冬らしく曇った空から、ちらちらと雪が降ってくる。
畑や山の緑も、ホームのコンクリートもどこかくすんだように見えるなか、
橙色の汽車がスーッとホームに入ってきた。
ここは山口県下関市にある阿川駅。京都と下関を結ぶJR山陰本線の無人駅だ。

見渡す限り畑と山と民家しかないこの場所に、昨年の夏、目新しい建物ができた。
見た目は、四角くて透明な箱。
「小さなまちのkiosk」をコンセプトにつくられたその建物は、
まちの名前そのままに〈Agawa〉と名づけられた。
地元の特産品を使ったドリンクやフードを提供している。
新しい阿川駅舎とAgawaをプロデュースしたのが、塩満直弘さん。
山口県の萩市に生まれ育ち、アメリカ、カナダ、東京、鎌倉と
さまざまな土地での生活を経て、萩へ帰ってきた。
故郷の魅力を自分なりに表現したいと起業し、
〈萩 ゲストハウス ruco〉を運営してきた塩満さんが
Agawaを通じて体現していきたいこととはなんだろうか。
駅舎と対になる透明なkiosk
〈Agawa〉は、2020年夏にオープンした。
まちの風土をダイレクトに感じてもらえるように
カフェと物販、レンタサイクルを提供している。
塩満さんは、店舗ととなりの阿川駅舎が対になるようにAgawaのイメージを考え、
JR西日本の建築部門担当者と、
彼の友人である〈takt project〉代表の吉泉聡さんがそれを具現化していった。
「駅舎とカフェのデザインを考えるときに意識していたのは、
駅全体を広場、公園のように再定義すること。
建物をガラス張りにしたのは、
周囲の風景に違和感なく溶け込ませて景観の一部と見立てることで、
“乗降客に限らず誰もが自由に佇める”という駅本来の特徴を、
空間全体で感じてもらいたかったからです」

Agawa(左)と阿川駅の駅舎(右)。中が透けて見える構造は、地元の人から驚かれることもあった。「境界線をぼやかす」デザインにしたかったという。

Agawaで提供されている猪ソーセージ(800円・税込)とゆずきちソーダ(500円・税込)。猪肉、ゆずきち、ともに長門市俵山産。ゆずきちは山口県の山陰地方が原産。収穫時期により味や香りの変化も楽しめる。
コロナ禍でのオープンとなったが、
若年層に限らず、さまざまな世代、地域から、多くの人が訪れ賑わっている。
地元の人が乗り降りするのはもちろん、
子どもたちが広場に敷きつめられたシロツメクサの上を走り回ったり、
家族で四つ葉のクローバーを探したり、
観光でやってきた友人同士で写真撮影をしたり。
訪れた人がそれぞれ、思い思いに時間を過ごす場所となっている。
「駅だからこそ訪れる人の雑多さ、多様性がある。
僕自身がそんな場所を求めていたし、公共性の高い場所に関わりたかった」
そう話す理由には、塩満さん自身のこれまでの経験があった。
























































