〈HOTEL NUPKA〉(ホテルヌプカ)の坂口琴美です。連載第2回目、よろしくお願いします。
古いホテルの建物のフルリノベーションがいよいよ始まります。2015年春のことです。
私たちは、この一大プロジェクトを始めるにあたり、
東京の〈UDS株式会社〉のみなさんに
パートナーとして取り組んでいただけるようお願いしました。
UDSは、東京・目黒の〈CLASKA〉、京都の〈ホテルアンテルーム京都〉、
神奈川・川崎の〈ON THE MARKS KAWASAKI〉など、
その時々のフラッグシップとなるリノベーションホテルの実績があります。
またホテルの自社運営も行っているので、
企画・設計・運営支援まで一貫して相談できる最適なパートナーとして
今回のプロジェクトを依頼しました。
今回は、帯広での〈HOTEL NUPKA〉プロジェクトを担当した、
UDSの高橋佑策さんにお話をしていただきます。
こんにちは、UDS高橋佑策です。
今回は僕らが担当させて頂いた企画・設計についてお話したいと思います。

着工前の〈旧みのや旅館〉の外観。
僕らが最初に十勝にうかがったのは2014年の年の瀬でした。
現地で物件を初めて見たとき、ほどよくコンパクトな建物のスケール感と、
時代性を感じる淡いグリーンのタイル張りの外観がとても印象的だったことを覚えています。
ホテルヌプカの中心人物である柏尾さん、坂口さん(vol.1参照)と
東京で2014年の秋に初めてお会いした際に、
おふたりの地元である十勝・帯広への想い、まちづくりへの想い、ホテルへの想いを聞き、
強く共感しました。
僕らも、ホテルという場所が地域や人とのつながりをつくるきっかけになり、
そのまちの魅力を発信できる、まちづくりの拠点のひとつになることを、
国内外で手がけた数多くのホテルの企画・設計・運営を通じて実感していました。

HOTEL CLASKA。

HOTEL ANTEROOM KYOTO。

ON THE MARKS KAWASAKI。
僕らのこれまでの経験を少しでも役立てられればと思い、
2015年春からプロジェクトに参加させていただくことになりました。
柏尾さん、坂口さんとのディスカッションを通じて、
僕らが最初に考えたのは「ホテルをまちづくりに役立てる」というテーマでした。
旅行者が、ホテル滞在を通じて訪れたまちの魅力を発見するだけでなく、
地元に暮らす人たちにとっても、ホテルでの時間を楽しみ、
地元の価値や魅力を再認識できる場とできればと、考えました。
そして、旅行者と地元で暮らす人が交流できることになれば、さらによいのではないかと。
何度か現地まで足を運び、地元の皆さんに十勝・帯広の話を聞き、
さまざまな場所をご案内いただき、まちを体験する機会がありました。
ヌプカの最寄り駅である帯広駅周辺には、
すでに全国展開をする大手のホテルチェーンを含めて、たくさんのホテルがあります。
まずは、今あるホテルと競合するのではなく、
新しい視点でまちを体験してもらえるホテルとして、
そこに訪れる人の流れそのものを拡大させる方向を目指しました。
そして、ホテルでの滞在が、「自然」や「食」という、
帯広だけにとどまらず十勝エリア全体の魅力あるコンテンツへの「気づき」の機会となり、
その「気づき」がきっかけとなって、
ホテルの外に出かけ十勝の自然とまちを旅してもらう拠点となることの重要性を
強く感じるようになりました。
プランを固める前に、僕ら自身でまちでの過ごし方を考えてみました。
例えば、ヌプカのすぐ近くには〈北の屋台〉という全国的に有名な屋台村があります。
だから、ヌプカにそこと競合する飲食店をつくるのではなく、
これから屋台を楽しむゲストの待ち合わせに使ってもらうカフェとなり、
食事を楽しんだゲストが地元の方とコミュニケーションをとれるような
バーとしても楽しめる場所があれば、
もっと共存し合いながらお互いにまちの魅力の発信につなげられる……。
例えば、ホテルを拠点として、地元の農家さんのところへ
ファームトリップするアグリツーリズムプログラムを一緒につくることができれば、
ホテルとしての機能だけでなく、ヌプカ以外のホテルに泊まったゲストにも、
十勝の魅力を体験できるアクティビティのハブになれる……。
例えば、地元で活動する若手の作家やアーティストにホテルを
ギャラリーや媒体として活用してもらうことができれば、
もっとたくさんの人が作品に触れる機会をつくることができる……。
何度もディスカッションを重ね、そうしたアイデアを積み重ねていくことで、
宿泊を提供するだけではない、
地方都市のなかで暮らす人やそこにある観光・産業の資源や魅力を生かしながら、
もっとまちづくりの拠点になれるホテルのあり方を提案できると考えていきました。
そこで、僕らがたどりついたコンセプトが「Urban Lodge」でした。
十勝・帯広の市街地の真ん中にあるホテルが「まち・ひと・もの・こと・場所」をつなぎ、
コミュニティが生まれ発信される拠点になれる場づくり=Urban Lodgeを目指しました。
そのコンセプトをどうカタチにできるか、具体的な設計・デザイン段階に入っていきました。