連載
posted:2019.8.28 from:全国(一関市・花巻市・能登地方) genre:暮らしと移住 / エンタメ・お楽しみ
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
photo & text
Sakurai yo, Kanta Suzuki, Ken Wakai
櫻井 陽/鈴木寛太/若井 憲
日本各地で開催される、さまざまな「夏祭り」。
〈青森ねぶた祭り〉〈京都祇園祭〉〈高知よさこい祭り〉など、
全国的によく知られる夏祭りを筆頭に、
地元住民だけが参加する、知られざる小さな祭りもたくさん開催されています。
そういう祭にこそ、地域の特色が色濃く反映されていたりするものです。
今回は、日本各地に暮らす皆さんから、
地域住民が楽しみにしている、大小さまざまな夏祭りを紹介してもらいました。
私のまちの夏祭りは、穏やかに楽しむ“美術展”のようなお祭りです。
名前は〈摺沢水晶あんどん祭り〉。
今から33年前、お盆の時期に弔いの思いを込めて、
六角形のあんどんをまちに飾ったのが始まりだといわれています。
あんどんの形が六角形なのは、この摺沢の地が水晶の産地だったことに由来します。
このお祭りの、もうひとつの特徴は、
六角形の和紙に住民が「絵」を描き、その絵をあんどんにして、まち中に飾るところにあります。
7月になると、子どもも大人も「今年はどんな絵を描こうか」と頭を捻り、
思い思いの絵を描きます。
私も子どもの頃、下手ながらあんどん絵を描いた思い出があります。
というのも、あんどん絵を描くと、まちで使える商品券がもらえるのです。
その商品券を使って、まちの本屋さんで欲しい漫画を買う。
それもまた、あんどん祭りのワンシーンのような気がします。
そんな現金な子も、絵が得意な子も、当日は描いた絵があんどんとして灯されるので、
家族や友だちと見に行き、各地区で行われる縁日に寄って帰ります。
ゆっくりと穏やかな時間が流れる、小さな芸術祭が私のまちの夏の祭りです。
information
摺沢水晶あんどん祭り
photo & text
櫻井 陽 さくらい・よう
岩手県一関市出身。2016年よりUターンで一関市の地域おこし協力隊に着任し、農業分野の地域団体の活動支援を行う。好きな食べ物はカレー。趣味の硬式テニスをやらないと病にかかる体質。2017年より一関で楽しく暮らしたい20代のための地域団体〈TAKU。(たくまる)〉を発足し、各々がまちを楽しむためのさまざまな企画を実施する。
Page 2
毎年夏になると、花巻市大迫町の商店街が歩行者天国となり、夏祭りが行われます。
商店街の店主らは、日中から張り切って準備に取り掛かります。
暑さが少し和らいだ夕方、祭りがスタート。
子どもたちはこの日を楽しみにしていたようで、小銭を握りしめて、
おのおの食べたいものを求めて出店に駆け込みます。
大人たちはパラソルの下で、「乾杯!」とおいしそうにビールを飲んでいます。
商店街の中心部に移動すると、一角に多くの人が。
すると、威勢のいい声と同時に、軒からいろんなものが降ってくる!
岩手では祝いごとがあるたびに〈餅まき〉という催しを行うのですが、
今回はなんと、餅のほかにエノキなどの野菜が降ってきました。
これが噂で聞いていた「えびすまき」。初めての体験でした。
餅よりもレパートリーがたくさんあっておもしろい!
小さなまちの飽きさせない工夫がいろんなところで見られ、
来年もビール片手に出店を回りたいと思ったのでした。
photo & text
鈴木寛太 すずき・かんた
1991年東京都出身。2011年に発生した東日本大震災以降、大学のボランティアプログラムで、繰り返し岩手県を訪れるようになる。一度は就職するも、2015年8月、地域おこし協力隊として花巻市に移住。大迫(おおはさま)地区で、減少が続くぶどう農家の支援やイベントの企画・調整を行っており、2018年5月にぶどう農家となる。2018年7月末、3年間の地域おこし協力隊の任期を終え、本格始動中。
Page 3
夏から秋にかけて、石川県の能登半島全域で〈キリコ祭り〉が行われ、
その数は200ともいわれます。
キリコ祭りには、「キリコ」や「奉燈」と呼ばれる巨大な御神燈が登場し、
大きなものでは、その高さは約15メートルにもなります。
海に入るもの、船に乗って海上渡御をするもの、
燃えさかる松明の下で乱舞するものなど、キリコ祭りはバラエティに富み、
どれかひとつを観ただけでは、その魅力を語ることはできません。
祭りの日には、親類縁者や友人、知人などを座敷に上げ、
ご馳走でもてなす「ヨバレ」と呼ぶ風習があり、今も盛んに行われているのも特徴です。
私が観たことあるキリコ祭りはそれほど多くはありませんが、
一番印象に残っているのは、七尾市中島町釶打(なたうち)地区で
毎年8月14日に行われる〈新宮納涼祭〉です。
ここのキリコの灯りは、今では珍しくなったロウソクを使い、
里山の暗闇のなか、キリコの揺らぐ灯りが浮かび上がり、ゆっくり動いたり、
時には乱舞したりと、それは実に幻想的でした。
初めて観たのに、懐かしさがこみ上げてくるような、
ノスタルジックな気分に浸ることができます。
少子高齢化で、キリコ祭りの存続が危ぶまれている地域も多いと聞きます。
キリコ祭りがきっかけとなり、能登に移住して、
キリコ祭りの担い手になってくれる、そんな人が増えたらいいですね。
information
能登のキリコ祭り
photo & text
若井 憲 わかい・けん
フリー編集者&ライター。神奈川県生まれ、石川県在住。旅行雑誌の編集者を経て、1999年に家族とともに、Iターンで石川県へ移住。地に足がついた情報発信ができるローカルメディアのおもしろさを知る。編集長を務めていた季刊誌の休刊を機に、2018年からフリーとなり、北陸の魅力を広く伝えることに力を注ぐ。製本家の妻がつくる豆本ではイラスト描きも。Web:豆本工房わかい
Feature 特集記事&おすすめ記事