連載
〈 この連載・企画は… 〉
毎月コロカル編集部からテーマを出し、
日本各地で活動している地域おこし協力隊の方から集まった写真とメッセージを紹介していきます。
その土地ならではのものだったり、自分の暮らしと変わらないものだったり……。
どんな暮らしをしてどんな景色を見ているのか、ちょっと覗いてみませんか?
photo & text
Ami Igarashi, Kanta Suzuki, Yuki Hashimoto
五十嵐杏美/鈴木寛太/橋本ゆうき
日々の食卓に欠かせない、味噌、醤油、お酢、日本酒、ワインといった醸造品。
インターネットの普及で、全国の醸造品が気軽に入手できる時代ですが、
もともとは地域で親しまれ、消費されてきたもの。
「これがないと味が決まらない!」「イベントが盛り上がらない!」
そんなふうに地域住民から愛される醸造品をつくるのは、どんな蔵?
今回は、日本各地に暮らすみなさんに、
まちの小さな醸造所を紹介してもらいました。
岩手県花巻市大迫町(おおはさままち)にある、
昭和37年創業の老舗ワイナリー〈株式会社エーデルワイン〉。
主に大迫産のぶどうを使用したワインづくりを行っています。
大迫町のぶどう栽培の歴史は、昭和25年まで遡ります。
同年、県立の農業試験場大迫葡萄試験地が創設され、
本格的にぶどう栽培がスタート。
昭和37年には、町役場と農協が中心となり、
〈岩手県ぶどう酒醸造合資会社〉(現エーデルワインの前身)が設立され、
ワインづくりが始まったのです。
大迫町の気候は昼夜の温度差が大きく、
弱アルカリ性の石灰岩土壌であることから、ぶどう栽培に適した土地とされています。
2018年には、オーストリア・ウィーンで開催される
国際ワインコンクール〈AWC Vienna〉で、
日本のワイナリーで初めて、ひとつ星を獲得しました。
また、既存のワインとは別に、ぶどうやワインの品質向上のため、
ぶどう生産者ごとのワイン(通称:個別ワイン)をつくる取り組みも。
小さいタンクでそれぞれつくられ、ボトルには生産者の名前が入ります。
自分の名前が入ったワインができると、その年のぶどうのできを自身で確認できるうえに、
ぶどう栽培に対する士気も高まります。
ぶどう農家は日々、品質を確認しながら、おいしいぶどうづくりに励んでいます。
information
ワインシャトー大迫
住所:岩手県花巻市大迫町大迫10-18-3
TEL・FAX:0198-48-3200 ※工場見学の予約受付はこちら
開館時間:9:00~16:30
休館日:年末年始(12月31日~1月3日)
入場料:無料
photo & text
鈴木寛太 すずき・かんた
1991年東京都出身。2011年に発生した東日本大震災以降、大学のボランティアプログラムで、繰り返し岩手県を訪れるようになる。一度は就職するも、2015年8月、地域おこし協力隊として花巻市に移住。大迫(おおはさま)地区で、減少が続くぶどう農家の支援やイベントの企画・調整を行っており、2018年5月にぶどう農家となる。2018年7月末、3年間の地域おこし協力隊の任期を終え、本格始動中。
Page 2
日本酒発祥の地のひとつに数えられる島根県。
隠岐の島でも、島民に愛されているのはやはり、日本酒です。
平成26年に制定された〈隠岐産清酒による乾杯を推進する条例〉、
通称〈日本酒乾杯条例〉には、
隠岐の地酒文化を絶やさぬように……という想いが込められています。
そんな地酒文化を守っている島唯一の酒蔵が〈隠岐酒造〉です。
代表銘柄の〈隠岐誉〉は、さまざまな受賞経験がありますが、
今年は、美食の国フランスで開催されている日本酒の品評会〈Kura Master〉で、
純米大吟醸酒部門および純米酒部門の両方で、
最高位であるプラチナ賞をダブル受賞しました。
また、日本酒以外のお酒も、隠岐らしい原料を使って製造されています。
海藻焼酎〈いそっ子〉、
それを樫樽で完熟するまで貯蔵した古酒〈わだつみの精〉は、まるで洋酒のような味わい。
国内最北端の栽培地といわれている、はっさくを使ったリキュール〈隠岐結結〉は、
爽やかで心地よい甘み。
日本酒が苦手な方にもオススメできる商品が揃っているので、
イベントの際にも、お土産としても、大活躍です。
information
隠岐酒造
photo & text
五十嵐杏美 いがらし・あみ
平成2年生まれ。元ギャルの島ガール。2017年3月末、東京から島根県隠岐の島町へ移住し、現在は地域おこし協力隊として活動中。移住のテーマは、【自然との共生】と【丁寧な暮らし】。四季の移ろいのなかで豊かに生きる術を学び中。また、自分らしく生きることを探求するためにヨガとアーユルヴェーダを学んでおり、同時に広める活動も行っている。
Page 3
西海市の醸造所といえば、
地元のさつま芋を使った焼酎〈大島酒造〉がよく知られていますが、
今回ご紹介したいのは、まちの小さな醸造所〈川添酢造〉さん。
長崎市から車で約1時間北上した、雪浦(ゆきのうら)という土地で、
明治33年から、正直でまっすぐなお酢づくりに励んでいらっしゃいます。
のどかな集落を悠々と流れる雪浦川のそばに佇む川添酢造では、
「水がよければ、いい品ができる」というのが代々の教え。
地元・西海市の合鴨農法米を使った純米酢や、無農薬玄米でつくる玄米酢、
そのほかにも、味噌の原料、果実酢をつくる果物も、
できる限りこの地域に近い長崎県産や九州産にこだわっています。
また、定期的に「味噌づくり教室」も開催!
西海市内外の子どもたちや、お母さんお父さんに向けて、
かつては身近だった味噌づくりの楽しさや、発酵の不思議を伝えています。
毎日の食卓に欠かせない味噌に、お酢。
信頼できるまちの小さな醸造所が、地域の“おいしい”を下支えしています。
information
川添酢造
photo & text
橋本ゆうき はしもと・ゆうき
長崎県出身。これからの社会や暮らしについて考えるフリーペーパーの発行や、地元タウン誌の編集長などを経て、2016年よりフリーで活動。現在は長崎県西海市に移住し、より地域に密着しながら、豊かな暮らしのあり方を模索中。
Feature 特集記事&おすすめ記事