旅館だけではなく、温泉街全体の再生が目的
長野県松本市・浅間温泉にある〈松本十帖〉は、〈自遊人〉が手がける複合体であり、
創業336年の老舗旅館〈小柳〉の再生プロジェクトの総称でもある。
「松本の奥座敷」と呼ばれ、開湯1300年以上の歴史をもつ浅間温泉。
江戸時代には松本藩の城主が通ったことから湯治場として発展し、
今もなお地域住民の共同浴場が多く残っている。
明治以降は多くの文人に愛され、昭和に入ると多くの団体旅行客たちで賑わった。
しかしながら近年、時代の変化とともに経営難に直面する旅館が増加し、
温泉街は寂れていく一方。
こういったケースは全国各地に見られ、浅間温泉に限ったことではない。

温泉街を人が回遊することをイメージしているため、敷地内には4か所の入り口が設けられている。シームレスな設計は、各施設への移動もスムーズ。
自遊人が小柳の再生を引き受けたのは2018年のこと。
後継者不在による廃業の危機にあった旅館単体の
リノベーション事業としてスタートしたものの、
プロジェクトを進めていくうちに、
温泉街の高齢化や空き家の増加などの問題が浮かび上がり、
まち全体のエリアリノベーションプロジェクトが模索されていった。
特筆すべきは、公的資金の投入なしに民間企業が担っているという点だろう。
同じような問題を抱える温泉街再生のモデルケースとしても、今後注目されていくはずだ。
「小柳という旅館をひとつ再生するだけではなく、
浅間温泉そのものが活性化していかなければ、
地方都市の温泉街にとって持続可能とはいえないのではないか?」。
その問いに対するアクションのかたちは、松本十帖のいたるところに散りばめられ、
浅間温泉というまち全体の動きとしても、ポジティブな変化が生まれようとしている。

「豊かな知と出会う」をコンセプトにしたブックホテル〈松本本箱〉。隣にはバリアフリーかつお子さま連れも利用しやすい〈小柳〉がある。いずれも客室には源泉かけ流し露天風呂付き。












































































