news
posted:2022.10.25 from:青森県弘前市 genre:旅行
〈 コロカルニュース&この企画は… 〉
全国各地の時事ネタから面白情報まで。
コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。
writer profile
Kanae Yamada
山田佳苗
やまだ・かなえ●島根県松江市出身。青山ブックセンターやギャラリースペース、ファッション・カルチャー系媒体などを経て、現在フリーのライター、編集者として活動中。まだまだ育ち盛り、伸び盛り。ファッションと写真とごはんが大好きです。
「お城とさくらとりんごのまち」
そんなキャッチコピーがついた、青森県の県庁所在地である青森市から、
JR奥羽本線で約40分のところにある弘前市。
2020年には弘前れんが倉庫美術館も誕生し、
アートがあるまちとしても注目を集めています。
現在、そんな弘前と黒石をつなぐ弘南鉄道弘南線が、
ねぷたやりんご栽培など、青森の風土に育まれた情熱やりんごの蕾を想起させる
鮮やかなピンク色を基調とした「アート列車」に変身しています。
これはアーティストの原 高史さんが企画・制作したもので、
なんと、一両目はタイムマシーンに見立てたピンクの空間に。
椅子はスイスから取り寄せたという正真正銘のショッキングピンクの生地で、
床にはベルリンの壁崩壊など、世界で起きた象徴的な出来事の年号や
「タイムマシーンがあったらどの時代に行きたいですか?」
「はじめて人を好きになったのはいくつでしたか?」
などの質問がグラフィカルにプリントされています。
窓も透明なピンクのカッティングシートが貼られ、
窓越しに見る外の景色もまるで異世界のよう。
座っていると、タイムマシーンで過去や未来に向かっている気分です。
Page 2
二両目には、青森県立黒石高等学校情報デザイン科の学生による
〈弘南鉄道沿線風景 2022 高校生による「記憶の未来」〉の作品が、
中吊り広告や、まど上ポスター広告に貼られています。
これらは授業の一環として原さんと生徒が共に取り組んだもので、
生徒たちがインタビューしたまちの人のことばをデザインし、
作品に落とし込んでいます。
「腕相撲や野球で骨折した」「行ったことがないのは和歌山県だけ」
「昔のこみせ通りは人の量も多くて賑わっていた」
人々の生活や思想が垣間見える普遍的な言葉は、
この土地をより解像度高く知るための補助線になってくれそうです。
このアートプロジェクトを手がけた現代美術家の原高史さんは、
過去に〈ピンクウィンドウプロジェクト〉と題し、
ある地域や建物に住む人、その建物にまつわる人々とのコミュニケーションから得た
言葉とイラストを、ピンクを背景に建物の窓に展示する作品を発表していました。
今回のプロジェクトでは、青森人が持つ人間力をピンクに託し、
弘南鉄道沿線に住む人々の歴史や文化、日常を顕在化しています。
もちろん、列車は通常運行で、
まちの人々は日常の移動手段で利用しています。
一般の人が普段と変わらぬ様子で座っているのも、
なんだか少し違和感があっておもしろみを感じました。
列車を降りたあとは、弘前や黒石の歴史や文化に思いを馳せつつ、
自身の過去と現在、未来の境界線がぼんやり揺れるよう。
また列車以外にも、
弘前れんが倉庫美術館や駅舎にもピンク色のスペースが設けられ、
黒石駅、平賀駅、JR弘前駅 津軽ラウンジ内や美術館では、
地域の人々へのインタビュー映像が上映されています。
淡々と、しかし表情や言葉の節々から慣れ親しんだ土地への
愛や親しみが感じられる映像を見終わったあとには、じんわりとした感動がありました。
会期は11月13日まで。列車は1日最大9往復します。
ぜひ、弘南鉄道弘南線沿線の歴史や文化、記憶を
ユニークなアート列車で辿ってみてください。
information
*価格はすべて税込です。
Feature 特集記事&おすすめ記事
Tags この記事のタグ