連載
posted:2020.8.19 from:福井県福井市 genre:暮らしと移住 / アート・デザイン・建築
sponsored by BESS
〈 この連載・企画は… 〉
ライフスタイルの基本は、やはり「家」。
ログハウスなど木の家を得意とする住宅ブランド〈BESS〉とともに、
わが家に好きなものをつめこんで、
最大限に暮らしをおもしろがっている人たちをご紹介します。
writer profile
Masayoshi Sakamoto
坂本正敬
さかもと・まさよし●翻訳家/ライター。1979年東京生まれ、埼玉育ち、富山県在住。成城大学文芸学部芸術学科卒。国内外の紙媒体、WEB媒体の記事を日本語と英語で執筆する。海外プレスツアー参加・取材実績多数。主な訳書に『クールジャパン一般常識』(クールジャパン講師会)。大手出版社の媒体内で月間MVP賞を9回受賞する。
photgrapher profile
Tetsuro Yamamoto
山本哲朗
やまもと・てつろう●1986年生まれ。石川県金沢市出身。写真事務所に約10年勤めたあと、2017年〈Photo Studio tetoru〉を開業。石川県を拠点に、雑誌・広告等の撮影を行う。
福井市の郊外に、志津が丘と呼ばれる緑に囲まれた住宅地がある。
福井平野と越前海岸を隔てる山地の入り口に位置している。
市街地から車で40分ほどの距離だが、志津が丘では夜、フクロウが鳴くらしい。
その土地に、若い世代からも慕われる“遊びの達人”である竹下光彦さんが暮らしている。「横乗り系の遊びは全部、やりました」と語る竹下さんは、福井県鯖江市で生まれ、
若い頃はスケーターとしても北陸で名を知られた。
大人になっても遊びを突き詰められる人はかっこいい。
多くの人は年を重ねるにつれ、知らないうちに遊び心を失っていく。
暮らす場所ひとつとっても、便利さや快適さ、合理的な機能が優先され始める。
しかし、竹下さんは違う。
「子どもの学校から近い環境を」という
奥さん・恵子さんの意見にはきちんと耳を傾けながらも、
若い頃から突き詰めてきた遊びへの情熱を決して絶やさない人だ。
さすがに若い頃と比べて横乗り系の遊びに関しては出かけられなくなったというが、
玄関口にはスケートボードが立てかけられ、
吹き抜けのリビングの一角には、3メートル近くありそうな
サップ(SUP=Stand Up Paddleの頭文字。立ったままパドルを漕いで乗る板)が、
立てかけられている。
「空気を入れて膨らませるタイプなので、本当は小さく収納もできます。
ただ、丸めてしまうと素材も傷みます。
いろいろ保管場所を考えたのですが、
これほど大きなサップをそのまま置ける場所といえば、ここしかありませんでした」
吹き抜けには金網の棚もあり、
その上にはプラスチック製の大きな収納ボックスが並んでいた。
2階のロフトスペースにはキャンプ用品がぎっしりと並んでいて、
寝室にはサーフボードやスノーボードが立てかけられている。
「前に暮らしていたマンションでは、家族でキャンプに出かけるたびに、
大変な思いをしていました。
荷物をエレベーターで何往復もして車に運ばなければいけませんし、
そもそも大きすぎて、外に持っていくこと自体が大変な荷物もありました」
「しかし、この家の場合は荷物の出し入れで、
角が引っかかるような余計な構造物がありません。
リビングの窓が大きく、ウッドデッキにもつながっているので、
サイズのある道具でも出し入れがラクです。
軒先でバーベキューをしようと思ったら、あっという間に準備が整ってしまいます」
確かに竹下さんのように、さまざまな道具を駆使しながら屋外の遊びを存分に楽しむ人には、
今のような家でないと窮屈かもしれない。
もちろんマンションは一般的に、極めて合理的につくられている。
しかし、それは日常的な都市生活を送るためであって、
3メートルのサップを出し入れするための合理性ではないのだ。
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竹下さんが生まれ育った場所は、大きな国道があり、比較的何でもそろっている環境だった。
しかし、母の実家は福井の中でも、川があって、山があって、
10世帯しか暮らしていない自然豊かな場所だったという。
「母の実家を小さい頃から訪れるうちに、
自然の中での暮らしに、憧れを抱くようになりました」
もちろん10代、20代前半ではクラブやスケートボードなど、
都会的な遊びに熱中する時期もあった。
スケートボードが地方では流行していない時期にも、
竹下さんはその世界にいち早くのめり込む。
最終的には、関連のショップとスポンサー契約を結ぶまでに至った。
「“カラーズの竹ちゃん”といえば、その当時、北陸ではそこそこ知られた存在でした」と、
振り返って笑う。
次第にサーフィン、スノーボードなど、
自然の中で楽しむ横乗り系のスポーツにもはまり始める。
さらに友人や知人、先輩たちと定期的にキャンプに出かけるようになると、
自然の中で遊ぶように暮らす日々への憧れも強まっていく。
竹下さんは、住宅選びにおいて「BESS、1択だった」と振り返る。
10年ほど前、アウトドア雑誌に掲載された広告が、BESSとの出合い。
その広告の世界観に激しく引かれた。
「結婚して7~8年は、マンションで暮らしました。
ですが、雑誌で見たBESSの広告が頭から離れなくて、
金沢にあるBESSのLOGWAY(展示場)に出かけました。
BESSの先輩オーナーたちは何でもDIYでつくると聞いて、憧れはあったのですけれど、
自分にできるか正直不安はありましたが、それでもBESSの家に決めました。
ほかは一切、見ていません」
家は一生で最も大きな買い物。
そのとき、家庭内ではどのような話し合いがされたのだろうか。
「BESSについては異論を挟む余地はなさそうでした(笑)。
私はせめて、子どもの学校が近くにある環境を選びたいと、お願いしました」と、
恵子さんは笑う。
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リビングには、薪ストーブが置かれている。
今ではそのおかげで一年中、Tシャツと短パン姿で過ごしているという。
しかし、薪ストーブで家の暖房をすべてまかなおうとすると、かなりの量の薪が必要になる。
竹下さんは近隣の大野市などに出かけ、
斧で薪を切りに行く時間も設けているが、まったく足りない。
薪も買えば、安くはない。光熱費でいえば、
電気で暖房をまかなうコストと比べて、2倍近くはかかる。
その薪の継続的な確保をどうしようかと思ったとき、
偶然にも家の裏に、薪をつくっている場所があった。
「ここに引っ越してきて間もなく、裏の家に薪がたくさん積んであるのを見つけました。
どう見ても、薪をつくっているように思えたので、
引っ越しの挨拶を兼ねてお邪魔してみました。
予想は的中で、それ以降、薪を安く買わせてもらっています。
そのご近所さんは散歩を兼ねてうちの前を歩いて、
薪が不足していないか気にもかけてくれます」
薪ストーブ生活のスタートとともに、竹下さんは冬になると火の番をするようになった。
マンション暮らしでは暇さえあれば見ていたテレビも、一切見なくなったという。
「一日中、家にいても楽しくて、どこかに出かけなくてもまったく退屈ではありません」と、
竹下さんは語る。
ちょっとした暮らしの手間自体が、“遊び”になっているのだ。
北陸の冬は厳しい。外出自体が難しい日もある。
そんな降雪の激しい1日でも家を暖かく保つために、竹下さんは熱心に薪をくべる。
その火を守る作業が、何時間でも楽しめるという。
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竹下さんファミリーは、2017年からこの家に住み始めた。
すでに3年が経ち、四季折々の住み心地を体験してきた。
「暮らすほどに、ああしたい、こうしたいという夢が膨らんでくる」という。
「引っ越してきたときは、本当にこの家の中には何もありませんでした。
1か月くらいは家の中でテントを張って、キャンプ生活しているような状態。
ですが、まず一番散らかっていたキッチンの棚をつくって、
リビングのマガジンラックをつくって、玄関の下駄箱をつくってと、
必要に応じて自分で増やしてきました。
門柱も友だちに重機を出してもらって移動しましたし、薪棚も新設する予定です。
外構もガレージもこれからです」
BESSの家はそもそも竹下さんのように、
オーナーが自分で足りない部分を自作して足しやすい設計になっている。
「新築の引き渡しが完成ではないという不完全さこそが味わいです。
『自分の家が飽きた』という友だちもいますが、
私は飽きていませんし、手間をかけるからこそおもしろいと思っています」
「同じBESSオーナーの家に泊まりに行く機会が多いのですが、
まったく同じタイプの住宅でも、どの家も違って見えるからおもしろいです。
みんな、それぞれ好きなようにアレンジしているからだと思います」
BESSのオーナー同士は盛んな交流がある。
各人の家づくりを先輩オーナーから学ぶ機会もあるという。
竹下さんは、これからオーナーになる人たちのために、
「コーチャー」という立場を無償で買って出て、BESSの魅力を伝えようともしている。
かつてスケーターとして若者の憧れだった人は、
今度はその暮らしぶりを通じて、若い世代に何かを伝えようとしているのだ。
どうしてそこまで人の世話をするのかと聞くと、
「それだけこの家が好きだからです。
先輩オーナーたちにも、よくしてもらいました」という答えがあった。
外出がままならない社会情勢の今、家の楽しみ方を考え直す時期が来ているのかもしれない。
かつて遊びを突き詰めた達人が、次に見つけたのが家という遊び。
遊び心をもって暮らしに手間をかければ、その手間が遊びになる。
竹下さんの暮らしと家を見て、学ばせてもらった気がした。
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