ダンスデビューは洋上でいかが?
クルーズ船ではドレスアップしてソシアルダンス(社交ダンス)を
楽しむ機会が非常に多くある。
ダンスを習っていたらより楽しめるが、事前にレクチャータイムがある船も。
ドレスコード指定や、テーマが設定されていることもあり、非日常の空間に心も踊る。
パートナーとともに忘れられない滞在を。

部屋に届いた招待状(クイーン・エリザベス)

マスカレード・パーティー(仮面武道会)に「ブラック&ホワイト」のドレスコード指定のパーティーのお知らせ(クイーン・エリザベス)。

Event(船内イベント)
船内では昼夜問わずさまざまな催しが行われ、暇をしている時間がない。
クイーン・エリザベスで1日に行われるイベントやアクティビティはおよそ80〜100。
クイズイベントや映画鑑賞、交流の場(おひとり様の集い、禁酒友の会、合唱の時間など)
参加は任意なので、大々的なイベントが行われているすきにバーでゆっくり過ごす……
なんてオトナなひとときも大いにアリ。

人口減少著しいまちの救い手となるか。 古民家1棟貸しの 〈NIPPONIA美濃商家町〉 「UMEYAMA棟」の新たな挑戦

日本各地に根づく、その土地の歴史や文化資産を活用し
宿を起点にしたまちづくりを行っている〈NIPPONIA〉。

1300年の歴史を持つ美濃和紙の里、岐阜県美濃市では、
江戸時代から受け継がれたまち並みを維持するため
2019年に〈NIPPONIA美濃商家町〉をオープンしました。

このホテルを運営する〈みのまちや株式会社〉は、
「美濃のファンを生み出し、美濃の景観が持続的に支援される」
ことをミッションとし、行政や地元企業などと連携した活動を行っていて、
2024年には、内閣府より、SDGs官民連携の最高賞を受賞しました。

1棟目となった〈NIPPONIA美濃商家町〉「YAMAJOU棟」。

1棟目となった〈NIPPONIA美濃商家町〉「YAMAJOU棟」。

金庫だった蔵を1棟まるごと客室として使用。

金庫だった蔵を1棟まるごと客室として使用。

美濃和紙、美濃の食材、美濃の特色を生かしたホテルの形成

2024年6月10日には、3棟目となる2階建て1棟貸しの
「UMEYAMA棟」をグランドオープン。

「このホテルは、簡易キッチンのあるダイニングと、5つの部屋があり、
美濃商家町のなかで最大の12名までの宿泊対応ができるようになりました。
そのため、3家族での旅行や長期滞在、企業研修なども視野に入れた
ホテル運営を目指しています」と語るのは、
企画運営を担当している平山朝美(ひらやまあさみ)さん。

床の間に飾られた和紙のアートや一枚「板」の机が味わい深い。

床の間に飾られた和紙のアートや一枚「板」の机が味わい深い。

今まで〈NIPPONIA美濃商家町〉では、
夕食は地元のレストランで楽しむスタイルでしたが、
まちなかから少し離れた場所にあるため、朝晩の食事は、
提携する地元の食事処が届けてくれるそうです。

「岐阜産はちみつとクリームチーズのブルスケッタや
恵那のハムと地元野菜のサラダ、長良川の鮎とアサリのパエリア、
ボーノポーク岐阜と地元野菜のグリルなど、岐阜県産の食材を使用した
夕食メニューを提供しています。お届けしたあと、お客様の食事のタイミングで、
ピザやメインのお肉料理などは、ダイニングルームにある簡易キッチンの
調理器具を使用して、あたためていただくこともできます」

岐阜県産の食材を使用した夕食メニュー。

岐阜県産の食材を使用した夕食メニュー。

また、隣接する古民家も、本格的な厨房設備を揃えた施設に改修。
今後は、ローカル・ガストロノミーに力を入れ、経験豊富な料理人を誘致し、
食卓にも美濃の食材や美濃焼など、美濃地方の文化や産業を
取り入れながら、地域の食文化を発信していくのだとか。

〈DEPT〉オーナー・eriの旅コラム 「旅でも安心したい。 美瑛の山小屋でリラックスしたもの」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第39回は、ヴィンテージショップ〈DEPT〉のオーナーであり、
さまざまな環境や社会活動もしているeriさん。
大好きな旅ではあるが、
旅を存分に楽しむには、自分の心身が安心していることが重要。
そんなときに必要な
リラックスアイテムを紹介してくれる。
今回はまさに旅先、北海道の美瑛からお届けする。

家を飛び出したいけど、家にいるみたいに安心していたい

わたしは旅に出るのが大好きです。
見たことも聞いたことも嗅いだことも感じたこともないことが、
旅先には星の数ほどちりばめられていて、
そのひとつひとつの瞬きに心を揺さぶられるから。

自分の人生に新しいひらめきを与えたり
新鮮な喜びを感じたいがために、
住み慣れたまちを飛び出す……
その一方で、
旅をするにあたって
"旅先でいかにリラックスできるか"というのが
わたしの最重要ポイント。

家を飛び出したいけど家にいるみたいに安心していたい……というわがままな旅人は
そのために不可欠なアイテムたちを
旅行鞄のなかにつめこむのです(とにかく荷物が多いのが難点)。

そしてこれを書いているわたしはまさに今旅の途中で、北海道の美瑛に滞在しています。

友人たちと借りた小さくもコージーな山小屋に到着。
最初に取り出した安心アイテムその①は
半年ほど前にステイしていたチェンマイで買い込んできた薬草。
さまざまな薬効のある葉や木の皮が調合されていて、
チェンマイでハーバルスチームサウナに使われているものをわけてもらいました。

ワサワサと乾燥した薬草を袋から取り出し、
北海道の冷たい水とともに鍋に入れ火にかけることから今回の滞在はスタート。
やがてぐつぐつと沸きたち、青く爽やかな香りがたちのぼると
どこかよそよそしかった山小屋のなかいっぱいに親しみが湯気とともに満ちていく。
これだけでずっと居心地が良くなった気分。
火から下ろした鍋にバスタオルをかぶせて
深呼吸すれば薬草スチームに。
これは鞄のなかで軽くてかさばらないのに、効果は絶大!

新潟・妙高の古民家を再生した 里山生活を体験できる宿泊施設 〈MAHORA西野谷〉

日本の古きよき里山の自然環境を味わえる一棟貸しの宿

築約120年の古民家を再生した〈MAHORA西野谷〉は、
1棟1組限定の宿泊施設です。
妙高連峰を望む伸びやかな田園風景の中に佇んでおり、
建築や食事、アクティビティなどを通じて、
地域の豊かな自然や文化に触れながらリフレッシュできます。

MAHORA西野谷のあるエリアからは妙高山、
火打山など複数の「日本百名山」の風景が楽しめます。
なかでも妙高山は初心者でも登りやすく、多くの登山客が訪れるメッカです。
また車で5分のロッテアライリゾートをはじめ、
複数のスキー場に近接しています。
夏はトレッキング、冬はスキーやスノーボードを楽しむことができ、
妙高山麓には7つの温泉(赤倉、新赤倉、池の平、妙高、杉野沢、関、燕)が集まる
「妙高高原温泉郷」もあります。

妙高連峰の雪景色。

妙高連峰の雪景色。

恵まれたリゾートコンテンツを擁する一方で、
高齢化や後継者の不在といった課題に直面し、
農業の担い手不足や空き家問題に悩む地域でもあります。
このMAHORA西野谷も、10年以上空き家となっていた民家を改修し、
生まれ変わったものでした。

「建物は約120年前につくられたそうです。
しばらく空き家でしたが、次世代へとつなぐため、宿として再生することにしました」

玄関で出迎える蔡さん。

玄関で出迎える蔡さん。MAHORAは「すばらしい場所」を意味する古語に由来。

そう語るのは宿を運営する合同会社穀宇の共同代表、蔡紋如(サイ・ウェンル)さん。
2010年にワーキングホリデーで台湾から初来日し、
結婚を機に2014年に妙高に移住。
夫と農業を営み、妙高市のインバウンド誘致の仕事に関わるなかで、
「もっと日本のよいところを多くの人々に知ってほしい」という思いが募り、
この施設を立ち上げたそうです。

中に入ると吹き抜けの土間があり、梁の存在感に驚かされます。

「1902年5月、この地を襲った土石流により約30戸が被害を受け、
その後安全な土地に再建された住居のひとつがこの民家だそうです」

柱や梁は再利用されたものも多く、
よく見ると部材に以前の住居のためのホゾ穴などがたくさん残っています。
120年をさらに遡る、長い歴史がうかがえます。

玄関を入ると広がる土間。

玄関を入ると広がる土間。上部に太い柱や梁が縦横に走り、迫力があります。

「旅は断片。」 12人の旅人によるユニークな視点。 四国、九州・沖縄編

断片を見つける旅を

旅においてちょっとした出来事が心に残っているのではないだろうか。
さまざまなクリエイターがローカルを旅したときに感じた
そんな「断片」を綴ってもらった。

彼らの持つ旅の視点を参考にして、
おもしろい旅の断片をみつけてみたい。

そこでコロカルのリレー連載『旅からひとつかみ』から、
地域ごとにまとめて再編集していく。
第3回は【四国編】【九州・沖縄編】をお届けする。

四国編、九州・沖縄編の旅先マップ

誰も見たことがない本殿・拝殿を。 伝統技術でつくる、 あたらしい〈鳥飼八幡宮〉

福岡市の都心部を走る明治通りに面し、
近くには球場や大型商業施設があり、周囲に住宅とマンションが建ち並ぶ。
〈鳥飼八幡宮〉は、そんなにぎやかなエリアにあります。

鳥飼八幡宮の歴史は古く、『古事記』や『日本書記』にも登場する
神功皇后のゆかりの地として、社殿を建てられたのが発祥と
伝えられています。

まちがめまぐるしい変化をとげてゆくなか、神社は変わることなく、
人々を出迎えてきました。

そんな鳥飼八幡宮が、「遷宮」(神社の改築や修理)によって
大きく姿を変えたのは、一昨年のこと。

もっとも驚かされるのは、壁全体を茅(かや)で葺かれた拝殿の圧倒的な存在感。
「神社」という建物のイメージを覆すその姿は、いったい、
どのようにして生まれたのでしょうか。

〈鳥飼八幡宮〉

神様のいる場所を、常にみずみずしく

鳥飼八幡宮ではもともと、25年おきに遷宮を行ってきました。

ただしこれまでは、歴史ある本殿・拝殿を改修したり増築したりする、
小規模なものだったそうです。

しかし、今回の遷宮にあたり調査を行ったところ、建物の老朽化が著しく、
建て替えなければならないことが判明。

老朽化とはいえ、古くからある建物を壊し、つくりかえることに
抵抗はなかったのでしょうか。

鳥飼八幡宮で神職をつとめる高野さんに尋ねると、
「常若(とこわか)」という言葉を教えてくださいました。

「常若」とは、神様をお祀りする場所を、常にみずみずしく
きれいに保つ、という考え方。

たとえば伊勢神宮では、1300年も前から、20年ごとに
まったく同じ建物をつくり替える「式年遷宮」を行なっています。
それは、こういった考えに基づくものなのだそうです。

「わたしたちは、以前と同じ建物をつくるのではなく、
『あたらしい神社』をつくろうと考えました」と高野さん。

「『あたらしい』というとすこし語弊があるかもしれません。
神道の歴史は縄文時代からありますが、実ははっきりとした教義はないんです。
ですから、これを機に、古くからつづいてきた信仰のかたちを、
固定観念にとらわれずに一から考えてみよう、そして、
それがきちんと伝わる建物をつくろう、と考えたのです」

壁全体を茅(かや)で葺かれた拝殿

鳥飼八幡宮の式年遷宮は、2023年度福岡市都市景観賞・大賞を受賞しました。

二宮さんが描いたイメージ図(提供:二宮設計)

二宮さんが描いたイメージ図(提供:二宮設計)

誰も見たことがない本殿・拝殿を

「あたらしい神社」の設計を依頼されたのは、
福岡市内に事務所を構える〈二宮設計〉の二宮隆史さん・二宮清佳さん
夫妻でした。

二宮夫妻は、鳥飼八幡宮の山内宮司から、
「誰も見たことがない本殿・拝殿を」
というオーダーを受けたのだそう。

二宮隆史さんに、その頃のお話をうかがいました。
「誰も見たことがないもの……とはいえ神社であるからには、
地域の方々に納得してもらえるものにしなくては……」と、
アイデアを模索していた二宮さん。

幾度となくスケッチを描き、山内宮司と何度もイメージをすりあわせ、
検証を重ねて、巨石と茅葺で拝殿をつくる構想がまとまりました。

高野さんはいいます。
「巨石信仰は、世界共通の信仰のかたちなんです。いつの時代の人が見ても、
たとえば、ここがいつか埋まってしまったとしても、発掘された時に
『神聖な場所だったんだ』ということがすぐわかる」

天然の素材と、伝統的な技術で、あたらしい神社をつくる。
そうすればきっと、訪れた人に愛着を持ってもらえるはず。

こうして、あたらしい拝殿は、十本の巨石を柱とし、
外壁全体を茅葺にすることが決まったのでした。

茅(かや)で葺かれた拝殿

茅(かや)とは、ススキやヨシなどを束ねたもの。束ねることによってできる隙間が空気の層となって、通気性、断熱性、保温性を高めているのだそう。

神様がいらっしゃる本殿

神様がいらっしゃる本殿は、拝殿の奥に。

「旅は断片。」 14人による旅のスモールストーリー。 中部、近畿、中国編

旅の小さな思い出は、とても愛おしい

旅のなかで、奇妙なことが起こったり、
まさかの偶然が起こったり、奇跡的な出会いがあったり、いろいろなことがある。
そうした小さな断片を逃さず思い出としてしまっておきたい。

さまざまなクリエイターがローカルを旅したときの、
そんな「断片」を綴ってもらうリレー連載が、
コロカルの『旅からひとつかみ』だ。
その連載を見てみると、北海道から沖縄まで全国での出来事が綴られていた。
そこで地域ごとにまとめて記事を紹介していく。
第2回は【中部編】【近畿編】【中国編】。

中部編、近畿編、中国編の旅先マップ

ソウルのストリートカルチャー溢れる 〈Good Morning Record Bar〉が 京都にあった

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
京都府京都市。

朝はのどかでも、陽が落ちればゴリゴリのレアグルーブ

コロンボ(以下コロ): 〈Good Morning Record Bar〉って
名前からしてよくない?

カルロス(以下カル): レコードではじまる朝なんて、余裕がありそうだし、
丁寧な暮らしそう。やっぱりパット・メセニーって感じかな?

コロ: ボクだったらジョージ・ベンソンの『ブリージン』かな。
そんな気持ちいい朝はなかなかないけど。

カル: いずれにしてもフュージョン感……、
朝に対するイメージが貧困じゃない? 2020年代だよ。

高瀬川沿いに佇むガラス張りのポップな店がまえ。夜ともなると加熱気味なグルーブを発する。

高瀬川沿いに佇むガラス張りのポップな店がまえ。夜ともなると加熱気味なグルーブを発する。

コロ: お店的にはレアグルーブが多いんだって。

カル: 朝から?

コロ: いやいや、賑わってくる日没後だけど。
レアグルーブっていえば、カルロスの守備範囲じゃない?

カル: うーむ、レアグルーブ、難しいね。ジャンルでもないし定義が微妙。

コロ: あえて定義するとどうなの? 
やはりDJ文化というか、ヒップホップ以降というイメージだけど。

カル: サンプリングや元ネタという、人が注目しないところに美学を感じる
「レコード掘り師」の文化かな。
自分に照らし合わせてみると、レアグルーブは広すぎて
コンピレーションやDJミックスで知っていくものだったかも。
橋下徹選曲の「FREE SOUL」シリーズとかね。

『新潟古町100選』 古町界隈で暮らす人や働く人が選ぶ 100通りの過ごし方

新潟古町から感じる、愛すべき“地元力”

JR新潟駅から萬代橋の方面へバスで7〜8分の古町エリア。
1番町から13番町まである、新潟最大の市街地です。
この古町を愛する人たちのまちでの過ごし方を
100個のコラムとしてまとめたローカルガイドブック『新潟古町100選』が、
2024年1月に発売され、早くも重版がかかったそうです。

この本は古町界隈で暮らす人や働く人、クリエイターや作家、
飲食店の店主、行政職員などが、
人に教えたくなる古町での過ごし方を100個集めたローカルガイドブックです。
県外から観光や仕事で来訪する人はもちろん、
日英2か国語なので、外国の人にもその魅力が伝わる内容です。

紹介されているのは、グルメ、カルチャー、音楽、アート、酒、風景。
たとえば、喫茶店〈ナッツ〉上大川前店で食べるモーニングセットや、
〈ブルーカフェ〉で窓の外の並木道に季節を感じるなどなど……
その「場」への親しみやすさを感じさせるだけでなく、
著者陣が足繁く通っているからこそわかる、ニッチで愛すべき古町のポイントは、
文字数こそ少ないけれど、しっかりとツボを抑えています。
流行やハイセンスなものばかりではない魅力は、これぞ“地元力”。
100もあるのでみなさんにも絶対に刺さるものがあるはず。

「旅は断片。」 12人の旅人による小さな出来事。 全国編、北海道・東北編、関東編

心に残っている、旅のトゥルーストーリー

自由に、縛られることなく旅をしているクリエイターが持っている旅の視点は、
どんなものなのだろうか?
独特の角度で見つめているかもしれないし、
ちいさなものにギュッとフォーカスしているかもしれない。

さまざまなクリエイターがローカルを旅したときの
「ある断片」を綴ってもらうリレー連載が、
コロカルの『旅からひとつかみ』だ。
その連載を見てみると、北海道から沖縄まで全国での出来事が綴られていた。
そこで地域ごとにまとめて記事を紹介していく。
まずは【全国編】【北海道・東北編】【関東編】から。

全国編、北海道・東北編、関東編の旅先マップ

サウナなど温浴施設も充実。 自然に包まれて “自分をととのえる”ホテルが 箱根・宮城野エリアにオープン

自然とひとつになるウェルネス体験を提供

箱根三大祭のひとつ〈箱根強羅温泉大文字焼〉が行われる
明星ヶ岳(みょうじょうがたけ)の麓に広がる宮城野エリア。

箱根温泉のなかでも、昔懐かしい趣きを残した集落にある
温泉場として知られています。

そんな宮城野の別荘地内に5月17日、〈nol hakone myojindai〉が
オープンしました。

温泉露天風呂付き客室

客室は温泉露天風呂付きタイプから、4人まで一緒に宿泊できるタイプ、ペットと泊まれるタイプまで、全6タイプから選べます。

これまで会員制ホテル〈東急ハーヴェストクラブ箱根明神平〉として
運営されていた建物を改装し、新たにリゾートホテルとして生まれ変わりました。

「nol(ノル)」とは「Naturally(自分らしく、自然体で)」、
「Ordinarily(普段通り、暮らすように過ごし)」、
「Locally(その土地の日常に触れる)」の頭文字を取った造語で、
それぞれの意味のとおり“自分らしく自然体で、普段通り暮らすように過ごし、
その土地の日常に触れる”をコンセプトとしています。

京都市中心街に2020年に開業した〈nol kyoto sanjo〉に続く、
nol2店舗目となります。

温泉を使った屋内プール

温泉を使った屋内プールは、昼と夜で異なる雰囲気に。

nol hakone myojindaiの魅力は、何と言っても自家源泉の
宮城野温泉を引湯した充実の温浴施設。

サーマルプールや大浴場、スチームで温めながら潤うサーマルルームや
高温のドライサウナなどを備え、「ととのいテラス」では箱根の雄大な景色を
望みながら外気浴が楽しめます。

「ととのいテラス」

早雲山(そううんざん)をはじめ、箱根の雄大な景色を一望できる「ととのいテラス」。

また、滞在の間はコーヒーや紅茶など10種類以上のドリンクが
自由に飲めるため、宿泊者に用意されるオリジナルタンブラーに
好みのドリンクを入れて、水分補給をすることも。

ロビーラウンジに並ぶドリンク

ロビーラウンジに並ぶドリンクは、フリーフローで楽しめます。

食材も調理方法も、思いのまま。 自分だけのひと皿に出合える 〈RESTAURANT NOT A GALLERY〉

五感で楽しむ、新感覚のレストラン

海が見える空間で、アート作品に囲まれながら、
地産の食材を自分好みの調理方法で楽しむ――
そんな感性を刺激されるひとときが過ごせる、
オーダーメイドフレンチレストラン〈RESTAURANT NOT A GALLERY〉が
2024年2月、静岡県熱海市に登場しました。

レストランができた場所は、LAND ART PARK〈ACAO FOREST〉に隣接する高台へ
オープンしたギャラリー〈NOT A GALLERY〉の一角。
海抜約75メートルの高台に位置しており、窓からは美しい相模湾や空を一望できます。

店内には、国内外で活躍するアーティストの作品も展示されています。
目や耳、そして舌でも楽しめるクリエイティブな空間となっています。

シェフとともに自分だけの味を追究

メニューは、コース料理(ランチ8000円~、ディナー1万5000円~)のみ。
ランチは全5品、ディナーは全8品が提供されます。
うち、メインディッシュ(ランチ1皿、ディナー2皿)は
食材や調理方法のオーダーが可能です。

食材は、提携している静岡県内30以上の生産者から仕入れるもの。
伊豆のイノシシやシカ、金目鯛など、新鮮で旬を感じるものを日替わりで仕入れています。

まずは、ワゴンに並ぶ食材から好きなものを選びましょう。
そして「シカはローストにして」「魚介類はシンプルな料理がいい」といったように、
調理方法の希望をシェフに伝えます。

菌の力で心身を豊かに。 “善玉菌リトリート”が体験できる 〈HOLY FUNGUS〉

新しいリトリート施設

“善玉菌リトリート”という言葉を知っていますか? 
日常生活から少し離れて過ごすリトリートに、豊かな自然との触れ合いや
美活アクティビティ、キャンプを組み合わせた、リトリートの新しいかたちです。

そんな新しいリトリート体験ができる施設〈HOLY FUNGUS〉が、
2024年5月、岐阜県郡上市にオープンしました。

善玉菌リトリートという考え方を提唱したのは、
国産オーガニックコスメを手がける企業〈neo natural〉。
約30年前にアトピーの赤ちゃんでも使える石けんづくりからスタートし、
現在はさまざまなコスメ・スキンケア用品を展開しています。

〈HOLY FUNGUS〉があるのは、〈neo natural〉の製品に使用する
ハーブやヘチマなどを栽培している、有機農場のなか。
110年前の古民家を改築したセンターハウス、
ハーブ畑や田んぼなどに囲まれたキャンプサイトとバンガロー、
美しい里山を眺めながらゆったりと過ごせるウッドデッキなど、
さまざまな設備がそろいます。

プライベートスパとフィンランドサウナも完備しており、
自然を感じながらゆったりと過ごせるはず。
滞在中は〈neo natural〉のスキンケア製品も、自由に使用できます。

自然を感じる体験を多数用意

園内では、さまざまなアクティビティにも参加できます。

農場でハーブやヘチマの収穫体験をしたり、緑に囲まれた空間で朝ヨガをしたり……
里山の空気を存分に味わいながら、心身共にリラックスできる時間を
好きなだけ楽しめます。もちろん、キャンプをしたり、
園内を思い思いに散策したりするのも自由です。

体験できるアクティビティは時期によって異なり、田植えや稲刈りができることも。
何度か訪れていくつもの体験に参加し、季節の移り変わりを
肌で感じるのもいいかもしれません。

農場のマスコットであるヤギたちとの交流も、楽しみのひとつ。
のんびりした動きとちょっととぼけた表情にも癒されます。
タイミングが合えば、一緒に散歩もできますよ。

『リノベのススメ』のその後の話。 まちづくりへの新たな視座と視点を。 富山・新湊内川沿いから広がる波と 〈マチザイノオト〉プロジェクト

2013年にスタートした、コロカルの人気連載『リノベのススメ』。
全国各地のリノベーション事例を、物件に携わった当事者が紹介する企画だ。
今回の月刊特集では『エリアリノベのススメ』と称して、
1軒の建物のリノベーションをきっかけに、
まちへ派生していく“エリアリノベーション”を掘り下げていく。

『リノベのススメ』担当編集の中島彩さんにインタビューしたvol.001では、
リノベーションの潮流を踏まえつつ、過去の連載を振り返ってきた。
そのなかで登場した過去の執筆陣に、「その後」を聞いてみることにした。
前々回vol.002は〈富樫雅行建築設計事務所〉の富樫雅行さん、
前回vol.003は〈ミユキデザイン〉末永三樹さんに
「その後」を執筆してもらった。

今回は、2018年から19年のあいだ、
計8回にわたり執筆していた
〈グリーンノートレーベル〉の代表、明石博之さんが手がける
富山県射水市の新湊内川地区を実際に訪れた。

連載当時のまちの変化をセカンドウェーブとするならば、
現在はサードウェーブの流れが生まれつつあるようだ。
連載から6年経った今、
新湊内川というまちにはどのようなエリアリノベーションが行われ、
これからどんなことが起ころうとしているのか。
川沿いを歩きながら、「その後」をうかがった。

自らが地域のプレイヤーになり、当事者になるということ

まちに貢献する場づくりを行う会社、
〈グリーンノートレーベル〉の代表を務める明石博之さんが
富山県に移住したのは14年前のこと。

移住という選択は、自身の暮らしを見つめるというだけでなく、
地域の社会課題に主体的にコミットしたいという気持ちが強かったからだ。
富山県内を車でひと通り見て回ったあとに辿り着いたのは、射水市の新湊内川地区。
妻・あおいさんの故郷という縁はあったものの、
当時はこのまちが自分たちの拠点になるとは考えもしなかったという。

「日本のベニス」といわれる新湊内川エリア。両岸には漁船が係留されている。まちの中心を流れる「内川」は全長約3.4キロ。

「日本のベニス」といわれる新湊内川エリア。まちの中心を流れる「内川」は全長約3.4キロ。両岸には漁船が係留され、港町の風情が漂う。

2010年に富山県に移住し、2018年より新湊内川地区に拠点を構える〈グリーンノートレーベル〉の明石博之さんのポートレート。5年前には長年広島でお好み焼き屋を営んでいた父・富男さんも内川エリアへ移住しお店を営んでいる。

2010年に富山県に移住し、2018年より新湊内川地区に拠点を構える〈グリーンノートレーベル〉の明石博之さん。5年前には長年広島でお好み焼き屋を営んでいた父・富男さんも内川エリアへ移住しお店を営んでいる。

広島県尾道市(旧因島市)出身の明石さんは、大学時代から計19年間を東京で過ごし、
卒業後はまちづくりのコンサルティング会社に就職。
東京から全国各地に赴くなか、いつしかある思いを抱くようになっていた。

「東京に拠点がある以上、
まちづくりのプロデューサーやコーディネーターといいながら
自分はそこにいないわけじゃないですか。
俯瞰視点だけじゃなくて、もっと自分が普段接している生活圏や文化圏で
主体的に関わっていきたいと思ったんです。
実際にそこに立ったときに見えてくるものを大切にしたかったというか」

レディー・ガガの靴の作者が アートワークを担当! 富山県〈ホテルグランミラージュ〉に “令和の銭湯”がオープン

世界的アーティストと“サウナの聖地”の娘が手がけた温浴施設

富山県魚津市にある〈ホテルグランミラージュ〉の最上階に
4月26日、温浴施設〈スパ・バルナージュ〉がオープンしました。

この温浴施設の壁画を手がけたのは、レディー・ガガが履いた
シューズの作者として世界的に知られる、アーティストの
舘鼻則孝(たてはな・のりたか)氏。

アートワークを手がけた舘鼻則孝氏

アートワークを手がけた舘鼻則孝氏。©NORITAKA TATEHANA K.K., Photo by GION

舘鼻氏の曽祖父と祖父は、戦後間もなく富山県から上京し、
新宿・歌舞伎町で銭湯〈歌舞伎湯〉を営んでいた過去があり、
自身も「縁を感じた」と話すこのプロジェクトで採用したのはモザイク壁画でした。

〈歌舞伎湯〉のモザイク壁画

〈歌舞伎湯〉のモザイク壁画。©NORITAKA TATEHANA K.K.

〈歌舞伎湯〉の浴室全面に施されていた壮大なモザイク壁画に
インスピレーションを得て完成したアートワークは、施設から
実際に眺望することができる立山連峰の景色が描かれています。

立山連峰を仰ぎ見る山側の浴室には太陽が描かれた鮮やかな色彩の図を、
一方で富山湾を一望できる海側の浴室には寒色を基調とした荒々しい雷雲の図を
配するなど、ふたつの浴室で対照的な表現を目にすることができます。

山側の浴室「ヤマ/YAMASIDE」の壁画

山側の浴室「ヤマ/YAMASIDE」の壁画。©NORITAKA TATEHANA K.K., Photo by GION

海側の浴室「ウミ/UMISIDE」の壁画

海側の浴室「ウミ/UMISIDE」の壁画。©NORITAKA TATEHANA K.K., Photo by GION

薔薇と珈琲の香りを楽しむ。 週末の福岡・篠栗町ドライブ

南蔵院の巨大な釈迦涅槃像や篠栗四国八十八カ所が有名な、福岡の篠栗町。
お遍路さんや御朱印集めに勤しんでいる人にとってはもちろん、
豊かな自然に癒されたい人にもぴったりのドライブコースです。
そんな篠栗町に、ぜひ立ち寄ってほしいスポットが誕生しています。

人の心をなぐさめる、山間の薔薇の園

地元では「のみやまさん」という名前で親しまれている
高野山真言宗別格本山の「呑山観音寺」。
2023年5月には、国内でも2例目という貴重な総木造建築の
「瑜祇大宝塔(ゆぎだいほうとう)」が建立されています。

「瑜祇大宝塔(ゆぎだいほうとう)」

普段、瑜祇塔の周辺エリアは非公開なのですが、
そんな塔のすぐ下に今年、「花筵庭(かえんてい)」が開園。
春の特別拝観にあわせて5月19日(日)から〈薔薇まつり〉が始まりました。

庭園から見上げる、フォトジェニックな瑜祇大宝塔

庭園から見上げる、フォトジェニックな瑜祇大宝塔

塔の横の階段を下りると、ふわりと鼻をくすぐる薔薇の香り。
視界が開けた先には、イングリッシュローズをはじめとした薔薇、
ラベンダーやサルビアなどの宿根草が広がっています。

イングリッシュガーデン

比較的小さな野ばらや高さのあるツルバラを組み合わせ、立体的に造られたイングリッシュガーデン

「花筵」とは、花の絨毯(じゅうたん)のこと。
手づくり感のある小さなバラ園は、明るく開放的でありながら
“おこもり感”もあり、ホッと心が落ち着く空間です。
取材に伺った日(正式開園前)はまだ三分咲きでしたが、
これからさらにたくさんの薔薇が開花し、満開を迎える予定です。

花地蔵さま

園内には「花地蔵さま」も

庭園をつくったのは、呑山観音寺の副住職である村上了然さん。
きっかけは、コロナ禍で外出することが減った3、4年前のことでした。
「人との交流が減ったことで、気持ちの落ち込みを感じている方々のお話を聞き、
お寺にお参りに来た方が癒され、元気になれるような場所をつくりたいと考えました」

お寺の資材置き場として使われていたスペースを活用し、
ほとんどDIYで作り上げたという、素朴さと優しさに満ちた小さな花園。
薔薇の香りで心が穏やかになった後は、天王院本堂での
写経体験に挑戦してみるのもオススメです(志納金500円)。

特別御朱印散華

入園時にいただける特別御朱印散華は、本や手帳にはさんでお守りにも。
薔薇まつりの期間中は「小さな観音市」も開かれており、
キッチンカーや出店が日替わりで出店予定です。

information

map

呑山観音寺 薔薇まつり

開催期間:2024年5月19日(日)〜6月9日(日)

開園時間:9:30~16:30(最終入場)

会場:呑山観音寺 福岡県糟屋郡篠栗町萩尾227-4

拝観料:一般400円 ※中学生以下無料

Web:公式ホームページ

Instagram:花筵庭 @nomiyama_rose_garden