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富山〈ハナミズキノヘヤ〉
名機「エベレスト」で聴く、
デザイン好き店主のミュージックバー

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.002

posted:2022.8.20   from:富山県富山市  genre:旅行 / エンタメ・お楽しみ

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

〈JBL〉のエベレストで聴く雄大な音

音楽好きコロンボとカルロスがリスニングバーを探す巡礼の旅、
次なるディストネーションは富山県富山市。

コロンボ(以下、コロ): 前回の目的地、金沢から新幹線で2駅、
富山の〈ハナミズキノヘヤ〉に。新幹線ができてずいぶんと近くなったよね。

カルロス(以下、カル): 在来線だと金沢から1時間はかかったから、
かなり身近になった気がするよね。ここ富山は素朴でとっても風情があるんだ。

コロ: そう。なんだかのんびりする。好きだなー、富山。

カル: こと音楽となると、富山の人はオタク気質の人が多いみたいだよ。
古くからあるジャズバーはもちろんだけど、
ブラジルやアルゼンチンのレコードばかりを集めたレコ屋、
〈ボン・ディスコス〉があったりと。

コロ: 〈ハナミズキノヘヤ〉は一青窈と関係あるの?

カル: お店のビルが空を押し上げているけど、関係はまったくない。
店の前の道がハナミズキ通りというので、そこから命名したんだって。

コロ: 築50年というビルがほどよくやれてて、いい感じだよね。

カル: 壁面のグラフィティとアイビーのコントラストはあまく危険な香りがするよね。
お店は1階なんだけど、3階にはたばこの煙に燻されたイベントスペースがあったりと、
怪しいナイトライフの匂いが満々なんだ。

コロ: とはいえ、入ったときにかかっていたレコードは夏っぽくて、最高だったな。
ジョン・ルシアンの「クエンダ」。

カル: 波の音からスキャットへとつながる、イカしたラテンサウンド。
センスのいいセレクトだよね。店主の水原憲人さんのヘビーローテーションなんだって。

コロ: レコードで聴くのは初めてだな。
まさか〈JBL〉の「エベレスト」でこの曲が鳴っているとはね。

カル: JBLのフラッグシップモデルと言ってもいい、このスピーカーは、
幅1メートル、高さ1.4メートルと超大型。
JBLといえば、「パラゴン」もすごいけど、こいつはまさに威風堂々な存在感を発している感じ。

コロ: 巨大スピーカーならではの雄大さがあって、
音を鳴らすというより空気を鳴らす、エベレストの名に恥じない振る舞いなんだ。
一度は聴いてみる価値のある音だと思う。

圧倒的存在感で店内奥にどかりと君臨する〈JBL〉のフラッグシップ・スピーカー〈エベレスト〉。

圧倒的存在感で店内奥にどかりと君臨する〈JBL〉のフラッグシップ・スピーカー〈エベレスト〉。

カル: 2011年に〈ハナミズキノヘヤ〉を開いた店主のお父さんが、大病した際に、
生きているうちにもっといい音で聴きたいと買ったものなんだって。
幸い回復して、今はとっても元気でちょくちょくお店に顔を出しているそう。

コロ: お父さんの嗜好はジャズ?

カル: そうみたい。お父さんいわく、
〈エベレスト〉はジャズをかけると音のグルーブが違うそう。
お気に入りのレコードは『DUKE ELLINTON & JOHN COLTRANE』だってさ。

創業者である父、水原健造さんの永遠の1枚、『DUKE ELLINGTON & JOHN COLTRANE』。

創業者である父、水原健造さんの永遠の1枚、『DUKE ELLINGTON & JOHN COLTRANE』。

コロ: エベレストの前の「いつもの席」に座って聞いているんだってね。

カル: ボクが行ったときは、好きな曲がかかると、
お父さんががっつりボリュームを上げて、
それに気づいた息子の憲人さんがこっそり下げるという小競り合いを
10回以上は繰り返していたかな(笑)。
77歳だけど、キャラが強くて、いわゆる昭和の豪傑オヤジって感じ。

コロ: ローリングストーンズをリクエストした常連と、
本気でケンカしていたらしいじゃない。ストーンズが嫌いなの?

カル: いや、音楽を愛し過ぎるが故のバトルのようだったね。
そんなやりとりも、ある意味お店の名物らしい(笑)。

コロ: お父さんは昭和だけど、お店は渋いバーというより、
もっと洗練されたカフェバーって感じ。

カル: ナチュラルワインをはじめ、いろいろなお酒を楽しめるから、
カップルも多いみたい。なんたって空間演出が行き届いている。

床のテラゾー仕上げ、そして堅牢な柱とワーグナーの建築デザインをイメージしたインテリア。

床のテラゾー仕上げ、そして堅牢な柱とワーグナーの建築デザインをイメージしたインテリア。

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レコードだけではない魅力とは?

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ワーグナーのウィーンの郵便貯金局が空間イメージ

コロ: 内装は巨匠オットー・ワーグナーが設計した
ウィーンの郵便貯金局を意識したんだとか。

カル: 床のテラゾー仕上げとか、柱の感じとか、
よく見るとたしかにワーグナーの郵便貯金局っぽい。
何気なく置かれたミッドセンチュリーのオブジェや骨董品とか、
レコードを聴きながら眺めるだけでも発見がありそうで楽しいよ。

コロ: たしかにミュージアムみたい。フォルナセッティの皿とか、
音だけじゃなく意匠もすぐれた〈小松音響研究所〉の真空管アンプとか、
デザインに対する造形の深さを感じるね。

カル: 3階は〈NEW PORT〉というイベントスペースで、
DJイベントやジャズライブなんかもやるそう。
コロナ禍の影響で中止になっちゃったんだけど、
イラストレーターの永井博さんのDJイベントとかも予定されていたらしいよ。

コロ: 残念、それは観てみたかったな。

カル: どんな曲をかけてくれたんだろうね? 
ジャズ? それともシティポップかな?

information

map

ハナミズキノヘヤ

住所:富山県富山市南田町1-6-1

Tel:076-423-5557

営業時間:19:00~24:00

定休日:水曜

  

【SOUND SYSTEM】

Speaker:JBL EVEREST

Power Amp:Accuphase A60

そのほか小松音響研究所の真空管アンプが3台。

Turn Table:LINN LP12

CD Player:Accuphase DD400

そのほか秘密機器多数。

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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