ロボットを使った コミュニケーションが 家族団らんを取り戻す。 ユカイ工学 前編
ソフトウェアからハードウェアであるロボットへ。
ロボットといって、思いうかべるものはなんだろうか?
ガンダムや鉄腕アトム、あるいは実際につくられているASIMOなどもある。
それらには一般のひとが理解するのは難しい、
最先端技術が込められたモノというイメージがある。
しかし、それらの技術=ロボティクスを使って、
ユニークでかわいい商品をつくることも可能だ。
そんなものづくりに励んでいるのがユカイ工学。
社名からしてワクワクしてくる。
会社を立ち上げた青木俊介さんは、
学生時代に猪子寿之さんと一緒にチームラボを立ち上げたメンバーだ。
当時、チームラボはソフトウェア開発がメインだった。
しかし青木さん本人は、子どもの頃からロボットをつくりたいという思いを秘めていた。
「中学生のころに、『ターミネーター2』などの映画を観た影響が大きいです。
それで、ずっとロボットや人工知能をつくりたいと思っていました。
学生のときは、インターネットブームで、
ネットワークによっていろいろなものが大きく変わると言われていた時代。
それらを利用してビジネスをしていました。
逆にいうと2000年ごろは、
ロボットでビジネスができる環境ではなかったのだろうし、
イメージもできませんでしたね」

CEOの青木俊介さん。
ロボットをつくりたいと思っていても、
世の中はインターネットビジネス全盛の時代だった。それを見逃す手はなかったのだ。
しかし潮流に変化の兆しが表れたのが2005年頃だという。
「2005年は〈愛・地球博〉が開催されてたくさんのロボットが出展されたし、
『make:』という雑誌がアメリカで創刊されたのも2005年なんです。
ロボットベンチャーと呼ばれる会社も出始めてきました。
自分もソフトよりもハードウェアをつくったほうが面白いのではないかと感じたし、
“いつかロボットをつくりたい”という夢を持っていたので、
会社を辞め、2007年にユカイ工学を立ち上げました」

〈チームラボハンガー〉は、ショップ内のハンガーが手に取られたことを感知し、その着こなしをビジュアルに映し出すハンガー型販売促進システム。チームラボと共同開発した。(写真提供:ユカイ工学)
ロボットはコミュニケーションのツールである。
ユカイ工学は“ロボティクスで世界をユカイにする”というコンセプトを掲げている。
現状ではいわゆるロボットというと、
パブリックイメージ通りのホビイスト向けのものが多く、
これらのほとんどはバッテリーの制約を受けてしまう。
1日充電して、1時間程度しか動かないものがほとんどだ。
バッテリーの世界は今後20年間で2〜3倍くらいの性能になると言われているが、
その程度の進化しか見込まれていない。
「たとえばASIMOは10年以上前から歩いていますが、
まだバク転するわけでもないし、ちょっと小走りできるようになったくらい。
一般のひとからするとそのくらいの進化しか感じられません。
モーターを多く使った人型ロボットはまだまだイノベーションが必要だと思います。
この方向性だと、ロボットと一緒に暮らす生活はすぐには想像できないですね」
しかし青木さんは
「ロボットはコミュニケーションのためのデバイスとして進化する」と考えている。
「ひとやセンサーなどと会話する機能はすごく進化しています。
ソフトウェアや処理スピード、およびコンパクトさなどです。
だからコミュニケーションの機能は進化するだろうと思っています。
私たちが一番ワクワクするポイントは、ひとと一緒に暮らすロボットなんです」

センサーにより家庭の状況がわかり、音声メッセージをやりとりすることができる〈BOCCO〉。詳細は次週。(写真提供:ユカイ工学)
スマートハウス化が進んでいる。
家のなかのものすべてにセンサーがつくことで、どんどん賢くなっていく。
さらにネットワークでつながることで、
スマートフォンからコントロールしたり、情報を取ることができるものだ。
そういったものがどんどん増えてきたときに、
それらを集約するインターフェースが必要となってくる。
個別には、スマートフォンがその役割を担っているものもあるが、
青木さんがつくるものはもっと“人なつっこい”ものだ。
「まず、あまり子どもにスマートフォンを渡したくないんですよね。
実際に、うちの子どもにも渡していません。
それにスマホはあくまで個人的なもの。
個人利用を最大化するように設計されています。
せっかく家族がいるリビングで、みんなスマホを見ているのはイヤだなと。
それよりも、ロボットがしゃべればみんな同時に聞こえます。
その場に一緒にいる複数のための端末としては、実体のあるものがいいと思っています」
ロボットというと、便利な反面、人間の役割を奪っていくものと思いがちだが、
ユカイ工学では、家庭のコミュニケーションを戻していく存在として考えているようだ。
コミュニケーションの機能が進んでいくと、
ロボットは人間の暮らしに入り込んでくるだろう。

富士ゼロックスが行っていた〈四次元ポケットプロジェクト〉において、〈望遠メガフォン〉を設計・デザインした。夢あふれるプロダクトだ。(写真提供:ユカイ工学)
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