精神科医・星野概念の旅コラム 「初めての酒蔵見学。 醸造家を質問攻めにした夜」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第41回は、精神科医の星野概念さん。

発酵、なかでも日本酒に興味があり、
尊敬する醸造家に会えるならば、
地方にまで足を運ぶことを厭わないという星野さん。

しかしながら、まだ酒蔵見学に行ったことがなく、
実際の酒造りをしている醸造家にも会ったことなかった頃、
ある酒蔵を行く機会を得る。

聞きたいことがたくさんあったようですが、
初めての体験で緊張していたという星野さん。
実りのある旅になったのだろうか。

発酵とメンタルヘルスは似ている

旅の多くは、メンタルヘルスや発酵に導かれることが多いです。
両者は僕のなかでは強いつながりがあります。
目に見えない微細な変化が実は常に生じ続けていて、
あるときそれが目視できたり、実感することができるものになるというのは
多くの物事に共通したことかもしれません。
僕はメンタルヘルスや発酵の学びを通してそれを感じています。

人のこころは簡単には変わりません。
でも、長い年月を振り返ってみると、
いろいろな物事に対する向き合い方は変化しているはずです。
この変化に関係するのは年齢だけではありません。
さまざまな経験や取り組んだ自己研鑽のような物事が、
年月を経て本当に少しずつかたちになっているのだと思います。

酒づくりで考えてみると、タンクの中に入っているのが水と米だけだったはずなのに、
実は地道に発酵のプロセスが進んでいて、
目に見えない反応がタンクの中ではたくさん生じています。
そしてあるとき、そんな少しずつの変化が形になり、
タンクの中の液面にポコポコと反応が現れ始めるのです。

メンタルヘルスと発酵の重なりについては、
これ以外にもたくさん感じていることがあり、
僕はそれを追い求めて旅をしています。
自分の活動地域ではなくても、
メンタルヘルスの中で気になる取り組みをしている場所を見学できる機会があれば
出かけていくし、
尊敬する醸造家とコミュニケーションできる可能性があるならば、
迷わず足を運んでいます。
そんな旅が始まったときの体験を書こうと思います。

田中知之(Fantastic Plastic Machine)プロデュース。 京都〈FUL〉は 静謐なサウンドフォレスト

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは京都市。

森に彷徨い込んだようなおだやかなサウンドスケープ

コロンボ(以下コロ): 音が上から降ってくるって気持ちいいもんだね。
すこぶる心地いいので、チルっちゃったよ。

カルロス(以下カル): 〈ドルビーアトモス〉とかの空間オーディオってこと?
サラウンドを進化させた7.1.4chのいわゆる多次元システムで聴いたのかな?

コロ: 京都にある〈FUL〉っていうミュージック・ラウンジなんだ。
いわゆる空間オーディオの文脈とはちょっと違くて、
サウンドフォレストと標榜するだけに、森に迷い込んだみたいなんだよ。

ソファと木があふれる店内。

北アフリカやモロッコの建築様式をベースにつくり上げたサウンドフォレスト。

カル: FPM(Fantastic Plastic Machine)の田中知之さんが
プロデュースしたスペースだよね。空間オーディオとはどう違うの?

コロ: いま、いちばんイケてるアメリカの〈1 SOUND〉ってところの
スピーカーシステムを採用していて、
すべてのスピーカーは天井に配置されているんだ。

カル: 〈1 SOUND〉っていえば、クラブイベントで人気の〈VOID〉に続く、
サウンドシステムのアップカマーだね。

コロ: そうそう。セレブや音楽好きがこぞって集まる
バリ島のスミニャックにあるビーチラウンジ
〈POTATO HEAD〉のシステムもそうだよ。

カル: 〈POTATO HEAD〉っていえば、
この間、細野晴臣さんも出た〈NTS One Day Bali〉が行われたところだ。
〈1 SOUND〉って何がすぐれているわけ?

コロ: 田中さんによれば、非常に解像度がよくて、
周波数帯の整理が行き届いているんだって。

カル: 周波数帯の整理が行き届いてるって?

コロ: ある程度の音量で聴いたとき、
ダイナミズムをたっぷり感じるにもかかわらず、
人の会話も聞き取りやすいってこと。

カル: ラウンジにはうってつけだけね。

コロ: しかも小口径のスピーカーにも関わらず、いい音圧でちゃんと鳴るんだ。

テーブルと木にあふれる店内。

森に迷い込んだような空間。プラントデザインは〈MAESTRO〉の綛谷武史さんと〈松竹園〉の竹岡篤史さんが担当。

店内の壁にも自然のアート。

店内は3つの空間から構成される。自然光が入る日没前の独特の表情もまたたまらない。

支笏湖のパワースポット 〈苔の回廊〉を散策して ひと夏の思い出をつくろう!

「水の謌」の宿泊とセットになったアクティビティプランが登場

さまざまな活火山と、それに基づく自然環境が魅力の
北海道支笏洞爺国立公園。

北海道支笏洞爺国立公園

この公園の樽前山北西側の麓、支笏湖南西の場所に、
火山活動とともに長い年月をかけて形成された
異世界の自然空間〈苔の回廊〉という回廊があります。

高さは3~10メートルほど。
壁一面に苔が覆われた数百メートルにもわたり、
緑色の濃いものやふわふわしたものまで、
80種類以上のさまざまな苔が自生する神秘的な場所です。

今夏、そんな苔の回廊をめぐる体験ツアーが含まれた宿泊プランが、
千歳市支笏湖温泉の〈しこつ湖 鶴雅リゾートスパ 水の謌〉より登場しました。

ツアーの内容はというと、〈水の謌〉に宿泊した翌日、
朝9時から約2時間苔の回廊を回るというもの。

苔の回廊をめぐる体験ツアーガイド

〈しこつ湖 鶴雅リゾートスパ 水の謌〉のスタッフがツアーガイドを担当。

山道のため、運動靴またはトレッキングシューズ、
動きやすい格好(長袖・裾が細めのパンツなど)での参加が必須。

福岡観光の新発想。 〈よかバス〉に乗って ちょっとだけ遠くへ

いくつかの観光名所をめぐりたいとき、気になるのは交通手段。
電車やバスを時間通りに乗り継ぐのが難しかったり、
レンタカーだと「誰が運転する?」問題が勃発したり、
都心部を離れるとなかなかタクシーがつかまらなかったり……
「自由に観光する」って、結構たいへんですよね。

そんなとき、便利なのが「バスツアー」です。
観光バスなんて、乗ったことない!という人も、
決まったルートをめぐるだけなんて……という人も、
ぜひ一度、〈よかバス〉公式サイトをチェックしてみて。
こんな所に行ってみたかった! という観光スポットに出合えますよ。

「よかバス」って何?

宮地嶽神社からの眺め

光の道と呼ばれる、宮地嶽神社からの眺め。写真提供:福岡県観光連盟

公式サイトによると、よかバスとは、
福岡県内を手軽に周遊できるバスツアーのこと。
グルメツアーだけでなく、絶景・歴史・文化・体験など
さまざまなコンセプトのツアーがあり、
福岡県の多様な魅力を楽しむことができます。

訪れる皆さんに、“よか場所”、“よか食べ物”、
そして何より“よか人”に出会っていただき、
「福岡はよかね」と思っていただきたい、という想いが
込められたネーミングなのだそう!

今、なぜバスツアーなのか? という疑問について、
福岡県デスティネーションキャンペーン実行委員会事務局の
よかバス担当者さんにうかがいました。

「福岡を訪れる観光客は、空港や主要駅がある
福岡市や北九州市(政令市)に集中しています。
この両政令市に集中する観光客を県内各地に周遊していただくため、
乗り換えなどなく、効率よく観光地を周遊できるよかバスを企画しました」

もともとは、2024年4月にスタートした「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」の
一環として始まったよかバス。
複数の旅行会社が企画するさまざまなツアーを
「よかバス」という統一名称で、一元化して紹介することで
お目当てのツアーを検索しやすくなっています。

「すでに、『短時間に多様な観光スポットを巡ることができた』
『車を運転しないので、ひとりで行けなかった場所に行けてうれしい』など、
ツアー参加者からのうれしい反響も届いています」

この夏おすすめの「よかバス」ツアーは?

今年の夏休み、福岡に帰省や観光の予定がある人や、
もともと福岡に住んでいる人にオススメのツアーについて伺いました!

フルーツ狩りが楽しめる観光農園

朝倉市やうきは市には、フルーツ狩りが楽しめる観光農園も多い。

「ひとつ目は、朝倉でフルーツ狩りとBBQを楽しむツアーです。
いまの季節だと梨狩りが楽しめて、1キロの梨のお土産付きというもの。
BBQは手ぶらでOK、地元の名産品・直売品のお買い物もできます」

朝9時に博多駅集合、夕方16時半ごろに博多駅着予定なので、
家族や友人と一日たっぷり遊びたい人にぴったりですね。

天然氷と地元の特産でつくる 「昇龍氷(のぼりりゅうごおり)」。 〈おかざきかき氷街道〉のかき氷8選

徳川家康の出身地としても名高い愛知県岡崎市。
歴史深い市の東部にある額田(ぬかた)地域には、「仙水」と呼ばれる
平成の名水百選にも選ばれた湧水群があります。
この地域の宝といえるおいしい軟水でつくった氷と、
地元特産物やフルーツなどを使ったかき氷でまちおこしをしていこうと、
岡崎市ぬかた町商工会が中心となり、2018年に
〈おかざきかき氷街道〉が誕生しました。

〈おかざきかき氷街道〉に出店するのは、地元農家や飲食店が運営する8店舗

かき氷屋として出店しているのは、
額田地域で茶問屋やユズ農家、飲食店を経営する人たちです。
額田の特産を知ってもらおうと、本業の強みを生かしたかき氷を
期間限定で販売しています。

「かき氷をきっかけに自然あふれるこの地域を知ってもらいたい、
異業種の方が手を取り合い『街道』と名をつけて、みんなで地域を
盛り上げていきたいとの想いで始まりました。
〈おかざきかき氷街道〉では、毎年テーマをもうけ、
工夫を凝らしたかき氷をつくっていただいています。
2024年のテーマは、干支である「辰年」にちなみ、
また岡崎城が別名「龍城」と呼ばれていたことから、
龍が昇っていくイメージで、運気が上がることを願い
『昇龍氷(のぼりりゅうごおり)』としました」
と、おかざきかき氷街道事務局。

〈おかざきかき氷街道〉では、この8店舗をめぐるスタンプラリーも開催。
全店舗を制覇した方には、特製の御朱印帳がもらえるなど、うれしい特典もあります。
かき氷を食べて、暑さをしのぎ、さらには運気をあげる
一石二鳥のイベントといえそう。

information

おかざきかき氷街道「昇龍氷」

期間:4月27日(土)~9月29日(日)

参加店舗:岡崎市額田地域の8店舗

地産地消にこだわり、手づくりの練乳でフワフワ食感を楽しめる。〈CAFE KURAGARI〉の「銀白龍~fromage~」

銀白龍~fromage~ 1650円。

銀白龍~fromage~ 1650円。

地産地消の食材を中心に、旬のおいしさを味わってもらおうと、
食事やスイーツを提供している〈CAFE KURAGARI〉。

手づくりの練乳エスプーマでつくったフロマージュソースのかき氷は、
夏空に浮かぶ白い雲を連想させてくれて、夏気分がさらに盛り上がります。
氷の中には、自家製アイスとユズのジュレ、銀箔をトッピングし、
美しく輝く龍をイメージしています。
昇竜氷以外にも、地元産のブルーベリーソースや
オリジナルブレンドコーヒーでつくる
自家製シロップのかき氷を用意しています。

information

CAFE KURAGARI 

住所:愛知県岡崎市石原町牧原日影3 

TEL:0564-83-2232

営業時間:10:00~17:00(16:00 L.O.)※商品がなくなり次第終了

定休日:金、土曜

Web:CAFE KURAGARI

Instagram:@cafe_kuragari

勝手に作る商店街サンド: まるでシーガイアのように そそり立つチキン南蛮サンド完成! 宮崎市・若草通商店街編

商店街サンドとは

〈商店街サンド〉とは、
ひとつの商店街(地域)で売られているパンと具材を使い、
その土地でしか食べられないサンドイッチをつくってみる企画。
必ずといっていいほどおいしいものができ、
ついでにまちの様子や地域の食を知ることができる、一石二鳥の企画なのだ。

宮崎県宮崎市が舞台!

今回やってきたのは宮崎県宮崎市。
まちなかにはヤシの木があちこちに見え、まさに南国!

空港からも近い県庁や定番の観光スポット・青島神社では、
南国の木々に囲まれていてとても宮崎らしい光景を見ることができる。

宮崎県庁。九州で唯一、戦前から残る県庁舎だそう。繁華街からも近い場所にあります。

宮崎県庁。九州で唯一、戦前から残る県庁舎だそう。繁華街からも近い場所にあります。

宮崎市の定番観光スポットのひとつ、青島神社。島全体が境内とも言われ、熱帯・亜熱帯植物に囲まれ神秘的! 島へは橋がかかっていて、徒歩で渡れます。

宮崎市の定番観光スポットのひとつ、青島神社。島全体が境内とも言われ、熱帯・亜熱帯植物に囲まれ神秘的! 島へは橋がかかっていて、徒歩で渡れます。

青島神社までの道には「鬼の洗濯岩」と呼ばれる奇岩の景色が広がり、こちらも圧巻!

青島神社までの道には「鬼の洗濯岩」と呼ばれる奇岩の景色が広がり、こちらも圧巻!

自然のエネルギーあふれる宮崎市にはほかにも、
まちなかに厳かに鎮座する宮崎神社や一大リゾート施設のシーガイアがあったり、
足を伸ばせば古代ロマンあふれる古墳群などを見たりすることができる。

海沿いにそびえ建つリゾート施設のシーガイア。そこだけ嘘みたいに大きくて驚く!

海沿いにそびえ建つリゾート施設のシーガイア。そこだけ嘘みたいに大きくて驚く!

そんな宮崎市には、商店街がたくさん集まる賑やかなエリアがある。

これまたヤシが並び南国感ただようメインストリート「橘通り」、
通称“ニシタチ”と呼ばれ郷土料理店や居酒屋が集まる「西橘通り・中央通り」、
生活用品やファッションが集まる「一番街・若草通り」など。

そのなかでも今回は、若草通り周辺に絞って商店街サンドをつくってみることにした。

若草通商店街。歴史は長く、宮崎市民に深く愛されているという通り。

若草通商店街。歴史は長く、宮崎市民に深く愛されているという通り。

ファッション系のお店や、気軽に寄れそうな食事処がチラホラ。

ファッション系のお店や、気軽に寄れそうな食事処がチラホラ。

若草通商店街は、ファッションからグルメまで、幅広いジャンルのお店が並ぶ商店街だ。

細道がおもしろい!

歩いてみると、ところどころに散策甲斐のある横道が通っていることに気づく。

もっとも目を引いたのは「楽しいお買い物 文化ストリート」の看板がある細道。
時代を感じさせるデザインの看板に、思わず胸がキュンとなる。

昔はこの細い道の中にたくさんお店が並んだのだろう。

こういう入り口があったら入りたくなっちゃいますよね!

こういう入り口があったら入りたくなっちゃいますよね!

時が止まってしまった通り。魚屋さんがあったんだな。

時が止まってしまった通り。魚屋さんがあったんだな。

この文化ストリートにはかつてレコード店や化粧品屋、呉服屋、靴屋などの
日用品店のほかに、鮮魚店やお肉屋、八百屋、お菓子屋なんかもあったようだ。

その当時なら、このストリートだけで商店街サンドが完成したかもしれない。

細道のなかにはいい雰囲気の飲食店がまだ残っているところも。

細道のなかにはいい雰囲気の飲食店がまだ残っているところも。

宮崎の代表的なグルメ、チキン南蛮の発祥のお店〈味のおぐら〉も発見!

宮崎の代表的なグルメ、チキン南蛮の発祥のお店〈味のおぐら〉も発見!

被災地・珠洲市にできた 小さなホテル〈notonowa〉 海と田んぼが見渡せる場所で 移住者が運営

古いモーテルのリノベーションをきっかけに
ノマド生活から珠洲に土着する暮らしへ

能登半島地震から半年が経った2024年7月1日。
被害が大きく、復旧作業が遅れる能登半島の先端、珠洲市に、
客室は7部屋だけという小さなホテル〈notonowa〉がオープンしました。
運営の中心となっているのは、能登に住みはじめてちょうど1年になる移住者です。

〈notonowa〉があるのは珠洲市の海沿い。
内浦である飯田湾を臨む、少しだけ高い場所に建っています。
道路を挟んで、若い稲が風に揺れる田んぼ、
そして穏やかな海が広がる見晴らしのいい場所です。
冬の空気が澄んだ日には東側に立山連峰も見えます。

ホテル〈notonowa〉

ホテル〈notonowa〉の裏

裏に回るといっそう建物の歴史が感じられます。

〈notonowa〉の建物はかつてモーテルとして使われていました。
L地形の建物の裏に回ると、1階部分が駐車スペース、2階部分が客室だとわかり、
独特のスタイルに少しドキッとします。

入り口も駐車スペース側にひっそりとあり、フロントはなくタブレット端末でチェックイン。
非対面式の採用は省人化だけでなく、建物の歴史を匂わせる目的もあるのだとか。

角部屋の「珠」。

角部屋の「珠」。窓からの景色は最高!

7部屋ある客室は、それぞれ能登や珠洲にまつわる名前がついています。
部屋のリノベーション案には金沢美術工芸大学の学生たちが参加。
「このホテルが地域に馴染むためには?」と問いかけてアイデアを出してもらいました。

「珠」という名前の部屋は、
珠洲が持つ洗練されたシンプルさとナチュラルな姿を見せることがテーマ。
一見白い壁紙も、右と左では模様が異なり、一方は波の模様が採用されています。
カーテンを開けると穏やかな海が見渡せる部屋にぴったりです。
また、一部の家具はこの場所で以前から使われていたものも活用しています。

カフェ〈惚惚(ほれぼれ)〉

建物1階ではカフェ〈惚惚(ほれぼれ)〉も営業を開始しました。
カレーや季節に応じたスープ、チャイなどスパイスを利用したメニューに加えて
地域の人たちが、集まる場所にしたいとお酒も用意。
車での移動が当たり前の地域なので
飲酒後は空いている客室に宿泊可能です。

珠洲の人たちが共有する恩送りの文化に触れて

改装工事前の様子。

改装工事前の様子。(notonowa提供)

建物は、モーテルの営業を終えてからずいぶん経っていて廃墟同然でした。
リノベーション計画が持ち上がったのは、2023年の春のことです。
そのとき建物のオーナーから声がかかったのが
現在ホテル運営を担当し、カフェの〈惚惚〉を経営する畠山陸さんです。

現在27歳の畠山さん。
20歳前後から出身地の札幌でゲストハウス立ち上げに関わったり
イベントでのカフェ出店をしたりしてきました。

その一方で、webのプログラミングやデザインの技術を身につけて
複数の地方拠点と東京を行き来。いわゆるノマド暮らしを実践していました。

ストレスで体調を崩した経験から、人間らしい生き方って?と考えていた頃
移住で珠洲に住む知人から
「君が探しているものはここにあるかもしれない」と
誘われ、初めて珠洲を訪れたのが2022年の夏です。

「最初は1週間ほどの滞在でしたが、
珠洲の人たちはとてもよくしてくれました。
いろいろ手配をしてくれたり、人を紹介してくれたり、野菜をたくさんくれたり。
お世話になったお返しがしたいというと、
『自分ではなくて子や孫の世代や、次に珠洲に来る人にしてくれたらいい』。
ほとんどの人にそう言われました」

畠山陸さん

畠山陸さん。ホテルとカフェ運営の傍で珠洲の発信にも意欲的。

土地の人たちが持つ、代々に渡って助け合い続ける文化は、
本州に比べると歴史が浅い札幌で育った畠山さんにとって
それまで触れたことがなかったもの。

金銭的な利益追求一辺倒とは異なる暮らしぶりに惹かれ
繰り返し訪れるうちに伝統ある祭りや工芸品の魅力にも気づきました。
知り合いも増えてリノベーションホテルの計画に参加しないかという声もかかったのです。

〈Satologue〉 奥多摩の沿線を丸ごとホテルに。 レストラン・サウナが先行オープン!

地元の自然を目一杯生かしたレストラン&サウナ

東京の避暑地であり、夏になると深い緑が生い茂り、
太陽の光を含んでキラキラと輝く渓谷が美しい奥多摩。

ここに2024年5月16日、沿線全体をホテルに見立てる
地域活性化プロジェクト〈沿線まるごとホテル〉の一環で、
プロジェクトの中核となる施設 〈Satologue(さとローグ)〉の
レストラン及びサウナが期間限定特別サービスメニューでオープンしました。

〈沿線まるごとホテル〉とは、
地方創生事業を手掛ける株式会社さとゆめ
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が出資する〈沿線まるごと株式会社〉による、
駅とその周辺の集落に点在する地域資源を”編集”し、
地域全体を”一つのホテル”に見立てる世界観をつくりだすプロジェクト。

〈Satologue〉

photo by Daisuke Takashige

その第1弾となる〈Satologue〉は、過去にこの地が林業で栄え、
養魚場が営まれていた背景を引き継ぎ、歴史・文化・自然や特産品、
人々の営みと地域資源の魅力を生かしたさまざまな体験をお客さまへ提供し、
「ふるさと」を感じる滞在体験の創出を目指していく施設です。
地域の新たな雇用創出も期待されています。

設計は、瀬戸内の宿泊型客船〈guntû(ガンツウ)〉
などを手掛ける堀部安嗣氏が担当。

レストラン〈時帰路(ときろ)〉

photo by Daisuke Takashige

「すでにそこに存在している宝物のような価値あるものに気づき、
それに囲まれているということを、訪れるゲストの方に感じていただきたい」
という思いのもと、土地の空気感と非日常を体験できる空間を設計。

レストランは、屋外と室内を極力隔てることのないよう、
古民家のフィールド側に大きな窓をデザイン。
床座である日本家屋の特徴を生かし、
窓に沿って床座のカウンター席が設けられ、
景色と一体感のあるつくりになっています。

発汗を重要視した薪サウナは、湿度と温度のバランスや、
サウナ小屋の壁といった表面温度と熱容量など、
より快適なサウナ体験ができるよう加味された本格派です。

堀部 安嗣

photo by Daisuke Takashige 
堀部 安嗣 1967年神奈川県横浜市生まれ。1990年筑波大学芸術専門学群環境デザインコース卒業。1991−1994年益子アトリエにて益子義弘に師事。1994年堀部安嗣建築設計事務所を設立。2002年第18回吉岡賞を「牛久のギャラリー」で受賞。2016年日本建築学会賞(作品)を「竹林寺納骨堂」で受賞。2021年2020毎日デザイン賞受賞。2007年−京都造形芸術大学大学院教授。2022年−放送大学教授。

限定コースを提供するレストランのランチ営業と、
宿泊者以外の方が使えるサウナを、
5月16日から宿泊棟開業までの期間限定オープン。

奥多摩の多彩なストーリーを詰め込んだレストラン

レストラン〈時帰路(ときろ)〉

photo by Daisuke Takashige

学生時代、共に料理を学んだ駒ヶ嶺侑太さんと高波和基さんが
都内から移住し、奥多摩のさまざまなストーリーを詰め込んだ
料理を提供するレストラン〈時帰路(ときろ)〉。

期間限定のランチコース

photo by Kazuhiko Hakamada

ここでは、奥多摩の自然を感じられる沿線ガストロノミー(*1)に、
フレンチのエッセンスを加えた期間限定のランチコースを提供。
宿泊棟開業後は、宿泊者のみに提供されるフルコースディナー相当を
ランチにアレンジした期間限定のお得なコースとなるそうです。

(*1) 沿線ガストロノミー:「ローカルガストロノミー」が、地域の風土、歴史、文化を
料理で表現することであるのにもとづき、
沿線地域の風土、歴史、文化を料理で表現する意味の造語

敷地内の養魚場跡地を再利用した畑

photo by Daisuke Takashige

そうだ 京都、行こう。 青紅葉が美しい夏の京都がくれる “癒し”をめぐる旅

JR東海で1993年からスタートしたキャンペーン
「そうだ 京都、行こう。」は今年で30周年を迎えました。
今ではすっかりお馴染みのCMですが、
今年は「京都がくれる癒し」をテーマに、女優の安藤サクラさんが登場。
青紅葉の美しい季節ならではの京都をぶらりと巡ってみませんか?

ここでしか体感できない空気を感じに〈蓮華寺〉へ

京都市左京区に位置する〈蓮華寺〉は、
江戸時代に洛中から現在の場所に再興された天台宗の寺院です。

安藤サクラさんがCMで青々とした青もみじを眺めながら座っているシーンで
話題となっているのは〈蓮華寺〉の池泉回遊式庭園。
本キャンペーンのキービジュアルとなったシーンは、本堂の方から書院を撮影しています。

書院からは柱を額に見立てて絵画のように庭園を眺めることはできますが、
本堂のほうからの撮影は禁止のためご注意を。

庭園の青もみじも美しいのですが、お寺は信仰の場所。
石組みや灯籠など、庭園にはどんな意味があるのかを学びつつ、
ここでしか感じられないお寺の空気を体感してみては。

information

蓮華寺

住所:京都市左京区上高野八幡町1

電話番号:075-781-3494

拝観時間:9:00~17:00

拝観料:500円

Web: 蓮華寺

〈カフェ・ドン バイ スフェラ〉

緑が豊かな遊歩道沿いにある〈スフェラ・ビル〉は、
2003年にスウェーデンの建築ユニットの設計により、
インテリアブランド〈スフェラ〉の発信拠点として、
既存のストラクチャーを総床面積1200平米に拡張し、リノベーションされたビルです。

緑道沿いの入り口から〈カフェ・ドン バイ スフェラ〉の店内へ。
スフェラオリジナルのファニチャーやインテリアアイテムなどが設置された
広々とした空間で、お茶や食事が楽しめます。

ドリンクは、お薄、煎茶やほうじ茶などの日本茶のほかに、
挽きたての豆をハンドトリップで淹れるコーヒーなどを提供。

フードは京都の銘店による上生菓子や和菓子、新鮮な野菜を使った軽食など、
季節のメニューが味わえます。

また、1階にある〈スフェラ・ショップ〉は、
個性豊かなクラフトから、最先端のコンテンポラリーデザインまで
魅力的なファニチャーやインテリア雑貨が並びます。
柔らかな空気が漂う空間は散歩途中に立ち寄るのにピッタリ。
ここでしか出合えない癒しを見つけに立ち寄ってみては。

information

カフェ・ドン バイ スフェラ

住所:京都市東山区縄手通り新橋上ル西側弁財天町17 スフェラ・ビル0F

電話番号:075-532-1070

営業時間:12:00〜19:00

定休日:水曜(臨時休業あり)

Web:カフェ・ドン バイ スフェラ

石川県小松市の秘境、 滝ヶ原町で開催される 音楽、食、アートの祭典〈ishinoko〉

美しい山々に囲まれたまち、石川県小松市の秘境・滝ヶ原町

地域の食や音楽、アートの祭典〈ishinoko〉は、
石川県小松市の秘境、滝ヶ原町で開催されている。
会場はのどかな場所で、自然を満喫しながら、
ローカルのおいしいものを食べたり、音楽やアートを体感できる。

オーガナイザーはイギリス、デンマーク、大阪とインターナショナルな若者たちで、
地元住民と一緒に楽しく過ごす姿を見ていると、
なんだか不思議な空間に感じる。

オーガナイザーの若者たちは、
滝ヶ原町の豊かな自然と地域コミュニティからインスピレーションを受け、
地域に暮らす若いアーティストやクリエイター、友人グループを集め、
独自の祭典を始めた。

簡易なテントと1台のステージから始まったishinokoは、
2023年に4回目を迎え、国内外から約520人の来場者を集める国際的な祭典となった。

2023年、ishinokoでの様子。

2023年、ishinokoでの様子。(写真提供:Hiro Yamashina

小松市・滝ヶ原町はもともと、採石、九谷焼、炭焼き、紙すき……、
さまざまな工芸文化と手仕事の生活が受け継がれ、
町民は米や野菜を自給し、隣人と助け合いながら暮らす地域。

豊かな自然と文化が息づくこのまちで行われている〈ishinoko〉とはどんなものか。
元来、地域と深く結びついているはずの「日本の祭りの精神」への
リスペクトから生まれた祭典。
目指すのは滝ヶ原町の自然と調和した未来の地域づくりだという。

保護猫との宿泊体験ができる複合施設が 大分・阿蘇くじゅう国立公園内に オープン

気に入った猫は譲渡を受けることも

大分県の〈阿蘇くじゅう国立公園〉内に6月21日、
保護猫との宿泊体験ができるユニークな複合施設
〈YUFUIN HOGONEKO FOREST〉がオープンしました。

運営するのは、自身も3匹の保護猫と暮らし、ジュエリーブランド〈Catton〉や
イタリアンレストラン〈ZORO〉などの運営の傍ら、5年に渡り保護猫活動を
行ってきた崔昌奎さん・梅崎尚子さん夫妻。

ふたりの「保護猫という存在をもっと多くの人に知ってほしい」という想いから、
4年の構想期間を経て、この複合施設が開業しました。

およそ8100平米もの広大な敷地には、レストランなどが入る本館とコテージが点在。

クヌギの木々に囲まれたコテージ。

クヌギの木々に囲まれたコテージ。

「森と猫のヒュッゲ」をテーマにつくられたコテージでは、
さまざまな理由で飼い主を失った保護猫たちとの宿泊が体験できます。

木の香りや温もりが感じられるウッディーなリビングには、
保護猫たちを愛でたり、まったりしたりする時間を
大切にしてほしいという想いから、あえてテレビは設置されていません。

キッチン完備のリビング。

リビングにはキッチンも完備。

ベッドが設えられたロフト。

ベッドが設えられたロフト。

そして、3重扉の向こうには、猫のための部屋が用意されています。

室内には、ソファや机、椅子も用意されているため、
猫に癒されながら仕事をすることもできます。

また、リビングにいるときでも猫の様子を愛でられるよう、
部屋の全面がガラスで仕切られているのも、猫好きには
たまらないポイントです。

明るい光が差し込む猫のための部屋。

明るい光が差し込む猫のための部屋。

保護猫と過ごす様子。

保護猫と思い思いの時間を過ごせます。

彼ら、彼女たちはどう表現した? 文化人が愛した船旅

船旅への愛情表現を通じて、船旅の楽しさを知る

1990年頃、バブルの影響もあって海外旅行への機運が高まっていた時代。
日本籍の大型客船が誕生し、クルーズ旅行は一部の富裕層のものから、
頑張れば手が届く憧れとなった時代でもある。
優雅で刺激的なクルーズ船旅は、数多くの文化人からも愛され、
クルージングを楽しむ様子は作品を通してうかがい知ることができる。

今回は5名の作家や脚本家、イラストレーター、フォトグラファーのエッセイや著作から、
船旅への愛情表現を紹介する。
詩的で独特な表現を通して、船旅の真のよさを感じてもらいたい。

物見遊山は楽しいけれど、移動は疲れるというのが旅ならば、
船旅は、旅にあって旅にあらずと言い切れます。
移動のあいだののんびりとした時空間、
浮き世の憂を、丸ごと全部陸に置いてきぼりにしてきてやったぞぉ、という快感! 
たまりません。
(宮部みゆき『波』掲載『なんでもありの船の旅』新潮社刊より)

ミステリー作家の宮部みゆきさんが〈ふじ丸〉に乗り、
小笠原クルーズを初体験した紀行文。
ふじ丸は2013年に引退し、2021年にはスクラップとなってしまっただけに、
今や貴重な体験記だ。
その内容はデラックスルームをひとり占めし、
クジラありカジノあり機関室見学から冷凍庫探険まで。
まさしく“なんでもありの”船の旅を軽快に綴る。

人には惚れてみよ、船にはのってみよ。
360度の水平線から登って沈む太陽、白い雲、青い海、
24時間変化に富んだ揺り籠。
たまらんです、たまらんです。
ああ、もう、乗りたい! 船が呼んでいる!
(杉浦日向子『杉浦日向子ベスト・エッセイ』掲載『日経おとなのOFF』より)

オシャレにもグルメにも美容にも収集にも興味がないという文筆家・杉浦日向子さんの、
唯一の道楽は「船旅」なのだとか。
ギャラの換算は、「船何泊分」で考えるというから筋金入りの船好きだ。
NHK『お江戸でござる』レギュラー撮りの関係で、
6日以内の国内ショートクルーズが多かったそうだが、
2度のがんの手術後に南太平洋クルーズへ出かけたという。
最期まで船を愛していた人柄が偲ばれる。

私はアラスカクルーズで船旅に目覚めてから、
郵船クルーズの「飛鳥」や
その後継船の「飛鳥」でよく船旅をするようになりました。
長い航海になると、乗った時は別々だった人たちが、
船を降りる頃にはたいてい長年の知り合いのようになっています。
つくづくクルーズは友だちをつくるにはもってこいの場だなと感じています。
(橋田壽賀子『旅といっしょに生きてきた』祥伝社刊より)

夫婦で船に乗り互いにじっくり向き合うことにより、喧嘩をすることがあっても、
逃げも隠れもできないし、海の上だから、嫌なことを水に流すのは簡単かも……
と、夫婦での船旅参加を提唱する脚本家の橋田壽賀子さん。
ご自身も、世界一周クルーズ、南極クルーズ、南米クルーズと4度のクルーズ旅を
経験しているのだとか。旅の準備、持ち物や船上での人付き合いの話は、
現代にも通じるものあり。乗る前に読みたい1冊だ。

船旅は愉しい。それはめちゃくちゃに愉しいといってもいい。
素敵な人と出会い、コックさんご自慢の最高の料理を味わい、
海という自然の中に身を任せながら、連夜のパーティーで盛り上がる。
そこではあらゆる愉しみがよりどりみどりなのである。
(中略)
ナーンにもしない。ただひたすら遊ぶ。
こんなぜいたくな時間の過ごし方が船旅の豊かさなのだろう。
(石郷岡まさお『船旅への誘い クルージング讃歌』東京書籍刊より)

1990年に〈にっぽん丸〉3代目の初航海に参加した
フォトグラファーの石郷岡まさおさんが写真を、
イラストレーター柳原良平さんが文章を寄せた、『船旅への誘い クルージング讃歌』。
そのあとがきに記されているのは、クルーズ船に対する石郷岡さんの熱い思い。
スナップフォトのような軽やかな写真からも船の魅力がひしひしと伝わってくる。

今、家にいて、こうして文章を書いていて、一息入れて目をつぶり、
静かな甲板の上でデッキチェアにもたれて
海の音だけが聞こえてくる情景を思い出すと、
ああまた船に乗りたいなァと思えてくる。
キャプテンのパーティーやカジノを思い出しても
私はさして船に乗りたい気持にはなってこない。
何もしないもの憂げな甲板でのひとときが私には魅力なのだ。
(柳原良平『船旅への誘い クルージング讃歌』東京書籍刊より)

時は平成元年。クルーズ元年ともいえる、日本籍の大型客船の相次ぐデビュー。
国内外問わずクルージングに魅了され続けてきたイラストレーター・柳原良平さんが、
仲間たちとともににっぽん丸の初航海へ。
食事、バーはもちろん、甲板でぼんやりと過ごしたかと思えば、
船内プログラムにも顔を出し、客人との会話を楽しむなど、船を使いこなす技はお見事。
「楽しませてもらおうと思うのではなく、楽しんでやるぞと思って船に乗ってほしい」
という氏の言葉が思い返される。

クルーズ船で有明からまずは別府へ、 そして佐世保へ。 港をつないでいく旅

船上から見た港まちは、味わい深い

港まちにとって、クルーズ船の初寄港はとても大きなニュースらしい。
そのことを知ったのも〈クイーン・エリザベス〉での船旅がきっかけだった。

5月上旬。英国〈キュナード〉社の大型客船クイーン・エリザベスが、
大分・別府と長崎・佐世保に初寄港(佐世保は初停泊)した。

船上から見た別府のまち。白い船は大阪行きの〈さんふらわぁ号〉。

船上から見た別府のまち。白い船は大阪行きの〈さんふらわぁ号〉。

先に寄港したのは別府。早朝にもかかわらず、埠頭で「Welcome to Beppu」と手書きの看板を掲げる人がいる。巨大な船舶をひと目見ようと大勢の市民が待っていた。

先に寄港したのは別府。早朝にもかかわらず、埠頭で「Welcome to Beppu」と手書きの看板を掲げる人がいる。巨大な船舶をひと目見ようと大勢の市民が待っていた。

別府港に碇泊したクイーン・エリザベス。

別府港に碇泊したクイーン・エリザベス。

別府では入港セレモニー、佐世保では〈クイーン・エリザベスフェスティバル〉が行われ、
旅客船ターミナルは歓迎ムードに包まれた。

別府でのセレモニーの様子。大分県国際観光船誘致促進協議会長の長野恭紘別府市長(左から3番目)とアウレリアーノ・マッツェッラ船長(中央)ら関係者が挨拶し、港章の交換が行われた。

別府でのセレモニーの様子。大分県国際観光船誘致促進協議会長の長野恭紘別府市長(左から3番目)とアウレリアーノ・マッツェッラ船長(中央)ら関係者が挨拶し、港章の交換が行われた。

佐世保港では、佐世保市のご当地キャラクター・バーガーボーイとボコちゃんが出迎えてくれたほか、地元の高校生によるバトントワリングの演舞や、ゴスペルコンサート、地元企業による出店で、初寄港・初停泊を歓迎した。

佐世保港では、佐世保市のご当地キャラクター・バーガーボーイとボコちゃんが出迎えてくれたほか、地元の高校生によるバトントワリングの演舞や、ゴスペルコンサート、地元企業による出店で、初寄港・初停泊を歓迎した。

初めてその土地に寄港をすると、寄港地から盾や記念品が贈呈されるという慣習がある。
船内の一角に、それらの品物が博物館のように納められているのだが、
世界各国の贈り物のなかで、ひときわ存在感を放つ、
日本の伝統工芸品の数々を見ることができる。
広島港の記念品はしゃもじ、神戸港は高砂人形、
秋田港は本荘ごてんまりといった品々が並び、
世界中を旅してきたクイーン・エリザベスの軌跡と、
寄港地の名産・特産を知ることができるスペースは一見の価値ありだ。
今回の旅を経て、別府市の竹細工と、佐世保市の三川内焼の記念品も加わるのだという。

日本の伝統工芸品が集合する一角。バー〈コモドアー・クラブ〉へ行く通路にあり、多くの客が目にする。

日本の伝統工芸品が集合する一角。バー〈コモドアー・クラブ〉へ行く通路にあり、多くの客が目にする。

別府と佐世保に共通することは、どちらも陸地からは行きにくいところで、
空港からバスやレンタカーで1時間ほど移動することになる。
インバウンドの観光客がもともと多い両市だが、
ダイレクトに2000人から3000人が寄港地にアクセスするクルーズ船は、
インパクトも大きい。

近年ではクルーズ船客を呼び込もうと、国際ターミナルの新設や整備改修、
多言語対応が進んでおり、
別府港は2011年に大型旅客船が接岸可能な旅客船ふ頭が利用開始され、
佐世保港も2015年に国際ターミナルビルを改修し、
〈葉港テラス〉という愛称がつけられた。
他県に目を向けると、2020年に金沢港クルーズターミナル、
東京・有明に東京国際クルーズターミナルがオープン。
隻数も増え、今後ますます“日本のローカル巡りは船旅で”という需要が高まるといえそうだ。

クイーン・エリザベス乗船記  美しき洋上の女王で日本をめぐる

やっぱり船でないと!

筆者はこれまで、『コロカル』の取材先や旅先で大小さまざまな船に乗船してきた。
何なら、すすんで海路を選んですらいた。
博多港から五島列島へ行く深夜便のフェリー、長崎は佐世保の九十九島クルーズ、
竹芝客船ターミナルから大島や式根島へ行くジェットフォイルやフェリー、
北欧や欧州でのクルージングも経験した。

大海原に繰り出していく冒険感、ゆったりと流れる船上の時間、
陸地が見えたときのささやかな喜び。
船旅が好きな理由はいくつもあるが、
とどのつまりは、どんな場所のどんな船からでも、
海上からの景色は忘れ難い美しさで、
それは船でないと経験できないからだろう。

長いコロナ禍が明け、国内外の渡航も規制がなくなった。
久方ぶりの船旅に思いを馳せていた矢先に、
〈クイーン・エリザベス〉に乗る機会を得た。
別府、釜山(韓国)、佐世保、清水に寄港する初夏の10日間の船旅だという。
これが渡りに船か。

こうして私はクイーン・エリザベスに乗る。
初めに言っておくと、これがなんともすばらしい体験だった!
今回の特集のタイトル「船旅礼賛」は、私の心からの気持ちだ。

洋上の女王 クイーン・エリザベスに乗る

5月某日、出港日。乗船の2時間前に到着すると
有明の東京国際客船ターミナルにはすでにクイーン・エリザベスが碇泊していた。
英国女王エリザベス2世に命名された、世界で最も有名な豪華客船だ。

クイーン・エリザベス

船体のデザインは、非常に「船らしい船」だ。
サントリー社「アンクルトリス」の生みの親である
イラストレーター・柳原良平氏が
好んで〈クイーン・エリザベス〉や〈クイーン・エリザベス2〉を
モチーフにしたと聞いていたが、
その流れを組むこの3代目のクイーン・エリザベスもまた、
気品ある佇まいが非常に美しかった。

外観からして巨大だとは思っていたが、
この船が12階建てだと知ったのは船内のエレベーターに乗ってからだった。
2000人超の乗客と約1000人のクルーが10日間以上生活できる、
洋上の移動式ホテル、いや、ここで生活を送るのであれば“まち”だ。
ショップがあり、カフェやバーがあり、アートギャラリーや図書館があり、
トレーニングジムがある。船内では乗客同士すれ違いざまに軽く会釈をしつつ、
プライベートが尊重されるこの感じは、町内会のコミュニティに近いのだと思った。
非日常の環境のなかで、好きに飲食をしたり体を動かしたりと日常を感じられるのは、
船旅のいいところだった。

現行の3代目クイーン・エリザベスは2010年に就航。
初代クイーン・エリザベスの、1930年代のアール・デコを基調とした
落ち着きのある雰囲気に、
タイタニック号の流れをくむ英国伝統の格調の高さを感じさせる。

エリザベス女王乗船の記録が博物館のように展示されている。

エリザベス女王乗船の記録が博物館のように展示されている。

細やかな装飾が美しい大階段。

細やかな装飾が美しい大階段。

注目したのは床。タイルや大理石、カーペット、フローリングなど、
場所によって素材やデザインが細かく変えられ、
パブリックスペースには扉があまり取り付けられていない船内では、
床のデザインの切り替えが空間の区切りのような役割とリズムをもたらす。

廊下のカーペット。直線的で左右対称な図案はアール・デコスタイルを象徴する意匠だ。

廊下のカーペット。直線的で左右対称な図案はアール・デコスタイルを象徴する意匠だ。

船内中央の吹き抜けの、寄木細工製の大きなレリーフも見事だ。
ひと目で上質さや高貴さが伝わるレリーフを中央に据えつつ、
そこまでの動線となる床や階段、手すり、調度品など、
細部にわたって塵ひとつなく磨き上げられている。

船内のシンボル、寄木細工でできた大きなレリーフは、エリザベス女王の甥で世界的な彫刻家・デビッド・リンリーの作品。

船内のシンボル、寄木細工でできた大きなレリーフは、エリザベス女王の甥で世界的な彫刻家・デビッド・リンリーの作品。

ライブラリーの天井はステンドグラス。

ライブラリーの天井はステンドグラス。

そして伝統を重んじるスタイルでもある。
珍しいことに現在でも等級制を維持しており、
キャビン(客室)は大きく4つのカテゴリーに分かれ、
それぞれ専用のメイン・ダイニングを有する。
だが、それも堅苦しいものではなく、メイン・ダイニング以外のカフェや
たいていのレストランはどのカテゴリーでも利用可能なのだ。

 伝統を重んじつつ、この軽やかさも魅力。日当たりのよいカフェスペース〈ガーデン・ラウンジ〉にはポップアート界の奇才・Mr. Brainwash の特注壁画が。

伝統を重んじつつ、この軽やかさも魅力。日当たりのよいカフェスペース〈ガーデン・ラウンジ〉にはポップアート界の奇才・Mr. Brainwash の特注壁画が。

どうやって申し込む? 船内の過ごし方は? クルーズ初心者に捧げる、船旅AtoZ


知っておきたい、クルーズ船のあれこれ

移動手段であり、ホテルでもあり、まちでもあるクルーズ船。
今まで空や陸の旅しか体験していない人は、
クラシカルなのに新しい! と、驚くかもしれない。

今回は、クルーズ船にまつわるあれこれを、AからZのキーワードで紹介。
未知の世界だったクルーズ船の旅が少しでもクリアになればうれしい。

Agency or Official site(旅行代理店か公式サイトか)
クルーズ旅行を申し込む際には公式サイトの直予約などの個人手配のほかに、
代理店を通じて申し込むことも多い。
代理店の場合は、クルーズアドバイザー認定試験に合格した「クルーズコンサルタント」や
「スペシャリスト」による事前説明会があると、初めての方も安心。

Boarding(乗船)
いざ、乗船。以下はクイーン・エリザベスのケース。
乗船券に記載されている乗船時間に合わせてターミナルへ向かう。
オンラインチェックインで事前に顔写真やパスポートナンバー、
クレジットカードなどの登録を済ませておくとスムーズだ。

さらにクイーン・エリザベスのような外国船舶に乗船する場合は、
日本発着の国内クルーズであってもパスポートが必要となる。
飛行機同様、残存期間が下船日より6か月以上あることが必須なので、期限を要チェック。
渡航先によってはビザ(訪問国査証)や場合によっては予防接種証明書が必要な場合も。

また、乗船前にターミナルで荷物は預けておくことができるので、
ラゲージタグの印刷・荷物への貼り付けも忘れずに。

Crews(乗務員)
これから一緒に数日間過ごす乗務員たち。
クイーン・エリザベスの場合、
サービス料(ホテル・ダイニングサービス料)は自動的に加算される。
また、特別なサービスを受けたスタッフヘのチップは直接本人に渡すことができる。
日本発着のクルーズであれば、日本語応対スタッフが常駐しており、
快適で贅沢な旅をサポートしてくれる。

Dance(ダンス)
社交ダンスデビューは洋上でいかが?
クルーズ船ではドレスアップしてソシアルダンス(社交ダンス)を
楽しむ機会が非常に多くある。
ダンスを習っていたらより楽しめるが、事前にレクチャータイムがある船も。
ドレスコード指定や、テーマが設定されていることもあり、非日常の空間に心も踊る。
パートナーとともに忘れられない滞在を。

部屋に届いた招待状(クイーン・エリザベス)

マスカレード・パーティー(仮面武道会)に「ブラック&ホワイト」のドレスコード指定のパーティーのお知らせ(クイーン・エリザベス)。

Event(船内イベント)
船内では昼夜問わずさまざまな催しが行われ、暇をしている時間がない。
クイーン・エリザベスで1日に行われるイベントやアクティビティはおよそ80〜100。
クイズイベントや映画鑑賞、交流の場(おひとり様の集い、禁酒友の会、合唱の時間など)
参加は任意なので、大々的なイベントが行われているすきにバーでゆっくり過ごす……
なんてオトナなひとときも大いにアリ。

人口減少著しいまちの救い手となるか。 古民家1棟貸しの 〈NIPPONIA美濃商家町〉 「UMEYAMA棟」の新たな挑戦

日本各地に根づく、その土地の歴史や文化資産を活用し
宿を起点にしたまちづくりを行っている〈NIPPONIA〉。

1300年の歴史を持つ美濃和紙の里、岐阜県美濃市では、
江戸時代から受け継がれたまち並みを維持するため
2019年に〈NIPPONIA美濃商家町〉をオープンしました。

このホテルを運営する〈みのまちや株式会社〉は、
「美濃のファンを生み出し、美濃の景観が持続的に支援される」
ことをミッションとし、行政や地元企業などと連携した活動を行っていて、
2024年には、内閣府より、SDGs官民連携の最高賞を受賞しました。

1棟目となった〈NIPPONIA美濃商家町〉「YAMAJOU棟」。

1棟目となった〈NIPPONIA美濃商家町〉「YAMAJOU棟」。

金庫だった蔵を1棟まるごと客室として使用。

金庫だった蔵を1棟まるごと客室として使用。

美濃和紙、美濃の食材、美濃の特色を生かしたホテルの形成

2024年6月10日には、3棟目となる2階建て1棟貸しの
「UMEYAMA棟」をグランドオープン。

「このホテルは、簡易キッチンのあるダイニングと、5つの部屋があり、
美濃商家町のなかで最大の12名までの宿泊対応ができるようになりました。
そのため、3家族での旅行や長期滞在、企業研修なども視野に入れた
ホテル運営を目指しています」と語るのは、
企画運営を担当している平山朝美(ひらやまあさみ)さん。

床の間に飾られた和紙のアートや一枚「板」の机が味わい深い。

床の間に飾られた和紙のアートや一枚「板」の机が味わい深い。

今まで〈NIPPONIA美濃商家町〉では、
夕食は地元のレストランで楽しむスタイルでしたが、
まちなかから少し離れた場所にあるため、朝晩の食事は、
提携する地元の食事処が届けてくれるそうです。

「岐阜産はちみつとクリームチーズのブルスケッタや
恵那のハムと地元野菜のサラダ、長良川の鮎とアサリのパエリア、
ボーノポーク岐阜と地元野菜のグリルなど、岐阜県産の食材を使用した
夕食メニューを提供しています。お届けしたあと、お客様の食事のタイミングで、
ピザやメインのお肉料理などは、ダイニングルームにある簡易キッチンの
調理器具を使用して、あたためていただくこともできます」

岐阜県産の食材を使用した夕食メニュー。

岐阜県産の食材を使用した夕食メニュー。

また、隣接する古民家も、本格的な厨房設備を揃えた施設に改修。
今後は、ローカル・ガストロノミーに力を入れ、経験豊富な料理人を誘致し、
食卓にも美濃の食材や美濃焼など、美濃地方の文化や産業を
取り入れながら、地域の食文化を発信していくのだとか。

〈DEPT〉オーナー・eriの旅コラム 「旅でも安心したい。 美瑛の山小屋でリラックスしたもの」

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第39回は、ヴィンテージショップ〈DEPT〉のオーナーであり、
さまざまな環境や社会活動もしているeriさん。
大好きな旅ではあるが、
旅を存分に楽しむには、自分の心身が安心していることが重要。
そんなときに必要な
リラックスアイテムを紹介してくれる。
今回はまさに旅先、北海道の美瑛からお届けする。

家を飛び出したいけど、家にいるみたいに安心していたい

わたしは旅に出るのが大好きです。
見たことも聞いたことも嗅いだことも感じたこともないことが、
旅先には星の数ほどちりばめられていて、
そのひとつひとつの瞬きに心を揺さぶられるから。

自分の人生に新しいひらめきを与えたり
新鮮な喜びを感じたいがために、
住み慣れたまちを飛び出す……
その一方で、
旅をするにあたって
"旅先でいかにリラックスできるか"というのが
わたしの最重要ポイント。

家を飛び出したいけど家にいるみたいに安心していたい……というわがままな旅人は
そのために不可欠なアイテムたちを
旅行鞄のなかにつめこむのです(とにかく荷物が多いのが難点)。

そしてこれを書いているわたしはまさに今旅の途中で、北海道の美瑛に滞在しています。

友人たちと借りた小さくもコージーな山小屋に到着。
最初に取り出した安心アイテムその①は
半年ほど前にステイしていたチェンマイで買い込んできた薬草。
さまざまな薬効のある葉や木の皮が調合されていて、
チェンマイでハーバルスチームサウナに使われているものをわけてもらいました。

ワサワサと乾燥した薬草を袋から取り出し、
北海道の冷たい水とともに鍋に入れ火にかけることから今回の滞在はスタート。
やがてぐつぐつと沸きたち、青く爽やかな香りがたちのぼると
どこかよそよそしかった山小屋のなかいっぱいに親しみが湯気とともに満ちていく。
これだけでずっと居心地が良くなった気分。
火から下ろした鍋にバスタオルをかぶせて
深呼吸すれば薬草スチームに。
これは鞄のなかで軽くてかさばらないのに、効果は絶大!

新潟・妙高の古民家を再生した 里山生活を体験できる宿泊施設 〈MAHORA西野谷〉

日本の古きよき里山の自然環境を味わえる一棟貸しの宿

築約120年の古民家を再生した〈MAHORA西野谷〉は、
1棟1組限定の宿泊施設です。
妙高連峰を望む伸びやかな田園風景の中に佇んでおり、
建築や食事、アクティビティなどを通じて、
地域の豊かな自然や文化に触れながらリフレッシュできます。

MAHORA西野谷のあるエリアからは妙高山、
火打山など複数の「日本百名山」の風景が楽しめます。
なかでも妙高山は初心者でも登りやすく、多くの登山客が訪れるメッカです。
また車で5分のロッテアライリゾートをはじめ、
複数のスキー場に近接しています。
夏はトレッキング、冬はスキーやスノーボードを楽しむことができ、
妙高山麓には7つの温泉(赤倉、新赤倉、池の平、妙高、杉野沢、関、燕)が集まる
「妙高高原温泉郷」もあります。

妙高連峰の雪景色。

妙高連峰の雪景色。

恵まれたリゾートコンテンツを擁する一方で、
高齢化や後継者の不在といった課題に直面し、
農業の担い手不足や空き家問題に悩む地域でもあります。
このMAHORA西野谷も、10年以上空き家となっていた民家を改修し、
生まれ変わったものでした。

「建物は約120年前につくられたそうです。
しばらく空き家でしたが、次世代へとつなぐため、宿として再生することにしました」

玄関で出迎える蔡さん。

玄関で出迎える蔡さん。MAHORAは「すばらしい場所」を意味する古語に由来。

そう語るのは宿を運営する合同会社穀宇の共同代表、蔡紋如(サイ・ウェンル)さん。
2010年にワーキングホリデーで台湾から初来日し、
結婚を機に2014年に妙高に移住。
夫と農業を営み、妙高市のインバウンド誘致の仕事に関わるなかで、
「もっと日本のよいところを多くの人々に知ってほしい」という思いが募り、
この施設を立ち上げたそうです。

中に入ると吹き抜けの土間があり、梁の存在感に驚かされます。

「1902年5月、この地を襲った土石流により約30戸が被害を受け、
その後安全な土地に再建された住居のひとつがこの民家だそうです」

柱や梁は再利用されたものも多く、
よく見ると部材に以前の住居のためのホゾ穴などがたくさん残っています。
120年をさらに遡る、長い歴史がうかがえます。

玄関を入ると広がる土間。

玄関を入ると広がる土間。上部に太い柱や梁が縦横に走り、迫力があります。

「旅は断片。」 12人の旅人によるユニークな視点。 四国、九州・沖縄編

断片を見つける旅を

旅においてちょっとした出来事が心に残っているのではないだろうか。
さまざまなクリエイターがローカルを旅したときに感じた
そんな「断片」を綴ってもらった。

彼らの持つ旅の視点を参考にして、
おもしろい旅の断片をみつけてみたい。

そこでコロカルのリレー連載『旅からひとつかみ』から、
地域ごとにまとめて再編集していく。
第3回は【四国編】【九州・沖縄編】をお届けする。

四国編、九州・沖縄編の旅先マップ

誰も見たことがない本殿・拝殿を。 伝統技術でつくる、 あたらしい〈鳥飼八幡宮〉

福岡市の都心部を走る明治通りに面し、
近くには球場や大型商業施設があり、周囲に住宅とマンションが建ち並ぶ。
〈鳥飼八幡宮〉は、そんなにぎやかなエリアにあります。

鳥飼八幡宮の歴史は古く、『古事記』や『日本書記』にも登場する
神功皇后のゆかりの地として、社殿を建てられたのが発祥と
伝えられています。

まちがめまぐるしい変化をとげてゆくなか、神社は変わることなく、
人々を出迎えてきました。

そんな鳥飼八幡宮が、「遷宮」(神社の改築や修理)によって
大きく姿を変えたのは、一昨年のこと。

もっとも驚かされるのは、壁全体を茅(かや)で葺かれた拝殿の圧倒的な存在感。
「神社」という建物のイメージを覆すその姿は、いったい、
どのようにして生まれたのでしょうか。

〈鳥飼八幡宮〉

神様のいる場所を、常にみずみずしく

鳥飼八幡宮ではもともと、25年おきに遷宮を行ってきました。

ただしこれまでは、歴史ある本殿・拝殿を改修したり増築したりする、
小規模なものだったそうです。

しかし、今回の遷宮にあたり調査を行ったところ、建物の老朽化が著しく、
建て替えなければならないことが判明。

老朽化とはいえ、古くからある建物を壊し、つくりかえることに
抵抗はなかったのでしょうか。

鳥飼八幡宮で神職をつとめる高野さんに尋ねると、
「常若(とこわか)」という言葉を教えてくださいました。

「常若」とは、神様をお祀りする場所を、常にみずみずしく
きれいに保つ、という考え方。

たとえば伊勢神宮では、1300年も前から、20年ごとに
まったく同じ建物をつくり替える「式年遷宮」を行なっています。
それは、こういった考えに基づくものなのだそうです。

「わたしたちは、以前と同じ建物をつくるのではなく、
『あたらしい神社』をつくろうと考えました」と高野さん。

「『あたらしい』というとすこし語弊があるかもしれません。
神道の歴史は縄文時代からありますが、実ははっきりとした教義はないんです。
ですから、これを機に、古くからつづいてきた信仰のかたちを、
固定観念にとらわれずに一から考えてみよう、そして、
それがきちんと伝わる建物をつくろう、と考えたのです」

壁全体を茅(かや)で葺かれた拝殿

鳥飼八幡宮の式年遷宮は、2023年度福岡市都市景観賞・大賞を受賞しました。

二宮さんが描いたイメージ図(提供:二宮設計)

二宮さんが描いたイメージ図(提供:二宮設計)

誰も見たことがない本殿・拝殿を

「あたらしい神社」の設計を依頼されたのは、
福岡市内に事務所を構える〈二宮設計〉の二宮隆史さん・二宮清佳さん
夫妻でした。

二宮夫妻は、鳥飼八幡宮の山内宮司から、
「誰も見たことがない本殿・拝殿を」
というオーダーを受けたのだそう。

二宮隆史さんに、その頃のお話をうかがいました。
「誰も見たことがないもの……とはいえ神社であるからには、
地域の方々に納得してもらえるものにしなくては……」と、
アイデアを模索していた二宮さん。

幾度となくスケッチを描き、山内宮司と何度もイメージをすりあわせ、
検証を重ねて、巨石と茅葺で拝殿をつくる構想がまとまりました。

高野さんはいいます。
「巨石信仰は、世界共通の信仰のかたちなんです。いつの時代の人が見ても、
たとえば、ここがいつか埋まってしまったとしても、発掘された時に
『神聖な場所だったんだ』ということがすぐわかる」

天然の素材と、伝統的な技術で、あたらしい神社をつくる。
そうすればきっと、訪れた人に愛着を持ってもらえるはず。

こうして、あたらしい拝殿は、十本の巨石を柱とし、
外壁全体を茅葺にすることが決まったのでした。

茅(かや)で葺かれた拝殿

茅(かや)とは、ススキやヨシなどを束ねたもの。束ねることによってできる隙間が空気の層となって、通気性、断熱性、保温性を高めているのだそう。

神様がいらっしゃる本殿

神様がいらっしゃる本殿は、拝殿の奥に。

「旅は断片。」 14人による旅のスモールストーリー。 中部、近畿、中国編

旅の小さな思い出は、とても愛おしい

旅のなかで、奇妙なことが起こったり、
まさかの偶然が起こったり、奇跡的な出会いがあったり、いろいろなことがある。
そうした小さな断片を逃さず思い出としてしまっておきたい。

さまざまなクリエイターがローカルを旅したときの、
そんな「断片」を綴ってもらうリレー連載が、
コロカルの『旅からひとつかみ』だ。
その連載を見てみると、北海道から沖縄まで全国での出来事が綴られていた。
そこで地域ごとにまとめて記事を紹介していく。
第2回は【中部編】【近畿編】【中国編】。

中部編、近畿編、中国編の旅先マップ

ソウルのストリートカルチャー溢れる 〈Good Morning Record Bar〉が 京都にあった

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
京都府京都市。

朝はのどかでも、陽が落ちればゴリゴリのレアグルーブ

コロンボ(以下コロ): 〈Good Morning Record Bar〉って
名前からしてよくない?

カルロス(以下カル): レコードではじまる朝なんて、余裕がありそうだし、
丁寧な暮らしそう。やっぱりパット・メセニーって感じかな?

コロ: ボクだったらジョージ・ベンソンの『ブリージン』かな。
そんな気持ちいい朝はなかなかないけど。

カル: いずれにしてもフュージョン感……、
朝に対するイメージが貧困じゃない? 2020年代だよ。

高瀬川沿いに佇むガラス張りのポップな店がまえ。夜ともなると加熱気味なグルーブを発する。

高瀬川沿いに佇むガラス張りのポップな店がまえ。夜ともなると加熱気味なグルーブを発する。

コロ: お店的にはレアグルーブが多いんだって。

カル: 朝から?

コロ: いやいや、賑わってくる日没後だけど。
レアグルーブっていえば、カルロスの守備範囲じゃない?

カル: うーむ、レアグルーブ、難しいね。ジャンルでもないし定義が微妙。

コロ: あえて定義するとどうなの? 
やはりDJ文化というか、ヒップホップ以降というイメージだけど。

カル: サンプリングや元ネタという、人が注目しないところに美学を感じる
「レコード掘り師」の文化かな。
自分に照らし合わせてみると、レアグルーブは広すぎて
コンピレーションやDJミックスで知っていくものだったかも。
橋下徹選曲の「FREE SOUL」シリーズとかね。

『新潟古町100選』 古町界隈で暮らす人や働く人が選ぶ 100通りの過ごし方

新潟古町から感じる、愛すべき“地元力”

JR新潟駅から萬代橋の方面へバスで7〜8分の古町エリア。
1番町から13番町まである、新潟最大の市街地です。
この古町を愛する人たちのまちでの過ごし方を
100個のコラムとしてまとめたローカルガイドブック『新潟古町100選』が、
2024年1月に発売され、早くも重版がかかったそうです。

この本は古町界隈で暮らす人や働く人、クリエイターや作家、
飲食店の店主、行政職員などが、
人に教えたくなる古町での過ごし方を100個集めたローカルガイドブックです。
県外から観光や仕事で来訪する人はもちろん、
日英2か国語なので、外国の人にもその魅力が伝わる内容です。

紹介されているのは、グルメ、カルチャー、音楽、アート、酒、風景。
たとえば、喫茶店〈ナッツ〉上大川前店で食べるモーニングセットや、
〈ブルーカフェ〉で窓の外の並木道に季節を感じるなどなど……
その「場」への親しみやすさを感じさせるだけでなく、
著者陣が足繁く通っているからこそわかる、ニッチで愛すべき古町のポイントは、
文字数こそ少ないけれど、しっかりとツボを抑えています。
流行やハイセンスなものばかりではない魅力は、これぞ“地元力”。
100もあるのでみなさんにも絶対に刺さるものがあるはず。

「旅は断片。」 12人の旅人による小さな出来事。 全国編、北海道・東北編、関東編

心に残っている、旅のトゥルーストーリー

自由に、縛られることなく旅をしているクリエイターが持っている旅の視点は、
どんなものなのだろうか?
独特の角度で見つめているかもしれないし、
ちいさなものにギュッとフォーカスしているかもしれない。

さまざまなクリエイターがローカルを旅したときの
「ある断片」を綴ってもらうリレー連載が、
コロカルの『旅からひとつかみ』だ。
その連載を見てみると、北海道から沖縄まで全国での出来事が綴られていた。
そこで地域ごとにまとめて記事を紹介していく。
まずは【全国編】【北海道・東北編】【関東編】から。

全国編、北海道・東北編、関東編の旅先マップ