有田焼の産地として知られる佐賀県有田町にある〈アリタセラ/Arita Será〉は、
約2万坪の敷地に日用食器から業務用、美術工芸品まで、
多種多様な陶磁器の専門店が軒を連ねるエリアの総称だ。
かつては〈有田陶磁の里プラザ〉と呼ばれ、
集客に悩んでいた有田焼の商社が集まる卸団地が、
〈アリタセラ/Arita Será〉と改称したことをきっかけに、
今では、「心地よい場所」「また行きたい」と
SNSにもたびたび投稿されるまでに変化を遂げた。
愛される場所へと創生を促す、5年間の歩みを取材した。

陶磁器の専門店が軒を連ねる〈アリタセラ/Arita Será〉。
毎年ゴールデンウィークに開催される〈有田陶器市〉には、
約120万人の観光客が訪れ賑わいをみせる佐賀県有田町。
しかしながら、それ以外の時期は驚くほど閑散としているのがまちの現状だ。
そんな有田町にとって、2016年は大きな節目となる年だった。
日本で最初の磁器である有田焼が誕生したとされる1616年から
400年を迎える2016年に向け、
佐賀県は〈有田焼創業400年事業〉を立ち上げ、
3か年をかけ17ものプロジェクトが推進されたのだ。
アリタセラ(旧・有田陶磁の里プラザ)も、
有田焼の販売を担ってきた拠点という位置づけから、さらなる産業基盤整備が求められ、
外部のクリエイターやシェフなど食と器文化に関わる専門家や、
広く観光客までを迎え入れられる滞在型の交流および情報発信を強化するべく、
敷地内の空き店舗を活用し、レストランを併設した宿泊施設を開業することが決まった。
そこで事業化推進とプロモーションの依頼を受けたのが、
有田焼創業400年事業の一環で招聘された、
クリエイティブディレクターの浜野貴晴さんだ。

クリエイティブディレクターの浜野貴晴さん(東京在住)。2014年から2017年まで有田に赴任して有田焼創業400年事業の任期を務めた。東京に戻ってからも毎月有田へ通い、産地支援を行なっている。(写真提供:有田ケーブル・ネットワーク「伝トーク!! 令和四年有田場所」)
事業主となる有田焼卸団地協同組合から、はじめに相談された内容は、
「何かSNSを使ったPRができないか?」というものだったという。
「SNSを使えば、来場者が勝手に発信してくれるのでは」という発想の組合幹部に、
浜野さんは問いかける。
「厳しいことを言うようですが、今、この場所に、
発信したくなるようなどんな魅力があると思いますか?」
組合事業なので、各店舗の運営に口を出すことはできないが、
当時はショーウィンドウや店先など管理の行き届かないケースも散見された。
さらにヒアリングを進めると、この場所に店を構えている組合員たちの悩みと、
ネガティヴな思いが見えてきたという。
「話を聞いていてびっくりしました。
『この場所をどのように活用していったらいいかわからない』
『〈有田陶磁の里プラザ〉という名称が好きではないので誰も使わない』
という声もあったのです」
当事者たる自分たちが悩み、不満を感じている場所で、
来場者が楽しめるはずがない。
「もっと魅力的な場所に、自分たちの手で変えていかなければ!」と
浜野さんの発案で立ち上げられたのが、
〈魅力創出プロジェクト〉だ。2017年10月のことである。