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連載

浜松〈トゥルネラパージュ〉
オーディオ・アートともいえる
官能的で甘美なスピーカー

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.004

posted:2022.10.20   from:静岡県浜松市  genre:旅行 / エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
静岡県浜松市。

「Listen & Love」スピーカーの圧倒的な存在感

カルロス(以下カル): うわー、なんとも甘美なスピーカー!

コロンボ(以下コロ): ドイツのアヴァンギャルド・アコースティック社の
〈avangarde trio〉+〈6 basshorn〉というスピーカーシステムなんだ。
オーナーの矢野裕理さんが一目惚れしたんだって。

カル: モダンでメンフィス・デザインのようでいて、エレガント。
楽器みたいな官能的なカーブだね。
圧倒的な存在感で、まさにスピーカーのためにつくられたようなお店。

コロ: その通りなんだよ。ブルックリンスタイルのレンガの壁から、吹き抜けの天井、
すべてスピーカーありきの設計で、スピーカーの色の塗装までオーダーしたらしい。

カル: クルマにある色ならなんでも可能なんでしょう? 
ジャガー・グリーンでもランボルギーニ・オレンジだろうと。

コロ: そうなんだ。さすが「Listen & Love」をブランドイメージとして
標榜するだけある。

カル: 実際、鳴りはどうなの?

コロ: ピュアでしなやか。まるで魔法をかけたようにスリリングで繊細な音なんだ。
サイズは大きいけど、細かい音がとてもクリアで、爆音でなくとも引き込まれちゃう。
小さい音でも細胞が揺さぶられるから、へんなマッサージより、セラピーになるってさ。

カル: リラックスし過ぎて、寝ちゃう人もいるだろうね。
寝られちゃう音楽はいい音楽ってことでもあるけど。

コロ: 喫茶店っていっても、リスニングスペースはホールみたいな造りだし、
カリモクのチェアは座りやすいし、余計にかも。

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舌を噛みそうな店名の意味とは?

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カル: 〈トゥルネラパージュ〉ってお店の名前、覚えにくいけど。どんな意味?

コロ: フランス語で「ページをめくる」、
リフレッシュするって意味の慣用句でもあるんだ。
覚えにくい名前をつけることで、覚えたとき、常連になった気にさせるって、
矢野さんの企みもあるみたい。

カル: たしかに覚えにくいって感じた自分はまんまと罠にハマってるかも(笑)。
壁に飾られたレコードはビル・エヴァンスとセロニアス・モンクばかりだけど。

コロ: 「ハママツ・ジャズ・ウィーク」が10月23日まであって、
それを記念してってことらしい。
さっきも、お客さんが壁のレコードから
モンクの『Monk’s Music』を選んでリクエストしていた。

カル: とてもきっちりしたアルバムだから浜松の感じにぴったりな気がするね。

コロ: 浜松のお客さんはおとなしくて、拍手が少ないとか言われたりするらしいけど、
それはちょっと心外だって(笑)。
面出しのレコードはアーティスト別だけでなくて、
クリスマスカラーだったり、タバコを吸っている写真ばかりになったりと、
季節季節で変わるらしい。

カル: 基本、かけるレコードはジャズなんでしょう?

コロ: そうだね。でも雨の日はなんでもリクエストしていいんだって。
蒸気機関車の汽笛の音とか、効果音ばかりの日もあるんだって。

カル: それ行きたいな。ひぐらしの鳴き声なんて、ちょっとしたオーケストラ。

コロ: それと奇数月の第3金曜日の夜はキャンドルナイトといって、
テーマに沿った選曲のイベントがあるらしい。
次(11月18日)のイベントは「90’s Female Artists」。

カル: 90年代の女性アーティストというと誰だろう?
エンヤ? セリーヌ・ディオン?

コロ: カルロス的にはローリン・ヒルとかじゃない?

うっすらと流れていたウェス・モンゴメリーの『California Dreaming』。弦との相性がことのほかいい。

うっすらと流れていたウェス・モンゴメリーの『California Dreaming』。弦との相性がことのほかいい。

カル: コーヒーもスピーカー並みにこだわってるって評判なんだよね。

コロ: ブラジルから生豆を仕入れて、焙煎も自分の所でやっているんだ。
トレサビリティもしっかりしている。
コーヒーもオーディオ同様にクリーンな味わい。
ごちそうになったんだけど、
ちょうどかかっていたウェス・モンゴメリーの「SUNNY」とばっちりシンクロしちゃった。
粒立ちといい、透明感といい。

カル: オーナーはあのスピーカー、弦楽器の曲によく合うって言ってたらしいけど、
コーヒーとも合うんだね。
おまけに自家製のバスクチーズケーキもスピーカー同様リッチな味わいなんでしょう。

コロ: そうそう、お塩と胡椒で食べるんだけど、最高!

カル: まさに「形は機能に従う」ってお店だね。

information

map

Tournez La Page 
トゥルネラパージュ

住所:静岡県浜松市中区板屋町628 Y3ビル1F

電話:053-455-7100

営業時間:13:00~19:00(金・土曜~21:00)

定休日:月・火曜、不定休

Web:Tournez La Page

 

SOUND SYSTEM

Speaker:avantgarde trio + 6 basshorn

Pre Amp:Accuphase C-2800

Power Amp:Accuphase A-60

Turn Table:AVID acutus

CD player:ESOTERIC UX-1

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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