地域のコミュニケーションのあり方が多様になってきている。
そう感じさせてくれるのが〈popcorn〉。
簡単に映画の自主上映を行うことができるサービスが、
ローカルにおける場づくりにかなり寄与しているようだ。
ローカルにおいては、コミュニティスペースのような場所がどんどんできている。
しかしそこで何をするのか。
たくさんのコンテンツに可能性が広がっているなか、映画上映というニーズがあった。
〈popcorn〉代表のナカムラケンタさんは言う。
「人口が減っているエリアでも、人が集まる機会は求められています。
映画は好きな人も多いし集まりやすい。
しかし本格的な映画館をつくってもなかなか黒字で運営していくことは難しい。
そんな状況において、自主上映をうまくやっていく手段がないかと考えていました」

ナカムラケンタさんは求人サイト『日本仕事百貨』を企画運営するほか、いろいろな生き方・働き方に出会うことのできる場所〈リトルトーキョー〉や多分野で活躍している方をゲストに招くイベント〈しごとバー〉も監修している。
ナカムラさんは、身近で一番映画に詳しそうな人=大高健志さんに相談を持ちかけた。
大高さんは、東京藝術大学大学院で映画製作を学び、
その後、クラウドファンディングサービス〈MotionGallery〉を立ち上げた人物だ。
「ナカムラの話を聞いていると、たしかにポテンシャルがあると感じました。
まちづくりが建築や場づくりの側面で盛り上がっていることは理解していましたが、
映画と重なるとは思っていませんでした。
これは映画業界が“お客さん”として捉えていなかった層なので、
新規顧客という意味でも開拓できそうでした」と言う大高さん。
同時に、難しさや問題点もすぐに浮かんできた。
自主上映であっても、映画配給会社から映画上映の権利を借りるのに、
10〜20万円という金額がかかってしまう。カフェやバー、コミュニティスペースなどで、
20人や30人の規模で上映するには苦しい金額だ。
お客さんに払ってもらう金額では足りないと、
企画者が自腹で補填していくようなやり方だと当然、続いていかない。ここが問題点だった。
「映画配給会社に作品提供の交渉をしに行くと、その点を指摘され、
“以前にもそういう取り組みに挑戦したけどダメだったんだよね”と
言われることが多いです。
しかし今の社会は地方のマスが融解して、小さな集まりがたくさん生まれています。
そこに届けられるのであれば、これまでの仕組みとは、文脈も届け方も変わってきます。想定しない動きが生まれてくるかもしれません」(大高さん)

〈popcorn〉代表の大高健志さんは、クリエイティブと資金のより良い関係を目指してクラウドファンディングサービス〈MotionGallery〉を立ち上げている。
実際に〈popcorn〉の仕組みを見てみよう。
ホームページには上映可能な157作品(2019年2月現在)の映画が並んでいる。
利用者は上映場所を登録して、これらを上映することができる。
上映場所はカフェやバー、イベントスペースなど。
インターネット環境とスクリーンやオーディオが整っていればどこでも構わない。
なんと“自宅”という上映場所もある
(自宅を登録する場合は、住み開きをしている場所に限定している)。
ひとり当たりの手数料が作品ごとに設定されていて、
利用者はそこに上乗せするかたちで入場料を設定できる。〈popcorn〉からは後日、
売上から、ひとり当たりの手数料×来場者数を差し引いた金額が支払われる。
だから来場者が10人であれば10人分。30人であれば30人分の手数料を支払えばいい。
とても明朗会計でわかりやすい。
前述のように、通常の自主上映では、権利を借りるのに10万円以上かかる。
仮に10万円であったとすると、それをペイするにはひとり1800円(平均的映画料金)の
入場料を取っても50人以上の集客が必要になる。
自主上映としてはハードルが高いし、ローカルが求めている上映スタイルではない。
「ひとりからお金が発生するモデルをつくりました。
それを配給会社にもご理解いただいて運営しています」(ナカムラさん)
2017年4月にサービスを開始して以来、
上映回数の合計は1000回を超えた(2019年1月現在)。
2年弱と考えると、1日1回以上、全国のどこかで〈popcorn〉を使って映画が
上映されている計算になる。小さな映画館がどんどん増えている。

〈popcorn〉が入るリトルトーキョーでは、これまでたくさんの「しごとバー」が開催されている。