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下田〈soul bar 土佐屋〉
ソウルレジェンドが足しげく通う、
こってり濃くて、イカすソウルバー

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.003

posted:2022.9.21   from:静岡県下田市  genre:旅行 / エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
静岡県下田市。

吉田松陰ゆかりの1854年建造の蔵がアジト

コロンボ(以下コロ)名前: 夏の終わりはやっぱり伊豆・下田だよ。
ビーチもきれいで、おセンチな気分になっちゃいます。

カルロス(以下カル): 下田といえば、
なんたってサザンの「唐人物語(ラシャメンのうた)」。春の歌だけど。

コロ: 原坊の泡沫感たっぷりのヴォーカルがたまらんね。

カル: 今回はソウルバーだって?

コロ: そう、〈soul bar 土佐屋〉。
「唐人物語」の歌詞にある、了仙寺すぐそば、ペリー通り沿い。
1854年建造で江戸時代からあるなまこ壁の蔵を使ったイカしたソウルバーなんだ。
ソウル関係はどうなの?

カル: ブラックミュージックって流れで、普通に聴いてたって感じかな。
スティービー・ワンダーをソウルというなら、
「Don’t You Worry ‘bout a Thing」はテープが伸びるほど聴いたなー。

コロ: テープが伸びるほどか、世代だね。レコードの溝が擦り減るじゃないんだ。

カル: MUROさんのミックステープシリーズ『Diggin’ Ice』世代なもんで。
シェリル・リンとかダンスクラシックも好きでした。

コロ: ダンクラね。〈土佐屋〉のマスターの斉藤さんももちろん好きだけど。
人の店でかけてもらうのが、一番いいってさ(笑)。

カル: マーヴィン・ゲイの『What’s Going on』のレコードなんて、本当に擦り減って、
「What’s Going on」のところだけ落ちちゃったらしいじゃない。

コロ: 今のレコードで5枚目だって。斉藤さんは東京の出身。
新宿で〈綺麗〉という店を始めて、
六本木、両国で〈フィラデルフィア・モーター・タウン〉とやって、
ここ下田に来て15年。
ソウルシーンではかれこれ40年、こってりと濃い人脈の持ち主だよ。

カル: 赤坂ムゲンのマイク鈴木さんやテリー大野さんとかのレジェンドが
回しに来たりするんでしょう? ゴージャスだなー。

コロ: 錚々たるDJが集まるみたいよ。斉藤さん自身は自称「踊らせないDJ」らしいけどね。

カル: 「踊らせないDJ」、いまや世界のトレンドらしいよ。
リスニングバーが世界中で流行っているけど、
今年ニューヨークで〈イーブスドロップ〉をオープンさせたダン・ウィッシンジャーさんは
日本のジャズ喫茶の存在を知って、
「客を踊らせるんじゃなくて、聴かせようとするのが新鮮で、
音楽とレコードへの敬意を感じた」と。
読売新聞にそんな記事が出ていた。
リスニングバーはマインドフルネスだとも。

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お客さんは世界各国から!

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コロ: とにかく音楽好きが集う、集う。
踊り明かした勢いで東京から繰り出して来たり、
船でやって来た人たちが風待ちで立ち寄ったり、
下田に寄港したNAVYの人たちが現れたりと、センスと機動力がある人がひっきりなしなの。

カル: 下田は外国人も多いから、
一時の六本木〈ガスパニック〉みたいな感じになったりするんでしょう。

コロ: そうそう、ここは下田なのかって感じになるみたい。

カル: 基本ソウルバーってことだけど、コテコテじゃなくて、
ロックもAORも邦楽もかかるし、
その辺がボクでも気が楽。

コロ: この夏、一番かかったのは『トップガン マーヴェリック』効果ってことで、
ケニー・ロギンスの「Danger Zone」。
そしてベルリンの「Take My Breath Away」だって。

カル: 斉藤さんは下田から沼津まで片道2時間弱かけて、
2回も観に行ったっていうじゃない。

コロ: どうしてもIMAXで観たかったんだってさ。

カル: それはわかる。

コロ: ほかでは星になってしまったオリビア・ニュートンジョン。
クール&ザ・ギャングの「チェリッシュ」、ホール&オーツの「One on One」とかだって。
「チェリッシュ」はPVがビーチから始まるっているのも理由だとか。
レコードもかけるけど、映像と共に楽しめるのがいいんだ。

カル: MTV以降のPVは知っていても、ソウル系は見慣れてない分、映像がやけに新鮮。

コロ: 取材で行ったときも動いているビリー・ポールやスタイリステックス、
マンハッタンズとかが流れていた。しかも繋ぎがまた絶妙にいいんだ。

カル: さすが、踊らせないDJ。

コロ: ブルーノ・マーズがカバーした「Love’s Train」を
元ネタのコンファンクシャンと続けて観ると、
ほとんどオリジナルのオマージュだってことがわかったり、世代を超えちゃうね。

カル: アナログ好きも映像と共に楽しませたいみたい。

コロ: 斉藤さん曰く、古いソウルファンを老いぼれさせない工夫なんだって(笑)。

カル: ケニー・ロギンスとマイク・マクドナルドがレッドウッドの森の中でやった、
『Outside: from the Redwoods』の「What a Fool Believes」はよかったなー。
下田は時間の進み方が違うから、ハマるよね。

コロ: ユーミンやサザンしばりの夜もあるんだって。
真夜中になっても延々、知ってる曲が続く、夢みたいな夜らしいよ。

カル: 「唐人物語」かかるかな?

コロ: かかるって言っていたよ。

information

map

soul bar 土佐屋

住所:静岡県下田市3-14-30

TEL:0558-27-0587

営業時間:18:00~midnight

定休日:不定休

 

【SOUND SYSTEM】

Speaker:JBL,CELESTION,Boseほか

Power Amp: CLASSIC PRO CP1400

Turn Table:TECHNICS SL-1200MK3

MIXER:RANE 64

その他秘密機器多数。

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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