BS朝日で放送中の『アーツ&クラフツ商会』は、
毎回日本に古くから伝わる伝統工芸品をご紹介する番組です。
この名前の由来となっているのは、19世紀イギリスの「アーツ&クラフツ運動」。
当時のデザイナー、ウィリアム・モリスが
「古き良き時代の熟練職人による質の高い工芸品のよさを見直し、
現在のライフスタイルに取り入れよう」と提唱し、
手仕事を大切にした商品が続々と生まれた運動のことです。
この番組は、そんなモリスの思想や、
世界に誇るメイド・イン・ジャパンの情熱を伝えています。
企画・監修は、小山薫堂氏です。
もともと、番組スポンサーであるセキスイハイムが、
企業の姿勢として掲げたテーマが「時を経ても、続く価値を。」。
この言葉をベースに伝統工芸を掘り下げていくこの番組が生まれました。
全国の伝統工芸品の中から、ジャンルや地域が多岐にわたるようにセレクト。
「制作チームは毎回工房にお邪魔しているのですが、共通して言えるのは、
どの職人さんもプライドを持って伝統工芸品をつくっていること。
そして、その活力を一番感じられるのが工房であるということです。
通常であれば入らせていただけないようなところまで、
本当に密着して、とても時間をかけて撮影をしています」と話すのは、
小山さんの事務所N35のプロデューサーの岩佐 恵さんです。
番組を統括するBS朝日の魏 治康プロデューサーは
「難しい専門用語もたくさんありますが、
作家と一緒に知恵を出し合って、いかにわかりやすくそれらを説明しながら
伝統工芸の魅力を伝えられるか工夫しています」と話してくれました。
さらにこの番組で注目すべきは、
伝統的な手仕事という技が現代に生きるものを生みだす
ニュー・クラフツという視点です。
BS朝日の宮島花名さんも「伝統工芸を取り上げた番組は多々ありますが、
その技を使って新しいものをつくる企画はこの番組ならでは。
それを、丁寧な編集でかたちにできるよう努力しています」と言います。
受注生産の世界なので、職人さんは常に予約でいっぱい。
その合間を縫って制作していただく大変さは想像するに余りありますが、
毎回番組サイドが提案したアイデア以上のものが返ってくるのだそうです。

左からN35の岩佐さん、BS朝日の魏さん、宮島さん。
番組ではこれまで、鳴子こけしや有田焼、鎚起銅器(ついきどうき)など、
古くから受け継がれてきた日本の伝統工芸品やその歴史、
そして職人技にフィーチャーしてきました。
現代の生活にマッチする“ニュー・クラフツ”を、毎回それぞれの職人が技を駆使して制作。
手仕事の繊細さや温かみが吹き込まれたひとつひとつのプロダクトに、
思わずため息がこぼれます。

宮城県の鳴子こけしの職人さんがつくったのは、中の空洞に手紙を入れて、想いを届ける「交換こけし」。(画像提供:BS朝日)

約400年の伝統を誇る佐賀県の有田焼。制作されたニュー・クラフツは、上下ふたつに分解できる、有田焼クリスマスツリー! 先端はグラス、スソの部分はシャンパンクーラーになる優れものです。(画像提供:BS朝日)

新潟県燕市の鎚起銅器の技術を駆使してつくられたのはランプシェード。職人歴35年の椛沢伸治さんが外側と内側に異なる美しい模様を施しています。(画像提供:BS朝日)

毎回、番組はここからスタート。ダイナミックに書かれた「手考足思(しゅこうそくい)」という言葉は、民芸運動でも知られる著名な陶芸家・河井寛次郎の言葉で「手を動かして考え、自分の足で歩きながら思いをめぐらせる」という意味。小山薫堂さんの直筆です。
「もしあなたが○○に興味を持たれたなら、どうぞこちらへ……」
というナレーションから始まるこの番組の舞台は、実は都内某所にあるアンティークショップ。
アーツ&クラフツの息吹を伝えるべく、
店内にはたくさんの古書や骨董品、家具が並んでいます。
撮影は、まず店内の商品を片付けるところからスタート。
その量、段ボール約10箱分!
さらに天井に照明を追加し、棚を整理し、限られたスペースに大きなカメラを入れる……。
準備だけでも半日を費やす大がかり。スタッフさんたちも大変です。
棚には、これまで番組で紹介した作品もいくつか並んでいます。

壁付けの棚には、江戸切子など、これまでに制作した伝統工芸品も。4月に放送した津軽びいどろの瓶は、番組の美術さんが持ってきたものです。
店主のほかに重要な役割を担うのは、声の主でもある「本の精」。
もともとこのお店にあったアンティークの本に、
美術さんがダメージ加工を施してつくったラベルを貼りました。
実は中も、数ページだけ制作しているそうです。

本物かと間違うタイトルラベルのダメージ加工はさすが!
まだまだ、撮影はつづきます。